キングダグ / ABTルアーカンパニー

一度でもハンドメイドルアーに入れ込んだ経験がある方ならば、ルアーを開発していく過程で、他のルアーのアイデアを思いつくなんて事ありますよね。

そんな思い付きをそのまま形にしてしまったのが、このキングダグ King Dawgペンシルベイト。

ABTルアーカンパニーの水面部隊長です。

USブランドのルアーにはよくダグ Dawg という名前が使われますが、これは犬の ” DOG ” の南部訛りをそのまま表記化したものです。 南部訛りというよりも南部の黒人訛りですね。

日本では輸入元がしっかりとカタカナ表記を指定してこなかったせいもあり、同じルアーでもドウグ、ドーグ、ドォグなどなど、いろんな呼び方が蔓延してます。

実際は ドゥグ と ドォグ の中間ぐらいの音になるので、ネイティブの発音だと【 ダァグ 】に近い感じになります。
 
でもカタカナ表記ではなかなか難しいのでドーグでもダウグでもデェミット!でもお好きな読み方でどうぞ。

なにしろ日本には あのバイユーブギー Bayou Boogie を堂々と「ベイヨンボギー」と表記してた書籍も有ったぐらいですからね、もうほとんど昔の洋楽の邦題タイトルと同じ路線ですよ。

シャバランクスのアルバム AS RAW AS EVER(今まで通りクールにいこうぜ的な意)の邦題なんて、【生でヤリたい】ですからね、あれを見たときは広報担当者はホント早く死んでくれと思いましたよ。

それに比べたらそんなルアーの表記の揺れなんてちっぽけなもんです。

アメリカ人はこの手の言葉遊びが大好きで、似た様なルアー名は山ほどあるので、おかしな表記だなと思ったら調べてみると、なるほどね!な事が沢山あります。

ミロルアーのPOPA DOGも日本ではポパドッグと紹介されている事が多いんですが、実際にはポッパーの発音をそのまま表記したものですし、PAPAと書かれている物もお父さんのパパではなくポッパーを意味する物が多いですね。

開始早々いきなり話が脱線してしまったので軌道修正しましょう。

このルアーは、あのウネウネ泳ぎのバンシースイムベイトを開発中に気付いたある事にインスパイアされて誕生しました。

その 【 ある事 】 とは、ルアーがターンする時に出すスプラッシュ。

バンシースイムベイトの試作品の中にフローディングのモデルがあり、それが水面でターンした時に出すスプラッシュが、ベイトフィッシュがプレデターに追われて逃走する時に水面で発する飛沫とそっくりだった事に目を付けたのです。

その後、ありとあらゆるジョイント方式を試して、生々しいスプラッシュを出すため最後に行き着いたのがこの2連ジョイントのボディでした。

ジョイントボディを採用したペンシルベイトは既に数多く出回っておりますが、それらのほとんどはジョイント化することで発生するイレギュラーなアクションを主眼に開発されています。

しかしこのキングダグにおいては、ジョイントボディ特有のイレギュラーな要素は影をひそめています。 いや、むしろ消しているのではないかというぐらいの律儀なアクションに仕上げられました。

その理由は、先にも述べた通りスプラッシュを確実に発生させるため。

従来のペンシルベイトでもスプラッシュを出すことは可能ですが、それはヘッド部もしくはボディサイドで水を弾き飛ばす方式で、デザイナーのアレン曰く、ヒレのような薄いものが飛ばすスプラッシュとは根本的に違うんだそうな。

そう言われてみれば、ひとつの塊と薄い構造物とでは水中で動いた時に発する水流変化も違ってきますよね。

そんな理由から、キングダグにはこーんなリッパなシッポが奢られています。

確かにこのフィンの効果は絶大で、誰がどう動かしてもしっかりとサカナっぽいスプラッシュを発します。

興味深いのは、スプラッシュだけでなくバブルも発生するように、シッポに7本のリブを配していること。

単なるお飾りかと思ってましたが、このリブが有るのと無いのとではバブルの出来が全然違うんだって!

すかさず、バブルだったらフィンに穴を開けても出来るんじゃない?と聞くと、待ってましたと言わんばかりのしたり顔で、『穴を開ければバブルは効率よく出来るけど、今度はスプラッシュが小さくなってしまうのでこれがベストなんだ』と説明してくれました。

早い話が、シロートは黙っとけって事です笑

ジョイントにもスプラッシュを効果的に飛ばすための工夫が盛り込まれています。

多くのスイムベイトが採用している二点支持のヒンジ式でボディを繋ぐことによって、上下への遊びを完全に殺し、ドッグウォークによって発生したすべての運動エネルギーが、効率よくキックに変換されています。

さらにテール部分の可動域を狭くすることによって、ルアーがターンする時に、丁度ピッチャーが投球時に手首をスナップさせるのと同様の効果をもたらし、より強いキック=スプラッシュが出せる設計になっているとのこと。

もうこの辺になると、最初のんだくれがこのルアーに対して想像していた以上の話が次々と飛び出してきて、正直お腹いっぱい。(笑) 

フェイスブックにも書きましたが、アレン行きつけのバーでビール飲みながら開発秘話を聞いた事もあって、酔っ払って半分ぐらい忘れちゃいました。  ( ̄∇ ̄;)ハッハッハ

画像ではちょっと分かりにくいですが、ノーズ部分は若干扁平でシャクれているので、リトリーブ時はもちろん、ドッグウォークでも常に水面をキープします。

ノーズの先端に近い位置に目があるので、ナチュラルプリントも相まって独特の表情を作り出してますね。

ナチュラルプリントにこだわっているのもABTルアーカンパニーの特徴です。

その理由を聞くと、『ナチュラルプリントが好きだから』という超シンプル回答。

こういうのを見ると、70年代から80年代初頭にかけて全米ルアー界を巻き込んだナチュラルカラーブームは国境関係なく確実におっさん達の脳髄に何かを刻みつけてるんだなぁとつくづく思います。

でも残念なのはコイツにもネームプリントがない事。

ということで、バンシーの時同様、ルアーにネームプリントを入れるメリットを滔々と語ってきたのでそのうち入れてくれる事と信じています。

しかしこのアングルで見ると、死んで浮いてるサカナそっくりですよね。   

フックは前後とも#4のダイイチ社製ブラックニッケルを採用。

スプラッシュ重視なのでリアフックは可能な限り前方に設置してあります。

プロトモデルの段階では、スプラッシュを最大限にする為、リアフックのないワンフッカーの構想もあった様ですが、ミスバイト多発により却下となりましたとさ。

まあアングラー視点的にもリアフックはないとちょっと寂しいよね。

国産のルアーだったら、開発コンセプトや使用法をパッケージやプロモーション過程で説きまくるんですが、海外のルアーはそういうことがほとんどされず、使い方も有効な状況も全てアングラー側の判断というか、気付くかどうかはアングラーのスキルに委ねられているので、ABTのアレンの様に実際にデザイナーと直接話すだけで目ウロコの連発になります。

そう考えると、ネームバリュー的にもメジャー級といえる米産ルアーの中にも、まだデザイナーが意図する通りに使われていないルアーが沢山ありそうですね・・・  というか間違いなくあるだろーなぁ。

まあそういうオタ的なポイントを直に聞き出したいからこそ直接デザイナーに会いに行くんですけどね。