時速20マイルでも泳ぐ高速安定性 日本では本来のコンセプトが理解されなかった不遇のミノープラグ ファストラックミノー Fastrac Minnow FT20 / レーベル Rebel

ジャークベイトプラドコ Pradcoミディアム・ロングビルレーベル ルアーズ Rebel Lures

80年代は洋楽が最も華やかだった時代と言われている理由に、数多くの新ジャンルが登場したことが上げられます。

ヒップホップにニューロマンティック、NWOBHM、テクノにAORと新しいものが次々と登場し、そしてそれらが後の音楽に大きな影響を及ぼしたことからGolden Decade(黄金時代)なんて呼ばれたりもしていましたね。

そして80年代はアメリカンルアーフィッシング界においても黄金時代でした。

今のようにプラドコやラパラが覇権を取っていなかったこともあり、各ブランドが鎬を削る戦国時代が続いたことで毎年のように大量の新製品が登場し、そのうちのいくつかは後のルアーマニュファクチャリングに大きな影響を与えたのです。

今日紹介するファストラックミノーもそのうちのひとつ。

日本ではほとんど話題にもなりませんでしたが、向こうではひとつのカテゴリーになっているミノーの金字塔です。

ファストラックミノーはご存知レーベルが満を持して市場投入した、ファストラックシリーズの一員です。

ファストラックシャッド、ファストラックウィRと共にファストラック三兄弟でデビューしました。(のちにクローフィッシュ、ジョインテッドミノーが追加)

Rebel’s Prince of Speed (レーベルのスピード王子) というコピーを大々的に掲げ、どれだけ早くリトリーブしても泳ぎが破綻しないことを不自然なほど強調していたので、その背景にはもしかしたらクランクベイトコーポレーションのスピードトラップに対して脅威を感じ、そして牽制する意味があったのかもしれません。

プラスチックルアーのシマで勝手なことすんじゃねーよ、老舗の実力を見したるわ!的なw(妄想含有率80%)

ファストラックウィR Fastrac wee R /レーベル Rebel *追記アリ
これだけレーベルのルアーをアップしていながら、レーベルが力を入れてたファストラックシリーズのフラッグシップモデルともいうべきウィRをアップしていなかった事に気付いちゃったので、今日は80年代の彼方からこのファーストラックウィ...

 

さてさて。

ファストラックミノーは全長115ミリ、12.5gのフローターダイバーです。

ファストラックシリーズの中ではトローリング担当として開発されました。

当時の広告によると、最大時速20マイル(32km/h)で引っ張っても全く問題がないことをアピールしていたことから、レーベルとしては相当な自信作だったのではないかと。

そしてこのレーベルのスピードへの執着は、PNW(パシフィックノースウェスト地区)を中心としたサーモンアングラーやウォールアイアングラーに熱狂的に受け入れられることになるのです。

ファーストリトリーブへの順応性のキモとなっているのはやはりこのファストラックリップ。

通常のミノーのリップとはちょっと違うデザインになっていますが、このリップには元となったであろうモデルが存在しています。

それはレーベルが70年代終わりから90年代末までソルトウォーター向けににリリースしていたジョーブレイカー Jawbreaker というトローリングミノー。

ジョーブレイカーはバラクーダなど歯の鋭い魚のアタックでも壊れないことを売りにしていたルアー(魚のアゴを壊すほどの堅牢さという意味からジョーブリーカー)ですが、高速リトリーブへの順応性が高いルアーとしても知られていたので、おそらくこのリップのコンセプトをフレッシュウォーターにも応用したのではないかと。

アクションは非常にタイトなウォブリング。

リトリーブを開始するとゆったりとしたローリングアクションでボディを揺らし始めますが、スピードが上がるにつれてピリピリとしたアクションへ移行してゆきます。

日本でファストラックがデビューした当初は ”リトリーブスピードでアクションが変わる” と謳われていましたが、それはおそらくこの変化のことを言っていたんでしょうね。

でもピリピリとしたタイトなアクションで泳がせるにはかなりのスピードで巻かねばならないので、当時のタックルやフィッシングスタイルではその変化を実感することはほぼ無かったと思われ。

バスフィッシングで使う場合にはジャークベイト的にロッドアクションで演出することも可能ですが、ジャークしてラインスラックを出すと、前につんのめるような挙動のままケツ上げの姿勢で急浮上するので一般的なジャークベイトとしてはちょっと扱い辛いですね。

なので、トローリング以外ではタダ巻きか、リッピング気味にロッドを長くスイープさせては浮かせて… の繰り返しで使う人向けと割り切った方がいいでしょう。

ファストラックミノー(左)とファストラッククローフィッシュ

その点、ファストラックウィRやファストラッククローフィッシュはキャスティング用として開発されているので、通常のクランクベイトとまったく同じように違和感なく仕上げられています。

80年代レーベルお得意のGフィニッシュにナチュラルプリントを被せた当時最先端のフィニッシュを投入していますが、バスフィッシングよりもサーモン/トラウトフィッシング市場での評判が圧倒的に高かったこともあり、この手のバス向けカラーは割と早い段階で姿を消してしまいます。

その後、Dr.ローレンヒルが提唱したカラーセレクター理論 Color-C-Lector の盛り上がりにより、一旦はカラーセレクターシリーズで再び注目を浴びますが、結局定番のクロスハッチとファイヤータイガーを除いて、すべてサーモンカラーにシフトしてしまいました。

そんなこともあってバスフィッシングの世界ではほぼ注目されることはありませんでしたが、逆にサーモン/トラウトのトローリングでは不可欠な存在となったのです。

遠い昔カナダでトラウトトローリングをやったことがあるのですが、ガイドが自慢げにファストラックミノーを見せてこのルアーは最強だぜみたいなことを言っていたのがとても印象的でした。

ファストラックミノーの大ヒットを見たラパラが対抗馬としてプラ製ロングリップのフローティングマグナムを出した、という噂話を聞いたことがありますが、あのガイドの言葉を聞く限り本当のことなのかも?と思っちゃいますよね。

ちなみにGフィニッシュは当時エビスコ傘下企業だったコットンコーデルやへドンのルアーにも採用されていましたが、耐久性があまり高くないので使っているうちに画像のように剥がれてくるというか、G塗膜が侵食していくという大きな難点がありました。

特にソルトウォーターで使うと塗装の劣化が激しく、汚くなってしまうので好き嫌いがはっきりと分かれるカラーでもありましたね。

フックはクローポイントの#4サイズを採用。

この時期のレーベルはフックサイズに対してスプリットリングのサイズが不自然に大きかった上に、フックハンガーのエイトピンの穴ともマッチしておらず、フックが不自然な位置でブラブラするものも少なくありませんでした。

同様の事象がコットンコーデルのレッドフィンなどにも見られたのでエビスコ特有の先天的疾患なんでしょうか。

ネームはリップにモールドされたファストラックの文字のみで、ボディには一切表記はありません。

しかもモールド自体も他のファストラックシリーズのようにロゴを使うわけでもなく、まるでコピーしたかのような角の甘いモールド具合というヤル気のなさ。

スピード王子とまで持ち上げてたのに、ここで手を抜いちゃダメだよねーw

そんなファストラックミノーですが、90年代の初めに登場したジョインテッドバージョンにレギュラーの座を奪われ、その後プラドコの合理化政策の餌食?になったのかそのジョイント版も生産を終えてしまいました。

しかし未だにサーモン/トラウトアングラーからの支持は多くあるようなので、やはりそれなりの存在だったということでしょうね。

ジョイント版も含めて出回ってる数はそれほど多くないにも関わらず、中古屋での遭遇率は意外と高かったりするので、気になる方はこまめに探してみるのもいいかもしれません。

でもレイクトローリングでもやってない限りほぼ使うところがないので、正直オススメはしませんけどね😂

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