
たまにはこういうクラシカルなのも紹介しておきましょう。
今日お招きしたゲストは、かつてサウスベンドが出していたティースオレノです。
これを紹介すると西の方角から、これ出したらアカンがな!と怒りに満ちた声が聞こえてきそうですが…

ご存知の通り、この手のウッド製のクラシックはのんだくれの担当外です。
でも海外の連中とあれこれ取引してるとなんか知らない間に増えちゃうんですよね、この類いも。
そういうルアーは大抵ボックスに放り込んでおくんですが、ある時、いつも仲良くしてもらってる西の人から 『 ティースオレノ、めっちゃヤバいで! めっちゃ釣れるで! 』 と鼻息フンガーでアツーい電話が掛かって来ました。
人に感化されることを生きる糧としているのんだくれがその言葉に抗うことなど出来るはずもなく、早速ボックスの奥深くから発掘してきたというワケでございます。

このルアーはご覧の通り、フラットフィッシュなどに代表されるへの字ルアーのサウスベンド版です。
ティースオレノといえばフロントに金属のカップが装着されているモデルが有名ですが、なぜかのんだくれのトコに嫁入りしてきたコイツはそんな貞操帯を付けておらず、非常にイージーな造りになってます。
ティースオレノ自体は1920年代からあるようですが、このモデルはいつ頃のモノなんでしょうかね?
まあ年代がいつだろうと実釣で使えさえすればカンケーないんですが。
で、実際に投げてみた感想は、“なんじゃコレ!こりゃ絶対釣れるわ!” です。
元々この形状のルアーは大きなウォブリングを得意とするアクション特性なので、使う前から大方の予想はしてましたが、実際の動きはシビれるものでした。
フラットフィッシュのバタバタアクションにバスオレノのもっさり感をプラスして、レーベルブラックスター風味に仕上げた感じの、水面/サブサーフェス系アングラーには水前寺清子… いや、とにかく垂涎のというか、あー!コレだコレ!というアクションなんです!

強い浮力のボディをヘッド部のディンプルが持て余していて、ちゃんと泳ぎたいんだけれども泳げない、でもバスオレノほど不規則でもないという、なんとも魅力的な泳ぎ。
バスオレノが孤高の無頼漢だとすると、このティースオレノはさしずめ家老がお世話にちょっとてこずってる感じのおてんば姫といったところ。
TEAS-ORENOのTEASとは、からかうという意味のTEASE(よくティーザーとか言うでしょ?アレですアレ)から来ており、ゆったりとしたバスオレノのスイミングアクションとは明らかに違う系統の、ロッドアクションに敏感に反応するティースオレノのアクションを見事に表した先人のネーミングセンスにチビリそうになりました。
特筆すべきはそのウッド素材ゆえの吸水性。
使ってるうちにボディが水を吸って比重が馴染むというか、キックバックがにゅるん… と妙にナマナマしくなるんです。
それはまるで惜しみなくローションを使ったマットぷれいで… おおっと、まだ昼間だった。
とにかく水への絡み方が尋常じゃなく艶めかしいんです。
その昔、狂の字がつくズイールマニアに、お気に入りのズイールルアーは?と聞いたら 【◯◯年製のテラーII 3/8ozを1時間ぐらい水に浸したヤツ】 と返されて思わずニンマリした事を思い出しましたが、のんだくれの言いたいのは正にそれ。
何十年も前の天然素材でクラック入りまくりなので、たまたまそうなっただけと見るのが正しいんでしょうが、同じルアーであっても全ての個体が別物だというウッド製ヴィンテージルアーの深淵を覗いてしまったような気がします。

フロントのリグはサウスベンドらしいカップリグになっています。
実釣に向けてフックを替えようかなとも思いましたが、今のフックは似合わないし、この時期のルアーはヘンにヒートン抜くとガバガバになって使いものにならなくなるのでヤメときました。
やっぱり何の世界でもガバガバってのは… あ、またハズれちゃうからヤメときますね。


リアのリグはウッドならではの針金リグ。 …というかこのリグって正式名はなんて言うんでしょうか。
のんだくれが持ってる米国の釣り書籍を1920年代からチェックしまくりましたが、このリグに関する情報は見つかりませんでした。
どなたかこのリグの正式名称をご存知の方がいらっしゃったら是非ご一報くださいませ。
リグの情報は見つかりませんでしたが、1941年発行の Fishing and Hunting誌でティースオレノの広告を見つけたのでオマケで載せときます。

Triple Threat Lure that’s “ ALIVE “ with Crawling Action (生きているかのようなクロールアクションの三拍子揃ったルアー)と言うコピーにシビれますね。
この画像にあるルアーイラストではカップにメタルパーツが装着されているので、のんだくれのティースオレノは少なくともこの時期のものではありませんね。
当時の定価は75セント。
あまりにも安くてピンと来ませんが、1940年代の人気車パッカードのタンク(約80L)を満タンにすると約4ドルだった事を考えると、ルアーとしての価格は2020年の今とさほど変わらない感覚だったと思われます。
とはいえ、サウスベンドにしろへドンにしろ75セントもするルアーは高級品だったことに変わりはありませんけどね。

ネームはサウスベンドらしく、背中に堂々とステンシルで吹かれています。
使っていくうちに印字が薄くなるのもサウスベンダーにとっては常識です。
ザウルスの故・則さんがこのネームに影響を受けて、自分のコドモ達にも同様のネームを吹いたのは有名な話ですね。
でも則さんのスタイルに影響を受けた世代としては、オトナじゃないと分からない釣りの楽しみ方をもっと説いて欲しかったな。 合掌。

この手のルアーは中古屋に並んでいる事もないし、価格もそれなりなので、明確な目的を持って探さないと手にする機会はまずありません。
しかし先人達が何を思ってルアーを作っていたのかに触れる事が出来るだけでも十分に価値があると思いますので、気になる方はいろいろ見てみるのもいいかもしれません。
でもアンティークルアーの世界は真剣にクビを突っ込むとルアー1個が20,000ドルとか本当にシャレにならんレベルにまでイッちゃうので、身上を潰す覚悟を持ってどうぞ。
コメント
*2010年の投稿のコメントをそのまま転載しています。
- 水澄まし October 05, 2010 22:10
今晩は!
当然、持っておりませんが、機会があれば入手したい一品です。
西の人って(笑 - 広告屋 October 05, 2010 22:42
ティースオレノのこんなヘッドのあったんや!
メタルパーツのしか持ってないや。 - anq October 06, 2010 15:03
同じく西の方より情報をいただきました。
同じくウッドはあまり深入りしたくないんですが、見てるとついつい(滝汗)
でも、これら御年百歳くらいのルアーを手にすると、その貫禄にシビれてしまいますね。
- のんだくれ October 06, 2010 16:07
水澄ましさん
是非是非入手して欲しいルアーです! - のんだくれ October 06, 2010 16:08
広告屋さん
サスガにコイツにナチュプリは無いよー - のんだくれ October 06, 2010 16:09
anqさん
ウッドは深入りしちゃイケマセン。
のんだくれのように広く浅くカジってるのが一番安全。 - むら October 06, 2010 22:28
これ・・・
以前から気になってるルアーなんだけど手が出ない。
バッタモンでいいからどこかで復刻してないのかなぁ?
^( ̄▽ ̄)^ぱたぱたぱたぱたぁ~
- ロングA October 07, 2010 20:15
なんかアドニスのウォブリースネークを思い出します。
それよりも細身でウッド・・・・
使ってみたいです。
むらさんも仰っていますが、どこかで復刻してませんかね? - のんだくれ October 10, 2010 13:44
むらさん
この手のルアーって、復刻するには金が掛かりすぎ、でもマニアック過ぎて売れ線ではないというビミョーなラインですからねー。
もう自分で削るしか道はないかと。(笑) - のんだくれ October 10, 2010 13:45
ロングさん
ウォブリースネーク!
あれは名品ですからねー。
あれこそ復刻再販してほしい。