のんだくれはガメラの大ファンです。
どのぐらいのファンかというと、平成三部作は封切り日の初回上映を観るため全ての日に会社をズル休みしたぐらいw
小学生の時ガメラのカッコ良さに電流が走って以来、哀しげな咆哮や飛行音を聞くだけでゾクゾクするし、エエおっさんになった今でも ”ガメラは子供の味方だ” というセリフを聞くとウルウルしてしまいます。
ガメラはおっさんの味方じゃないのにw
そんなガメヲタなのんだくれがこのルアーを放っておくワケがありません。
このガメラクランクは1998年、グランダー武蔵でお馴染みのG-MASTERの派生ライン、”スプラッシュヒーロー”シリーズの一員としてリリースされました。
バスフィッシングブーム+コミック人気に合わせて発表されたグランダー武蔵G-MASTERシリーズは、見た目はオモチャなのにちゃんと釣れるクオリティを備えたルアーとして注目を集め、従来の釣具販売チャネルの他にトイザらスなど玩具流通ルートにも乗ったことで空前の大ヒットとなりました。
さらにコミックという架空の世界で完結させずに、ジム村田の ”あのキャラクター” をハメ込んでリアルな世界に繋げるという見事なプロモーションもグランダー人気に拍車をかけました。
そしてヒット作が出れば続編やセカンドラインを出して商品ラインナップに厚みを持たせるのがマーケティングの基本。
そんな流れで行き着いたのが、有名なTVキャラクターをルアー化したスプラッシュヒーロー。
仮面ライダーやマジンガーZのルアーと一緒に登場したので覚えている人も多い事でしょう。
これはキャラクターの版権商品を十八番とするバンダイならでは… いや必然の展開でしたね。
だって当時のバスフィッシングのコア層は ”かつては子供だった人達”。
そんなおっさん層がこれらヒーローに食い付くのは自然の成り行きです。
かくしてのんだくれをはじめ多くのおっさん達はバンダイの思うがまま財布の紐を緩めたと言うワケですw
ちなみに同時期に発売されたゴジラやモスラのペンシルベイトはバンダイのライバル、タカラトミーからのリリース。
おそらくスプラッシュヒーローシリーズに触発されたと思われ。
ガメラクランクベイトはリップから火炎噴射の先端までが90ミリ、ボディのみで50ミリと、ルアーとしては標準的なサイズにまとめられています。
30ミリという甲羅のサイズから計算すると、1/2000スケールということになりますね。
自重は17g強なので、スケール的には… あ、もういい? そうですかすみません。
見た目は可愛くデフォルメされていますが、誰が見てもガメラと分かるその造形はさすがバンダイ。
しかしこのガメラクランクは細部にまでこだわっていて、ファンも納得の作りになっているんです。
ガメラクランクベイトは平成三部作の一作目に登場した、いわゆるG1ガメラの飛行形態をベースに制作されています。
かなりデフォルメされているとはいえ、甲羅のパターンや頭の形、飛行時の手の角度や後ろからも牙が見えるところも再現するなど、マニアでないと気づかないようなポイントまでしっかり押さえられているのです。
当時のんだくれは骨董通りのビリケン商會で販売されていたガメラのガレージキットを持っていたので割とガメラの造形には詳しかったのですが、このガメラクランクはG1ガメラの特徴を見事に捉えており、ちょっとした衝撃を受けました。
当初ガメラのキャラクタールアーが販売されると知った時、どーせショボい作りだろーと全く期待していなかったどころか、むしろ蔑んでさえいたのんだくれでしたが、渋谷サンスイの店頭で現物を見るなり電流が走ってソッコーでお買い上げ。
帰りの東横線ではガメラマーチが脳内ループしてたのは言うまでもありません。
しかも目の表情が素晴らしい。
鋭い目つきを残しながらも可愛くデフォルメするという表現力に完全にヤラれてしまいましたw
バンダイはこのガメラルアーを販売した翌年の1999年に、ガメラをはじめとした登場怪獣のソフビ指人形を発売していますが、その指人形ガメラと各部が似ているので、おそらく同じ原型師が担当したんだろうなと。
とまあこんな感じでバンダイは外見をかなりのクオリティで仕上げてきたワケですが、さすがにルアー製造は本業じゃないから泳ぎはそれなりだよねとタカを括ってたのんだくれにバンダイは新たな衝撃をぶつけてきました。
なんとこのルアー、実にイイ感じで泳ぐんです。
イイ感じというよりも、今まで見てきたルアーとはちょっと異質の、不思議なアクションなのです。
このルアーの動きを一言で表すと、”ラトル音がうるさいサブサーフェス型ビッグバド”。
リトリーブ開始と共に内蔵ラトルをジャラジャラ鳴らし、水面直下をフラフラ泳ぐんですが、その泳ぎが何とも表現し難い動きなんです。
水を掴んだかと思ったらフッと抜けたり、バスオレノのようにリトリーブ軌道がスッと横に振れたりと、良い言い方をすればイレギュラー、悪く言えば安定していない不思議な挙動なのです。
ここまでだったらキャラクタールアーにありがちな不安定さなんですが、このガメラクランクが違うのはリトリーブスピードを上げた時のスタビリティの高さ。
こんな造形なのに、めちゃくちゃ早巻きしてもちゃんと泳ぐんです。
しかもその動きは超タイトなピリピリ系で、なんと軌道が左右に振れるエスケープアピールまで!
その動きが計算の上に成り立っているのか、はたまた偶然の産物なのかは分かりませんが、ちょっとアンバランスなリップ形状や不自然にフラットになってる前足の造形を見ると、もしかしたらバンダイの開発陣はガチで攻めたんじゃないかと思えてくるのです。
本家G-MASTERシリーズのスケルトンナインやぎょろっちが実は激釣れルアーだったというのは当時を知るアングラーならば誰もが知っている事実ですが、もしやバンダイはこのガメラでも本気を出したんじゃないかと😁
そんなパフォーマンスなので、言うまでもなくバスを誘う実力は◎。
投げて巻いてるだけで普通に釣れちゃいます。
いや、むしろよく釣れるルアーに仕上がっていると言ってもいいでしょう。
むむむ… 「夢・遊び・感動」のバンダイ恐るべし。
しかしある程度投げ込んでみたら、その不思議な動きの理由が判明しました。
その理由は火炎噴射を模したこの浮力体にあったのです。
試しにこの浮力体を取ってみたところ、泳がなくなってしまったのです。
いや、一応泳ぐには泳ぐのですが、巻き始めるとすぐに水面を割ってしまうので使い物にならないのです。
おそらくこの浮力体は泳ぎを安定させるためのもので、リトリーブスピードが遅いとアクションの邪魔をして動きを不安定にするけれど、スピードが上がるに連れてスタビライザーとしての効果が出てきて安定したピリピリ泳ぎになるのではないかと。
ここからは例によってのんだくれの妄想ですが、このガメラクランクはキャラクター版権商品ゆえ、造形面で版元の承認を得ないと製品化できないので、ガメラの造形を残しつつルアーとしての動きも成立させるためには無理矢理でもスタビライザーを装着する必要があった。
そこでガメラのイメージを壊さないようにスタビライザーを火炎噴射の形にして、飛行形態にしたんじゃないか、と。
どうです? のんだくれの何の役にも立たないこの推察😂
そうそう、バンダイのヤル気はカラーにも表れていました。
実はこのルアーにもカラーバリエーションがあったのですww
画像のダークグリーンの他に、少しだけトーンが明るいライトグリーンの2色が。
元が元なのでカラーでは変化をつけようがないのは分かるんですが、マニアとしてはバルゴンの冷凍液で凍ってしまったフリーズカラーや、ジャイガーの卵を産み付けられて頭が変色したバージョンも出して欲しかったなと。
いきなり昭和ガメラの設定を引っ張ってくる時点で文句を言うマニアもいると思いますがw
ちなみに冷凍怪獣バルゴンとガメラが戦ったのは琵琶湖大橋の近く。
映像アングルからすると今の堅田漁港あたりなので、そこを通る時はここにバルゴンが眠ってるんだなと思い出してくれるとと大映が喜びます。
腹にはネームの代わりに版権に関する記載がぎっしり。
あまりにも現実的で、バンダイなのに夢も遊びも感動もありません。
せめて GAMERAの一言ぐらい入れて欲しかったですね。
同じG-MASTERでもグランダー武蔵シリーズは Made In Taiwan なのにスプラッシュヒーローシリーズの製造国が日本だったのは大人の事情があったんでしょうね。
フックは#4のワンフッカー仕様。
フッキング性能が良いとか悪いとかを批評するルアーでないのは重々承知の上で言いますが、フッキングはイマイチですw
この手のルアーはその版権料ゆえ定価も高めだったのでいくつも購入できるものではありませんでしたが、今となってはガチ投入用にもっとスペアを買っとくべきだったなと。
中古屋で出会うことがあまりない上に、欲しかったけど買えなかった当時のちびっ子達が探してるのか、オークションなどではビックリ価格で取引されることも。
そして、インスタに上げたガメラクランクを見た米国の怪獣マニアから ”いつかそれをゲットしてみせるぜ” とメッセージが届くなど、ナニゲに海外でも知られた存在でもあります。
さすがにこのガメラクランクが再販されることはないと思いますが、いちガメラ好きとしては、バンダイにはもう一度頑張ってもらって、G1だけでなくG2とG3のガメラルアーを作って欲しいなと切に願う次第でございます。
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