ズバリ結論から言いましょう。
このグッピーはスゲーです。 持ってないと損するヤツです。
古今東西、クランキンミノーという肩書きを持つルアーは幾多あれど、ミブロが放ったこのグッピーは従来のクランキンミノーは一体なんだったのかと思えてくるほどシビれるパフォーマンスのルアーです。
近年のんだくれがシビれた国産ルアーのトップ5に入る逸品です。
ミブロはご存知 KTW Lures の塚本謙太郎氏が提案する新ブランドです。
玄人好みのクランクベイトで定評のあるKTWの血統を持つバレットヘッドやチーターなどホットなクランクベイトがラインナップする中、”タダ巻きで使えるミノー” というコンセプトで登場したこのグッピーの存在が気になり、ポチったのが馴れ初めでした。
なにしろ “クランクベイトを得意とするブランドが出すミノー” ですからね、嫌でも期待は高まります。
このミノーの特徴はご覧の通り、特徴のあるテールの造形です。
見ようによっては不格好ですが、一般的なスリムシェイプのミノー/ジャークベイトの最大の弱点mである “飛距離” に不満を持ってるアングラーなら誰しもビビッとくるものがあるはず。
そのキャスタビリティは ” Cast a MILE! ” の一言。
実測19.5gのウェイトが16lbナイロンを引っ張って飛んでゆくその姿はスカッドミサイルそのもの。
これはテールのボリュームがもたらす空気の整流効果もあるのではないかと。
さらにオリジナルザラスプークのアピアランスにも負けない全長110mmのボディですから、ミノークランキングが大好物ののんだくれの琴線は弾かれまくりです。
ボリュームがあるのは長さだけじゃありません。
比較のラトリンログ ADRB1200 との比較でお分かりのとおり、横幅もでっぷりとした体格。
ログの最大幅13.3mmに対してグッピーは16.4mmと、こちらも横綱級に仕上がっています。
このボディ容積ですから当然浮力もしっかり確保されているワケでして、ボディの1/3を水面から出してまるでネス湖のネッシーのようにしっかりと浮いてくれます。
文字にするとピンとこないかもしれませんが、実はこの力強い浮力はクランキンミノーにとっては非常に重要なのです。
のんだくれは内外を問わずあらゆるクランキンミノーを投げて来ましたが、正直なところコレだ!というものにほとんど出会えていません。
何故なら、それらのほとんどは “クランキン” を謳ってはいるものの、巻き性能とジャークベイトとしてのダート性能も両立させようとしてるので、どっちつかずで中途半端になってるものが多いのです。
ボディはできる限りスリムな形状にした方がダートさせやすい、しかしスリムにすると自ずとボディ容積も小さくなり、”浮力が足りないがゆえのアクションの弱さ” が露呈してしまい、巻きのミノーとしては成立しにくくなるのです。
のんだくれの知る限り、この条件を押さえているルアーはコットンコーデルのレッドフィンぐらいで、国産ではほとんどお目にかかれません。

さらに嬉しいのは、このグッピーはリトリーブを止めるとボディをユラユラさせるシミーアクションで浮上してくれること。
これは浮力があるルアーだからこそできる芸当ですよね。
クランクベイトを止めてユラユラ浮かせたらゴン!ときたという経験はクランカーなら誰しもあると思いますが、あれがミノーシェイプのルアーでも楽しめるのは大きなアドバンテージではないかと。
そんな大きな容積のコントロールを任されているのが、この角が大きく張り出したデルタ形状のリップです。
速巻きのクランクベイトとして有名なスピードトラップを彷彿とさせるリップ取り付け角がクランキンミノーであることを物語っていますね。
画像では確認しづらいのですが、リップ裏をリブで補強する事でリップラップや斜め護岸に当てても折れないよう配慮されているのもハードクランカーには嬉しい配慮。
ルアーを障害物に当てたら突然ノー感じになってスルスル戻ってきてしまうあの虚しさったらありませんからね😭
この辺は数々のクランクベイト設計を手掛けてきたノウハウが生きてますね。
気になるウェイトは3ウェイト+ラトルの固定重心方式を採用。
ヘッド部にスモールラトルを内蔵し、固定小ウェイト、専用低重心ウェイト、フックを固定するためのネオジム磁石が配置されています。
ラトルサウンドは小さくカタカタと響く、よくあるミノーらしいサウンドに調律されています。
ミノー/ジャークベイトのラトルサウンドを好まないアングラー向けのセッティングなのかもしれませんが、ミノーでもジャラリと騒々しくやりたいのんだくれ的にはちょっと物足りない感じ。
上部に設置された謎の円筒チャンバーにグラス&ブラスラトルを詰めこんだノイズメーカー版のリリースに期待したいところです。
内蔵のネオジム磁石はかなり強力で、リトリーブ中はこのポジションにしっかりと固定されます。
フックをボディに固定する事でウィードを拾わないようにとの役割を持たされたこのシステムですが、実際に使ってみるとそれ以外の効能もあることに気付きます。
まずひとつ目はフロントフックがラインを拾ってしまう、いわゆる “エビ状態” が防げること。
それともうひとつは、––– 実はコレがスゴいんですが ––– 底べったりのザリガニ巻きがストレスなくできること。
実はミノークランキングのメソッドのひとつに砂煙を上げながらシャローボトムを巻くというのあるのですが、そのメソッドを実践しようとすると根掛かり回避のためどうしてもロングビルミノーを使わざるを得なくなります。
しかしこのグッピーのようにフロントフックが暴れないようにしっかり躾けられていると、ショートリップでも根掛かりを恐れずにザリガニ巻きが出来るようになります。
ロングビルミノーとショートリップのアクション特性の違いはもう言うまでもありませんよね?😁
そうなんです。
今まではロングビルのアクションでしかシャローボトムを探れなかったのに、このグッピーの登場によりボトムでショートリップのアクションを使えるようになるんです。
これでグッピーのカラーチャートにクローフィッシュ系のカラーがラインナップしている意味が分かりますよね?
フックは近年話題のイチカワフィッシングのものが標準装備されています。
正直のんだくれはこのフックの性能を思い知るほどの経験はまだしていませんが、フックポイントの鋭さはいうまでもなく、平打ちワイヤーの精悍なルックスもあってメーカーのヤル気を感じますね。
イチカワフィッシングはリッククランとのタッグによるクランクベイトもリリースして今後さらなる躍進が期待されるブランドだけに、こうしてお試し的にフックが標準装備されているのはユーザー的にも助かりますよね。
肝心のネームプリントはデザインロゴが腹に入っています。
しかし残念なのは、ミブロのロゴやブランド名がどこにもないこと。
近年ネット通販やeBayの進化により日本国内だけでなく海外でもJDMルアーを入手する機会が増え、さらにアメリカでも中古ルアーを扱うショップが増えてきています。
それは日本のように中古釣具屋でルアーを見て、どこのブランドだ?なんて名前だ?と調べるシチュエーションが今後アメリカでも出てくるということを意味しています。
事実のんだくれの元にはアメリカのコレクターやユーザーから国産ルアーの名前や詳細を教えてくれというメッセージが数多く舞い込んできています。
中古釣具からルアーを知ってプロパーを買い求めるという流れもあることを思うと、”どこの誰なのか” という素性を明らかにしておくのは今後のワールドスタンダードになるのではないかと。
そうそう、巻きのミノーとしてのノー書きばかりをタレてきましたが、ジャークベイトとしての性能もなかなかのものです。
ただしそれは一般的なジャークベイトが持っているダート性能としてではなく、”水をかき回すボルテックス” の性能のお話。
このボリューミーなボディが水中で動く時の水攪拌力は相当なもので、それはこのグッピーを水面近くで動かせば一目瞭然。
水面に湧き上がってくる美味しそうなモワモワがアングラーのモチベーションもアゲてくれます。
しかし気になるのはこのグッピーをショップの店頭でほとんど見かけないこと。
このちょっと変わった見た目で仕入れを躊躇してるショップが多いのかもしれませんね。
ネットで買えると言われればそれまでかもしれませんが、釣れるルアーが “お店で” 選べない状況もなんだかなーと。
というわけで、クランクベイト好きなら持ってても絶対に損しないミノーなので、同行者に爆釣されて地団駄ステップになる前に是非。