ホッテントット Hot’n Tot AH series/ ストーム Storm

 

デビュー作・グロップ!Glop! をリリースしたものの鳴かず飛ばずだったストームは、1965年に発表したスィンフィン(後のシルバーシャッド)の大ヒットで一気に注目を浴びます。

普通のメーカーであれば一発屋で終わるところですが、その地位をより固めるべぐ我らがストームは次なる刺客を市場に送り込んできました。

それが今日紹介するホッテントット。

80年代にバスフィッシングをかじったことのあるアングラーならば一度はハァハァさせられたであろう至宝です。

 




 

ホッテントットのデビューは1971年。

最初はHシリーズと呼ばれる小さい方のモデルだけのリリースでしたが、薄いメタルリップならではのピリピリとした緊張感のある泳ぎが幾多のモンスターの側線を刺激しまくったことで一躍スターダムへとのし上がります。

この頃の状況をリアルタイムで知っているのんだくれのビジネスパートナーに聞いたところ、当時の熱狂ぶりは後のラパラ・シャッドラップに近いものがあったそう。

当時フロリダ州エバーグレーズでフィッシングガイドを営んでいた彼曰く、ゲストにホッテントットを投げさせればとりあえず釣れた、という状況だったと。

そしてそんな大ヒットになったら商品のバリエーションを増やすのがマーケティングのお約束。

ストームはサイズアップしたこのAHシリーズを投入してその熱狂をさらに加速させ、世紀の名作・ウィグルワートへと繋がる道筋を作ったのでした。

 

 

 

ホッテントットAHは60ミリ、12.5gのダイビングクランクベイトです。

今でこそ標準的なサイズに見えますが、ガキの頃はめちゃくちゃ大きく感じたものです。

こんなデカいルアーを食うブラックなんてホントにいるのか?的な。

しかしいろいろ調べてみると、このAHサイズが登場した背景にはウォールアイアングラーからの不満があったようです。

 

 

 

というのも、北米ではホッテントットはバスフィッシングで使われるのと同時にウォールアイアングラーからの支持も多かったのですが、オリジナルのHサイズでは潜行深度に問題があったとのこと。

ウォールアイはトローリングで狙うことが多いゲームフィッシュなのですが、釣りに絶好のコンディションと言われる強風下(俗にウォールアイチョップと呼ばれる波立った状態)でウォールアイの泳層までしっかり潜らせるためにはHサイズの潜行能力では役不足だったのです。

そこでストームはこのAHサイズを投入したというワケですが、結果的にこの決断はウォールアイアングラーだけでなく、同じくトローリングでトラウトを狙うアングラーからの熱烈な支持も得ることとなり、ホッテントットの大躍進を後押しすることとなります。

ストームの権利がラパラに譲渡されてからもホッテントットがリリースされている背景には、おそらくウォールアイやトラウトの力もあったんでしょうね。

 

 

 

そんな潜行能力を司っているのがこのアルミ製のリップ。

このリップはホッテントットのアイデンティティと言っても過言では無いですよね。

コネクターを装着できる穴が3つ開けられていて、状況に応じて深度が変えられるというのがホッテントットのウリでもありますが(米国内での広告にもそう書かれていた)、素手では付け替えられないので、おそらくそれはプロモーション上の謳い文句だったのではないかと。

とはいえ、ホッテントットは既に名声を得ていたボーマーベイトやウォータードッグなどメタルリップ戦士達がひしめく戦場に挑みそして名を残したわけですから、勝てば官軍、言ったもん勝ちなのです。

 

 

 

といった具合にホッテントットはメタルリップばかりに注目されがちなのですが、実はそのメタルリップのメリットを最大化してくれる存在がいるのです。

それがこの逆デルタ形状のボディ。

一見どってことのない形状ですが、このカタチが低重心バランスを生み出してくれるおかげでタイトなローリングアクションを刻み続けることができるのです。

それは同様の金属リップを持った当時のライバル達の泳ぎと比べてみると良く分かります。

ホッテントットのライバルには、マーベリックで有名なグデブロッド社のバンプングラインド Bump’N Grind というルアーがありますが(ボックス捜索したけど見つからなかったから画像はナシ。各自検索してplz)、このルアーはボディ断面が円形のせいか泳ぎが少々もっさりしていてホッテントットのようなキレがないのです。

もちろんバンプングラインドもトラウトアングラーの間では必携と言われていたので釣れないルアーではないのですが、ほぼ同じ時代、サイズだったにも関わらずその実績に大きく差が開いたのはボディ形状にも理由があったんじゃないかとのんだくれはニラんでおるわけです。

皆さんはどう思います?

 

 

そんな各部の仕事を至上のものに消化させてくれるのがこのカラーですよ。

シルバークロームに婚姻色のトラウトパターンを吹くスキームは明らかにトラウトアングラーをターゲットにしていますね。

量産プラグとはいえ塗装工程はひとつひとつ手作業なので、ネットの網目模様を見るとエアブラシの噴射音だけが響く工房風景が浮かんでくるようです。

ちなみにホッテントットは重心となるウェイトが入っていないノンウェイト構造。

ノンウェイトだからこそボディ上部に浮力を持たせる(つまり低重心にする)逆デルタ形状が必要だったのであり、ノンウェイトだからこそピッチの早いキレのあるタイトアクションが実現したのです。

そう考えると、ルアーはいろんな要素が複雑に絡み合い、そしてどの要素が欠けても成り立たないデリケートな存在であるということがよく分かります。

意図するしないに関わらずその要素の組み合わせ次第で名品にもなりゴミにもなるんですから、ホントにルアーって奥が深いなと。

そうそう、このホッテントットはノンラトルでありながら、実際にリトリーブするとかなりのノイズを発しているのは知ってました?

フィールドでは聞き取りにくいかもしれませんが、スイムタンクのような閉鎖空間だと大きな音を発しているのがはっきりと分かります。

そのノイズの正体はフックとボディが擦れ合うスクラッチノイズなのですが、おそらくボディかリップが共鳴することでアンプリファイドされているのではないかと。

一般的なノンラトルクランクを巻いてもこの種のサウンドは聞けないので、これもホッテントットの特徴のひとつと言えるでしょう。

もしかしたらノンウェイト構造がサウンドをより増幅しやすくしているのかもしれませんね。

うーん…. やっぱり名品にはいろんなキモが隠されてますねー

 

 

水面では約45度の角度で浮くため、リトリーブ開始と同時にタイムラグもなくスムースにボトムへ向かって潜り始めます。

一般的にホッテントットは巻き物という捉えられ方なので巻いてナンボとばかりにグリグリするのが普通なのですが、巻く前にちょっとやって欲しいことがあるのです。

それは水面でのチョンチョン使い。

実はホッテントットのAHはトップウォータープラグとしても非常に有能なルアーでもあるのです。

浮いた状態からロッドを軽くチョンチョンすると、その場でリップを振り子のように左右に振ってシャカシャカ音を発してくれるので、リザーバーのオーバーハング奥に撃ち込んだら最初は水面で踊らせ、反応がなかったら一気にダイブさせることが出来るという一粒で二度おいしいルアーなのです。

特にホッテントットのクロームカラーはリップにまでクローム処理がされていて、まるで鏡面加工したかのようなピカピカリップなので薄暗いオーバーハング奥でもキラキラしてアピール度バツグン。

こんな使い方は本国ではさすがにされていないでしょうが、水面でシャカシャカ動いていたものが高速でダイブするという動きの変化に思わず口を使ってしまうバスもいるので持ってる人がいたら是非試してみてくださいな。

 

 

そしてホッテントットいとえばルアヲタ的にはコレしかありませんよね😁

ラクソン Luxon のコネクターです。

このパーツの正式名称は【 Nickel Plated Brass Connecting Link with Safety Catch 】という寿限無かよ!と言いたくなるような長ったらしい名称ですが、先述のボーマーベイトやバンプングラインド、ウォータードッグなどほとんどの著名なメタルビルルアーに装着されている隠れた名品でもあります。

 

 

そして初期のホッテントットのコネクターにはUSAという刻印も入っていたので、このパーツにも製造期による違いがあると思われ。

ちなみにラクソンはかつてニュージャージー州に存在した Art Wire & Stamping Co. の釣具部門のブランド名です。

1990年代まで事業は続いていたようですが、廃業したのか合併吸収されたのか現在はその名前を見ることはできません。

ただこの会社は相当数の特許を有していたようで、検索するとこの会社の権利関係のドキュメントが死ぬほどヒットします。

なのでおそらくこのコネクターも特許を取得していたんでしょうね。

 

 

 

そしてもうひとつの楽しみはこの刻印ですよね。

誇らしげな®️マークが当時のヒットを物語っているようです。

大きなリップ全面を使わずにこぢんまりと刻印が入っているのはHシリーズと共通の型を使っているから。

個体によって刻印が少しづつズレているあたり、もしかしたらひとつひとつ手作業で打刻していたのかもしれません。

ちなみにホッテントットという名前は当時アメリカで話題になったアフリカのコイサン族を指しているのかと思いきや、どうやら違っていたようです。

 

 

ホッテントットのスペリングはコイサン族の方が Hottentot なのに対し、ストームの方が Hot’n tot となっているのが気になっていたのですが、どうやら意味の違いを表すために ‘ (アポストロフィマーク)を入れた様ですね。

その後米国では Hottentot という単語は黒人差別用語の意味合いが強くなり、積極的に使うことが出来ないワードになってしまいましたが、ホッテントットがその後も改名する事なく販売され続けている現状を見る限り、ストームはたった一個の点に救われた形になります。

そういう偶然も重なっていたと思うと、ホッテントットは奇跡のルアーなのかもしれません。

のんだくれは出張などでアメリカに行った時、いろんな人に好きなルアーとかよく釣れたルアーを聞く様にしているんですが、そんな小さな質問をひとつ投げかけるだけで日本では知ることが出来ないであろうこの手のネタが出てくるのでやめられません。

日本にも居ますよね? アルコールが入るとウンチクや過去の釣果をマシンガンしだすヒトが。

アレと全く同じ状況がアメリカにも普通にあるんです😁

特にICASTなどのビッグショーになると年に一度の同窓会みたいな感じで、メーカーの枠を越えた仲間でディナーやナイトクラブに繰り出すことがあるんですが、そこで昔の武勇伝が始まるともうエンドレスw

名作ルアーの裏側にはじまり、バスプロの追っかけグルーピーwの話まで、ネタは尽きません。

だからのんだくれはヒコーキが大嫌いなのに高い金払ってまでアメリカに行ってるんです…     という言い訳がしたいだけなんですけどねw

 

 

 

H、AHシリーズと大ヒットを飛ばしたホッテントットは、のちにBHと呼ばれるマグナムトット、RHのラトルトット、通称フラッシュトットと呼ばれるホッテントットフラッシュをリリース。

そしてウォールアイ用スピナーのホッテントットピグミーを最後に28年に渡るその生涯を終えます。

ラパラに移籍してからも紆余曲折ありましたがそれでもまだカタログ落ちしていないということは、世界的に見ればまだまだ売れているということなんでしょうね。

今日本のフィールドでホッテントットを投げているアングラーを見かけることはもちろん、話題に上がることすらないルアーですが、サカナを寄せる実力ではまだまだ現役のルアーなのでボックスの飾りになってる人は是非この秋にでも投げてその実力を味わって欲しいなと。

ということでホッテントットは全シリーズを書き倒すつもりなので、次回をお楽しみに。

 




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