良いか悪いかは置いといて、ルアーの世界ではヒット作をパクるのはもはや普通のことになっています。
アプローチの仕方や程度の違いはあれど、他社で売れる商品が出たらすぐにマネるのはお決まりの流れになっており、パクりパクられることでルアーが発展してきた事実はもはや疑う余地はありません
しかしメーカー側もパクリ行為をただ指を咥えて見ているだけではありません。
特許や商標を取得して法的プロテクトしたり、顧問弁護士に高い金を払ったりと防衛策を講じているのはみなさんご存知の通りですね。
しかしそんなパクリ文化の中にあっても、正規の手続きを踏んで筋を通す商品やメーカーもあるのです。
それが今日紹介するヤングスタックルのシャッドキャット。
特徴のある目を見れば一目瞭然、ストームのスィンフィンのクローンです。
スィンフィン(シルバーシャッド)は旧ストームが1965年にリリースしたシャッドシェイプのクランクベイトです。
1971年にホッテントットが、そして1975年にウィグルワートが登場するまでストームの屋台骨を支えた名品としても知られています。
ホッテントットもウィグルワートもなかった頃のストームのアドを69年のField & Stream誌で発見。 pic.twitter.com/l43NNTYIps
— のんだくれ@ルアー千一夜 (@lure1001) May 25, 2021
極薄&軽量の縦扁平ボディゆえキャストしにくい事でも有名ですが、ラパラ傘下となった今でもオリジナルスィンフィンとして生存している事からもお分かりのとおり、その性能はお墨付きです。

そんなスィンフィンを忠実に再現した自社製品が欲しい!と思ったのが、ミズーリ州マウンテングローブに拠点を置くヤングスタックル Young’s Tackleです。
コトの詳細はわかりませんが、ストームに特許料を払ってまで自社製品を作ったぐらいですから、よほどスィンフィンの実力に惚れ込んでいたんでしょうね。
そしてリップにはスィンフィンのパテントナンバーがしっかりと刻印されています。
のんだくれの記憶が確かならば、スィンフィンはリップ前面の湾曲形状と薄いボディとの構成で特許を取得していたはずです。
何年か前までこのパテントの詳細が閲覧出来ていたんですが、残念ながら今は見られなくなっているので確認できません。
この詳細についてご存知の方がいらっしゃったら是非ご一報を。
ところが、ただ単にスィンフィンを再現しただけでは面白くないと思ったのか、ヤングスタックルはレーベルのお家芸でもあるクロスハッチパターンを載せてしまうという暴挙に出ます。
元々ボディにネームなどの出自情報を持たないこのシャッドキャットは、ボディはレーベルなのに目はストームという曖昧なポジションとなってしまいますが、のんだくれが思うにこれこそがヤングスタックルがやりたかった事なのではないかと。
つまりヤングスタックルは、レーベルのクロスハッチがもつ効果とスィンフィンの実力を熟知していて、この二つの要素を掛け合わせれば最強のルアーが出来上がる!と信じた結果としてこのシャッドキャットが生まれたのではないかと考えているのです。
まあこれもヲタの勝手な想像に過ぎませんがw
フックは前後ともカドミウムフィニッシュのクローポイントを採用しています。
おそらくこれはソルトウォーターでの使用も考えてのことでしょう。
というのも、当時スィンフィンは海洋性シャッドであるメンヘイデンのイミテーションとして紹介されましたが、キビキビとした動きを生み出すための軽量ボディが仇となって飛距離が出ないため、ソルトの分野ではいまひとつブレイク出来なかったという経緯があるのです。
ヤングスタックル的には、自重を増やしてフックもソルト対応にすれば東海岸のソルトマーケットにも参入できるという読みも少なからずあったと思うのです。
ま、これもいつもの妄想ですけどねw
ミズーリ州のど田舎で産声を上げたこのシャッドキャットがその後どんな風になったのかは全くわかりませんが、コレクターの間でもヤングスタックルという名前を聞く事がほとんどない事から想像できる通り、泣かず飛ばずのまま消えていったんでしょうね。
今よりもパチモンが横行していた1970年代に正規の手続きを踏んで筋を通したヤングスタックルには生き残って欲しかったというキモチもありますが、自社オリジナルがないと食い繋ぐのは難しいので、消えてしまったのは仕方のないことなのかもしれません。
そうやって考えると、老舗として何十年もルアーを作り、第一線で活躍しているメーカーがいかにスゴいのかが分かりますよね。