*この投稿はルアー千一夜フェイスブックページに掲載した記事に加筆したもので、オリジナルマグワート / ストームの続編 となります。

世代を問わず名品としての名を欲しいままにしているワイドウォブル系クランクベイトの傑作ウィグルワート。
オクラホマ州の旧ストーム時代からラパラ傘下の現在に至るまで、あらゆるサイズ、カラー、派生モデルが生産されて来たのは皆さんご存知のとおり。
ルアーとしての破壊力はもちろん、現在のルアーデザインにもたらした影響力についてあれこれ語る事自体がもうヤボ認定されても仕方ないぐらいのスーパーな定番アイテムなのです
そんな釣れ釣れの偉大なルアーですから実釣派・コレクション派を問わず旧ストーム時代のオリジナルモデルを探しているアングラーも非常に多く、中古価格が高騰しています。
1970年代のスライドパケ入りのレアカラーになると1,000ドル超えも珍しくなく、今やへドンやクリークチャブと並ぶコレクターズアイテムとなっています。
でも最近の価格高騰は異常ですね。
元々ウィグルワートの破壊力を賞金稼ぎに使っているバスプロがゴリゴリに買い漁ってはいましたが、近年は投機目的なのか、本来のコレクターではないヒトタチが価格を吊り上げているような気がします。
80年代、のんだくれがアメリカに行き始めた頃は1個99セントとかの大流血価格でバーゲンビン/Bargain Bin にうず高く積み上げられてたのになぁ
溢れかえってた頃には見向きもしなかったのに、見かけなくなった途端におチンコおっ立てて探しまくるのはおっさんアングラーの悪い性癖ですね(自戒)
が!今日お話ししたいのはそんなコレクター向けのオリジナルモデルではなく、ラパラストームが出している現行品。
つまりノンコレクターズアイテム。
しかもワートヘッズ(向こうではガチのウィグルワートコレクターをこう呼ぶ。そしてヘッズ達はそう呼ばれる事が何よりの誉れw)からは時に蔑みの眼差しで見られることもあるマグワート、つまりマグナムウィグルワートです。
70年代から80年代の初頭にかけての、ウィグルワートの爆発的ヒットによりウィワート以外のサイズバリエーション展開の要望を受けたストームが満を持して世に放ったマグワートですが、その経歴は決して華やかと言えるものではありませんでした。
その最大の理由は、オリジナルサイズに比べてアクションにキレがない事。
ボディが大型化すればその分水の抵抗と慣性モーメントが増すのでキビキビアクションがスポイルされるのはルアーの宿命として仕方のない事ですが、オリジナルモデルのあのクレイジーな暴れアクションがボディ巨大化でパワーUPするのか!?と下心満タンな鼻息フンガー状態で期待値が高くなった分、アングラー的には肩透かしを喰らったような状態となってしまいました。
初期のマグワートはボディサイズアップに伴い、ルアーとしてのデュラビリティ、つまり強度もアップしなければならず、割れや変形に強い素材を採用した事もアクションがダルになってしまった一因ではないかと推察します。

旧ストーム時代のマグワート。ラパラストーム版との違いはリップ裏の印字がストームロゴではなく”MAGNUM Wiggle Wart”になっている事。
さらにオリジナルサイズのアクション再現にこだわった弊害なのか、それほど潜らないにも関わらず巻き抵抗が尋常ではなく、もしリトリーブ抵抗大会があったらあのDD22と互角の勝負ができるのではと思ってしまうほどのタフガイになってしまっています。
そんなわけでいつしかマグワートは、ルアーにおけるサイズ展開の失敗例とまで言われるようになってしまいました。
しかーし! そんなマグワートじゃないと使えないシチュエーションがあるんです。
それはシャローフラット、もしくはリップラップなどでザリガニ巻きをする時。
ザリガニ巻きとは、ロングリップを備えたダイビングクランクベイトをあえてシャローエリアでボトムにコンタクトさせ続けて砂煙を立てて巻く事で強力にバスにアピールしてバイトを誘発するメソッド。
ダイビングリップゆえのロングリーチが単に根掛かりを回避するだけでなく、ボトムに当てながら巻き続けることで急激に方向を変えながら左右に蛇行するリトリーブ軌道を描きます。
ザリガニ巻きならば大抵どんなダイビングクランクでも左右への蛇行軌道を演出できますが、マグワートでコレをやると、オリジナルのあのクレイジーダートアクションが簡単に再現できるようになります。
それだけではありません。
オリジナルサイズのウィグルワートでザリガニ巻きをやると、障害物に当たるとパン!と斜め上に跳ね上がってしまう特性が災いして、ムーンサルトしてしまうなど常にボトムコンタクトし続けるのがムズいのです。
その点、アクションが少々ダルで水抵抗が大きめのマグワートは障害物に当たっても必要以上に跳ねることなく、ダートしながらも常にボトムにキープコンタクトし続けてくれるという隠れた才能を発揮してくれるのです。
これは状況によってメリットがデメリットに、デメリットがメリットになり得るという典型的な例ですね。
逆に言えばそれだけルアーとしての基本設計レベルが高いが故にあらゆる状況に対応できる能力を有しているのだと思いますが。
さらにさらに。
この現行マグワートには旧ストームのオリジナルマグワートにも無いスンゲー装備が備わっているのをご存知でした?
それはラトル設定の違いです。
旧ストーム時代のマグワートはボディ下部に設えたラトルチャンバーにラトルボールを幽閉しているのに対し、現行マグワートはボディの中をラトルが自由に暴れ回る遊動式を採用。
これによりリップレスクランクかと見紛う如きのけたたましいジャラジャラなスーパーラウドサウンドを発します。
そして嬉しいのは、そのラトル効果を最大限に引き出すためにプラスチック素材も、いわゆるハイフリクエンシーサウンドを生む軽量ボーン系素材に変更されているのです。
それらの変更点がもたらすメリットは「超うるさいザリガニ」としてその名に恥じぬパフォーマンスになっただけでなく、ラトルが増量されたにも関わらず約2g、なんと10%も軽量化され、それによって生まれた浮力がアクションレスポンスにも好影響をもたらしてくれています。


これはルアーとしての強度とアピール効果を両立しており、80年代当時の技術では出来なかった事を成し遂げたという意味で、リメイクの理念を具現化した稀有な存在と言えるでしょうね。
でもね、いくらラパラ傘下で進化したとは言え、手放しで褒められないこともあるんです。
それはフック。
これはザリガニ巻きに限定したオハナシですが、標準装備のロングシャンクフックはバスフィッシングとの相性がイマイチなのです。

オリジナルマグワートに標準装備のフック。ビッグゲーム対応の太軸ワイヤーになっている
マグワートは北米ではバスフィッシングではなくサーモンフィッシング用ルアーとして使用されていることが多いのでこの仕様なのですが、ザリガニ巻きはボトムべったりでジグのように巻くので、あまり跳ねない特性が災いし、吊るしのまま投げると割と高確率でスタックします。
なので実戦版ではショートシャンクワイドゲイプのフックに交換することをおすすめします。
これによりスタックの頻度は減って、いい感じの砂煙トレイルを楽しむことができるように。
何年か前、出張の際訪れたカリフォルニア州ベリエッサ湖のシャローフラットでもこのマグワートが活躍してくれた事もあり、のんだくれのガチボックスには必要不可欠な存在となっています。
日本ではこのラパラストームマグワートは何年か前に大量にワゴン流出した経緯があるので、プロパー商品としてはなかなか手に入りにくなってしまっているかもしれません。
でももし中古屋で見つけることができたなら、例え定価だったとしても手に入れるべきルアーなのであります!(マツコの新三大風)