見た目は地味なんだけど、実際に使ってみると物凄く攻めたセッティングに驚かされるルアーってありますよね。
今日紹介するノーマンのファットボーイはまさにその攻めたセッティングが施された存在。
ただのメリケン製ファットクランクでしょ?と思ってると痛い目に遭うヤツです。
のんだくれが間違っていなければ、このファットボーイの登場は2005年ぐらい。
ノーマンルアーズがプラドコチームに参加する前からの古参スタッフで、ノーマンの中では数少ないスクエアビルクランクです。
”2005年ぐらい” というのは、このルアーの存在を知ったのはデビューからかなり時間が経ってからで、ノーマンから届いた注文表に見慣れない名前を見つけて初めて知ったから具体的なデビュー年がわからないのです。
今思えばの話ですが、当時のノーマンは素人目で見てもプロモーションが上手く機能していたとは思えない上に納期も遅れがちで、”Proudly Made In The US” を金看板に掲げているものの、内容が伴っていなかったという印象でした。
おそらくそんな状況がのんだくれのアンテナに引っかかりにくくしていたのかもしれません。
それまでのノーマンはにはマッドNやスィンNなど、コフィンリップを持つモデルはあったものの、典型的なスクエアビルクランクはラインナップしていなかったのでその穴を埋めるべくこのルアーが登場したとのこと。
ちなみにこれは機動戦士ヴァンダムが仕掛けたスクエアビル戦争よりも何年も前のオハナシ。
しかしそこは我らがノーマンルアーズ、ただ単に四角いリップのクランクを投入するだけでは終わらせません。
” The extreme heavy cover crank that has the buoyancy of premium balsa wood. (最高級バルサの浮力を持つ究極のヘビーカバークランク)” をキャッチコピーに掲げ、史上類を見ない超ショートボディのファットクランクに仕上げて来たのです。
ボディ長は50ミリなのに体高は30ミリ、ボディ幅は23ミリという数値からもファットボーイが相当な寸詰まりシェイプであることがわかります。
そしてそのショート&ファットなボディは、ビッグクランク並みの25ミリ幅のリップとの組み合わせで最強のスナッグ回避性能を発揮するのです。
それまでのノーマンのクランクには ”カバーに強いクランク” というイメージはあまり無かったので、一発勝負に出たというところでしょうか。
そのキャッチコピーに偽りはなく、足元でルアーを泳がせるだけでその障害物回避っぷりにニンマリしてしまうほどの仕上がり具合。
ボディ幅よりも大きな巨大なバンパーを持つショートボディがこんな前傾姿勢でブリブリ泳ぐんですから、そりゃニヤニヤしないほうがおかしいです。
さすがにここはムリだろーと思うようなブッシュでも冷ややかにスルリと躱してくるので、バスがいるいないに関係なくカバーを撃ちたくなるクランクなのです😁
気になるアクションはキレのあるブリブリ系のウォブリングですが、リトリーブスピードが増すにつれてローリングも入ってくる感じ。
そしてそのサイズに似合わない強力なディスプレイメントを生み出します。
あいにくキャッチコピーにあるような ”最高級バルサの浮力” は備わっていませんが、カバークランキングの基本 ”当てたら止めて浮かせる” の一連の流れにストレスなく対応できる程度の浮力は持っています。
といった具合に、一見ソツの無い仕上がりに見えたファットボーイですが、ちょっと使い込んでいくと弱点も見えて来ます。
その弱点とは、中速以上のスピードで巻くとすぐにバランスを崩してしまう事。
最初はかつてのノーマンのセールスポイントwでもあった、”まっすぐ泳がない仕様” に起因するものだと思ってしっかりトゥルーチューンを施すのですが、それでもある程度のスピードになると泳ぎが破綻してしまって舌打ちするばかり。
もしかしたら個体差によるものなのかと他のファットボーイも試してみましたが、どれも大差ありません。
しかし、ある程度巻いたところでふと気づきました。
あれ?もしかしてこの危ういセッティング、ワザとじゃない?と。
つまりスナッグレス効果を最大化するために巨大リップ&超ショートボディを採用したけれど、その組み合わせによって生まれる高速リトリーブにおける安定性の低下には目をつぶったんじゃないか、と。
確かにヘビーカバーの中をグリグリと早巻きするケースはほとんどないし、ノーマンともあろう老舗ブランドが使えないクランクを出すわけない(と信じてるw)ので、そう考えるといろいろ合点がいきます。
いや、もし事実が違っててもそういうことにしておきましょう。 その方が精神衛生上スッキリするしw
しかし高速リトリーブでの使用を棄てたとはいえ、ファットボーイの本来の性能を引き出すには先述の通りアイチューンは必須です。
国内外を問わずルアーのアイチューンは使用前の儀式として必要不可欠なものですが、特にノーマンのルアーには欠かせません。
ノーマンのルアーは、アングラーがアイチューンをすることで初めて完成すると言っても過言ではないでしょう。 いや誇張ナシで。
かつて悪童リッククランがディープタイニーNを超シークレットにしていた時、彼は何十個ものDTNにトゥルーチューンを施してその中から試合に使えるものをピックアップしていたという話を聞いた事がありますが、彼の当時の戦績を考えるとおそらく何十個とかのレベルでは済まないでしょうね。
つまりノーマンのルアーは箱から出したばかりの状態では、”ルアーの形をした何か” でしかなく、それでオサカナを釣ろうと思ったらガチのトゥルーチューンをしないとオハナシにならないよ、という事。
しかし当のノーマンはそれを知ってか知らずかラインアイ周辺の取り付け精度にあまり関心がないようで、中にはどうしようもないアタリが入ってることもw
このスタンスはプラドコに移籍して海外生産になってからも変わらないので、そういう意味では1〜2個試した程度ではノーマンのルアーを知ることは出来ないかもしれません。
以前に比べたら最近はほとんど見なくなりましたが、それでもたまにオゥフ… と声が漏れてしまうようなヤツがあるので、ゴミを掴まされても笑い飛ばせるぐらいじゃないとノーマンとは付き合えないと思ってた方がいいのかもしれません😁
カラーはスプリングクローダッド。
ノーマン伝統のナチュラルカラーとしてあまりにも有名ですね。
このカラーがデビューした80年代当時はそうでもなかったのに、時を経て今ではザリガニには見えないレベルにまで抽象化されていますw
目は3Dアイの上にトップコートを吹いて…. と思ったんですが、よーく見てみると、目玉シールの上にシリコン系のクリアを盛ってその上にトップコートを吹くという謎の仕様。
なんでこんな手間のかかったことをするのか理解に苦しみますが、目玉シールからはみ出てる上に気泡まで入ってるので、これはおそらくヲタがツッコミを入れるためにわざわざ作り込んでくれたんでしょう。もうそういうことにしておきましょうw
そうそう、ボディの中にはラトルが入っていますが、そのサウンドはかなり控えめ。
ラトルサウンドというよりは、ウェイトルームに隙間があってカタカタ鳴る程度のサウンドなのでノンラトルに毛が生えた程度と解するのが正解です。
ゲルコートと呼ばれるボディ全身を包む極細ホログラムラメフレークもノーマンの代名詞になりましたね。
プラドコ参加前はゲルコートを施したカラーはプロフェッショナルエッジ The Professional Edge シリーズとして別ライン扱いになっていましたが、今はレギュラーカラーに格下げに。
日本においてグリッターカラーは好き嫌いがはっきり分かれるところですが、米国マーケットでは欠かせないカラーゆえ消えることはないとは思いますが、バグリーのダズルカラーなどとグリッター戦争を繰り広げた由緒ある?パターンでもあるので、個人的にはこのまま未来永劫残して欲しいなと。
しかし今更ながらですが、ノーマンのネームプリント無しはなんとかならんもんなんでしょうか。
クランク史に名を残す名品が多いのに、ネームが入ってるものがひとつもないのは一体何故なんでしょ。
サスペンドモデルにはその旨スタンプされてるので、絶対に出来るはずなんだよなぁ。
ちなみにこのルアーの名前、ファットボーイには、直訳の ”太った少年” 以外にも、”上手い事やってるヤツ” とか ”(成金的な意味で)経済的に成功してるヤツ” の意味もあるので、ノーマンとしてはおそらくマネーベイトのイメージを持たせたかったのではないかと。
スラングとしての FAT にはネガティブなものも含めていろんな意味があるので、もしかしたらもっと別の意味も含ませてるかもしれませんけど。
カバークランクらしく、フックは前後ともディープスロート&ショートシャンクの#4を採用。
このモデルはグアテマラ生産の最近モノですが、USAメイドの頃からブラックニッケルが標準装備になってますね。
そういえばプラドコになってからUSA物ノーマンの人気が持て囃されていますが、のんだくれはUSA物にはあまり興味ナシ。
その理由は、現行もUSA物もクオリティにほとんど違いがないから。
プラドコになって一部のカラーが廃番になったものの、そのカラー以外でUSA物にこだわる理由が見つからないのです。
むしろ現行の方がクオリティ的に均一化されている気がする(決してクオリティが上がったワケではないw)ので、普段使いの場合は現行モデルで十分だと思ってます。
とはいえ、80年代中期に販売された黒いマテリアルベースのクロームカラーだけはガチで取りに行きますけど。
例によってノーマンはプロモーションにおいてこのルアーのコンセプトや長所短所に全く触れず、単にカバーで使えるクランクベイトとしか謳っていないため、その威力は見過ごされがち。
カバー周りでの圧倒的な破壊力が備わっているにも関わらず、そのパワーを引き出すにはかなりシビアなトゥルーチューンが求められるなど、万人受けするクランクベイトではありませんが、クランカーならば是非とも押さえておきたいアイテムのひとつです。
近年のプラドコはシレッと供給を止めちゃうことが多いので、気になる人はチマナコになる前に確保しておいた方がいいかもよ?😁