バス用のペンシルベイトが売れなくなって久しい。
今や売れないバスルアーの筆頭と言っても過言ではないぐらい。
かつては ”いかにもバスフィッシング” という感じでクールなイメージだったのに、ここ数年国産バスルアーブランドでペンシルベイトをリリースしたのは片手で数えられるほどになってしまった。
自分であれこれ演出するよりもタダ巻きで勝手に泳いでくれる方が手っ取り早いんでしょうね。
その割にはジャークベイトや水中ドッグウォーク系のジョイントベイトが売れてたりするとこがワカランのですが。
今日紹介するアカシックペンシルはそんな逆境とも言える時期にリリースされたルアー。
そのチャレンジ精神に共感したのでのんだくれはソッコーで入手。
よっぽど気合い入れて開発したんだろうなという勝手な盛り上がりが抑えられなかったというのが正直なトコなんですがw
アカシックペンシルとは
アカシックペンシルはジークラックとアカシブランドのコラボレーションによって生み出されたペンシルベイト。
ポッパータイプのストラボと同時にリリースされました。
アカシブランドは独自の商品展開だけでなくノリーズの水面兵器も各種設計しているイケてるトップウォーターブランドとして知られています。
アカシブランドが元々のんだくれの好物でもあるので、コラボのニュースを聞いた瞬間に股間に硬化剤を投与されたかの如くテンションMAXにw
アカシックペンシルのサイズ•重さ
そんなアカシックペンシルのスペックは全長90ミリ、自重14g。
オリジナルザラスプークでペンシルベイトの基本を学んだおっさん的にはちょっと小さいんじゃ?という思いも過りましたが、実際に動かしてみたところそれは単なる杞憂でした。
アカシックペンシルの仕様
ダイブしにくいデカ頭シェイプ
まず注目して欲しいのはショート&ファットなボディシェイプ。
浮力を持ったヘッドの下側にラインアイが設置されているので波っ気のあるコンディションでも不用意にダイブする事なく、ロッドからのパワーをロスなくスライドエネルギーに転換してくれます。
ズイールのテラー35がコレ系ペンシルベイトの代表として知られていますが、誰でも簡単に動かせるというペンシルベイトの基本中の基本をド直球で射抜いてきた姿勢に思わずニンマリ。
縦扁平ボディとキールの黄金コンビ
ボディは縦長の扁平ボディを採用することでヒラ打ちしやすくするだけでなく、ベリー側をフラット化してキールを設置することでアカシックペンシルの最大の売りでもあるキレのあるターンと伸びのあるスライドを実現。
ボディ下部にキールを持ったペンシルベイトはTDスラッシュスケーターなど各種存在しますが、そのどれもが機敏なアクション特性を持っているのでその効果は言うまでもないでしょう。
ポップ音とバブルを生む造形
そして地味ながらも忘れてもらっては困るのがこの目とラインアイ周りの造形。
一見どうという事のないどこにでもあるデザインですが、これらの凹みがターン時に艶かしいポップサウンドで楽しませてくれます
そのポップサウンドの詳細は後ほど。
意外とよく響くラトルサウンド
小さめのラトルボールを擁したボディはロッドからの入力に機敏に反応して軽めのシャラシャラ寄りのサウンドを響かせます。
ラトル音は手に持って振るとちょっと物足りない感じがしないでもありませんが、実際に水に入れてみるとうるさ過ぎず静か過ぎない丁度いい調律具合。
ボディカラーによって樹脂素材を変えているらしいのですが、個人的にはノンラトルのモデルも欲しかったなと。
”スラッシュ”という言葉がピッタリのクイックアクション
気になるアクションを一言で表すならばクイック&スムース。
クイックな鋭角ターンと足の長いスライドアクションはスラッシュという言葉をそのまま具現化したような運動性能。
先述の通りヘッド部に浮力があるのでダイブしにくく、テンポの速い連続ロッドワークにもしっかりしっかり喰らいついてくるので、ある種の強かさすら感じるほど。
このパフォーマンスには90ミリというサイズも大いに関係しているとのんだくれは睨んでいます。
ペンシルベイトに限らずですが一般的にルアーはサイズが大きくなるのに比例してダルDullさというか、もっさり感が出て来がち。
そんなもっさり感を出さずにリアクションバイトを誘発する機敏性を担保するにはこのサイズが必須だったんじゃないかと。
もちろん釣れごろサイズというのもあるだろうけど。
そしてそのアクションが創り出す引き波の美しいこと!
この引き波を楽しめる事実だけでバスフィッシングやってて良かったと思えるほど。
トップウォータープラッガーならこの引き波だけでしばらく妄想ネタには困らないでしょうw
ただ引き波を見たいがためにルアーを投げに行った経験はペンシルベイト好きなら誰しも一度はあるはず😁
このアカシックペンシルはそれほど美しいV字波紋を見せてくれるのです。
そしてその引き波に華を添えてくれるのがこの目とラインアイのカップ。
これがイイ感じにポッパーカップの役割を果たしてくれるので、アクションの度に小さなポップ音とバブルを生み出します。
まっすぐ引けばラインアイのカップがブルーギルの捕食音の様なプチッというサウンドを発し、首を振らせればボディサイドと目の凹みがボワンと大きなバブルを作ってくれます。
実はルアーが生み出すバブルはサカナに対して視覚的アピールがあるだけでなく、バブルが弾けた時のプチプチ音も大きなアピールを生むことが知られています。
実際にバズベイトの後に出来る”バブルトレイル(気泡の道)”の効果を説くプロが数多くいることや、かつてはアルカセルツァー(発泡性の錠剤)が仕込めるソフトベイトがリリースされていたことも。
アカシックペンシルはそんなバブルによるアピール効果もしっかり押さえているのです。
そんな艶かしいポップ音とクイックでトリッキーな動きはバスだけでなくソルトでも間違いなく活躍するはず。
それを思うと昔浜名湖のクロダイポッピングにハマってた頃に欲しかったなぁ。
ちなみに気泡によるアピールについてはバブルウォーカーの記事で書いてるので興味のある人はどーぞ。
近年減りつつあるホットタイガー系カラー
カラーは近年死語ならぬ死色となりつつあるマットなホットタイガー、その名もホットタイガーガエル。
かつてオリジナルザラスプークのGRAカラーでイイ思いをした世代を狙い撃ちするかのようなナイスカラーです。
でも残念なのはカラー名のダサさ。
なんというか言葉の響きというかリズムが全然ダメ。
だってホットタイガーガエルですよ。
マットホットフロッグとかもっと分かりやすい名前はいくらでもあるのになぜこの名前???
全然アカシブランドらしくないんですよね。
あ、もしかしてこれはジークラックのセンス?w
そしてちょっと物足りなさを感じたのは、カラーチャートにパープル系がラインナップされていなかった事。
これは完全に個人のワガママだけど、ズイールでいうところのMPやヘドンのCCMQ系のカラーは外して欲しくなかったなー。
もし新色を追加することがあるなら是非とも検討して欲しいなと。
フックは変則#5サイズを装備
フックは前後とも#5サイズを装備。
ちょっと前までは#5サイズは変則ゆえ交換するフックの選択肢が少なかったけど最近は各社からリリースされてバリエーションが増えたので好みのセッティングが楽しめるようになりましたね。
ルアーとしてのポテンシャルが高いのでシングルフックやフェザードフックにした際の挙動変化も見てみたいところです。
そして意外と見落としがちなのが、このサイズのルアーにしては太いワイヤーのエイトリングを採用している事。
岩盤や護岸ギリギリに撃ち込む事が多いアングラーにとって、ぶつけても潰れにくいフックハンガーは地味に嬉しいポイント。
フックが常に下方向に向くリギングはルアーの姿勢回復とクイックなターンに一役買っているのは言うまでもありません。
性能を台無しにするネームプリント
しかし残念なのはネームプリントが究極にダメダメなこと。
背中と腹のダブルスタンプなのに両方とも小さな文字のメガバス系でローガンGGYには読めやしねぇ。
しかもベースのカラーとダブらせちゃう無神経ぶり。
パッケージには超ナイスなロゴがあるのになぜそれを使わん!
近年は中古でお試し購入して良かったら新品を購入するという流れが定着している中、ネームプリントの存在意義を忘れたかのような対応はマーケティング的にもよろしくないんですよね。
これは個人的にルアーの性能を帳消しにしてしまうぐらいのマイナスポイント。
そもそもこのロゴをデザインした人が見たら、え?ルアーには使ってくれなかったの?ってなっちゃいますよねw
どーでもイイ事ですが、AKASICK PENCILという名前を分解するとA.K.A. Sick Pencil(As Known As Sick Pencil / サイコーにヤバいペンシルベイトとしてお馴染み)というネームオタならではの要らん深読みも出来る事をお知らせしておきます。
定価でも入手するべし
そんなネーム以外はサイコーに使えるアカシックペンシルですが、中古屋ではまず見ないので定価購入するのが一番手っ取り早いでしょう。
そしてもし「中古で安いのを見つけたら買おう」と思っているならば、すぐに考えを改めるべき。
なぜならコストが原因でこのポテンシャルを体験できない事を考えたらそれは大きな機会損失だから。
更にペンシルベイトであるがゆえ小売店が追加発注するケースは少ないだろうし、実際ジークラック側の在庫状況次第では追加生産しないかもしれないから。
あーアレ買っときゃ良かったなーと言うお約束の状況になる前に静かにポチっておくのが本当の大人買いってモンです(自戒)
おわりに
バスフィッシングが「釣れない釣り」と言われるようになって久しい。
事実、そんな釣りに見切りをつけて他のフィールドに鞍替えしたメーカーやアングラーは数知れず。
しかしそんな中で今もバスを貫いているブランドやアングラーは、釣れる釣れないという単純な要素だけではなく、バスフィッシングが本来持っている ”愉しさ” を追求していると思うのです。
45年以上前、かの井上博司氏監修の下で上梓された日本バスフィッシング史に燦然と輝く名ムック本、「陽気なブラックバスはサイエンスフィッシング」の中にある名文句、
”この愛すべき小動物たちに生命を与えよう”
アカシックペンシルはこの一文を具現化していると思うのです。
釣れなくても動かしてるだけでワクワクして楽しいキモチになれるルアー。
そして動かすことで生命を吹き込むことが出来れば「釣れるルアー」を探し続ける呪縛から解放されて「本当のルアーフィッシング」の楽しみを味わうことが出来るのではないかとガラにもなく大仰な事を思っておる訳でございます。