単にヒヨコペラを搭載してるだけでしょ?と思って投げると落雷級の衝撃を受ける問題作 プロップペッパー Prop Pepper / ティムコ Tiemco

スイッシャーダブルプロップティムコ Tiemcoトップウォーター

どノーマルな外見に秘められたとてつもないポテンシャル

新しいデザインや新機能を搭載したルアーが毎月の様に発売されるのを見ているうちに大抵のことでは驚かなくなるのは誰しもあると思います。

時にはおおっ!と思わせてくれるルアーもありますが、それらの多くは形がキテレツなものか、コンセプト自体がイッちゃってるモノで、実際に使ってみると大したことなかったというものが多かったりします。

しかし今日のゲスト、プロップペッパーは形もコンセプトもオーソドックスで奇を衒ってるわけでもないのに、おおっ!と唸らされた数少ないルアーのひとつ。

水面アングラーでなくとも一軍ボックスにシーズン席を確保しておくべきルアーです。

コラボ以上の相乗効果を持ったヤバいやつ

プロップペッパーを知ったのは10年ほど前。

めっちゃ釣れるルアーがある!絶対来るから確保しといたほうがいい!と友人が激推しするので、言われるまま買ったのが馴れ初めでした。

最初のんだくれは、”ヒヨコのドリラープロップが搭載されてるんだよね” ぐらいの印象しか持ってなかったのですが、実際に使ってみたらアゴが落ちました。

なにこれ!ヤベーやつじゃん!と。

ノーマルな外見に込められたアブノーマル

プロップペッパーは全長100ミリ、16.5gのタダ巻き系スイッシャーです。

大きなプロップとリアフックのない2フッカーであること以外は特に目立った特徴もなく、同じ様なルアーを持ってたらスルーしてしまいそうなぐらい、ごくごくフツーのプロップベイトです。

それ故、のんだくれもあまり気にしてなかったのですが、このルアーには実際に使ってみないと分からないキモが、まるで天下一品の鶏ガラスープのようにどろりと凝縮されていたのです。

いい意味で予想を裏切るヒヨコペラ

プロップペッパーという名前の通り、このルアーの最大の特徴はこの分厚いペラ。

ヒヨコブランドとのコラボで… という前振りから、のんだくれは勝手にドリラーのイメージを抱いていましたが、その先入観は見事なまでに裏切られました。

プロップペッパーのウリの一つがこの四角穴プロップです。

ペラ穴が角張っていることでカタカタと鳴るのは基本的にドリラーと変わらないので、このプロップが使いたかったからヒヨコブランドとコラボレーションしたものだとばっかり思ってました。

が、実は全く違ったんです。

これはヒヨコの山科氏がドリラーペラで取得した特許要件の抜粋ですが、説明書きを読むと、軸孔2aは、長方形、平行四辺形、菱形、瓢箪形、又は楕円形とすることができる。とあります。

ん? 特許要件には四角穴がないじゃん。

つまりプロップペッパーの四角穴ペラは、ヒヨコブランドの特許要件には該当しないペラだったのです。 注)後述追記参照

そうなってくると、疑問が浮かんできます。

特許要件に抵触しないにも関わらず、なんでヒヨコブランドとコラボしたの?と。

ヒヨコブランドの特許であるドリラーペラをそのまま採用したとばかり思ってたのんだくれの頭の中は???だらけでしたが、そのギモンは実際に使っていくうちになんとなく理解できたような気がします。

それはまたのちほど。

類を見ないカタカタサウンド

特許云々の話は一旦置いといて、このプロップは本当によくできています。

大きめの四角穴によってルーズに取り付けられたプロップは、わずかな水流にも敏感に反応してデッドスローでもしっかり回ってくれる安心設計。

そして四角穴が期待を裏切らない仕事をしてくれるので、回転と共にカタカタといい音を奏でてくれるんです。

しかもその音量がなかなかのもの。

これは四角穴のサイズもさることながら、回転によってシャフトが穴の角を越える度に確実にクラッキングサウンドを発する様にプロップ重量を計算されているからこそ出せるサウンド。

穴の角を超えた時のカクンと落ちる衝撃をプロップ自体の重量によって増幅しているのです。

緻密に計算されたプロップ重量

プロップの重量を測ってみるとペラ単体で1.98g。

他社の同サイズプロップの重量が1.3〜1.5g程度なので、25〜35%以上重いプロップになっているのです。

ルアー総重量が16.5gなので、そのうちの約1/4をプロップ重量が占めてるってなかなかですよね。

つまりそれだけプロップのウェイトが重要な要素になっているんです。

でもただ重いだけじゃありません。

このペラはデッドスローからファーストまで、回転速度に関係なく確実にカタカタサウンドを発するところがキモ。

過去にドリラーも含めて複数の異形穴プロップのルアーを投げてきましたが、どのスピードでも安定してノイズを発するのはこのプロップペッパーぐらいのもんでしょう。

しかもこの分厚いプロップはぶつけたぐらいでは全く変形しない強さを備えているのが岩盤/護岸撃ちマニアには嬉しいところ。

0.8mmというプロップの厚みとその重量が生み出すメリットは伊達ではないのです。

プロップのコンセプトを活かす浮き姿勢

プロップペッパーのスゴいところはプロップだけに留まりません。

実はこの浮き姿勢にも釣れる秘密が詰まっているのです。

浮力を抑えた設定によりバイトを取りやすくなっているとのカタログでは謳っていますが、それよりもシビれたのは斜め浮きであるところ。

テール下げの姿勢でリアプロップを完全に水面下にして浮くことにより、水流を無駄なく回転エネルギーに変えられるので、初動からタイムラグなくリアプロップを回せるのです。

こう書くと、一体それのドコがスゴいの?と思うかもしれませんが、一般的なダブルスイッシャーはフロントプロップが水を掻き乱す影響でリアプロップの立ち上がりが非常に悪いんです。

ほとんどのダブルスイッシャーのリアプロップは、ある程度加速して水流が安定しないと回りません。

しかしこのプロップペッパーはリアの方が先に回り始めるので、その後でフロントが回り初めて水流を乱しても、リアプロップは慣性の法則で安定して回り続けるというシビれる設計になっているんです。

これは岩盤の割れ目や奥行きのない水門のエッジなど、プロダクティブゾーンが極端に短いエリアでも確実に二つのプロップを回してカタカタ鳴らせることを意味しています。

つまり今までは移動距離が短いポッパーやペンシルの独壇場だったスポットでもデッドスロー系プロップベイトの威力を最大限発揮できるということ。

これに気づいた時、のんだくれはちょっとした衝撃を受けました。

これだけのパフォーマンスが2,000円もしないなんて、すげー事だと思いません?

フック交換はちょっとだけ注意を

フックはブラックニッケル#4の殺気消し仕様。

前後のフックが干渉しない様にフックハンガーは横アイ方式を採用していますが、このプロップペッパーは細身ボディで横アイのルアーにありがちな、ルアーがフックを背負ってしまう事象が起こりにくくなっています。

よってフックを交換する際には、斜め浮きの姿勢を崩さない事とフック背負わない様にフックの重量と形状には留意したいですね。

フックを選ぶルアーというと、ちょっと扱いづらい印象を持つ人もいるかもしれませんが、これは車でいうところのサスペンションと同じ。

車のサスペンションは乗り心地と挙動をコントロールするのに重要な要素ですが、気にしない人は全く気にしないし、逆にこだわる人はタワーバーまで入れたりと徹底的にこだわります。

その点ではフックも変わりません。

姿勢が変わっても気にしない人もいれば、フックのゲイプやスロートにこだわる人もいて楽しみ方は人それぞれ。

でもメーカーが徹底的にテストして釣れる要素をMaxまで引き上げてあるなら、いい意味でそれを鵜呑みにするのも悪くないですよね。

感情移入少なめの抽象フィニッシュ

ボディ表面は控えめなスケールと側線だけの程よい抽象感。

のんだくれは過度に作り込んだフィニッシュがあまり好きではないので、ティムコのルアーに共通した感情移入少なめな感じがちょうどイイですね。

ただスケールパターンを背中まで入れてしまうとフックによっては引っかかりやすくなるのでここは改良の余地アリかと。

事実このプロップペッパーも時々リアフックを背負うことがあります(すぐに取れますが)

近年再販されたことによりカラーバリエーションも大幅に増え、マズメ時に見やすいピンク系がラインナップしているのは嬉しいんですが、何も彩色されていないクリアのカラーがないのは寂しい限り。

下から見上げてルアーのシルエットが見えない(であろう)クリアカラーのタダ巻きが効くのはへドンのウンデッドザラで実証済みなので、今度クリア系のペイントを剥がしてみようかと思案中。

リアフックが無いことで得られる大きなメリット

テールのフックを取り払った潔さもプロップペッパーの特徴のひとつ。

ミノーやジャークベイトのように追い食いされるケースはそれほど多くありませんからね。

リアフックをなくした事でカバー際に撃ち込んだ時に水面直下まで伸びたウィードなどを拾ってしまうストレスからも開放されます。

浮力を殺したルアーだけに、そのあたりの使い心地までちゃんと考えられているのが嬉しいですよね。

ちなみにのんだくれにこのプロップペッパーを激推しした友人は、このヒートンにフェザー”だけ”をセットして、ポーズ中もアピールできる仕様にして使っています。

大和魂が込められたコラボネーム

堂々としたネームとヒヨコブランドのロゴマークがこのルアーの実力を物語っています。

最初は単にヒヨコの特許ペラを使いたいがためのコラボレーションだと思ってましたが、ドリラーで培ってきたヒヨコ山科氏の長年のスキルとティムコの開発力がなければプロップペッパーはここまでの完成度にならなかったでしょうね。

山科氏も特許取得後に新たに気づいた事も沢山あるだろうし、ティムコには長年蓄積してきた総合的なデータがあるわけで、これらをもう一度ゼロから組み立てるという真のコラボレーションだったと。

これはのんだくれの勝手な想像ですが、ティムコは四角穴ペラをベースに特許を取ろうと思えば出来たと思うんです。

でもそれをしなかったのは、開発や特許取得の手間を省くという実務的な事よりも、ヒヨコブランドにちゃんと義理を立てて筋を通したかった部分もあるんじゃないかと。 注)後述追記参照

他社の意匠を使ってシレッと新製品を出しちゃうブランドも多い中、こういう義理堅いスタンスはおっさんの心を揺さぶりますよね。

ティムコとヒヨコのコラボネームにはお互いをリスペクトする大和魂が込められているのです。

プロップペッパーが米国で火を吹く日は近い?

いつだったか米国出張の時、向こうの友達にプロップペッパーをプレゼントしたことがあります。

こうしてスローにチリチリ巻くとめっちゃ釣れるんだぜ、と彼に教えたんですが、スパイベイトもまだブレイクしていない時期だったこともあり、釣れる気がしないのか彼はすぐにギブアップしてしまいました。

アメリカ人にはデッドスローで使うクローラーがウケないので、おそらくプロップペッパーもそれと同じ感覚なんでしょうね。

そういう意味ではこのプロップペッパーは非常に日本的なルアーと言えますが、我々日本人もバズベイトが釣れるルアーだと理解して市民権を得るまでに長い年月が必要でしたから、向こうでデッドスロー系プロップベイトがブレイクするのは時間の問題かもしれません。

いつかこの四角穴サウンドのとてつもない破壊力におののく米人が出てくるかと思うと、日本人としてはちょっと誇らしい気分になりますね😁

 

2021.05.25 追記

この記事を読んだ方からSNSやDM、電話など複数の報告や指摘を頂きました。

その内容は当ポスト内で記述したティムコとヒヨコブランドとの関係性について。

それぞれの立場もあるでしょうが、どうやらのんだくれが想像していた事と実際の経緯は違ったようです。

大勢の意見を要約すると、どうやらティムコが ”やらかした” っぽいですね。

又、ヒヨコブランドが取得した特許要件に “軸孔は平行四辺形…” とありますが、この定義には正方形も含まれるので、のんだくれの解釈が間違っていた点も併せて報告いたします。

尚、この件に関して本文修正・削除はしませんので、この追記も含めて文面通りに受け取って頂ければ。

とはいえプロップペッパーが釣れるルアーであることは変わりないので、今ゲットしないのは大きな機会損失になりますぞ。

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