使いこなすのに若干の修練を必要とするじゃじゃ馬的なところがダーターの魅力。
思い通りのサウンドや動きを演出できるようになるだけで、釣れなくても楽しかったりします。
しかし、ここぞ!ってポイントで自分のイメージ通りに動いてくれないと、ストレスを感じることもありますよね。
今日紹介するビッグヤーンフィーは日頃の鍛錬がなくてもそんなストレスから開放してくれる、めちゃくちゃ素直なダーターです。
ビッグヤーンとは大あくびの事。
大きく口を開けたダーターのフォルムをそのままあくびに例えるセンスは、クワイエットファンクならではですよね。
フィーとはプラスチックのインジェクションモデルのことを指します。
もともとこのモデルにはヴィー/Vieと命名されたウッドバージョンが存在しており、このビックヤーンフィーはその量産型という位置付けになります。
ビッグヤーンフィーのサイズは全長92ミリ。
ウェイトは5/8oz(実測では17.95グラム)と、伝統的トップウォータープラグの定石に則っています。
この辺のサイズ設定には開発者である久保田氏のジャパニーズトップウォータースタイルへのこだわりが見え隠れしていますね。
ビッグヤーンフィーの最大の特徴は、ラインアイが2つ付いておりアングラーの好みでアクション特性を選べる仕様になっていること。
当時の雑誌の説明文によると、ラインを上のアイレットに結ぶとダーターに、下に結ぶとチャガーになるとのことですが、実際に使ってみると単純にチャガー/ダーターで分けられるようなものではなく、非常に奥が深い仕上がりになっています。
そんな奥の深さを演出しているのがこの浮力セッティングです。
水面に反射しているのでちょっと分かりにくいかもしれませんが、スナップを使わない状態ではラインアイが水面上と水面下になるようにしっかり調整されています。
水面よりも上か、水面よりも下か。
ラインを結ぶ位置が上下にほんの5ミリずれただけですが、これだけの事でビッグヤーンフィーの表現力が飛躍的に向上しているのです。
両者の違いは先述の通り上がダーター/下がチャガーで間違いはありませんが、付け加えるとすると、上は下に比べてポッパー的なスプラッシュが出しやすく、下は上よりも首振り性能に長けています。
さらに同じチャグサウンドでも上下で全く違う音質になるし、水面直下でフラフラと泳がせるだけでも上下で振り幅が違うものになります。
しかもそれらのアクションは総じて素直なレスポンスなので、スキルがなくても狙ったスポットで思い通りの演出が出来ちゃうんです。
こう書くと、果たしてそこまで使い分けをする必要あるのか?というギモンも湧いてきますが、こういう風に細かいポイントまでこだわるのがジャパニーズトップウォータースタイルなんですよね。
しかしそこには小難しいスキルやノー書きは一切存在しません。
こんな具合にこのビッグヤーンフィーは、ハードルが低く設定されてるのに多彩な演技ができるルアーですから、使ってて楽しくない訳が無い。
この辺の汎用性は、さすがクワイエットファンク!と言わざるを得ません。
これはのんだくれの勝手な想像ですが、もしかしたらこのビッグヤーンフィーは自然素材のヴィーでは難しかったことを実現させるために生まれてきたのではないかと。
つまり、自然素材特有のバラつきがあると実現しづらかった完璧な浮力セッティングを、オリジナルのラインアイを作ってまでインジェクションで突き詰めたかったのではないかと。
え?妄想街道を爆走し過ぎって?
可愛いポップアイもクワイエットファンクの特徴のひとつ。
ですが、ピカソフィー/オリジナルフィーの非対称アイのインパクトを知ってるだけにちょっと物足りない気もしますね。
できればこのビッグヤーンフィーにも非対称アイを採用して、クワイエットファンクならではのアイデンティティを強調して欲しかったなぁ
ま、無いものねだりですけどね😁

フックはフロントがプラスねじを採用したオリジナルのトイレットシートリグ、リアはカップリグで、フックにはロングシャンクのイーグルクローが採用されています。
トップウォーターのルアーはこういうメタルパーツでニヤニヤできるのがイイですよね。
今は飲まなくなったのでもうやってませんが、昔は焼酎の氷をカラコロしながら同じルアーを並べてリグのわずかな違いを探すキモいヤツでした。
デジタルノギスを片手にリグプレートの厚みとかネジ山の大きさとかを片っ端から計測しまくり、取るに足らないようなわずかな違いを見つけた日にゃ、まるで鬼の首を取ったかのようなセルフドヤ顔でグラスを空けるという、とても人様にはお見せできない夜を過ごしておりました😅
イッちゃってるルアヲタ達が集まれるバーを開こうと大真面目に考えてた頃の話です。
もしあの時、そっちの道に踏み出してたら今の自分はどうなってただろーなー… (遠ひ目)
ネームは背中にステンシルフォントの横書きでプリントされており、こちらもトップウォーターの黄金律に則ってますね。
しかしこうして見ると、レッドヘッドにゴールドレターってめちゃくちゃ似合いますね。
このビッグヤーンフィーは生産自体が終了している上に、なかなか手放すアングラーがいないので中古市場でもあまり出物がないルアーですが、もし出会ったらプロパーでもゲットしておいて損はないプラグです。
使い込めば使い込むほどダーターの奥深さを知ることが出来るので、トップウォータープラッガーのマストハブベイトと言っても過言では無いでしょう。
最近はデカハネブームの流れでデカダンストーイマグナムが市場を賑わせていますが、90年代から2000年始めごろのクワイエットファンクの勢いを知らないアングラーも増えてきた今、もう一度羽根モノ以外の分野で久保田ワールドを展開して欲しいなーと思ってるのはのんだくれだけでしょうか。