日本と米国では売れるルアーの傾向に差があります。
向こうでは定番クラスの人気を誇るのに、日本では見向きもされないルアーなんてザラ。
フィールドも使い方も国民性も違うからね… というのがその理由。
まぁそれは事実なので否定はしません。
しかしその ”先入観” によって、美味しいルアーを見逃しているケースがあるのも事実。
今日紹介するサスペンディングシャッドRは、まさにその先入観によってスルーされてしまった名品です。
サスペンディングシャッドRとは
サスペンディングシャッドR(以下シャッドR)はレーベルが1990年代はじめにリリースしたシャッドクランクです。
双子のプロフェッショナルアングラーとして有名なマーティ&スコット・グローバイジェン兄弟によって監修されたシャッドRは、主にスモールマウスやウォールアイなど、彼らが得意とする冷水域に生息するプレデター向けに設計されました。

ダブルディープシャッドとシャッドR
元々レーベルにはウェイテッドリップを装備したダブルディープシャッド Double-Deep Shad というモデルが存在していましたが、それをリニューアルする形でシャッドRをデビューさせたのです。(両者の違いは後述)
シャッドRのサイズ・重さ
シャッドRは2サイズで展開されており、画像のS33Eは小さいサイズで68ミリ、10.5グラム。
80ミリの兄貴サイズはS35Eのコードでラインナップしており、それぞれにフローティングモデルがあります。(フローティングはコードの頭がSではなくD)
いずれのモデルもアメリカンシャッドらしいアクションで、米国では人気を博しましたが、その中でも特にサスペンドモデルがイイ感じなのです。
シャッドRの特徴
シャッドプラグらしからぬマッチョボディ
シャッドRの最大の特徴は、先代のダブルディープシャッドよりも太くなった幅広ボディ。
シャッド巻きたひ pic.twitter.com/SjxAm53634
— ルアー千一夜 【公式】 (@lure1001) March 21, 2022
スリムな縦扁平シェイプが多い日本のシャッドプラグとは明らかに違うぼってり体型は、リトリーブで使う事が圧倒的に多い米国事情を反映して、よりクランクベイトに近いものになっています。
強いウォブリングを生むナローリップ
先代同様にスラントしたリップはしっかりと水を掴んでボディを揺らしますが、ボディ体積アップに伴ってリップにも手が加えられています。

ダブルディープシャッドとシャッドR
先代はディープウィRなどにも使われている丸みを帯びたリップ形状なのに対し、シャッドRは幅が狭く直線的なナローリップを採用。
元々ダブルディープシャッドはラパラのシャッドラップを迎え撃つべく開発されたルアーなので、ピリピリとしたタイトウォブリングが特徴でしたが、シャッドRではワイドなウォブリングアクションへと進化させています。
これは米国特有の広い水域から魚を見つけやすくするためのもので、米国フィールドに最適化させたもの。
しかしワイドなウォブリングアクションでも泳ぎが破綻しにくくなっているのがウリのひとつでもあります。
このルアー監修したグローバイジェン兄弟はウォールアイフィッシングの手練でもあるので、このスタビリティはトローリングにも使えるようにしたんじゃないかと思われます。
実際ウォールアイアングラーの間では評判が良かったようです。
直線をうまく取り入れたこのリップ形状は、スタイルこそ若干違うものの、のちに全ファットフリーシャッドファミリーに採用されるので、この時点で既にプラドコは ”何か” を確信してたのは間違いないでしょうね。

余談ですが ”ファットフリーシャッドファミリー” とは、
・ファットフリーシャッド
・ファットフリーシャッドJr.
・ファットフリーグッピー
・ファットフリーフライ
・ファットフリーフィンガリング
の5モデルに、のちにボーマーブランドから発売されたスリムシャッド2モデルを加えた合計7モデルからなる大所帯を指し、この ”ファミリー” というワードはプラドコのプロモーションにも多用されていました
これらのファットフリーにはそれぞれサスペンドモデルが作られただけでなく、ファットフリー専用に ”Sweet 16” なる16色の特別カラーまで用意して大々的にプロモーションされるなど、米国ではこのシリーズがプラドコの稼ぎ頭だったことが伺えます。
ちなみにスイート16とは、米国の慣習である女の子の16歳バースデーを祝うイベント/パーティのこと。
米国では16歳から自動車免許が取得できるなど成人として認められるので、スイート16は女子の成人式みたいなものですね。
この日のためにドレスを新調する事が多いのですが、そのドレスとファットフリー専用カラーチャートを掛けたワードプレイになっているところがキモ。
米国ではスイート16をテーマにした曲や映画が溢れかえっていることからも、本人と家族にとって重要なメモリアルイベントである事が分かりますが、こういう特別感のあるワードに掛けて新色をアピールするセンスはさすがアメリカンですよね。
リップは接着方式に変更
シャッドRのリップはレーベル伝統のネジ固定式から接着方式に変更になっています。
ネジネジする手間を省くため、レーベルではファストラックシャッドから接着方式に変わっていますが、ガキの頃このネジに萌えたおっさん的にはちょっと寂しい気もしますw
ちなみに初期のレーベルディープランナーミノーはボディの下からではなく頭側からネジを刺すスタイルでした。

コレクターの間でヘッドスクリューと呼ばれるタイプですが、眉間にネジが刺さってる姿は見るからに痛々しいので、下から刺す方式に変更して大正解でしたねw
ボディには遊動ラトル内蔵
そして固定重心の他に、カラカラとよく響く遊動式のラトルを内蔵。
重心移動ではありませんが、飛行姿勢が良いためかこの形状のプラグにしては結構飛ばせます。
先代のダブルディープシャッドはリップにウェイトがあるせいか、飛行中にバランスを崩して失速しがちだったので、これは地味だけれども大きな進化です。
シャッドRのアクション
シャッドRのアクションはいかにもアメリカ人の好きそうな強いウォブリング。
日本のシャッドプラグに多いピリピリ系タイトアクションとは対極にあるので、ミノーシェイプのクランクベイトだと思った方が使い所などがイメージしやすいと思います。
しかしその派手な動きとは裏腹にサスペンドの精度はなかなかのもの。
米国製ルアーには珍しくw、スナップかスプリットリング使用でジャストサスペンドになります。
米国のサスペンドプラグは投げてみたら強浮力やシンキングだったなど、アテにならん物が多いのですが、このシャッドRに関しては国産に負けてないと言えるでしょう。
よって、巻きで大きく踊らせてキルで焦らすというメリハリのある演出にはピッタリ。
日本のプラドコルアーユーザーの間でシャッドRの評判が高いのも頷けますね。
ザ・90’sなシャッドRのカラー
ベースがシャッドなのでカラーリングはやはりベイトフィッシュ系が多め。
90年代初めに大ブレイクしたホログラムのスケールパターンの上にカラーリングすることでリアル感を演出しています。
いかにもホログラムシートを貼りましたという感じが90年代ですよねw
サスペンドモデルは目を赤くするのがプラドコ一族の掟で、フローティングモデルはプリズムシートの白目になっています。
これはスーパースポットなどにも見られる共通のルールなので中古屋で探すときの参考に。

シャッドRはレギュラーカラー以外に、光の入射角によって違う色に見えるミスティックカラーを纏ったミスティックシャッドRなるモデルもラインナップしていましたが、ミスティックシリーズはトップコートが究極に弱く、一度使うだけで塗膜がペリペリと剥がれてくるため、短命で終わってしまいました。
こういうレッドライト系の妖しいカラーリングwは大好物なので生産終了はちょっとザンネンでした。
#6のエクスキャリバーフックが標準
フックはひねりの入ったエクスキャリバーの#6サイズが標準ですが、エクスキャリバーフックはすぐに錆びるので汎用のショートシャンクに交換しています。
エクスキャリバーフックの詳細はマグナムプロポップRの記事で書いたので、気になった方はそちらをどうぞ。
ネームはモールド&プリントのゴージャス仕様
ネームはリップ先端のエンボスモールドと、ボディ両側にブランドロゴ&仕様が入ったゴージャス仕様。
新規に立ち上げたブランドで大々的なプロモーションをする必要があったとはいえ、ルアーのカラーの色味など全く考慮していないネーム入れスタイルwは、のちのルアーのネームプリントの入れ方に大きな影響を与えたのではないかと。(ノベルティ等は除く)
そういう意味でもエクスキャリバーは革新的でしたね。
どこで入手できる?
残念ながら既に生産が終わっているルアーなので、入手するには中古市場で探すしかありません。
しかし幸か不幸か、今や誰も相手にしないルアーなのでw、運良く見つかれば大体捨て値で手に入ります。
とはいえこの手のルアーは少数の熱狂的なファンがガチサルベージしてる事もあって、いざ探してみるとなかなか見つからないんですよね。
あとはアレですよ、日頃から徳を積んでおくしかテはないかと😁
おわりに
ルアーでオサカナを釣る近道のひとつに、誰も使っていないルアーを使うというのがありますが、このシャッドRは誰も使ってない上に米国ではお墨付きの実力派シャッドなので、使えば割と簡単に釣れちゃうでしょう。
特にクランクベイトのローテーションに組み込めば面白い釣りができるんじゃないかと。
今まで見向きもしなかったルアーだけど、ここまで読んだらちょっと欲しくなったでしょ?😁
米国ルアーの中には、こういった影の実力者がたくさん隠れてるので、そういうのを探し当てていくのもルアー釣りの醍醐味のひとつだと思いません?