「時代の最先端」という存在は、大きな影響力がある反面、非常に廃れやすいという側面があるのは皆さんご存知の通り。
しかしその中でも本物とされる物は時間の経過に関係なく生き続けます。
今日のゲスト、ケロールはまさにそんな存在です。
ケロールとは
ケロールはラッキークラフトが90年代終わり(1997年?)にリリースしたトップウォータープラグ。
当時急速に進化していたCAD(コンピューターを利用したデザイン)技術を積極的に利用して開発されたルアーです。
今でこそCADでのルアーデザインは一般的になりましたが、当時はパソコンのスペックも低い上にソフトも超高額だったので、CADによるデザインは資金力のある会社の特権でもありました。
それゆえカタログでは【3D Forming Technology Bait】という、今思えば時代を感じさせる文言でアピールしていましたね。
サイズ・重さ
ケロールのサイズは53ミリ、7g。
ビッグベイトへの抵抗がなくなった今見るとかなり小さく感じますが、当時はこれが釣れごろの一口サイズで、実際めちゃくちゃ釣れました。
そして後に釣れるルアーのお約束でもあるバリエーション展開でJr.サイズも発売されます。
のんだくれはJr.モデルは使ったことありませんが、オリジナルでさえあの釣れっぷりなのでJr.は違法級の破壊力なんだろうなと😁
特徴
当時画期的だった複雑なボディライン
ケロールの特徴はなんといってもこの複雑なボディライン。
近年のルアーに慣れてしまった目で見ると、”一体これのどこが複雑?” と首をかしげたくなりますが、90年代当時、発泡素材ではないインジェクションプラグでこのボディラインを実現したのは画期的でした。
そりゃ3Dフォーミングでドヤ顔したくなるキモチも分かりますw
しかし外見だけで終わらせないのがセイジ・カトウスピリット。
その外見以上にパフォーマンスがスゴいのです。
水をつかみ過ぎない絶妙なカップ設計
まずカップの設計がスバラシイ。
カップ下部以外にエッジを立て、水流をボディの下側へ受け流す設計なので、首振りのレスポンスが超絶クイック。
そしてこのカップはどんなに小さな入力にも反応してポチュッ!と美味しそうに鳴きます。
詳細は後述しますが、このポップ音が最強なのです。
首振りをアシストするウェイトバランス
しかしいくらポップ音が良くても首を振らなければ鳴いてはくれません。
そこで加藤 ”秀吉” 誠司は、カップが最高に良い声で鳴くためのウェイトバランスを実現するため、メインウェイトの後ろにラトルボールも兼ねたスチールと、ヘッド部にグラスラトルの三連星を仕込みます。
これによりややテール寄り支点となり、高レスポンス体質になっただけでなく、前後のラトルがノイズメーカーとしても集中できる環境に。
まさに ”鳴かぬなら鳴かせてみようケロールを” の状態なのです。
気になるラトル音はグラスラトルのシャラシャラとスチールのチキチキが相まった、ニイニイゼミ系?サウンド。
同サイズのポッパーにはない体幅があってその分ラトルが大きく暴れられるので、ノイズもワンランク上の騒がしさに仕上がっています。
ケロールのアクション
強く動かすのはご法度
ケロールは先述の通り高レスポンスの首振りがウリ。
どんなに小さな入力でもしっかり首を振り、小さなポップ音とバブルを生み出します。
実はこの小さなポップ音がケロールのキモであり最大の武器。
ポッパーであるがゆえに大きな音を出したり水のカーテンを作りたくなるのは分かりますが、ケロールが作り出す小さな首振りと小さなポップ音は落水昆虫とそれらを捕食するベイトフィッシュをイミテートするので、他のポッパーでやるような強めのアクションは厳禁なのです。
よってロッド操作も超絶ソフトに。
ロッドはほぼ動かさずにリールのハンドルだけを半周回すぐらいで十分。
ルアー自体が高レスポンスなので、たったこれだけの入力で首を振り、弱々しくポチュッと鳴いてくれます。
そしてその弱い首振りがもたらしてくれるのは、抜群のアピール力。
その破壊力と互角に戦えるルアーはのんだくれの知る限り、アームズポッパーマイクロぐらいしかありません。
当時仲間内で禁じ手とされていたアームズポッパーマイクロ。
45ミリというミニマムサイズながらちゃんと首を振りしてしっかりツバを吐きポップ音も出せる。
バランス的にフックサイズを上げられないので、デカいのが来ると簡単にフックを伸ばされるのが唯一にして最大の難点。 pic.twitter.com/aSJuW6bKhv— ルアー千一夜☆公式 (@lure1001) September 8, 2021
アームズポッパーマイクロのパフォーマンスに関してはこのツイートのリプライを始め、検索すればいくらでも出てくるので各自でどうぞw
ちなみにケロールは強めの入力でもそれなりに仕事はしてくれますが、強めのトゥイッチだと高レスポンス体質が仇となってエビになりやすいので、スプラッシュや捕食音なら他の担当に任せたほうがストレスなく釣りができます。
背中のリブにも役割が
そしてケロールの背中を走る2本のリブにもちゃんとした仕事が割り振られています。
一見どってことのない隆起にしか見えませんが、ポーズ中は常に水面上に出ており、アクション時にはこのリブが水面をかき回すことによって、一般的なポッパーでは出せない複雑な水流を生み出してています。
もちろんそれは飛び出した目玉にも言えることで、これらがあることで通常のポッパーとは明らかに違うアピールをします。
これらの要素をさらっとカエル🐸ちっくな造形にまとめた秀吉の才能には唸るばかりですよね。
タックルセッティングには注意が必要
しかしその最強のパフォーマンスを引き出すためにはタックルセッティングが超重要となります。
ラインはナイロン12lb以下(個人的にベストは10lb)が最低条件で、出来る限りウェイトバランスを変えないためスナップを使わずにループノットがオススメです。
実はスモールマウスに最強のプラグ
ここまで読んでもう気付いてる人もいると思いますが、ケロールはスモールマウスバスに最強のルアーでもあるんです。
ある程度のストリームでも姿勢を崩さずに首振りできるし、なによりデッドスティッキング気味の弱いアクションでもしっかり仕事してくれる。
のんだくれの知人はセミ系ルアーとケロールのローテーションでスモールを釣りまくってます。
ケロールはその可愛いルックスゆえファンシー系ルアーに見られがちですが、実はシリアルキラー級の虫プラグなのです。
ケロールのカラー
ケロールはそんな残酷な本心を隠すかのようにカワイイ系のカラーが揃っています。
このカラーはその名もモモンガw
これ以外にハムスターやカエル系のカラーもありました。
しかしこの記事を書くにあたり久々にラッキークラフトのサイトを見に行ったらさあタイヘン!
知らない間にめちゃくちゃカラーが揃ってるじゃないですか!
のんだくれはシロヒトリカラーを見て ”普通そこ気付くかぁ?w” と瞬殺されてしまいましたw
フックサイズは#8と#10
そんなケロールはフロント#8、リア#10の組み合わせが標準になっています。
もうワンサイズ大きなフックにしたいところですが、フック重量が変わった途端にあのポップ音が出せなくなってしまったので、オリジナルに戻して使用しています。
よって交換の際にはフック重量は要注意項目。
ネームは初期ラッキーらしいシンプルスタンプ
気になるネームは初期ラッキーらしくシンプルに名前だけ。
この時期はまだネームプリントにこだわるという考え方が浸透してなかった時期なのでネームを入れてくれるだけ有り難いと思わなきゃイケマセンね。
可愛いネーミングで女性アングラーを取り込もうとしていた思惑も見え隠れしていて微笑ましくなります。
そういえばケロールはプロモーションに女性アングラーが起用されていましたね。
お名前を忘れてしまいましたが、彼女に限らず当時ラッキークラフトと契約していたアングラー(吉積プロとか)の皆さんは現在何をされてるんでしょうか。
バスフィッシング版 ”あの人は今” があったら見たいような見たくないような。
ついでにバスフィッシング版 ”あなたの知らない世界” も…. いや、これ以上はヤメときましょう😱
おわりに
近年ラッキークラフトを中心に昔のルアーが再注目されてきています。
注目されるのはSNSなどの影響もありますが、大前提として基本性能が優れているという事と、流行り廃りに関係なく生産し続けてくれているからという事情があるのを忘れてはいけません。
本当に良いルアーは時間の経過に振り回されないという事実はヘドンの名品達を見れば明らかですが、それ以前にずっと生産し続けてくれている、つまり入手出来る環境にあるのです。
問屋が幅を利かせ過ぎているという日本特有の流通事情や、本質を見ようとしない市場の影響もありますが、これだけネット通販環境が整備されてきてるんだから、”本物” を持ってるメーカーはそろそろ本腰入れて直販スキームを構築しないとね。
イマドキのルアーを買わなくなったおっさん層の財布のセーフティーロックは、90年代にスターだった名品ルアー達が確実に手に入るというシステムの前では無力に等しいのですから。