ルアーの短所はそのまま長所になることを教えてくれたワゴンの人気者 ターゲットミノー86SP Target Minnow 86SP / ダイリツ Dairitsu

ショートビルジャークベイトダイリツ Dairitsu

 

 

『ワゴン落ち』と聞くとあまりポジティブに聞こえません。

しかしワゴン落ちしたからこそその実力が一般に広まったルアーもあるのです。

今日紹介するターゲットミノーはまさにそんなルアーのひとつです。

 

ターゲットミノーとは

 

ターゲットミノーはダイリツが90年代終わりにリリースしたミノープラグ。

当時ダイリツはヘドンなどの海外モノを輸入する以外にも各種オリジナルルアーをリリースしており、バスフィッシングブームを支えた中堅ブランドでした。

ポッパーの名品として今もその名を馳せるイエローマジックやキャットブルなどが商品棚を賑わせていたので覚えているアングラーも多いことでしょう。

 

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ターゲットミノーの発売当時は一部のコアなファンを除いてほとんど話題にもなりませんでしたが、ダイリツの倒産によりワゴンに格安流出したことでその実力が一般に広まり、一時期は市場在庫を巡って争奪戦が繰り広げられるほどの人気者に。

その後、ネクストワンがターゲットミノーの金型を買い取ってトゥイッチベイトという源氏名で再販するなどしばらくはホットなルアーとして持て囃されました。

 

ターゲットミノーのサイズ重さ

 

ターゲットミノーのサイズは全長86ミリ、自重6.5g。

当時人気を博していたラッキークラフトのフラッシュミノー80サイズをほんの少しだけ大きくするという絶妙なサイズ感に設定されているあたり、ダイリツのしたたかさが見え隠れw

 

 

このサイズ以外に68ミリとそれよりも小さい管釣りサイズがありそれぞれにフローティング、サスペンド、シンキングを設定するなど、なかなか気合の入った商品でした。

まあ当時はルアーというだけで片っ端から売れていった時代ですからね、えーい、いったれ!的な見切り発車もあったんじゃないかと思いますがw

 

仕様

大きな凹みを持ったリップ

 

このルアーでまず目を引くのが大きく凹んだカップを持つリップ。

通常ミノー/ジャークベイトのリップといえば水切れを重視したフラットで小振りのリップが多いのですが、ターゲットミノーのリップは”ディンプル”の範疇を大きく超えたがっつりスクープ形状。

このリップの凹みが外見上だけでなく、アクションにおいてもこのルアーのキャラクターを決定づけているといっても差し支えないでしょう。(スイミングアクションについては後述)

 

”流行り”の重心移動システム搭載

ウェイトは当時トレンドだった重心移動システムを搭載。

当時は猫も杓子も重心移動な時代でしたから、売れるミノーになるためある意味必須でもありました。

それを裏付けるかのように当時はラパラなど非重心移動系のミノーは酷い扱われ方でしたからw

ダイリツではこの重心移動構造を”フライトシフト/スイミングシフトシステム”と命名し(なんじゃそれw)カタログや広告などで謳っていましたが、重心移動システム搭載ありきの設計だったのか、性能面ではなかなかツラいものがありましたw

まあこの時期はもっともらしい名称で新機能を謳えばアングラーの目をごまかせた時代でもあり、性能が伴わない重心移動を搭載したルアーが数多く氾濫したことで、結果的に ”猫も杓子も”状態から脱却出来たので結果オーライでしょう😁

 

存在感たっぷりの3Dアイ

 

忘れてはならないのがこの大きな3Dアイ。

同サイズのミノーと比較するとかなり大きく存在感のある目が装着されています。

これは地味ながらも大きなアドバンテージになっているのではないかと。

まあこの辺はアングラーのコンディフェンスというかメンタル的なものですけどね。

 

泳ぎは派手なウォブルロール

 

アクションはこのサイズのミノーとしては異例の大きくボディを揺さぶるウォブルロール。

スローな動き出しでもしっかりと立ち上がる特性は間違いなく大きな凹みを持つリップの効果です。

しかしリップが水を掴みすぎるせいで、早めに巻くとすぐに泳ぎが破綻します。

ゆえに流れのあるスポットでは使い物にならないというオチもあったりw

 

 

さらにアクション時にウェイト位置が定まらないという初期の重心移動システムにありがちな疾患も抱えており、ポーズの度にケツ下げ姿勢になるのでイマドキのミノー/ジャークベイトに慣れてるアングラーには耐え難いかもしれません。

とはいえ、短所も視点を変えれば長所。

この姿勢の不安定さを生かしてリトリーブの間に小さなトゥイッチを入れることで、最近のジャークベイトにはないトリッキーな演出が可能に。

キモはあくまでもソフトにトゥイッチすること。

凹んだリップがしっかり水を掴んで身を翻してくれるので、スローに巻きながら軽くロッドティップを引くぐらいの感じで効果は十分。

ルアーを大きく動かすとフロントフックがラインを拾ってエビになるだけなのでむしろ強いトゥイッチやジャークは厳禁です。

 

美しいフォイルワークはダイリツの十八番

 

ダイリツといえばフォイルカラーというぐらい価格の割にフォイルワークが美しいブランドでもありました。

25年以上前に実売800円そこそこのミノーでここまでキレイなフォイルフィニッシュを実現していたブランドって他にあります?

ダイリツといえばポッパーの名作イエローマジックが有名ですが、イエローマジックが米国で爆発的人気となった要因のひとつに、その美しいホイルワークがあったのは間違いないでしょう。

もちろんスプラッシュポッパーとしての基本性能が高かったのは言うまでもありませんが。

余談ですが、ルアー業界では超有名な某氏が90年代に米国でバス釣りをしながら貧乏旅をしていた時、所持金が減ってきたらイエローマジックをローカルアングラー達に売って日々の食費やガソリン代に充てていたそう。

当時はスプラッシュポッパーでここまできれいなフィニッシュのものは無く、一個5〜60ドルでも飛ぶように売れたそうなので、名実ともに”黄色人種の魔術”だったわけです。

 

フックは#8が標準

 

フックは前後とも#8を装備。

何もイジらないノーマルのサスペンドで超スローフローティングなので、リングやフックのサイズを変えることで通常のフローティングにもスローシンキングにも調整できます。

調整の幅が割と大きかったのでサスペンドがあれば充分と思ってたけど、フローティングやシンキングも買っときゃ良かったなと今更ながら後悔してますが。

 

ネームはタイプフォント

 

クリアで大きな文字のネームスタンプはローガンGGYにも優しい敬老仕様。

ルパン三世のサブタイトルコールが脳内再生されそうなタイプライターフォントを採用しているのもターゲットミノーのウリのひとつ。

しかしなんで ”TARGET” だけなんですかね?

 

 

ちなみにネクストワンのトゥイッチベイトではどこにでもあるフツーのフォントになっちゃってて超残念。

妙なスペースが開いてるのでバランスも最悪だし、そもそもネーミング自体も直球過ぎてスーパーダサい。

ネクストワンとしてはブランドが変わった事をアピールしたいので改名したんだと思いますが、イエローマジックの名前がカンジインターナショナルに引き継がれたように、ターゲットミノーのままで流通させたほうがマーケティング的に良かったんじゃないかと。

まあネクストワンにしてみたらでっかい世話ですけどねw

 

入手はネット頼み

 

そんなターゲットミノーですが、ネクストワン物も含めて生産終了しているので入手は中古市場で探すことに。

しかしその実力を知るアングラーが未だ探しているのか、キイロなどの実店舗での遭遇率は低め。

ゆえにヤフオクやフリマアプリなどネット頼みとなりますが、価格は総じて高め推移なので欲しい人はしばらく様子を見る必要があるかも。

 

ちょっと脇道:ワゴン落ちは悲しい事なのか?

ついでにこのブログでも何度も出ている【ワゴン落ち】というワードにも触れておきましょう。

一般的にワゴンセールというと売れ残りの在庫処分というネガティブなイメージが強いのですが、マーケティング的には意外とネガティブなものではありません。

そもそもワゴンセールにもいろいろあってその目的はさまざま。

  • 倒産品処分
  • 旧モデルの整理
  • 端数在庫の整理
  • 問屋やメーカーが仕掛ける戦略的なもの
  • 小売店のキャッシュフロー対策  などなど

生産コストを下げるために敢えて多めに発注し、販売ピークを迎えたら余剰分を意図的にワゴンや廉価販売に回してセールスのカンフル剤とする手法はルアーに限らず製造業全般に定着しています。

つまり戦略的ワゴン展開ならば、ワゴン価格でもちゃんと利益は確保できる仕組みになっているのです。

アメリカのルアー販売なんかはまんまこのスタイルだし(Buy One, Get One Free=1個買ったらもう1個無料)、ユニクロのセールなんかはこれの王道と言ってもいいでしょう。

その背景には、万が一商品が品薄になっても生産ラインをすぐに確保できないという外注生産ゆえの特質もあります。

近年は商品ロスを抑えるとかSDG的考えも強くなっているのでその傾向から脱却しつつあるとはいえ、マスプロダクションという構造がある限り、良くも悪くもこの手法が途絶えることはないでしょう。

ゆえに ”ワゴン落ち=都落ち” ではないのです。

むしろルアーにおいては、実際に使ってみないと良さがわからない事もあり、気になるルアーが”お試し価格”で入手できるのは消費者にとっては大きなメリットにもなります。

どういう経緯でワゴンセール品になったのかを推理するというオタ的な楽しみもありますしね😁

 

おわりに

 

ぶっちゃけ今はターゲットミノーよりも優れたミノー/ジャークベイトがたくさん出回っているので、このルアーにこだわる必要は全くありません。

先述の通り、アングラーによってはストレスすら感じるであろう旧式のミノーですからおすすめもしません。

でも死角がほとんどないイマドキのルアーと違って、この時代のルアーからは設計者の良くも悪くもアツい思いが感じられるんですよね。

あ”ーもう!!😤とボヤキながらもなんとか使いこなしたいと思わせる何かがあるのです。

どんな最新ルアーでもワンシーズン終わったら過去のものになってしまうという今の消費動向はもうどうしようもないけれど、少なくともルアーの短所を長所に変えてあげられるツリビトにはなりたいなぁと思っとるワケです。

 

 

 

 

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