ルアーと呼べるものが誕生してから100年以上が経ち、人間の創造力と共に絶え間なく進化してきました。
ある会社が新商品を出せば、他社はそれを上回らんとコピーしつつも新しいアイデアを載せ、それを綿々と続けてきたことで今日のルアーに至ります。
ぶっちゃけルアーの歴史はパチモンの歴史でもあるのです。
しかし中にはそんな ”正当な進化” から逸れて独自のテイストを纏ったルアーも存在します。
今日紹介するベィビィバグはそんなアウトローなルアーです。
ベィビィバグとは
ベィビィバグは日本が誇るパチモンの老舗、コーモランが80年代後半にリリースしたクランクベイトです。
24種類のラインナップを擁したマイプラグシリーズの一員としてこの世に生を享けました。
このルアーの元ネタは皆さんご存知旧ストームのバグプラグ。

実はコーモランにはバグプラグ直系のパチとして、ナチュラルナイス21シリーズのダイブバグというルアーが存在するのですが、そのダウンサイジング版的な存在としてこのベィビィバグが誕生したようです。
ベィビィバグのサイズ・重さ
ベイビィというだけあって、ボディ長38ミリ、自重4gとベビーサイズに仕上がっています。
この重量だと昔はスピニングタックルが必須でしたが、近年はベイトフィネスタックルが進化したおかげで扱いやすくなりましたね。
ベィビィバグの特徴
ベィビィバグの最大の特徴はググッと大きくスラントした分厚いリップ。
このサイズのボディにこの厚みのリップを装着するなど不格好でしかありませんが、ラインアイのリングを装着するため、こうするしかなかったんでしょう。
リップ成形はお世辞にも褒められたものではなく、いわゆるプラ痩せで凸凹になっています。
とはいえ所詮はコーモランの安物パチなのでこのぐらいのクオリティの方がらしくてイイですね。
そんなショボい仕上がりを誤魔化すかのように、寄り目アイでおどけているところにちょっとイラッとしますがw
バグというからには虫っぽい演出が必要ですが、ペイントが思いっきりズレているなど、ここにもコーモランのテキトー精神が息づいています。
しかもよーく見てみると、ボディパーツも左右で微妙に大きさが違ってたりします。
左側がわずかに大きいなど、ルアーにはあってはならない低いクオリティw
普通のブランドでこんな仕上がりだったら、不良品だ!💢 と声を上げたくもなりますが、まぁコーモランだからね😄と場が和んでしまうのは、さすがパチモンの老舗だけのことはあります。
これがマーケティング界隈で言うところのブランド信用力というヤツでしょうか。
ボディが左右非対称にも関わらず、甲虫の前羽(外殻)とボディとの段差を表現するなど無駄な情熱が注がれているのもコーモランのDNA。
こんなトコにこだわるならちゃんと、左右対称にしろってのw
ベィビィバグのアクション
そんなツッコミどころ満載のベィビィバグですが、実はナニゲにすげーヤツなんです。
しっかりトゥルーチューンしないとロクに泳がないという家系的な欠陥はありますが、アイチューンさえやれば、誰もがオオッ!と目を見開くアクションスイマーに変身します。
その泳ぎを他のルアーに例えるならば、ヘドンのタドポリーが一番近いでしょう。

いや、カラカラと良く響くラトルが内蔵されているので、タドポリーというよりもクラッタータドかもしれません。
小さなボディを早いピッチでこれでもかと揺さぶって甲高いラトル音を撒き散らすなど、その和み系の外観からは想像もできないアトラクターなのです。
このサイズと動きならバス釣りのみならず、管釣りトラウトやメバルのプラッギングなんかにもピッタリでしょうね。
そう思いつつカタログをめくってみると、ベィビィバグの紹介文にはこんな事が書いてありました。
ボディは小さいがアクションは大きい
スロゥでシャロー、クイックでデープ(原文ママ)
看板に偽りなし。
まさにこの紹介文の通りなのです。
これはのんだくれの勝手な想像ですが、おそらくこのベィビィバグは先述のダイブバグのダウンサイジング版としてではなく、タドポリー/フラットフィッシュ系のへの字ルアーを狙って作ったんじゃないかと。
とはいえ、世間一般が抱くコーモランのイメージ的には、何も考えずにパクってリップ曲げたらたまたまそうなっただけ、という方がしっくりきますけどねw
フック&リグは変則
フックはフロントが#10でリアが#8、しかもフロントのみスプリットリングを介するという変則リグになっています。
この変則リグがフック同士の干渉を避けるためなのか、スイムバランス的なものなのかは不明。
コーモランのルアーにはこういう目的が読めないセッティングが数多く見受けられますが、コーモマニア的にそこを掘り下げるのはルール違反となっています。
なぜなら掘り下げたところでそこに大した意味はないからw
製造工程やコスト的にイケそうな方法で作った結果、こうなったというだけなのです。
なのでコーモランのルアーはありのままを受け入れてあげるのがコーモマニアの掟。
掟といえば、このフロントフックは一本だけラパラのシュアセットフックのように長い不良品が装備されていますが、こういう低クオリティなところに文句を言うのもコーモマニアの間ではご法度とされています。
なぜならこれはコーモランからユーザーへの ”これで釣れるもんなら釣ってみろ!” という挑戦状だから。
コーモ道を極めようとする者は、コーモランからの挑戦状から逃げることは許されないのです! …しらんけどw
ネームが無いのもコーモランの特徴
そしてボディのどこにもネームがないのがコーモランの特徴のひとつです。
実はこの ”ルアーの名前がわからない” という事が、コーモコレクターを目指すにあたり大きな壁になっています。
低価格勝負(当時の定価は530円)のパチモンゆえ、コスト増につながるネームスタンプ工程を省くのは仕方のない事なのですが、コーモランルアーのアイデンティファイ難易度は最高レベルなので、全部とは言わず一部だけでもネームを入れて欲しかったなと。
特にコーモランの名前表記はベィビィバグという名前からもおわかりの通り、捨て仮名(ゥやァなど小さい仮名表記)を多用するなど独特なルールがあるので、そのテイストを残す意味でも英字ではなくカタカナネームが欲しかった!
前述の紹介文にもあった ”スロゥでシャロー” など、同じ長音符発音なのにあえて ”スロゥ” としたり、ディープをデープと表記する変則性はネームヲタにはタマらん要素なんですからw
おわりに
そもそも話として、ルアーのパクリは褒められたものではありません。
が、パチモンじゃないと味わえない歪んだ満足感があり、それを楽しんでいる一部のマニアが存在しているのは間違いのない事実。
それが良いか悪いかは置いといて、楽しみ方のひとつとして確立されています。
まあアレですよ、性癖みたいなもんです。
そんな性癖を人に押し付けるつもりはありませんが、何かをきっかけに違う世界の扉が開くことがあるかもしれませんので、その時は運命だと思って受け入れてあげましょうw