コンフィデンスConfidence【känfədəns】〔名〕信頼、信用
ルアーフィッシングにおいて最も重要なキーワードですね。
どんなに立派なロッドやリールがあっても、信頼できるルアーがなければルアーフィッシングは成り立たないと言っても過言ではないでしょう。
ズイールルアー御三家の一人、アンカニーチャップはまさにそんなコンフィデンスによって、生き馬の目を抜くバスルアー界をサバイブしてきたルアーではないかと。
このアンカニーチャップをひと言で言うならば、”釣れるトップウォーター” です。
ダーターで釣った事がない人に言わせると、釣れる気がしないルアーの代表みたいな位置付けになっちゃってますが、ぶっちゃけダーター特有の動かし方とか、ややこしい事を知らなくても釣れちゃうルアーです。
しかもタフな状況の時に限ってデカいのを引っ張ってくるという魔力の持ち主。
見た目は釣れそうなオーラがないのに、不思議なほど魚を呼んでくれる不気味な存在なのです。
アンカニーチャップはご覧の通りの超シンプル&超クラシックなシェイプが特徴のウッド製トップウォータープラグです。
ズイール創業当時からのベストセラーであり、ロングセラーであることからもその実績はうかがい知れます。
90年代バスフィッシングバブルの時には法外なプレミア価格が付いていて、画像のRS(リンゴスター)カラーなどは一万円以上で取引されていたこともありました。
アンカニーチャップが釣れる理由はいくつか考えられますが、一番に上がるのはなんといってもこのカップが生み出すサウンドでしょう。
4:1 配分で下顎が大きく突き出たカップにはアールなどのギミックがなにも付与されていませんが、この超シンプルなカップが生み出す音がとにかくヤバいのです。
まず音のバリエーションが多い。
小さな小さなポチュッというサウンドをはじめ、周囲の魚を蹴散らすかのようなゴボーン!といった大音量までラインテンションの加減だけで演出できてしまいます。
しかもどの音にも魚が反応するんです。
その効果はバスでなくともブルーギルの反応を見ればすぐにわかります。
何もないところで小さくコポンとやるだけでギルがボトムからワラワラと湧いてくるのです。
我々人間には分かりませんが、このアンカニーチャップが出す音は生き物が思わず反応してしまうサウンド特性なんでしょうね。
でも ”それギルにしか効かないんじゃないの?” と怪訝に思う人もいるかもしれません。
しかしギルが動くということは、近くにいるバスは必ずその動向を凝視しており、何かのキッカケでバスにもスイッチが入るという基本を忘れてはいけません。
ちょっと話は逸れますが、のんだくれは衝撃的なチート行為で米バスフィッシング界を追放された “幻のランカーハンター” マイク•ロングと釣りをした事があります。
彼のやったことは許されることではありませんが、その話はさておき。
実は彼は元々生物学者で、バスとその環境にいる全ての生物との行動についての学術論文を書くほどの研究者。
釣りをしている間はずーっと、普通の釣りではまず話題にならないであろうお堅いハナシを講義のように喋りまくるのです。

マイク•ロングのガレージ兼Man Caveにて。バスがルアーを追う様子が撮影できるラジコンエアボートの説明中。
太陽光線の入射角が魚の行動に与える影響だったり、流入河川の上流土壌成分がもたらす(彼は水質の事をその成分の違いからスープと呼んでいた)魚の摂食パターンへの影響などなど、専門用語ばっかりで半分ぐらいは理解不能でしたがw、その話の中でギルの行動に対するバスの反応についても話していました。
彼の長ーい話を要約すると、『ギルを食っているバスを釣るための最初のステップは、ギルの注意を引く事だ』と。
”バスはギルが興味を示すものにも本能的に反応してしまう” というのが彼が言わんとするところですが、この話を聞いてのんだくれの頭に真っ先に浮かんだのがアンカニーチャップでした。
そう言われてみればアンカニーってめっちゃギルが反応するじゃん、と。
ギルとバスがこのルアーをどう見てるかは永遠に推測の域を出ませんが、それでもアンカニーの音にギルがめちゃくちゃ反応するのは間違いない事実です。
そしてバスを寄せる力が強いのも事実。
となると、真っ先に考えられるのは、やっぱりこのカップが生み出す音で、中身が詰まったウッド素材ならではの水押しがその効果を後押ししてるんじゃないかと。
そしてアンカニーがすごいのは、そんな小難しい事を考えなくても演出できてしまうところ。
何も考えずゆっくりとトプトプ動かしてるだけで釣れちゃうんですから。
まさに「考えるな、感じろ」の世界なのです。
そして一旦釣れるイメージが出来上がるとそれがルアーに対するコンフィデンスに繋がって良い結果をもたらし、ポジティブなループが続くという相乗効果でまた釣れるようになる。
アンカニーチャップはそのループにハマりやすいルアーなんじゃないかと。
皆さんはどう思います?
コンフィデンスといえば、ズイールルアーではお馴染みのこのダブルフックもそう。
こんなのフッキングしないでしょ!と疑心を持つ人でも一度釣っちゃえば、ダブルフックのメリットを語り出し、終いにゃこれでないと!と言い出すんですから。
要するに信じる事が出来さえすればなんでも釣れるんですよ、ルアーなんて。
じゃなかったらカタチありきのNASCARクランクが釣れるクランクであることを説明できませんから😁

しかしルアーを信じるためには、やっぱり思い入れというか、感情移入できる要素も必要です。
何を持って感情移入できるかは人によって変わりますが、のんだくれの場合は実釣性能とは全く関係ないロゴやネームのひと手間をみると憑依しやすくなります😁
ただの金具ですが、何も刻印がないものよりも手間かかってる感があるじゃないですか。
しかも釣れたとなるとただの刻印が酒の肴にもなっちゃうワケで、思い入れの沼にズブズブとハマっていくというお約束の流れ。
その点においてズイールはエンドユーザーの心を掴むのが上手いブランドですよね。
思い入れといえば、ズイールの感情移入ポイントに塗装の割れを挙げる人も多いですね。
歯形やひび割れでボロボロになったルアーはその分経験や思い入れが蓄積されているという考えです。
割れない塗料、塗装方法はいくらでもあるのに、ウッドの良さを生かすという理由であえて割れる塗装を貫き通すガンコさは一般受けしない反面、この考えに共感できる人の心には深く刺さります。
これもコンフィデンス要素のうちのひとつなんですよね。
共に歩んできた歴史があるから釣れるでしょ!というコンフィデンスを無意識にアングラーに植え付ける戦略。
メーカーの思惑にハマることでルアーに命が宿って、バスを連れてきてくれるなら安いもんです。
ちなみにのんだくれはアンカニーの5/8ozは2000年に発売された艶消しマット塗装シリーズのものしか使いません。
なぜならこれが絶対的に釣れると根拠なく信じてるので。 これもカラーに対するコンフィデンスですね。
信じる者はナントカなんですから😁
この塗装の割れについては未だに賛否両論ありますが、のんだくれはアリだと思ってます。
いや、むしろある程度ウッドが水を吸った方がヌメヌメした動きになると思ってるので、早いとこ割れて水吸ってくれないかなとも。
これって完全にズイールのマーケティング戦略にハマってますよね😂
でもそれでイイんです。
でも冷静に考えると、製造年度ごとのわずかな違いがあるとはいえ、40年に渡って売れ続けてるってすごい事ですよね。
40年間売れ続けてるルアーって、国産で他にあります?
逆にいえば、それはアンカニーがアングラーに強いコンフィデンスを植え続けてきた証であるとも言えます。
ズイールは紆余曲折ありながら今も活動してくれていて、このアンカニーも定期的にリリースされています。
日本のバスフィッシング、特にトップウォーターフィッシングの歴史を語る上で外せないルアーであることは間違いなくレジェンドでもあるので、この先も変わる事なくずっと作り続けて欲しいなと。
え?アンカニー持ってないの?😁😁😀