最近マスコミを賑わせているみずほ銀行のATM障害。
障害の根源を辿っていくと、第一勧業銀行・富士銀行・日本興業銀行の三社合併による派閥・覇権争いの影響だなんて言われています。
しかし覇権争いはともかく、昨日までライバルだった会社に買収合併されるなんてのはルアー業界にもあるのはみなさんご存知の通り。
今日のゲストはそんな覇権争いに破れ、悲しく消えていった名作スローバーでございます。
スローバーはかつてホッパーストッパー社がリリースしていたルアーです。
ホッパーストッパーはバイウーブギーを世に送り出したルアーブランドとして有名ですが、創業のキッカケはへドンやボーマーの成功を見たJ. フレッド・エダー他2名によって1945年に設立された木製ルアー会社が礎となっています。
しかしその後長い時を経て、かつてはライバルとして戦っていたへドンに買収されるという、ホッパーストッパー創業者にとっては屈辱としかいいようのない扱いとなってしまったのです。
でもこういうことって日本でもありますよね。
ああ、ジンセイって残酷。
スローバーは全長78mm、1/2oz(実測13g)のトップウォータープラグです。
魚の特徴をデフォルメしたその造形と、独自のラトルシステムを装備していることで日本でも80年代から人気のあるルアーです。
当時はティムコが輸入してましたね。
独自のラトルシステムとは、ご覧の通りウェイトをバネで浮かせるという、今までなかった個性的なもの。
ルアーが動くたびにバネラトルがビヨヨンとなることで、従来のラトルとは違うアピールができるというのが謳い文句です。
日本では 『止まっていても虫のように小さな波紋が出せる』的な謳い文句でアングラーから愛されてきました。
が、実際に動かしてみると、虫のように… という波紋は出るには出るんですが、かなり弱いんですよね。
ホッパーストッパーのオリジナルモデルの方も同様なので、ぶっちゃけなんじゃコレというのが正直なところ。
しかもこのバネラトル、画像のようにウェイトがボディ内部にくっついていてちゃんとブルブルしない個体もあるという何ともアメリカンな仕様😂
でもそれでイイんです。
アメリカンブランドのルアーはそのぐらいのユルさがあって初めてアメリカンルアーなんですから、細かいことを気にしてちゃイケマセン。
そんなショボい仕様をなんとかしようと思ったのか、その後デプスがこのシステムを採用してパルスコッドをリリースしています。
びよよんラトルに精度を求めるなら、パルスコッドを使った方が精神衛生上もよろしいかと😂

ちなみにこのルアーの名前であるスローバー Throbber とは、Throb (鼓動) する者という意味。
英語の音的にはスローバーではなく “スラバー” に近い発音となりますが、ラトルサウンドを心臓の鼓動音に例えるなんて、びよよんラトルの特性をうまく表現してますよね。
ラインアイを上部に設置して大きく開いたカップは、近年のアメリカンルアーではもはや絶滅危惧種となったダータースタイル。
スプラッシュを撒き散らすのではなく、大量のバブルとともにダイブし、低くくぐもった捕食音を発することだけに機能を集約させています。
しかしダーターとしては優れたルアーだったのですが、へドンにはすでにベビーラッキー13という同様の性格を持つルアーが存在していたこともあり、へドンブランドとしては一度しか生産されなかったという不遇のルアーでもあったのです。
なんかこの辺りの展開の裏には、買収した側とされる側の思惑が絡んでそうでちょっとコワいですねw
ダーターとしての性能をサポートするのはこのファットなボディ容積が生み出す強力な浮力。
ピンポン球のようにポッコン!と水面に浮き、ダイブするごとに強いキックバックアクションを見せてくれます。
そのアクションのクイックさはまさにアメリカンルアー。
カップに受けた水の抵抗によってダイブしたルアーが、カップの抵抗によってククッと前につんのめるように止まります。
人によっては軽すぎると思うかもしれませんが、ゴフッ!と潜らせて浮かせてポーズ… というセオリー通りのトップウォーターを楽しみたい時にはぴったりの味付けなのです。
しかしタマによってはその強い浮力が仇になることも。
このスローバーはボディ下部にフック以外の重心ウェイトを持っていないので、画像のように水面で浮いた時にナナメになるものが非常に多いのです。
このナナメ浮きは、同じ方向にしかダイブしないというアクションの偏りを意味します。
つまり何度ダートさせても右なら右にしかボディを翻さないという癖があるということ。
弱った魚を演じるにはその方がよりナチュラルっぽいともいえますが、タダ巻きでフラフラさせようとしても浮力が強さが仇になって横倒しになるだけという、なかなか一筋縄ではいかない奴なのです。
こういうクセのあるルアーはのんだくれの大好物ですが、単純明快が好きなアメリカ人からは嫌がられただろうなーと😁
魚のヒレをデフォルメしてルアーに残してくれてるところが嬉しいですよね。
ちゃんとした役割を持たされてそうなところもヲタ心をくすぐります。
ちなみにこのパーチカラーのコードは ” L “。
そうです。
Lはへドンでいうパーチカラーなのです。
カラーコードまで徹底してへドン家のルールに従わせるなんて、ちょっと可哀想な気がしないでもありませんが。
フックは前後ともダブルフックに交換して使っています。
その理由は、元々ついていたトレブルフックがショボい(クリアカラーの画像参照)のと、吊るしのままだとフックがラインを拾ってエビになることが多いから。
カバー奥にブチ込むことが多いというのもダブルフック装着の理由です。
しかし許せんのはネームプリントがどこにも無いこと。
ホッパーストッパーの頃からネームプリントはなかったけど、せっかくナイスな名前があるんだから是非とも入れて欲しかったなー。
へドンに買収された後のホッパーストッパーは皆さんの知る通り、決して華やかなものではありませんでした。
しかし当時のホッパーストッパーを知るアングラーの心にはしっかりと焼きついており、記憶に残るルアーブランドであったことは間違いありません。
プラドコのブランドリストからはもちろん、へドンの製品リストからも消えて久しいホッパーストッパーのルアーですが、おっさんのささくれた心を癒してくれる存在として未来永劫語り継がれていって欲しいもんです。