ルアーフィッシングを長くやってれば誰しもターニングポイントになるルアーがあります。
あのルアーを知ってから釣れるようになったとか、あのルアーでタックルセッティングの重要さを知った等々、その入り口は人それぞれですが、やはり最も多いのは ”あのルアーでそのジャンル/カテゴリーの威力を知った” というやつでしょう。
今日紹介するルアーはのんだくれが止まるミノーの実力を知るキッカケになったルアー、シマノのJM110です。
JM110Nとは
JM110Nはシマノが1996年?にリリースしたサスペンドジャークベイトです。
ジャークミノーの頭文字とサイズを商品名にしたこのルアーは、シマノ・スコーピオンシリーズの一員としてクランク/ペンシルベイト/シャッド/バイブレーションなどと共にデビュー。
当時はまだバスフィッシングブームが上り調子だったのと、ジム村田氏の提唱していたナチュラル&アピール理論を取り入れたマーケティングの巧みさ、さらに入手のしやすさで爆発的ヒットとなりました。
JM110Nのサイズ・重さ
JM110Nのサイズは110ミリ、11g。
アピール版モデルとなるJM110Aと同じサイズで登場しました。
このサイズ以外に95ミリ、70ミリのサイズバリエーションとダイビングリップを備えたロングビル版もラインナップする事で、ライバルのダイワT.D.ミノーに真っ向勝負を挑んでいました。
ロングビルモデルはポジショニングがイマイチはっきりしてなかったこともあって話題になりませんでしたが、このショートビル、特にナチュラルモデルはその運動性能から、非常に高い評価を得ていました。
もちろんのんだくれもそのうちのひとり😁
ナチュラルモデルとアピールモデルの違い
ナチュラルモデルとアピールモデルの違いはリップ形状。
ナチュラルがボディとほぼ同じ幅のリップなのに対し、アピールモデルは幅広リップを採用。
リップの取り付けもナチュラルが前寄りでスラントしているのに対し、アピールはやや後にずらした位置でナチュラルモデルよりもリップを立てて設置しています。

上がナチュラルモデルで下がアピールモデル
画像引用:Yahoo.co.jp
アクションの違いを端的に言うならば、ナチュラルはジャークベイト的、アピールはクランキンミノー的にそれぞれ味付けがされており、アピールモデルの方が強いウォブリングでロングAの15Aモデルに似た感じになっています。
元々ジムは15A使いとしても有名だったので、その辺の影響もあるでしょうね。
両者はリップ形状が違うだけと思いがちですが、当然ながら外見は変えずにウェイトバランスも含めたトータルでの調整が必要になってくるので、開発担当者は苦労しただろうなと。
JM110Nの特徴
良くも悪くもシンプルな外観
このルアーの特徴はなんといっても無機質でシンプルな外観でしょう。
このモデルに限らず、スコーピオンシリーズ全体がこのテイストで統一されていました。
当時の市場はメガバスの台頭によりリアル路線志向でしたが、まるでその流れに逆らうかのようなシンプルな造形は、良くも悪くもシマノらしいプチ異端児テイストを持っていました。
しかしそのウェイト構造には当時の最先端コンセプトが凝縮されていたのです。
当時のミノーとしては画期的なウェイトシステム
内部が確認できるトランスパレントモデルを持ってないので画像をお見せできませんが、JM110のウェイトは小さめのウェイトボールをボディの下の方に複数個並べて低重心化を図ったシマノ独自のもの。
一般的なジャークベイトが大きめのボールを入れるところ、JM110Nはルアー下部に重心を集中させるためにあえて小さいボールを複数使うことで従来のミノーにはなかった超低重心バランスを実現しています。
これにより一般的な固定重心ミノーを凌ぐ安定性を実現し、姿勢復元の速さやアクションのキレ、なによりも安定性に大きく貢献しています。(アクションの詳細については後述)
これは当時のミノーとしては画期的な事でした。
ちゃんと動いてちゃんと止まるミノーの先駆け的存在でしたね。
その後、他社からも同じようなウェイトシステムを採用したジャークベイト/ミノーがリリースされるも鳴かず飛ばずで終わったのは、やはりJM110Nの完成度が高かったからだろうと。
とはいえ、ルアープロダクションの世界は日進月歩。
近年になって米国の釣りユーチューバー達が立ち上げたブランド、グーガンスクワッド Googan Squad が出したスカウト Scout がJM110Nの牙城を崩し始めたので、JM110Nの代替ミノーを探している人はトライしてみては?
なんかオモロいジャークベイトないかなーと思ってるのであればグーガンスクワッドのスカウトがオススメ。
ワンテンも真っ青の横っ飛びダートと逆デルタボディの強力フラッシングで楽しませてくれます。
シマノのJMシリーズが好きならハマるはず。
好き嫌いがはっきり分かれる顔もまたナイス😁 pic.twitter.com/5in6adTLpe— ルアー千一夜 【公式】 (@lure1001) February 15, 2022
スカウトについてはいずれ記事にする予定なのでおたのしみに。
アクションは横っ飛びダート&急制動がウリ
スペック上はサスペンドとなっていますが、ルアー単体では割と沈下速度が早めのスローシンキング設定。
ラインに結んだ時の抵抗も踏まえてこのような設定になっていると思いますが、細いフロロカーボンラインだと沈下速度にストレスを感じる人もいるかもしれませんね。
飛距離に関しては特に問題なし。
よく固定重心だと飛ばないと言われますが、ジャークで動かせる有効距離ならばカバー出来るので全く問題ありません。
肝心のアクションは見出しの通り、キレのある横っ飛びダートとピタッと止まるメリハリが楽しめるセッティング。
しかもそのダートは絵に描いたようなサイドtoサイドアクションで、まるでペンシルベイトのような水中ドッグウォーク。
一般的な重心移動ウェイト搭載のミノーにありがちな姿勢の不安定さが全くみられないのです。
ここに超低重心バランスの良さが生きています。
そしてロッド操作をさらに楽しいものにしてくれるのが、ダート時のボディの一瞬の閃き。
アングラーの意図するままにギラっとダートさせて急制動静止させることができるので、ロッドを動かしてるだけでとにかく楽しいのです。
しかもしっかり釣れちゃうというオマケ付き。
のんだくれはこのJM100N登場以前にもミノー/ジャークベイトでそれなりに釣っていましたが、それらのメインはログやロングA。
それらはジャークすればちゃんとダートしますが、JM110Nのように強いフラッシングを発することも、その場で静止することもないので、どちらかというと巻きの間にトゥイッチで誘うぐらいの使い方でした。
実際それで釣れていたこともあり、特に不満は感じていませんでした。
しかしこのJM110Nの登場で、止めて食わせるメソッドの有効性に開眼してしまったのです。
最初はその外観ゆえ嫌っていたにも関わらず、お約束の爆買いが始まってしまったのでした😁
ホログラムを主体とした90年代のカラーリング
カラーはホログラムを多用した90年代のトレンド最先端。
かつてのホログラムはゴワゴワのシートをボディに貼り付けたものが多く、どうしても無理やり感が否めませんでしたが、塗装技術の進歩によりこのルアーがデビューする頃には随分自然な感じになっていました。
が、塗膜の耐久性はまだまだのレベル。
カラーチャートにはホログラムを採用していないペイントモデルも複数ありましたが、このJM110Nはギラリさせてナンボのルアーと思ってたこともあり、使っていたのはほぼホログラムでした。
今思えばもっと他のカラーも買っときゃ良かったなと。
このサイズにしては珍しい2フッカー
110ミリサイズのミノーにしては珍しく2フッカー仕様で#4サイズが標準でした。
しかしこのフックはすぐに伸びてしまうという問題を抱えていました。
ミノー/ジャークベイトはファイト中に口以外にもフックが刺さることが良くあるのですが、そういう場合には高確率で伸びてしまうのです。
伸ばされないように太軸フックに交換すると、今度は沈下レートが大きくなって、ダート後しっかり止める事ができなくなるという副作用が😂
このフック問題であ”ーっ!となってたアングラーは多いんじゃないかなぁ
シマノだけにネームはサイアク
そしてルアーの完成度に反してネームはサイアクのひとこと。
まずボディカラーと同系色でスタンプしてあるので全然読めません。
トーンカーブでコントラストを強めてやっと画像判別できるようなネームだったら、そもそもプリントする必要ある?
しかものんだくれはこの商品コード的なルアー名が大嫌い。
特にスコーピオンのルアーは全部コレ系だから、読む気も起こらん。
別にイニシャルなんかにしなくてもそのままジャークミノーでいいのにと思っちゃう。
イニシャルにしたのはジムのセンスなのかな?
少なくともネーミングを決める企画会議とかでスタッフが真剣にアイデアを練ってたら、こんな安易なプリントにはしないはず。
今のバンタムルアーの名前もあんまりぱっとしないから、シマノはそもそもルアーのネーミングには関心がないんだろうなー。
JM110Nはどこで買える?
そんなJM110Nの入手は超簡単。
中古屋にゴロゴロしてるので見つけようと思えば難なく見つかるでしょう。
一時期に比べれば遭遇率は下がりましたが、当時大量に出回っただけにタマ数は多く、さらに塗装の弱さゆえ、時には5個300円とかで処分品の中に入ってることも。
遅かれ早かれボロボロになるルアーなので、外観のコンディションは無視してゲットするのが勝ちなのです。
おわりに
どんな物にも言えることですが、本当に良い物って時が経っても不変の価値があります。
そういう意味ではこれはルアーとしての本質を突いた逸品ではないかと。
デザイナーに怒られちゃうけど、ルアーは見た目じゃないという事を如実に顕しているのがこのJM110Nなのです。