ストームがあえて逆張りで水面覇権に臨んだペンシルベイト
ルアーに限った話ではありませんが、何かひとつヒット作が出ると、数多くのフォロワー、パクリ、インスパイア、オマージュなどなど同じようなコンセプトを持つものがたくさん出てきます。
しかし中には、あえて正反対のコンセプトをぶつけることで覇権を狙うチャレンジャーもいたりします。
いわゆる逆張りというヤツですね。
ストームがリリースしたこのアラシトップウォーカーもそんなチャレンジャーのひとりです。
このペンシルベイトはストームブランドの中核を成すアラシシリーズの水面部隊の隊長として2015年にリリースされました。
エリートプロ、ブランドンパラニュークを大フィーチャーして展開していたのでいずれ水面系も出してくるであろうと期待してましたが、期待通りやってくれましたね。
リリースされた当初は、スーパースプーク系の王道ペンシルだなーと思ってたんですが、実際に投げてみてビックリ。
ペンシルはペンシルでも、あらゆる面で水面の王者スーパースプークに真っ向勝負の逆張りペンシルだったのです。

王者スーパースプークを上回るボリューム
まずそのサイズ感が強力です。
スーパースプークの125mmに対し、トップウォーカーは強気の130mm。
たった5mmの差ですが、体高があるのでかなりボリュームがあります。
ストームは同時に110mmの弟ウォーカーを投入しているので、130mmサイズが大きいと感じるアングラーにも抜かりなくアプローチ。
ウェイトもご覧の通り、ガチで勝負しにいってますね。
スーパースプークが登場したばかりの頃は1ozサイズのペンシルベイトはまだ珍しく、重すぎるだの合わせるロッドが無いだの散々な言われようでしたが、1ozがスタンダードとなった今、もっと飛ばせるルアーが欲しいと言う声が出ており、それに対応した形となっています。
広大なフィールドでバスを探さなければならないアメリカではこの7gのウェイト差がもたらす影響は無視できませんからね。
このサイズ、ウエイトだけを見てもストームがスーパースプークに持つ対抗心は相当なものだと分かりますね。
ローリングを最小限に押さえたフラットサイドボディ
サイズだけでなく、ボディの各部にもライバル心が燃えたぎっています。
この縦扁平のフラットサイドボディはその最たるもの。
ストームがローロールアクション Low Roll Action と呼ぶ、ローリングを最小限に押さえるボディシェイプはこのサイズのペンシルベイトにはあまり見られない形状だけに、使う側としても期待が高まります。
スーパースプークの弱点を突いたストームの巧妙な作戦
しかしそれはアングラーの期待値を高めるギミックなどではなく、スーパースプークの弱点を突いた戦略。
実はスーパースプークは ” バイトはあるけれども乗りがイマイチ ” なルアーとしても知られています。
乗りが悪い最大の要因は、スーパースプークがターンする時に出すロールアクション。
スーパースプークはボディを大きくロールさせることでキレのあるターンを生み出すのですが、ロールするが故にフックが大きく振られてしまい、その結果フッキングしづらくなるという諸刃の剣をもったペンシルベイトなのです。
そこにローリングアクションを最小限に抑えたペンシルベイトをぶつけてくるというこの構図、分かりますよね?
フックのブレを抑えるロテートフックハンガー
さらにフックハンガー(エイトリング)をロテート Rotate、 いわゆる横アイにすることで、フックが大きく振られることなく安定したポジションがキープできるよう設計されています。
その効果はこの画像を見れば一目瞭然。
ボディが左右に倒れてもリングが横向きなのでフックが大きくブレることはありません。
スーパースプークもフックハンガーを出来る限り低くすることで振れ幅を小さくしようとしていますが、横アイにはちょっと敵わないですね。
多重ラトルサウンドでワンノッカーに対抗
外部コンポーネントだけでなく内部にもライバル心がメラメラ燃えてます。
スーパースプークが大きなウェイトボールが前後するワンノッカー方式を採用しているのに対し、このトップウォーカーは大中小極小の四種類、合計7個のラトルボールをそれぞれのユニットに収める多重ラトルサウンド方式を採用。
スーパースプークのカコンカコンと甲高く鳴り響くラトルとは全く別次元の、ジキジキとジャラジャラとシャラシャラを合わせた大音量サウンドを発生します。
この音はワンノッカー系のカコカコ音に慣れているアングラーにはちょっと物足りなく感じるかもしれませんが、逆にワンノッカーサウンドに慣れてしまったバスには新鮮に聞こえるでしょうね。
ラトルルームにアンプの役割を持たせることで衝撃波を増幅
そんな大音量サウンドを生み出しているのが、スリットが開けられたこのラトルルーム。
このように開口部を設けることでラトルボールが壁にぶつかったときの衝撃波が増幅され、完全なクローズ状態よりもボディがより振動し、音が共鳴するという効果があります。
しかも面白いのは、水面でステイしている状態ではラトルルームの真ん中にボールがちゃんと収まるように設計されていること。
これホントによく考えられてますよねー
でものんだくれは天邪鬼なので、このラトルルームにレジンを注入してノンラトル仕様にしてやろうかと目論んでますが🤣🤣🤣
荒れた水面でも確実にアクションするトップウォーカー
打倒スーパースプークの執念はまだまだ続きます。
トップウォーカーは水面での浮き姿勢を変えることでチョッピーウォーター Choppy Water 、つまり波立っている水面で安定したドッグウォークが出来るように設計しています。
両者の違いは、水面に浮かんだ時のラインアイの位置
スーパースプークが水面とピッタリ同じ位置にラインアイが来るのに対し、トップウォーカーは水面から離れた位置にラインアイがあります。
トップウォーカーは最初のワンアクションでわずかにダイブし、そのまま水面の皮一枚をすくうような感じでドッグウォークを始めるのです。
これもスーパースプークの弱点を集中攻撃する作戦のひとつ。
実はスーパースプークは波立った水面が苦手で、カームウォーター Calm Water、つまり水面が穏やかな時は安定した強いドッグウォークが出来るのですが、この画像のように波間に細かい風波が出るようなコンディションでは水から飛び出し易いんです。
その点、トップウォーカーはターン時にスプラッシュを殺さない程度に薄く水を纏って泳ぐので、荒れた水面でも確実にジグザグ軌道を刻めるというワケです。
しかしストームの開発者はスプークの弱点をよく見てますねー。
でもこれは当然といえば当然なんですけどね。
トランプとバイデンのネガティブキャンペーン対決を見てお分かりのとおり、アメリカのマーケティング手法は相手の弱点をほじくり出して、そこを徹底的に、且つ無慈悲に攻めまくるのがセオリー。
たとえルアーであってもその黄金律からは逃れることは出来ず、そこには共存共栄というマインドは存在しないのです。
そんな具合に水面の皮一枚をすくようなスライドを見せてくれるトップウォーカーですが、この特性を利用すると、意図的に潜らせて水面直下でヒラヒラと泳がせることも可能なんです。
例えば、バコン!とバイトがあるもフックアップしなかった時に、すぐにダイブさせてバイトに持ち込むなんて力技も出来ちゃいます。
しかもこのトップウォーカー、ダイブしてからのアクションがヒラヒラ系でかなりヤバイ動きなんです。
その動きを一言で表すと、かつて一世を風靡したレッドペッパーのあのきりもみアクションに、更にフラッタリング要素をプラスした感じ。
ここまで書いたらもうお気づきですよね?
荒れた水面に強くて、意図的にダイブさせることが出来て、しかもきりもみヒラヒラアクションといえば、シーバスに使わないテはありません。
実はシーバスにもめっちゃ効くルアーなんです!
ところで、話は変わりますが荒れた水面に強いペンシルベイトは何かご存知ですか?
リアクションイノベーションズのヴィクセン
リバー2シーのローバー
ペイチェックベイツのレポマン
テッケルのキックノッカー
これらは荒れた水面でも安定したドッグウォークとスプラッシュが出せるので、もしボックスに無ければどれかひとつは押さえておきたいものです。
フックサイズでもスーパースプークを意識
フックは3本ともショートシャンクラウンドベンドの2番を採用。
スーパースプークのフックサイズは4番なので、フッキング率アップの執念はここでも見られますね。
フックサークルは良く動くことの証明
ネームスタンプは腹にロゴマークとともにフルネーム入っています。
往年のストームのドットプリントからは信じられないぐらいのクッキリスッキリなプリントですね。
余談ですが、画像のようにフックがボディに擦れることでフックサークルが出来るルアーは、アングラーが想像している以上に早くフックポイントが甘くなるのでご注意を。
ばっちりホーニングしていても、ちょっと使うだけでフックが爪に掛からなくなるので、長時間投げるなら時々針先をチェックするのはマストですぞ。
おわりに
発売から既に5年が経って確実にユーザーが増えている感じはあるので、ストームが思い描いたスーパースプーク打倒計画は着実に進んでいると思われます。
でもコイツにはちょっと欠点があるんですよね。
まあ実際に使ってみればすぐに気がつくのであえてここでは書きませんが、一つだけヒントをお教えしましょう。
それは… それはこのルアーを使うと、アングラーが ” 番場蛮 ” になってしまうんです🤣
♪ダイヤモンドをつんざいて〜 wwwwww