ビルルイスルアーズの屋台骨を支えるリップレスクランクの代名詞、ラトルトラップ。
アメリカではリップレスクランクの事をまとめてトラップと総称するほど浸透しているのはみなさんご存知の通り。
絆創膏の事をいちメーカーの商標名であるバンドエイドと言っちゃうのと同じアレですね。
商品名がそのまま代名詞になっちゃうって、モノを作る仕事をしている人にとってはこの上ない幸せですよね。
しかしその驚異的、いや歴史的とも言えるラトルトラップの大ヒットは、ビルルイスルアーズの他のルアーの存在を霞ませてしまうという副作用も生み出してしまいました。
そんな中には、実力がありながらも陽が当たらないまま消えていったルアー達も。
今日のゲスト、ウォーキンスティックはそんな可哀想なメンバーの一員です。
ウォーキンスティックとは
ウォーキンスティックが発売された明確な時期は分かりませんが、確か80年代終盤から90年代の始め頃だったと記憶しています。
この頃のビルルイスはラトルトラップの呪縛から逃れようともがいていた時期で、スピットファイヤやスラップスティックなど、とにかく リップレスクランクではないルアーを連発していました。
おそらく、”リップ付きのリップレスクランク”、ダイビングラトルトラップの大コケで懲りたんじゃないかと😁
その時期にビルルイスから発売されたルアーが今生き残っていないことからお分かりの通り、それらのほとんどはイマイチでしたが、その中でもこのウォーキンスティックはキラリと光るものを持っていたのです。
サイズ・重さ
ウォーキンスティックは110ミリ、19.5gの、オリジナルザラスプークとほぼ同等の体躯を持つペンシルベイトです。
ラトルを大量に擁したジャークベイト、ラトルスティックの進化系である垂直立ちミノー、スラップスティック Slap Stik と同時期に発売されました。
多彩なアクションを生む立ち浮き姿勢
ウォーキンスティックの特徴はこの垂直に近い立ち浮き姿勢です。
スラップスティックも同様の立ち浮きなので、これらのルアーの開発担当者は立ち浮きトップウォータープラグの有効性によっぽど惚れ込んでいたんでしょうね。
そして開発者の狙い通り、両者ともとても良く釣れるルアーに仕上がっているのです。
まずこのルアーの特徴として挙げられるのは、アクションが非常に多彩であること。
その名が表す通り、左右へのドッグウォークとそれに伴う派手なサイドスプラッシュは言うまでもなく、立ち浮き姿勢を生かしたダイビングアクション、そして水面直下ダートでジャークベイトのように使うこともできるマルチプレーヤーなのです。
しかもそれらの演出の全てがテクニック不要で簡単にできちゃうというのがこのルアーのスバラシポイント。
ペンシルベイトの王様と言われるオリジナルザラスプークはダイビングが苦手なので、この辺りライバルを良く研究してるなという印象ですね。
大量のラトルを内蔵
そしてこのルアーのもうひとつの特徴は、ボディ内部に大量のラトルが封入されていること。
ビルルイスなんだからラトルを入れるのは当然でしょ!と言われそうですが、三種類のラトルボールの配合バランスが実にイイ感じなのです。
ヘッド部にはパニック状態のベイトフィッシュが出すと言われているカチカチサウンドを発するスモールビーズ、テール部には材質とサイズを変えた2サイズを封入したアンサンブル構成でバスの側線を刺激します。
しかもその音量がペンシルベイトとしてはなかなかのラウドパーク。
今でこそペンシルベイトはワンノッカーラトルの大音量カコカコサウンドが主流になりましたが、このウォーキンスティックは当時としてはかなりの音量を誇っていました。
やはりラトルサウンドの調律にかけてはさすがビルルイスですね。
ビルルイス家のアイデンティティ
ビルルイスといえば、こんなところにもビルルイスらしさが垣間見えます。
やっぱり背ビレはビルルイスの前身だったレッドリバールアーズの頃からのアイデンティティでもあるので譲れないところですよね。
しかしビルルイスのルアーはこの背ビレの存在に頼ってしまい、ネームプリントが無いのが欠点。
最近のビルルイスには一部ネームプリントが入ったものがあるので、改心した?のかもしれませんが、どうせ改心するならもっと早くからして欲しかったなー😁
アメリカには、ルアーの性能には一切関係ないけれど、それでもこの意匠だけは譲れないぜ!と言うプライドを持ったブランドが多く存在しています。
しかし近年のブランド統合や生産国の集中により、そういった個性が消えつつあるのも事実。
商品からメーカーやブランドのアイデンティティが消えつつあるのはルアーだけでなく他の商業製品にも来ている波で、マットルアーズのマットサーバントもハンティング用ライフルはどこの会社も同じ形になったと嘆いてました。
我々がおじいちゃんになる頃には、ルアーを見ただけでブランドが分かるというのは遠い昔の話になるのかもしれませんね。
フックは#2サイズが標準
フックは#2サイズのショートシャンクラウンドベンドを採用。
この時期のビルルイスには珍しくブラックニッケルを装備しています。
よくよく考えてみたら、これ自分でフックを交換してました😅
オリジナルのフックは#2のロングシャング、シルバーニッケルフィニッシュですが、あまりにもショボいので交換したのをすっかり忘れてました。
このウォーキンスティックがリリースされた時期はまだブラックニッケルのフックは出回ってませんでしたね。
フックポイントを下げる目的なのか、それともウェイト増量したかったのか、ちょっとオーバーサイズド気味のスプリットリングを装備しているのも特徴です。
このオーバーサイズドリングはラインアイにも装備されていますが、このサイズだとちょっと違和感がありますね。
後継モデル”シャギードッグ”について
ちなみにこのウォーキンスティックはのちに3フッカーであるシャギードッグ Shaggy Dowg にモデルチェンジする形で第一線から退く事になりますが、引退を決定づけたのはへドンのスーパースプークだったのではないかとのんだくれは勝手に想像しています。
スーパースプークはオリザラの弱点でもあるミスバイトの多さを、”スプリットリング接続の3フッカー” と言う形で克服するために生まれたルアーですが、それは同時にウォーキンスティックをはじめとした他社の2フッカーペンシルを駆逐するためでもあったのではないかと。
それを裏付けるかのように、フッキング性能では敵わないと思ったのかスーパースプークが登場した翌年?にはビルルイスは3フッカーのシャギードッグをリリースしているんです。
しかしそのシャギードッグは3フッカーである上にテールにフェザードフックを装備したことでウォーキンスティックよりも運動性能が低下し、スーパースプークのライバルになることすら出来ずに早々に消えてしまいました😭
実は “シャギードッグ” は直訳すると毛がボサボサの犬と言う意味ですが、Shaggy Dog Story というと ”大層な前振りだけど中身がない話” と言う英語慣用句になり、意味のない行動を指す言葉としても使われています。
おそらくビルルイスとしては、”ドッグウォークするフェザー付きのペンシルベイト” という意味を込めてシャギードッグと言うネーミングにしたんだと思いますが、皮肉にもその慣用句を体現するというオチを見せてくれたのです。合掌🙏
おわりに
とまあ大々的に脱線しながらのオハナシでしたが、結論はこのウォーキンスティックはかなり使えるルアーということ。
水面に出切らないバスに対してジャラッ!とダイブさせて食わせるなど、オリザラでは出来ない演出が楽しめるので是非ともオリジナルザラスプークとセットで持ってて欲しいルアー。
さすがに中古屋でお目にかかることはありませんが、もしどこかで出会ったら是非とも確保して欲しいペンシルベイトのひとつです。