何年も開けてなかった箱を開いてみたら、その存在を久しく忘れていたルアーが出てくる事があります。
あー!そういえばこれ持ってたわ!となんか得した気分になる瞬間ですが、時として買った記憶がないのはもちろん、持ってたことすら知らなかったルアーに出くわすことも。
今日紹介するザウルスのストライクトッツィーはまさにそんな存在。
先週物置で見つけてちょっと小躍りしてしまったルアーです。
長きにわたってルアーを買い続けてるからこういう事態が起こる訳なんですが、特にのんだくれの場合は引っ越しが多く、その都度奥に仕舞い込んだり他の荷物と一緒にまとめたりを繰り返したので、突然の再会に小躍りすることが割と頻繁に起きるのです。
引っ越しの時に詰めた段ボールが開梱されないままその次にも持ち越されるので、物置の戸を開けるとアリだのパンダだのアヒルだのいろんな動物が一斉に微笑みかけてくるといえば分かってもらえるでしょうか。
このストライクトッツィーはそんな荷物の中から発掘されたのです。
ストライクトッツィーは110ミリ、1/2ozのボリュームを持つダブルスイッシャーです。
今はなきスポーツザウルス社が販売したもので、ザウルス倒産後、紆余曲折ありながらも今も製造されている貴重な存在。
実はこのルアーに関してのんだくれが知っているのはこれだけ😅
ガキの頃、近所にバルサ50の特約店が無くて現物に接する機会があまり無かった上に早い段階からアメルアに走ってたので、いくつか持ってはいるもののバルサ50関連は全くの門外漢なのです。
実際このルアーもザウルス物かトレイン物か分からなかったので、その道のプロに画像を送って見てもらったぐらいwww
しかしストライクトッツィーはそんなど素人でもしっかり受けてめてくれました。
めちゃくちゃイイんですコレ。
何がイイって、この湾曲したペラの水噛みとサウンドが絶妙なんです。
オリジナルとなるホッツィトッツィーはバルサ版もウッド版も持っているんですが、それらとは明らかに違うセッティングに第一投目から目がまん丸に。
オリジナルのペラとは違って、巻きごこちがトルクフルで重いのです。
しかしその重さは決してネガティブなものではなく、巻き始めと同時にググっとティップを押さえ込まれるような、あたかもクランクを巻いているような絶妙なテンションのもの。
めちゃくちゃ水を攪拌してるー!と実感できる、モチベーションが上がる重さなのです。
そしてこのプロップがまたイイ音を出してくれるのです。
ストライクトッツィーのプロップ音を文字にするなら、弱めのジョボジョボ…… に、ポロポロ…. が混ざったバズベイト的なサウンド。
ホッツィトッツィーのボスペラ音は、ショワショワ….. という音をベースにスプラッシュの音が混じるので、音質としては全くの別物に仕上がっています。
オリジナルはオリジナルで良く釣れるのでどっちが良い悪いではないのですが、のんだくれ的には圧倒的にストライクトッツィーの方が好みのサウンド。
そもそもストライクトッツィーは違う音質のものを開発するのが目的だったはずなので、音が違うのは当たり前なんですが、音だけでなくトルク感も変えてくるあたりに則さんのただならぬこだわりが見え隠れしてるような気がします。
しかしこのペラにはちょっと意外なトコもありました。
ぱっと見、リアプロップだけがボス付きになってるように見えるのですが、よーく見てみたらボスじゃなかったんです。
ザウルスのプロップベイトといえばボス付きのペラというイメージを持ってたのんだくれにとっては、これはちょっと意外でした。

ザウルスのボス付きペラ
なんでこんなややこしいセットアップにしたんだろ?と。
しかしそのギモンは水に入れた瞬間に解決したのです。
ボスに見えたパーツは、実はケツ下げの姿勢にするためのバランサーだったのです。
ほんの少しだけテールを下げのバランスにすることでリアのプロップが完全に水面下になるので、僅かな水流でもしっかりと水を捉えてトルクフルな撹拌を生み出せるようになっていたのでした。
もちろんカウンターウェイトとしての役割もあると思うのですが、ストライクホッツィーの瞬時に立ち上がるプロップはこの浮き角、ひいてはこのバランサーあってのもの。
一般的にダブルスイッシャーのリアプロップは、フロントペラが乱した水流の影響から回転の立ち上がりが悪いのが普通ですが、フロントペラよりも先にリアの方から回す事で慣性モーメントの手助けを借りて安定した回転運動を得ようとするあたり、水面ルアーの老舗のプライドが感じられますよね。
フロントよりもリアプロップの方から先に回して回転を安定させる手法はティムコのプロップペッパーでも見る事ができるので、もしプロップペッパーを持ってる人がいたら一緒に風呂に入ってニヤニヤしてみてくださいw

そうそう、肝心のアクション特性のことを書くのを忘れてました。
ストライクトッツィーはどちらかというと直線番長なので、ダイイングフラッターやデビルスホースと同様、首振りなどの多彩な動きは期待しない方がいいです。
一応パッケージには首振りも出来るような事が書いてあったし、実際やれないこともないのですが、首を振らせたいならホッツィートッツィーを使った方がよっぽどストレスなく釣りができますw
なので、基本はストップ&ゴーの強弱と距離、ポーズの長さで変化をつけて誘うルアーと理解すべきでしょうね。
パッケージには強めに引いても水から飛び出しにくくなっているという旨の説明がありましたが、その点についてもちょっと疑問符がつきます。
単に引っ張り方の問題だと思うのですが、風で波立つ水面でジャークすると割と簡単にトビウオになってエビになるので、トゥイッチよりはスィープ気味に引っ張る感じで使うものと思った方がいいでしょう。
とはいえ、そもそもこのルアーは連続してジャカジャカとトゥイッチしまくるような使い方は想定していないので全然問題ナッシング(死語)
あくまでもスロー&ステディな大人の愉しみ方が似合うルアーなのです。
引き応えも絶妙、音も申し分なしとなると、お約束のヲタタイムのはじまりですw
バルサの木目を活かしたナチュラルパロットはファイブオーの十八番とはいえ、なんともいえない美しさがありますよね。
見えるか見えないかぐらいの薄さでブラックのドットを吹くことで、黄色をより際立たせるという色彩マジックが楽しめます。
パロットカラーは一見簡単そうに見えるのですが、実は相当な手練れでないと吹けないカラーでもあるのです。
リギングは他の50バルサベイビーズと同様にヒートン直付け方式を採用。
前二つのフックは#4サイズが装着されていますが、テールのみワンサイズ上げてあります。
先述のウェイトだけでは必要な重量が得られなかったのでフックサイズを上げたんでしょうか。
それともバズベイト的に巻きメインで使った時のフックアップ向上を狙った?
この辺のセッティングは当時の開発設計者に聞かないとわかりませんね。
ルアーの名前は入れずにブランド名だけを残すのがファイブオー一族の掟。
このフォントや刻印にも世代ごとの変遷があるのですが、のんだくれはファイブオーの担当外なので全くわからず。
でもね、世の中には知らなくてもイイ事がたくさんあるんです。
ファイブオーの世代による違いにまでこだわりだすと生還出来なくなる事を、先述の ”その道のプロ” からさんざん聞かされているので、むしろ知らない方が幸せなのですwww
しかしこのプロップ、ホント手間が掛かってますよね。
ボスペラよりも厚みのある素材にロゴを刻んで微妙なアールを施すのはなかなか骨の折れる作業だったはず。
しかも前後で回転方向が違うので、2種類制作しなければなりません。
もしかしてこういうこだわり、つまりコストが積もり積もったことでザウルスは倒産に追い込まれてしまった?とさえ思えるほど。
ザウルスの実態がどうだったのかは知る由もありませんが、ルアーに限らず消費者がモノに求めるクオリティをそのまま実現しようとすると、”売れる価格”だと大赤字どころか首を絞めることになってしまうのがモノづくりの現実。
その中で利益が出せるラインを見極めるのがビジネス手腕ということになるのですが、ルアーは相手が自然である上にアングラーの妄想にも応えねばならず、数学のように明確な解が得られないままズブズブと迷宮にはまりがち。
それを思うと、ルアーの出来具合にあーだこーだと好き勝手言えるという事がいかにシアワセな事であるかが良くわかりますね(自戒)
なので、買ったルアーを仕舞い込んでその存在を忘れちゃうなんて言語道断なのであります😅
とまあ好き放題に書いてきましたが、このストライクトッツィーをひと言でいうならば、ひとつは持っておくべきルアー。
例えトップウォータープラッガーでなくとも押さえておいてソンはないでしょう。
だってどんなに遅く引けるバズベイトよりも遥かにスローに巻けるのにバズのポロポロサウンドが出せるんですから、使いドコロは無限にあると思いません?
しかし問題はその供給量。
特約店でないと現物が見られないということもありますが、ファイブオー関連商品の生産を担っているザウルストレインにも紆余曲折あったようで、いつでもどこでも買えるという状況ではありません。
こういう側面を見るとルアー製造販売の難しさを感じずにはいられませんが、トレインには是非とも頑張ってもらって供給し続けてもらいたいですね。
そして則さんが提唱してきたスロー&ステディスタイルを守るためにも水面アングラーが一丸となってザウルストレインをサポートすべきだなぁと思うわけでございます。