ワート好きならスルー厳禁の”ジェネリックルアー”
この10年ほどでルアーのカテゴリーにも “ジェネリック” というワードが聞こえるようになってきました。
ジェネリックとはもともと医薬品業界で使われていた業界用語。
主に特許期間の切れた先発薬を、用法や効果、安全性、副作用などのリスクも全く同じのままで製造販売するというような意味で、研究開発コストがかかっていない分コストが安く抑えられるという大きなメリットがあります。
これと同じ意味合いで、ジェネリックルアーというワードは、パテントが切れたルアーの機能や意匠を採用したルアーを指す単語として使われるようになりました。
よってパテントの有効期間が終わっていないものや、元々特許申請されていない商品をただマネただけの物は単なるコピー品となり、ジェネリックとは明確に区別されます。(とはいえ最近では都合良くジェネリックを名乗っている中国コピー製品も出回っているのが現状ですが)
そんなジェネリックのルールに則ってリリースされたのが、このコットンコーデルのウィグルオー Wiggle’O’。
クランクベイトの名品ウィグルワートの理念をコーデル流に昇華させた快作であり怪作で、ワート好きならばスルーしてはいけないジェネリックルアーです。
ウイグルオーとは
ウイグルオーはビッグオーを世に知らしめたコットンコーデルが2000年にリリースしたクランクベイトです。
その名前からもお分かりの通り、旧ストームのウィグルワートを徹底的にマークして開発されました。
旧ストーム無き後、ブラッズ Brad’s や ワーデンズ Warden’s など多くのルアーブランドが一斉にウィグルワートのジェネリック系をリリースしましたが、そこにコットンコーデルも参戦した形です。
逆の見方をすれば、ウィグルワートという存在がそれらのルアーブランドにとっていかに大きな脅威であり、且つライバル会社の製品でありながらも傑作として認めていた証とも言えます。
発売当時、このウィグルオーに対するコットンコーデル、ならびにプラドコの熱の入れようは相当なもので、本国メディアでの露出はなかなかのものでした。
ウィグルオーは2001年のプラドコクリスマスグリーティングのルアーにもなっており、この事からもプラドコ内では重要な戦略商品だった事が伺えます。
当時は今ほどネット環境が発達していなかったにもかかわらず、コアなクランカーの間で話題になるなど十分な実力を備えているので、今でもシークレットとして投入しているアングラーは少なくないはず。ニヤリ
ウィグルオーのサイズ/重量/スペック
ウィグルオーには大小2つのサイズがラインナップしています。
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両サイズともウィグルワートのオリジナルサイズ、マグナムサイズに準じている事からもワートへの強いライバル心が伺えますね。
潜行深度はカタログ値なので実際はここまで潜りません。
タックルセッティングにもよりますが、実際に使っている感覚では両モデルとも14lbライン使用で7〜8ftが限界ではないかと。
ウィグルオーのカラーチャート
サイズなどのスペックだけでなくカラーチャートもウィグルワートに真っ向勝負を挑んでいます。
このカラーチャートでは大小2サイズ合わせて41色がラインナップしていますが、本国だけで販売されたカラーもあるのでおそらく60色以上あったのではないかと。
サーモン/スティールヘッド向けにメタリックカラーもラインナップするあたり、どんだけライバル心燃やしてんだって感じですよね😁
ここまでやるんだったら、ボールチェーンのサイワッシュフッカーモデルも投入すれば良かったのにね🤣

ストーム社ウィグルワートに設定されていたサイワッシュフックモデル。サーモン/スティールヘッド用モデルだが各水域のレギュレーションに合わせたシングルフックモデルを多数ラインナップしていた。
ウィグルワートとウィグルオーの相違点
しかし、いくらウィグルオーがウィグルワートのジェネリックだったとしても、全く同じメイジャメントで出すことは出来ないので、各部は少しづつ違いがあります。
まさにこの違いがウィグルワートとウィグルオーとの性格の差であり、かつコットンコーデルの意地の見せどころでもあるので、のんだくれの様なヲタでなくとも気になるところですよね。
リップはしっかり水を掴む凹面タイプ
本家との最大の違いはこのリップです。
ウィグルワートのリップ一体成形とは違い、差し込み式になっているのがウィグルオー。
リップを後付けにすることで、プラスチック成形時の歪みを回避しつつ生産効率を上げるあたりは合理主義のプラドコらしいですね。
しかし後付けにしたのはそれだけが理由ではありません。
リップはボディの素材よりも少しだけ柔らかな別の素材を採用することで、衝撃によるリップ割れも抑止。
リップの前面は緩やかなアールが付けられた凹面になっているだけでなく、リップのエッジを薄くする事で水キレの向上を図っています。
これによりウィグルオーは本家ウィグルワートよりも振り幅の大きなウォブリングアクションを出すことに成功しています。
コレが “ウィグルワートよりも暴れる” と言われている要素のひとつです。
しかしこのウィグルオーは、激しく暴れるがゆえにリトリーブの対応限界速度が意外と低いというデメリットも。
つまりファーストリトリーブだと泳ぎが破綻してしまうのです。
ウィグルワートは平面リップで過剰な水抵抗を受け流すので高速リトリーブでもギリギリのところでバランスを保って最後まで泳ぎ切りますが、このウィグルオーはアクションの大きさにフォーカスして凹面リップを採用した結果、一定のスピードになると途端に泳ぎがぎこちなくなるという持病を持っているのです。
こう書くと、”なーんだやっぱり本家には勝てないじゃん” と思いがちですが、おそらくこれはコーデルがわざと仕込んだ仕様なんじゃないかと。
つまり、予測できない不安定アクションでバスの本能を強引に目覚めさせてしまうウィグルワートに対し、このウィグルオーはある一定のスピードになったら勝手に不安定な泳ぎになる仕様で勝負しているんじゃないか、と。
事実ウィグルオーへのバイトは、リトリーブ中にテンションが抜けるなど、泳ぎが変化した瞬間に出る事が多く、これは複数のオー使いに共通する意見でもあります。
コーデルがわざとこの仕様にしたのかそれとも偶然の産物なのかは確認のしようがありませんが、この仮説は巻けば巻くほど確信に近付くので、是非皆さんの声も聞かせて欲しいなと。
使用前の絶対チェックポイント
でもそんな不安定アクションを出すにもちょっとした注意が必要です。
実はこのルアーは使用前にかなりシビアなトゥルーチューンが求められるのです。
その理由はこのラインアイの取り付け方法。
ご覧の通り、折り曲げたワイヤーをリップの裏側から挿入しているだけのラインアイなので、ワイヤーが完全に押し込まれていなかったり、片側だけが浮いていたりと個体差が激しいルアーでもあるのです。
よって箱から出した吊るしの状態で投げると、結構な確率でまっすぐ泳ぎません。
しかもこの変則ラインアイと先述の柔らかいプラ素材ゆえ、通常のトゥルーチューン程度ではビクともしないという曲者なのです。
なのでこのルアーを使うときは、リップの裏からワイヤーを完全に押し出した上で、通常よりも強い力で、かつ根気よくチューンするという作業が必須です。
その面倒な作業を乗り越えないと、”勝手に不安定になる泳ぎ” が得られない、ちょっと面倒なルアーでもあるんです。
そんな気難し野郎ゆえ、”なんだよコレ使えねー!”と投げ出してしまうアングラーが多発。
もしかしたらこのウィグルオーがブレイクしなかった理由はその辺りにあったのかもしれません。
でもこのひと手間でバスのバイト率が大幅に上がるんだったら楽しい作業ですよね。
アレですよ、レース前のエンジン調整みたいなもんです。
栄光を手にするためには小さな労力でも惜しんではイケマセン😁
ウィグルオーのラトルサウンド
気になるラトルサウンドはジキジキ響く高音系。
後にラパラストームから発売されたオリジナルウィグルワートのメタリックカラーのサウンドに近い響き方です。

解剖してないので確認は出来てませんが、おそらくスチールとブラスの混声合唱団ではないかと。
まだこのルアーが発売された当時、タングステンは高コスト素材だったので使われていないと思われ。
でもラトルの音量だけでなくボディ自体を震わせる衝撃波も強くなってるので、ラトルサウンド勝負は完全にウィグルオーの勝ちですね。
ボディにはよく共鳴する素材、そしてリップには衝撃に強い素材と、それぞれ違うプラ素材を採用したのがここで生きてますね。
特徴的な昆虫アイ
そして独創的な目をもっているのもこのルアーのウリの一つ。
バーテンダーに扮した仮面ライダーがスミスウィックとポーとストームのアイを足して、シャルトリューズを数滴垂らしてトニックウォーターで割ってくれた様な変則3Dアイを持っているのもこのルアーの特徴。
好き嫌いがはっきり分かれるとこでもありますね。
ストームとの違いを明確に打ち出したいキモチも分からんでもないんですが、コレはちょっとやり過ぎましたね。
ずいぶん前に”人形は顔が命です”という雛人形のCMがありましたが、ルアーにもそれは当てはまります。
一番思い入れしやすい顔まわりがこの奇抜さなので、敬遠した人が多かったのも頷けますよね。
とはいえ生産が終了して手に入りにくくなった今ではこのヘンテコアイも可愛く見えてくるから不思議なもんです。
互換性のある3Dアイが無いのでアイが取れたらそれまでというのも儚げでまたよろし。
ウィグルオーのカラーリング
ザリクランクフリークが見たらチビりそうなカラーリングも特徴です。
カラー名はゴールデンクローバグ。
今、このザリガニの細かいイラストワークを見てフレッドアーボガストのシーインズビリーヴィン Seein’s Believin’を思い出しちゃったエロい人は正直に手を挙げなさい。
フックはショートシャンクの#4が標準
画像のCW01モデルには#4のフックがマッチします。
デフォルトではブロンズのラウンドベンドが装着されていますが、暴れアクションを抑えるためにやや太軸のVMCに交換済み。
たったこれだけのことでリトリーブ限界スピードが上がるのでいろいろイジリ甲斐があります。
リアのフックを#6にサイズダウンすると、金田のバイクの様にピーキー過ぎて使いにくくなりますが、ここ一番バイトが欲しい時などは使えるクランクに変身します。
テールのフックハンガーをボディエンドに設置したのもワートとの差別化でしょうか。
ウィグルオーのネーム
ルアーのもう一つの顔となるネーム(と思ってるのはのんだくれだけ、と言われた事がありますがw)は、リップにデカデカとエンボスモールドされています。
筆記体のブランドロゴとルアーのデザインロゴが収まる姿には惚れ惚れしますね。
Oを囲む記号を ” (ダブルクォート)ではなく、’ (シングルクォート)にしている辺りにも、当時のセールスチームの思惑が埋められていそうでなんだかワクワクします。
アメリカではダブルクォートは何かを揶揄したり皮肉っぽく使われる事があるので、もしかしたらそれに対応したのかもしれませんね、ってのはあまりにも拡大解釈し過ぎでせうか。
おわりに
てな具合で長々とノー書きをタレてきましたが、言いたい事は “ウィグルオーは使えるクランク” だという事。
ウィグルワートに慣れきったアングラーには違和感アリアリだと思いますが、シビアなアイチューンとリトリーブスピードさえ外さなければ必ず強力な武器になるクランクベイトです。
生産が終了して久しいルアーですが、幸か不幸かこのウィグルオーは未だウィグルワートの影に隠れていて、真の実力が知られていないルアーでもあります。
三軍ボックスで眠らせてしまっている人はもちろん、持ってない人は探してでも投げて欲しいルアーのひとつですぞ。