名称不明クランクベイト Name Unknown Crankbait / クラスタックル Class Tackle

ET2 バグリー オールド クラスタックル
クラスタックル Class Tackleクランクベイトシャローダイバーバグリーズベイトカンパニー Bagley's Bait co.

ET2 バグリー オールド クラスタックル

 

先日の記事で不良ブランクの再利用についてちょっとだけ触れたので、今回はもっと深く掘り下げてみましょう。

 

ということで、今日のルアーはお馴染み?のクラスタックルからお越しいただいた、名前が分かんないクランクベイトです。

 



 

ET2 バグリー オールド クラスタックル

 

毎度お馴染みのクラスタックル… なーんて言っても、分かるわけないですよね。

 

実はこのクラスタックルという会社、母体はバグリーなんです。

 

そう、あのバルサBで有名なバグリーズベイトカンパニー。

 

分かりやすく言えば、バグリーの製造過程で出た不良品ブランクを別のルアーとして再生して販売する時のブランド名がクラスタックル Class Tackle なんです。(*本文終わりにクラスタックルについての追記アリ)

 

このルアー自体が結構古いので、今もこのブランドが存続しているのかどうかは分かりませんが、ルアー好きにとって絶対の存在だったあのバグリーも一企業としていろいろ模索していたという事実が分かる貴重な存在です。

 

ET2 バグリー オールド クラスタックル

 

そこまで話したらもう皆さんお分かりですよね。

 

そうです、このルアーはET-2のブランクをそのまま使った再生ルアーなんです。

 

まあわざわざウッドでこの形状をコピーしようなんて奇特なヤツは居ないでしょうから、分かりやすいといえば分かりやすいんですけどね。

 

ET2 バグリー オールド クラスタックル
ET2 バグリー オールド クラスタックル

 

ほらね、横から見るとよーく分かるでしょ。まんまET-2です。

 

違うのはリップだけ。

 

でもオリジナルのETと比較してみると、こっちのテール部がかなり細くなってます。

 

おそらくそれがB品ブランク扱いになった理由でしょう。

 

ETシリーズは独特のボディ形状だっただけに造形ムラが大きかったらしく、バグリーブランドの物でさえ素人目で見てもカタチが違うのがたくさんありました。

 

当時はそんなのを見て、ヲイヲイちゃんと検品しろよーなんて思ってましたが、こんなセカンドブランドが存在していたということは、バグリーはバグリーなりに検品してたということですね。

 

ET2 バグリー オールド クラスタックル

 

しかーし。 造りはバグリーとは思えないほどのテキトーさ。

 

いくらB品ブランク再生のブランドでも元々はあのバグリーなんだから、ある程度造りはちゃんとしてるんだろーな… なーんて思ってたんですが、そんな期待は見事に裏切られました。

 

見て下さいよ、このリップ取り付け部の汚いカット跡を。

 

あーあーあ、もう。 明らかに失敗しちゃってます。

 

B品認定されたら扱いも急降下しちゃうんですね。

 

最初はこのリップ部分の加工に失敗したのでB品へ格下げになったのかと思ったんですが、オリジナルのETとはリップの取り付け角が全く違うので、やっぱりブランクの造形上に問題があったんでしょう。

 

まあブランク君にしてみりゃエエ迷惑ですよ。

 

造形を失敗された上にこんなにテキトーに扱われるんですから。 ブランクとしての尊厳を根底から否定されちゃってますね。

 

ET2 バグリー オールド クラスタックル

 

このリップを見てニヤリとしたヒト、手ェ挙げてっ!

 

こちらももうお分かりですね。

 

そうですバルサB3のリップをそのまんま流用してるんです。

 

で、お約束の検証をしてみたところ、リップの厚み、断面の処理具合等がちょうど80年代後半~90年代初めのバルサBシリーズのリップとピッタリ一致。

 

ああ… 粗末な扱いを受けるだけでなく、残り物のパーツで組み上げられるなんて…

 

タダで機械の身体がもらえるという星を目指す旅人のような哀愁すら感じます。

 

ET2 バグリー オールド クラスタックル
ET2 バグリー オールド クラスタックル

 

塗装の欠損も気にせずネジ込まれたヒートンにぶら下がるフックも80年代後半のそれ。

 

一応テールには、オリジナルと同じカップワッシャーが使われてるので少しだけ救われた感じです。

 

ET2 バグリー オールド クラスタックル

ET2 バグリー オールド クラスタックル

 

さてさて、気になるのはそのアクションです。

 

いくら不良ブランクを再生したルアーだからといっても、モワモワとおいしそうな泳ぎを見せてくれそうなスクエアリップを持ってるだけに、その期待も高まります。

 

が! ゲンジツはそんなに甘くありませんでした。

 

テールが細い分ボディ後方に浮力が足りないので、浮いた状態ではサミー真っ青のピンコ勃ち。

 

リップと水面がほぼ水平状態になっちゃってます。

 

そんな姿勢から巻き始めてもすぐに泳ぐはずもなく、アクションが立ち上がるまでの30cmぐらいはただただ引っ張られるだけ。

 

一万歩譲って、ポッパーとしてなら使えない事はありませんが、スプラッシュ的にもサウンド的にも中途半端。

 

ならばタダ巻きで!と意気込むも、バランスを無視したあり合わせの身体ではあっというまに泳ぎが破綻して潜ってもすぐに水面を割る始末…

 

やっぱりこれが不良ブランク再生ルアーの限界なんですね😭

 

のんだくれとしては、実は再生ルアーの方がスゲーんだぜ!的な、9回裏二死満塁ツースリーからの逆転サヨナラ場外ホームランを期待してたんですけどね。

 

ET2 バグリー オールド クラスタックル

 

最後にルアヲタ向けのこんな興味深いオマケも紹介しておきましょう。

 

左がクラスタックルのパケ、右が同時期のバグリーパケです。

 

両方ともドミニカ工場で生産されているところや『アメリカ製のパーツで作ってんだぜ!』とイバってるところ、さらには会社のP.O.Boxナンバーまでおんなじです。

 

画像では割愛しましたが、バグリーファンにはお馴染みの【Tuning A Crankbait】 の説明書きまで同じでした。

 

ここまでやったら誰が見たって本体はバグリーだと分かるのに、なんでバグリーはこんな低クオリティの物をリリースしたんでしょうか。

 

そこには一般ピーポーが知らない、何かダークな世界がありそうな気がして仕方がないんですけど…

 

 

【2020年12月追記】

 

Facebookで元バグリー社長であるマイク・ローガン氏と繋がったので、クラスタックルの真相についてあれこれ聞いてみたところ、意外な答えが返ってきました。

 

マイク曰く、クラスタックルは当時上州屋がバグリーに発注したハリーを製作するために設立されたブランドだった、とのこと。

 

ハリーは1997年に上州屋がリリースしたランバーファクトリーシリーズの一員で、クランクベイトの他にミノーなんかもありましたね。 覚えている方も多いはず。

 

画像クリックで拡大します。

 

 

在庫と不良品を大量に抱えていた当時のバグリーを前社長であるチャック・スタンキーウィックから買い取ったマイクは、上州屋からのオーダーを機に、他社ブランドのOEM生産とバグリーとしてのセカンドブランドを担うクラスタックルを立ち上げました。

 

そうです。上州屋ランバーファクトリーシリーズは、クラスタックルブランドでの量産製品第一号だったのです。

 

その後、クラスタックルはバグリーでいうところのハンプバック(注:社内ではバングオーミノーをこう呼んでいたらしい)チャグオー、バルサBの3タイプに限って廉価版を生産していく予定でしたが、バグリー本体が相当数の不良ブランク、端数パーツを抱えていたので、それらを利用した再生品を生産する事がメインになっていきました。

 

クラスタックル名義のET、スムーSmoo、スモールフライ、そしてケンクラフトロゴのダイビンバルサBが存在するのはそのためです。(同時期にスモールフライのブランクはかのトムマン率いるトムマンアウトドアーズにも卸され、そのブランクを元にスパイダーホークシリーズとして販売されていますが、その詳細はまた別の機会に。)

 

しかし合理的に思えたこのダブルブランド展開は、B品が出ても再生できるという気の緩みからか両ブランドの品質低下を招いてしまい、市場でのバグリーの評価は急降下。

 

そしてその後のバグリーは…  もうこれ以上言う必要はありませんね😭

 

実際にはドミニカ生産による税制優遇の落とし穴などがあったりとバグリーブランド衰退の理由は一つだけではありませんが、それでもクラスタックルの存在がバグリーの運命を大きく左右したのは間違いないでしょう。

 

という具合に当時の内情が分かるにつれ、今まで謎に包まれていたクラスタックルの輪郭が見えてきましたが、まだまだマイクからは核心が聞き出せていないので、分かり次第随時報告します。

 

余談ですが、マイクは今、フロリダ州フォートローダーデールの高級住宅地で悠々自適のリタイアメント生活を送っています。

 

白いパナマ帽&白いジャケットに身を包み、オレンジのポルシェボクスターを操るという、映画かよ!と突っ込みたくなるような典型的な “リッチホワイトピーポー” っぷりには笑ってしまいましたが🤣

 

*本文中のハリー並びにハリーの広告画像は高橋さん、木村さんに提供いただきました。ご協力ありがとうございました!

 



 

コメント

 

1. イカメガネ May 21, 2010 12:28
バグリーのBクラス品!
見た目がナニでも、いや、だからこそ実釣能力には期待しちゃいますよね。
なんとなく入ったボロいラーメン屋で出てきたラーメンが奇跡的に美味かった!!みたいな。
でも現実は厳しいのですね。
ところでこれ、国内で出回ってたんでしょうか?

 

2. tei-g May 21, 2010 18:34
我が家には、こいつにダイビングキラーBのリップが付いたやつがいます。
ClassTackle=BagleyのB品と聞いて、やっと似非ETの謎が解けました。
ひょっとしてケンがBagleyに作らせたバッシングシャッドやスムー、ダイビングバングオー似のルアーもB品ブランクだったりしませんかね・・・・。

 

3. いるか May 21, 2010 21:39
バグリーの入社式で、まずは下積みから開始。
『君たちが熟練したら、いづれバグリーを手がけてもらう』
そして時は流れ…
『おれバグリーに上がれたら、あいつにプロポーズするんだ』
しかし現実は厳しく…
『仕事はクラスタックル?バルサBも任されない奴に娘はやらん!』
そして、酒場の隅で老人がバーボンを飲みながら…
『死んだ女房が言ってくれたんだ。私にとってあなたはバンゴーBなの…ってな』
そういう人生がこの二つのメーカーに見え隠れ(笑)

 

4. のんだくれ May 21, 2010 23:14
イカメガネさん
並行かどうかは分かりませんが、日本にも入ってたようですね。
どの種類がどの程度のボリュームで入ってきたのかはまったく分かりませんが、
時々中古屋でクラスタックルを臭わせるモノを見かけるので
結構な量が入ってきてたんじゃないかと。

 

5. のんだくれ May 21, 2010 23:18
tei-gさん
文中では一切触れませんでしたが、実はのんだくれもその辺がアヤしいと睨んでます。
裏は取れてませんが、オールドタイマーシリーズとして出されたママキャットは
ブランク的にも品質的にもかなり粗悪だったので、同じ時期に
出てたケンクラ版ももしかしたらクラスタックルだったのかも…
しかしあの頃のバッシンシャッドはほんとヒドかった… 思い出すだけで涙が出る。

 

6. のんだくれ May 21, 2010 23:19
いるかさん
どんだけ膨らましてんですか!

 

7. ブッシー May 22, 2010 07:16
これはETw
肝油君のおかげでよく知ってますよwこれ。
自分も絶対ETだと思って持ってた時期があります。
泳がした事なかったんでちょっとガッカリ
こいつってばつい最近までポパイなんかのワゴンに常駐してましたよね。
つい1年程前の話です。

 

8. のんだくれ May 22, 2010 22:16
ブッシーさん
ナヌ? 最近までワゴンに出てたとな?!
ムムム… 恐るべしポパイ…
今からでも間に合うかなぁ… って使うんかよ!

 

9. い~もん May 23, 2010 02:11
まいどです
九回裏 二死満塁 フルカウント ピッチャー投げました! 三振!!
まさに今のTigers!!(爆)
(私、虎党ですが…(涙))
最初から最後まで文書 笑いながら拝見しました
どうしようもない(笑)
どうしようもない~
剛で午前0時の向こう側

 

10. のんだくれ May 23, 2010 02:30
いーもん
くだらん事言っとらんで、早よ寝ろ。

 

13. anq October 16, 2010 22:10
自ブログでコイツを取り上げたんですが、ここに正解があったんですね!!
忙しい時期でしたんで読んでませんでした。もしくは読んだけど忘却の彼方に(汗)
うちのは水平に浮いて、結構良い動きしますよ♪

 

14. のんだくれ October 17, 2010 16:33
anqさん
やっぱり動きもバラバラなのね。(涙)
さすがクラスタックルというべきか、さすがバグリーというべきか。

 



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