タイニーサイズのルアーはタフな状況に強いと言われています。
小さければ釣れるという単純なものではないけれど、ボウズ逃れのお守りとして心強い味方であることは間違いない事実。
実際チビルアーに助けられた経験を持つアングラーは少なくありません。
そんな禁断の世界を世に広く知らしめたのが今日紹介するベビーポッパーです。
ベビーポッパーとは
ベビーポッパーは90年代(94年?)にラッキークラフトがリリースした、ベビーシリーズの一員。
ベビーシリーズは、当時のメインラインナップだったサミーやCBのラインとは一線を画した人気シリーズ。
破壊的に釣れた伝説のベビーシャッドを始め、ペンシルベイト、プロップ、ミノー、バイブレーションなどタイニープラグの強みを前面に押し出したキャラクターが売りのシリーズでした。
その中でもこのベビーポッパーは【小粒のダイナマイト】というキャッチコピー通りの仕事をするルアーとしてバスだけでなくあらゆる魚種に効くルアーとしてその名を馳せました。
このルアーでメッキ乱獲モードを堪能したアングラーは少なくないはず😁
余談ですがべビープロップのキャッチコピーは【水面の小悪魔】、ベビーバイブレーションは【小さなチャンスメーカー】、ベビーシャッドは【スモールベイトの火付け役】、ベビークランクは【シャローストラクチャーの魔術師】、ベビーミノーは【魚を狂わす何かがある…】でした。
ぶっちゃけ語呂とかリズムは気にしていなかった模様w
ベビーポッパーのサイズ・重さ
ベビーポッパーのサイズは実測48ミリ、自重4.25g。
ベイトタックルでストレス無く扱えるギリギリのサイズにまとめられていました。
イマドキのアングラーが見たら”4gもあったら余裕でキャスト出来るだろ!”と ツッコミたくもなるでしょうが、当時と今とではリールの性能に大きな差があるので、このウェイト設定は今以上に重要な意味を持っていました。
ちなみに当時ラッキークラフトはベビーポッパーでの操作には6lbラインを推奨。
キャスタビリティやアクションを阻害しないラインウェイトを考慮しての事でしょうが、不意の大物が来るルアーだけに6lbではさすがに心許ないなぁ😑
そこそこのサイズにウィードに突っ込まれてどうしようもなかった経験から個人的には最低でも10lbは欲しいところです。
ポッパーに求められる要素を凝縮
浮力を担保したファットボディ
このルアーでまず注目すべきなのはこのファットなボディ。
最も地味な要素ではありますが、ベビーポッパーは強い浮力を担保するこのファットボディがあったからこそスター選手になれたと言っても過言ではないでしょう。
詳しくは後述しますが、使えば使うほどあらゆる要素がこのファットボディに帰結していることが実感できます。
オーソドックスなカップ形状
そしてそのファットなボディ幅を余すところなく活かしているのがこのカップです。
一見どこにでもある普通のカップに見えますが、カップが大きく凹んでいないため水を掴み過ぎず、妙な生っぽさを演出することに成功しています。
この場合の【生っぽさ】とはあくまでも人間の感覚でのオハナシですが、オサカナがどう感じるか以前に使い手が釣れそうと感じるのはルアーにおいては重要な要素なので、セイジ・カトウはその辺りの調律技能にも長けていたということ。
これはこの当時のラッキークラフトルアー全般に言えることですが、モチベーションを持ち続けられる ”何か” が備わっていましたね。
上手く言語化出来ないけれど、投げ続けてさえいれば釣れるだろうなという変な安心感がありました。
グラスラトルによるアピール
ボディ内部には極小グラスラトルが5〜6個封入されています。
テールエンドに極小スチールウェイトを配し、ボディの後ろ半分を仕切ったラトルチャンバー内でグラスラトルが暴れる仕様です。
確かベビーシリーズは世界で初めてグラスラトルを採用した量産ルアーだった記憶が。
ぶっちゃけ30年前のルアーなのでラトルの共鳴具合は今のルアーには敵いませんが、当時このサイズでここまでやり込んだルアーは他に無かっただけになかなかのインパクトでした。
内部構造が分かるカラーが行方不明で見つからなかったので、持ってる人は是非ライトに透かしてニヤニヤしてください😁
ラッキークラフトらしくない目
しかしオタ的には少し気になるところも。
それはベビーポッパーに使われている3Dアイ。
他のベビーシリーズに使われている3Dアイは涙目っぽい、いわゆる”ラッキーアイ”なのですが、このベビーポッパーに限って白目部分が多い、三白眼ちっくなものを採用しているのです。

ベビープロップ(左)とベビーポッパーのアイ比較。全く別物であることが分かる。
何らかの意図があって違うものを採用しているのか、それとものんだくれが持ってるものがたまたま三白眼だったのかは不明ですが、ラッキークラフトの特徴の一つでもある”うるうるアイ”を採用しなかった理由がずっと気になってますw
誰かこの理由を知ってる人がいたらご一報を。
ポッパーの基本性能を高次元でまとめた優等生
アクションを一言で表すならば、【ポッパーに求められる基本的性能を高いレベルで凝縮した最大公約数的ルアー】といったところでしょうか。
サウンド
まずポッパーの命とも言えるサウンドですが、水面の落水昆虫を小魚が捕食する音からチャグ音までアングラーの思うままに演出できる懐の広さに注目。
そんな特性を備えたポッパーならば今は市場に溢れかえっていますが、ベビーポッパーのスゴいところは30年前に48ミリというサイズでそれを実現しているところ。
その芸達者ぶりには、カップ形状、浮き角、喫水線などあらゆるセッティングで試したんだろうなと思わせる説得力があります。
個人的には20cmぐらいスイープさせて弱めのチャグ音を出しつつバブルトンネルをくぐらせるのが好みですが、スローにペチペチやってギルを寄せながら本命をバイトに持ち込むのも効果的らしいのでいろいろ試してみるべし。
スプラッシュ
しかしサウンド的には優等生だが、ことスプラッシュに関してはぶっちゃけイマイチ。
スプラッシュを飛ばせないことはないけれど、シュパシュパとキモチ良く飛沫を撒き散らしたいなら同サイズのアームズポッパーマイクロを使った方がストレス無く釣りができます。
そもそもベビーポッパーはカップ形状や浮き角がスプラッシャー向きではないので、割り切りも大切w
ウォーキング
しかし首振りに関してはかなり優秀と言えるでしょう。
ほぼ水平浮きでフェザードフックをぶら下げていながら、ちょこまかと機敏に首を振るレスポンスとターンの度に小さなバブルを残すアピール力はさすがの加藤誠司ワークス。
何度も良いますが、これはレギュラーサイズのポッパーではなくて全長48ミリのポッパーですからね。
余談ですが、ルアーが生み出したバブルがバスに対してどのようにアピールしているのか日本ではあまり話題になりませんが、米国では80年代から重要な要素として注目され、雑誌などでも良く紹介されています。
バブルが発する音が魚の側線を刺激するのは研究結果からも明らかで、その習性を利用してバズベイトのブレードに穴を空けてバブルが生まれやすくしたり、ソフトベイトにアルカセルツァー(発泡性の錠剤)を仕込んだりしているのは皆さん御存知の通り。
更に脱線しますが、テキサスリグのウェイトは単にワームを沈めるだけのものではなく、ボトムを引っ掻いて人間には見えない小さな気泡を舞い上がらせるためでもあるので、個人的には【テキサスのウェイトは軽いほうがナチュラルだ】という理論にはちょっと懐疑的だったりもします。
でもルアーが生み出す気泡の効果に関しては10,000文字あっても語り尽くせないのでまた別の機会にゆっくりと。
好敵手アームズポッパーマイクロとの違い

ベビーポッパー(上)とアームズポッパーマイクロ
さきにアームズポッパーマイクロに触れたので少しだけ両者の違いにも触れておきましょう。
アームズポッパーマイクロはベビーポッパーよりも遅れて発売されたデュエルの水面兵器ですが、
その釣れっぷりと49ミリというサイズゆえにベビーポッパーの好敵手的な存在として知られています。
ゆえにベビーポッパー派とアームズポッパーマイクロ派というプチ派閥まで生まれたりとなかなかのエンスー度。
しかし両者は似て非なるもの。全くの別物なのです。

アームズポッパーマイクロの浮き姿勢
それはカップ形状を見れば明らかで、首振りメインの水押しアピールならばベビーポッパー、スプラッシュを飛ばして移動距離を抑えたじっくり系のアプローチならばアームズポッパーマイクロと、性格も用途も志向が全く違います。
つまり派閥が出来る事自体がおかしいのですw
アームズポッパーマイクロについてもいずれ記事にする予定なのでそれまで気長にお待ち下さいな。
カラーバリエーションの豊富さはさすがのラッキー
カラーは最初期ラインナップにあったシルバーミノー。
ステイシー60にもあった色ですがクロームちっくながらもギラギラを抑えた感じが気に入って良く使ってました。
今はどんな色が出てるのかと思ってラッキークラフトのサイトを見に行ったらトンでもない数のカラーが出ててちょっとクラクラしましたがw
あらゆる魚種に効果があるルアーだからこそカラーバリエーションも必要なワケですが、もしベビーポッパーにハマったらあの数を集めることになるのかと思うとまた違う意味でクラクラしますねw
フックサイズは#10
フックは前後とも#10サイズでリアのみフェザード仕様。
画像の通り錆びやすいので使った後はケアが必要です。
フェザーなしでももちろん使えるけれど、ベビーポッパーはフェザーも含めたクネクネとした動きが売りでもあるので首振りで使うなら重視したいところ。
特に交換時にはフックサイズだけでなくフェザーのボリュームやリングサイズにも注意したいですね。
でもこのサイズのフェザードフックは意外と店に並んでないのでちょっと探すことになるかも。
”ベイビー”ではない”ベビー”
ネームスタンプは腹にフルネームが入るオーソドックスなスタイル。
小さい事を表すベイビーではなく、群れを表すべヴィーのスペリングになっていることに注目。
もちろん小さいという意味も含めたワードプレイになっているワケですが、90年代の国産ルアーでこういう遊びゴコロ溢れたネーミングは珍しいですね。
全然関係ありませんが、日本でベビープレイというとBaby Playとなり、いわゆる赤ちゃんぷれいwになってしまいますが、英語でベビープレイは Bevy Preyで ”獲物の群れ”に近い意味となります。
嗚呼ニホンゴって恐ろしい😱
入手はカンタン
そんなベビーポッパーは現役で製造されていることもあり入手は超簡単。
検索すればいくらでも出てきます。
発売から30年が経とうとしてるのに簡単に入手できるのはやっぱり嬉しいし助かりますね。
もちろん中古屋にも出回っていますが、先述の通り魚種を選ばないルアーでその実力もお墨付きなので競争率はちょっと高め。
見つけたらとりあえず確保しておきたいルアーの一つです。
おわりに
ビッグベイトの一般化によりアングラーのルアーサイズに対する感覚は麻痺し、以前よりも大きなルアーを選ぶ傾向になりました。
それ自体は別に悪いことではないけれど、ベビーポッパーのような小さいプラグを積極的に投入する機会が減ったような気もします。
でもタイニーサイズにはタイニーサイズにしか出来ない事があるのも事実。
たまにこういうのを使うとタイニープラグの良さを再認識出来て良いかもしれませんね。
特に梅雨の最中から空けにかけてはローライトで湿度も高く、落水昆虫も多くなる時期ですし。
流行りの最新ルアーで釣るのもいいけど、過去に思いを馳せながらタイニープラグと戯れてみてはいかが?