たまには超マニア系ルアーも紹介してみましょうか。
今日のゲストは、2000年代の始めにあのトムマンアウトドアーズから発売されたその名もスパイダーホークです! …って誰も知らんと思いますがw
あ、最初にお断りしておきますが、今日の内容はのんだくれ自身もゲー出そうなぐらいヲタな内容の上に長文なので、変にモヤモヤしたくない方は読まない方が精神衛生上よろしいかと思います😂
トムマンアウトドアーズ… と聞いて股間が反応しちゃったヒトは余程のマンズフリークでしょう。
そうです、これはマンズの創設者トム・マンがマンズを売却後にフィッシュワールド社とは別で代表を務めた個人会社、トムマンアウトドアーズの代表作です!
しかしとてもトムマンの看板を背負ってるとは思えない… ショボい… 作り… です… なぁ… www
余談ですが、トムはマンズベイトカンパニーを1979年に売却しているので、ハードワームやラウドマウスシリーズなどマンズを代表するルアーを発表した時は既に社長ではありませんでした。
ただデザイナーであったりアドバイザリースタッフという立場で関与はしていたので、それらがトム・マンのルアーであることには変わりないんですけどね。
さてさて、話を本題に戻しましょう。
このスパイダーホークは5~6年前にイーベイで発見。
普段こんなのはスルーしちゃうんですが、商品説明を読むとトムマンがどーのこーのと書いてあったのと、のんだくれ的に引っ掛かる事があって購入しました。
その気になる事については後述するとして、届いた現物を見てのんだくれはアゴを落としてしまいました。
とにかくヒドい塗りなんです。
画像を見てショボいのは覚悟してましたが、ここまでヒドいとはw
パールピンクにドブ浸けして黒を吹いただけ。完全に小学生の夏休みの工作レベルです。
いや、きょうび小学生の方がもっと上手く塗れるんじゃないかというぐらいの低クオリティ。
しかしそんな事よりものんだくれが気になったのはコイツの造形です。
このボディフォルムを見て、何かピンときません?
そうです、もう分かりましたね。
コイツのボディは、なんとバグリーのスモールフライクラッピーのブランクをそのまま流用しているんです。
スモールフライは製造時期によっていくつかのボディパターンがあるので具体的にいつ頃の物かは分かりませんが、このエラあたりの作り込みは間違いなくバグリーのそれですよね。

それを裏付ける証拠がコレ、フロントフックのリグです。
フックハンガーが真鍮になってるんです。
造形がたまたまスモールフライに似てしまったということはあるかもしれませんが、それにわざわざ真鍮フレームを入れるのはコストと手間を考えるとあり得ない事なのでこれはバグリーのブランクで間違いないと。
つまりスモールフライのブランクを何らかの方法で大量に入手(B品扱いの流出モノ?)し、色を塗ってプロップを装着し、トムの冠を被せて売り出したんじゃないかと。
実はのんだくれが気になってたのはその事だったんです。
スモールフライのブランクかどうかを確認したくて落札したんです。
あ、それが意味のない事だとは重々承知の上ですw
意味のない事をネチネチと楽しむのがルアヲタの生態なんですから😁
しかしここで新たなギモンが。
フィッシングレジェンドとまで呼ばれ、殿堂入りを果たしたあのトムマンがなんでこんな安易なコトをしたのか。
それを解くカギはパッケージの台紙にありました。
パッケージにはご丁寧にURLアドレスが載っていたのです!
これで諸々のギモンが一気に解決する!! と思ったのも束の間、ホームページは既に閉鎖されていました😖
そうなると残された手がかりはこのTom and Tina Outdoorsという会社名のみ。
で、いろいろ調べてみたらこれは会社名ではなく、生前にトムがホストを務めていた地元ケーブルTVのアウトドア番組だった事が判明。
TinaというのはそのTVショーのサブ司会、日本で言うところのアシスタントだったんです。
あ、なーるほどね、TVショー絡みで自社のルアーを売ってたんだ。
さすが商才に長けたトム親父、なかなかやりまんなぁ😁
それじゃこのルアーの詳細もすぐに分かるだろう… と思ったら大間違い。
いくら調べてもそれ以上の情報が出てこないっ!
パッケージに記載された住所、ノースユーフォーラ通りの周辺をグーグルで調べたりもしましたが、当然の事ながら位置情報以外何も分かりません。
意地になって四方いろいろ手を尽くしましたが新しい情報は何も得られず…。 皆無です、四面楚歌です。
うーん…トムが生きてればまだ解決の糸口があったかもなー… などとと悔しい思いを抱きつつ、自分の中で無理矢理ケースクローズに😭
ところがところが、ひょんなことから解決の糸口が見えて来ました。
仕事で海外のサプライヤーとパートナーシップを組んでいく中で、アラバマ州に拠点を置くある財団の代表と話す機会がありました。
彼の名前はサミュエル・ウィリアムス。
彼はタックルサプライヤー経営やフィッシングガイドを本業とする傍ら、ゲーリーヤマモトの息子デレクも毎年参加する大規模なチャリティトーナメントを主催する男ですが、そのサム出会った事で急展開を迎えます。
なんと彼はユーフォーラ在住だったのです。
え?ユーフォーラ? 例のパケに書いてあった街じゃん! だったらノースユーフォーラ通りって知ってる?と聞いたところ、なーんと!『俺はノースユーフォーラ通りに住んでる。1844番地だ』と言い出すではありませんか!
しかもパケに書かれてた住所が1933番地だから近いなんてもんじゃありません! 1マイルと離れていないお隣さんだったのです。
で、すかさず聞きましたよ、件のスパイダーホークを。
すると顛末はこうでした。
確かにあのルアーは昔、近辺のローカルショップに並んでた。
トップウォーターだけじゃなくてクランクベイトやポッパーもあったはず。
でもあれはトムマンやTVショーとは何の関係もなかったと思う。
トムは生前、小さなルアーマニュファクチュアラー(製造者)をサポートしようと色んなところに名前を貸してたから、多分それであんなルアーが出てきたんだろう。
との事でした。
つまり安く入手したブランクにトムマンの名前だけ乗せたルアーだったということ。
うーん… ドラマチックな結果を期待してたんですが、突然歯切れの悪い結末がやって来ちゃいました…
ウウウ… でも実際に90年後半にトムマンの名前を背負ったA.C.ミノーやリーシッソン製クランク、そしてフィッシュワールド製ではない身元不明のチープなルアーが大量に出回った事を考えると、これもそのうちのひとつと考えるのが妥当なんでしょうね。
しかーし、トムマンとかバグリーブランク云々のメンド臭い事を無視して改めてこのルアーを見てみると、フラットサイドのスイッシャーって意外と少ないのでこれはこれでアリかなとか思っちゃいます。
特にこの幅広&肉厚の大型オーバルペラは、ショートジャークではズイールのプランクとイイ勝負のお下劣サウンドでバスにアピール。
おそらくこのプロップはフラターフィンで有名なワース社の汎用品だと思われ。
立ち上がりこそイマイチですが、一度回り始めるとまるで算盤を走らせているかのようなシャーッというノイズと共によく回ってくれます。
スイッシャーサウンドとしては聞き慣れないノイズですが、これはおそらくカップもワッシャーも介してないからこそのサウンドなんでしょうね。
アクションは良くも悪くも直線番長なので首振りなんて芸当はできません。
そりゃそうですよね、元ボディはクランクベイト用なんですからゼイタク言っちゃいけません。
しかし元クランクベイトだけあって低重心なので、ボディが倒れてからの姿勢回復は非常にクイックになっています。
ボディの上下でトーンが大きく違うテネシーシャッドのようなカラーだったら明滅効果が期待できそうです。
フックは前後ともラウンドベンドのショートシャンクを採用。
このスロートの深さはおそらくイーグルクローの#954あたりの番手を使ってそうですね。
でもバグリーのオールドブランクを流用するなら、いっそのことクローポイントのフックを使って欲しかったですね… というのはヲタの勝手な言い分でしょうねw
バグリー謹製のバルサボディなので浮力はもちろん、アクションのレスポンスは最高。
ペラもイイ感じで鳴いてくれるので実戦で活躍してもらおうと思ってるんですが、どーにも投げる気がしない。
その原因はこのカラーリング。
やっぱこのイロじゃねー… 😭
てな具合で、長い文章だった割にはルーツが探れたような探れなかったような、後味の悪ーい記事になっちゃいましたが、皆さんはこの安易なルアー、どう思われましたか?
…..というところまでが2010年9月9日に投稿した内容でした。
しかしのんだくれは後味の悪さがずっと尾を引いていました。
そして悶々としながら年は流れ、ある時なんとなく眺めていたフェイスブックで話はまた急展開を見せることに。
なんとスパイダーホークを売りに出している人がいたのです!


実際に投稿されていたスパイダーホークの画像
早速その投稿者にコンタクトを取ってみたところ、意外な事実が判明します。
フロリダ在住の彼曰く、このルアーを買った時になんとトムと直接電話で話したというではありませんか!
彼の話を要約すると次の通り。
バグリーがウィンターヘブン工場を閉める際、残っていた大量のブランクや製造過程で出るB品をトムが一個当たり5セントで全部買い上げたんだ。
それをベースにトムがひとつひとつハンドメイドで組み上げたのがスパイダーホークなんだ。
当初はスイッシャーとして販売する予定だったが、プロップの納品が間に合わなかったこともあって初期ロットはウォーキングベイトとして発売していた。
自分はその初期ロットを買ったんだ。
そしてプロップが届いてからは予定通りスイッシャーだけを販売していたが、バグリーから買ったものの中にはただのブランクもあればフックをつけるだけで出荷できるようなものまでありとあらゆる物が混ざっていたので、その中から適宜使えそうなものをピックアップし、リップ付きのものはスキーターホーク Skeeter Hawk の名前で販売するようになった。
それがこれらのルアーなんだ。
と送ってくれた画像がコレです。
もうね、この画像を見た時にのんだくれはチビるかと思いましたよ。
彼の言う通りクランクベイトが存在しただけでなく、それらのリップはまんまバグリー、しかも最上段のリップは80年代初頭までキラーBIIやクローフィッシュに使用されていたウェイテッドリップなんですから。
おそらくトムはブランクだけでなくこういったコンポーネントもひっくるめて工場にあったものを全部引き取ったんでしょうね。
手前のスクエアビルもバルサBIIあたりに使われていたリップっぽいですしね。
その話を聞いて、当時バグリーの社長だったマイクにも後日確認したところ、
それらがトム・マンへ渡ったかどうかは覚えていないが、工場を閉鎖するにあたって大量の資材を処分したのは間違いない
と言っていたのでタイミング等を考えるとおそらく間違いはないでしょう。
先述のサムが言っていた、”小さなマニュファクチュアラーに作らせていた” という話にどこか違和感を感じていましたが、やっぱりスパイダーホークはトムマンの製品だったんです。
もうこれが分かっただけでのんだくれは大満足。
諦めなければちゃんと目的地に辿り着けるんだなーと😁
しかし話はそれで終わりではありませんでした。
このスパイダーホーク制作をリタイア後の生き甲斐としていたトムでしたが、2005年、心臓疾患により72歳で急逝してしまうのです。
それによりプロジェクトは全て終了となりました。
つまりこのスパイダーホークがトムの生涯最後の作品だったのです。
当時トムの死はオンタイムで知っていましたが、イーベイで偶然見つけたルアーがまさか最後の作品だったとは。
縁というほど大袈裟なものではありませんが、たった一個のルアーがきっかけで偉大なフィッシングレジェンドの後年に触れることが出来たのはいちルアヲタとして非常にラッキーだったなと。
そしてどんなルアーにもストーリーがあるんだなーと改めて感じずにはいられない出来事でした。
ということで今日のお話はおしまいです。
フロリダ在住の彼からは面白い話を沢山聞き出せたので本当はもっと続けたいのですが、エンドレスになってしまうのでそれはまた別の機会に。
Tom and Tina Outdoors のティナの話も聞きたいでしょ?
ちなみにティナの当時の近影はこんな感じ。
これ見て、あっ!(察し) になった人は考え過ぎwww
でもこの二人の関係性はタブロイド的なあっち系wの興味抜きで、純粋なルアヲタとしても目が離せないものがあるのでまた改めて書いてみようかと。
その時を楽しみにお待ちくださいませませ😁
ということで、長々とお付き合いくださいましてありがとうございました。