”ミノーはジャークしてナンボ” な今の風潮へのアンチテーゼ的存在 フューズ マッディミノー Fuse Muddy Minnow / デュエル Duel

ショートビルジャークベイトデュエル Duel

 

 

日本のバスフィッシングはアングラーのスキル面でもメーカーの技術面でも90年代のブームで飛躍的に進化したのは御存知の通り。

しかしそんな嵐のような時代に生まれてしまったがゆえに、脚光を浴びることなく消えてしまった良作も数多く存在します。

今日紹介するデュエルのマッディミノーはその最たるもの。

ポテンシャルがありながらも散ってしまった、90年代を象徴するかのようなルアーです。

 

マッディミノーとは

 

マッディミノーはヨーヅリ/デュエルがリリースしたバス用ミノーです。

フューズFUSEシリーズの一味としてクランクマックス、バナナボート、ジャミンバイブなどと共に1994年?にリリースされました。

のちにフェンウィックブランドからもメソッドクランクベイトシリーズとして米国デビューも果たしています。

 

1996年バスプロショップスカタログにフェンウィック名義で掲載されたFUSEシリーズ。

 

フェンウィックブランドだったかどうかは忘れましたが、この時期にイタリアだったかフランスだったかの釣具屋でも見たことがあるので、欧州マーケットにも出荷されていたと思われ。

ぶっちゃけこのシリーズの完成度はイマイチでしたが(特にポッパーの出来はヒドかったw)このマッディミノーのパフォーマンスだけ抜きん出ていたのでシークレットとして投入していた人もいることでしょう。

 

マッディミノーのサイズ・重さ

 

マッディミノーは全長90ミリ、自重10g。

2フッカーミノーとしては標準的なサイズにまとめられています。

今でこそ130ミリ超えのジャークベイトが抵抗なく使われていますが、当時はまだ大きなルアーに対する抵抗感もあり、このサイズがスタンダードな売れ筋でした。

後にジュニアサイズも追加投入されていますが、後に述べるアクション特性からバスに使うにはちょっと物足りない感じなので、個人的にジュニアは管釣り向けと認識しています。

 

仕様

セッパリミノーの血統を受け継いだハンプバック形状

 

このミノーの最大の特徴は、大きく盛り上がった背中を持つセッパリボディ。

英語で言うところのハンプバック形状ですが、ボディを大きく湾曲させることでヘドンのタドポリーやヘリンのフラットフィッシュのように大きくローリングする”への字型”ルアーの特性を持ち合わせています。

 

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ハンプバックのメリットはルアーの背中側に大きな容積を確保することが出来るのでウェイトコントロールしやすいこと。

さらに腹側のシェイプ次第でアクション特性も大きく変えられる利点があります。

最初にミノープラグにハンプバック形状を採用したのはサスガのセッパリミノーがルーツとされていますが、タックルハウスのK-TENなど名作に綿々と受け継がれて来ているのでミノーの王道シェイプと行ってもいいでしょう。

ヨーヅリでもアイルシリーズに採用されています。

 

ヨーヅリアイルミノーとマッディミノー

 

ミノーらしからぬファットなボディ

 

そんなセッパリボディの利点を更に活かすためミノーとしては太めに設定されており、ぼってりミノーの代表、ロングA14Aにも負けないメタボぶり。

横幅が大きく確保されたことで大きなラトルを装備できるだけでなく、可動域も確保できるのでミノーらしからぬラトルサウンドを発します。

 

ガシガシ派にも安心の堅牢リップ

 

そんな大胆なボディとは裏腹にリップは控えめなサイズにまとめているのもマッディミノーの特徴。

アクションについては後述しますが、リップは厚みのあるしっかりした作りになっているのは超シャローのリップラップでもガシガシと巻く飲んだくれにとっては非常にありがたい設計です。

 

類を見ない超絶ワイドローリング

 

気になるアクションは超ワイドなローリング。

ミノーとは思えないほどの大きなアクションで背中を揺さぶり、強く水を撹拌します。

マッディミノーという名前は水の透明度が低くても強いローリングでアピール出来るという意味合いが込められているんでしょうね。

ちなみにパッケージ裏の説明書きには”ウォブリング”と明記されていましたが、動きの特性としては完全なローリング設定。

しかしへの字ルアーはロールするだけでもボディが大きくウォブリングしているように見える視覚効果もあるので、あながち間違いではありません。

海外名はウォブリンミノーWobbl’n Minnowですしね。

 

 

見た目は控えめなリップですが、しっかりと水を掴むので実力は必要十分。

ボディシェイプがしっかりと仕事をしてくれるので、あまり大きいと泳ぎをコントロールしきれなくなっちゃうんでしょう。

スローでも素早く立ち上がるので水面直下でチョンチョン動かすのにもピッタリ。

軽く、ほんのちょっとトゥイッチするだけで左右に大きく首を振ってくれます。

しかしジャークのような大きめのアクションはちょっと苦手かも。

動きがダイナミック過ぎるのでフックがラインを拾ってエビになりやすいのです。

ラインセッティングとかを変えればジャーク時のエビ率も下がるかもしれませんが、それなら他のジャークベイトを使ったほうが精神衛生上よっぽどマシでしょうw

ゆえに水面直下で小さくチョンチョンしたら、じわーっと浮かせてポーズするようなスローライザー的な使い方に向いています。

いやむしろこのルアーはジャークを封印し、小さく動かす事によって得られるメリットを最大限に活かしてあげるべき。

タダ巻きでは大きな撹拌アクション&ラトルサウンドを披露してくれるので、ウェイクベイト的な使い方もアリですしね。

又、パッケージ説明には大きなアクションで障害物をすり抜ける云々とも書かれていましたが、カバー抜けに関しては疑問符付き。

他のミノーに比べればカバーで周りも使えるとは思いますが、それがセールスポイントになるほどのものではないかなと。

そういう意味も含めて、マッディコンディション向けミノーというよりもトップウォーター/サブサーフェス用のトゥイッチベイトと理解すべきでしょう。

 

カラー

 

画像のカラーは不人気の代表ともいえるウグイの婚姻パターンですが、カラーチャートには標準的なメタリックカラーが一通り揃っていました。

ウグイは好きな人は好きだが、そうでない人にとってはタダでも要らんというカラーw

まあ地域的にも婚姻色ウグイを見たことないという人が多いので仕方ないとは思いますが、実はウグイの婚姻色はなかなかのアピールカラー。

リアルかどうかは一旦置いといて、色の要素だけでこのカラーを分析すると、ゴールドベースにブラック、そしてオレンジベリーという三要素で構成されているのが分かります。

これにルアーの動きを重ねると、ボディが横に倒れるワンアクションだけで色が複数回明滅することになります。

つまりワンストロークの一瞬だけで黒→金→黒→金→黒→金→オレンジと明滅するのです。

実際これが魚の眼にはどう映り、どのような効果が得られるのかは永遠の謎ですが、通常のゴールド/ブラックバックとは違った効果がありそうな気がしてきません?

釣りはアングラーの思い込みとイマジネーションから成るゲームなので、こういうヲタ的な要素を取り込んで自己マンに浸ってしまった方が旨いビールが飲めるのです😁

 

フックは#4が標準

 

フックはこのサイズのミノーとしては珍しく前後とも大きめの#4を装備。

おそらくオーバーアクションになり過ぎないようにスタビライザー的な役目も果たしていると思われ。

リアのフックハンガーをテールエンドではなく下側にすることによって姿勢回復が早くなると同時に、岩盤を直撃してもエイトリングが潰れないというメリットももたらしてくれます。

泳ぎの強さを生かしてリアのみフェザードフックに交換すれば、初夏の蒸し暑い夕マズメ、虫が飛ぶタイミングで水面が炸裂しそうな気がします😁

 

ネームの入ったモデルも

 

あいにくこの個体にはネームスタンプはナシ。

しかし最初期のモデルには背中にFUSEのロゴが入っていました。

しかしこのシリーズ名はなんでフューズになったんでしょうね。

通常商品のネーミングには発音しやすい音や口の動きも考慮するはずですが、”フュー”という音は本来の日本語にはない口唇運動(”ひゅう” は有っても ”ふゅう” は無い)なので非常に言いづらいのです。

言いづらいということは同時に覚えにくい音であるということ。

つまり商品名としては最悪のネーミングなのです😂

そして意味合い的にもイマイチ意味が分かりません。

海外ではフューズ名義を使用してなさそうなのでガイジン向けとも思えないし、かといって音の響きがカッコ良いとも思えない。

なんでこの名前にしたのか意図が全く読めないのです。

なんというか、ヨーヅリってこういうトコが多いんですよねw

昔からネーミングがとにかく弱い。というかあんまり考えてないっぽい。

さっさと退屈なネーミング会議を終えて、一刻も早く飲み屋でプハーしたかった?w

それともこの名前にゴーサインを出した責任者のセンスがノストラダムス級に終わってた?w

 

 

ルアーに限らずですが、商品名を変えただけでバカ売れするケースがザラにある事を考えたら、ヨーヅリのネーミングは再考の余地ありどころか、一度振り出しに戻したほうが良いような気すらします。

 

入手は意外とカンタン

 

シリーズ自体がすでに生産を終了しているので入手は中古市場で探すことになります。

しかしフューズシリーズだけでなく、先述のフェンウィック仕様も国内販売されてたりと意外とタマ数は多く、しかも不人気なので売れ残ってて遭遇率は高かったりします。

万人受けのマストバイアイテムではありませんが、このルアーの特性を聞いていつものフィールドを思い出した人なら間違いなくハマると思います😁

 

おわりに

 

次々と新作が連射されまくったバスブームの頃に脚光を浴びることなく消えてしまった良作を掘り起こして紹介する!という謎の使命に燃えるのんだくれですが、そういう意味ではこのルアーはかなりオススメの一品。

近年バス用ミノーといえば、横っ飛びジャークしてナンボみたいな風潮がありますが、そうじゃない愉しみ方もある事をもっと分かって欲しいなぁ

 

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