このブログでも何度も書いてますが、ルアーにおける食わず嫌いは単なる機会損失で済まないケースに発展しかねません。
ルアーを見た目だけで判断してしまい、そのパフォーマンスが享受できないばかりか同船者に大差を付けられてしまうかもしれないから。
ルアーのパフォーマンスは実際に使ってみないことには絶対に分からないのです。
しかし現実は見た目だけでスルーされ、消えてゆくルアーのなんと多いことか!
今日紹介するラウドノッカーはまさにそんな見た目スルーの代表選手です。
バンタム ラウドノッカーとは
ラウドノッカーはシマノが満を持して市場に送り込んだバンタムラインの一味。
70年代の終わりから80年代にかけてダイワ ファントムシリーズと熾烈な戦いを繰り広げたあのバンタムの名を冠したフラッグシップシリーズです。
量販店ではマクベスなどと共に陳列エンドを専有していたので ”見たことはある” という方も多いことでしょう。
ペンシルベイトが衰退していく日本のバスフィッシング市場であえてペンシルベイトで勝負に出たその意気込みには、おぉ!と思ったものの、市場構造を変えるまでには至らずカタログ落ちしてしまったという哀しい運命の持ち主でした。
同時期にリリースされた新生トリプルインパクトの評価に足を引っ張られた気がしないでもありませんが、その実力はホンモノ。
これぞまさしく見た目でスルーされてしまったルアーの筆頭でしょう。
ラウドノッカーのサイズ・重さ
ラウドノッカーは全長110ミリ、自重20.5gのワンサイズのみと、オリジナルザラスプークに真っ向勝負を挑んだサイズが特徴です。
ペンシル使いの間ではスーパースプークに代表される1ozクラスのペンシルベイトがスタンダードとなっていますが、スーパースプークはタックル的にも心理的にもデカいと感じるアングラーはまだまだ多く、そのニーズに対応したサイズとなっています。
オリザラサイズのワンノッカータイプはライバルが少ないというメーカーの読みもあったのではないかと。

ラウドノッカーの仕様
衝撃音強めのワンノッカーラトル
ラウドノッカーの最大の特徴は3つのスチールボールを内蔵した、金属同士の衝突によるインパクトサウンドを発する事。
プラスチック素材への衝突で発するサウンドとは異質であることが売りのひとつとなっています。
プラ素材特有の乾いたカコーン!という響きが好きなアングラーにはちょっと物足りなく感じるかもしれませんが、複数のスチールボールが立て続けにヒットするサウンドはプラにも負けない強いアピール力を誇ります。
もちろんラトルボールは重心移動ウェイトとしての役割も担っているので飛距離アップにも大きく貢献。
オリザラサイズでありながらスーパースプーク以上の飛距離を叩き出すことが可能で、更にオリザラのように飛行中に軌道がカーブしたりしないのでロングでピンスポを撃ち抜きたいアングラーにとっては心強い弾道ミサイルになってくれます。

自然な造形で最大限の効果を発揮するキール
そしてペンシルベイトといえばやはりドッグウォーク性能は外せません。
メガバス ジャイアントドッグXが採用したことでペンシルベイトの運動性能に革命を起こしたアゴ下キールを更に進化させたフォルムで、大きなスライドと派手なスプラッシュを同時に実現しています。

メガバスジャイアントドッグXのキール
実はこのキール、大きければ良いというものではありません。
あまりやりすぎるとアクション時にブレーキとなってしまい、逆効果ともなりかねない諸刃の剣。
ペンシルベイトの頭部が持つ慣性モーメントを殺さずにいかに大きな飛沫を出すか、ペンシルベイトのキールは想像よりも遥かにデリケートさが求められる難しいパーツなのです。

バンディット スピッツのキール
かつてバンディッドルアーズがスピッツSpitzというキール付きのペンシルベイトを出していましたが、”大きなスプラッシュとワイドなグライド” という広告コピーとは裏腹に、ツバ吐きもスライドも両方ショボいペンシルベイトになってしまったなんて事例もあるので、あえてその難関に挑んだシマノには拍手を贈りたいなと。
ギルの虫食い音が出せるカップ
しかしシマノの挑戦は大きなキールを実現しただけではありません。
それがこのアゴ下の凹み。
キールのV字形状を利用してポッパーカップ機能も持たせたのです。
このカップが生み出す効果はこの画像を見れば一目瞭然。
弱い入力でプチュッ!というギルの虫食い音が確実に出せるだけでなく、強いアクションではポッパー顔負けの捕食音まで自由自在。
水面での静止時にはラインアイが水面より20ミリほど出ているので、ロッドアクションの強弱に影響されることなく確実に水面に覆い被さり、バブルを水中に引き込む設計となっています。
カップが装備されたペンシルベイトではラッキークラフトのサミーが有名ですが、サミーとはまた違った感覚が味わえるのもラウドノッカーの楽しみの一つ。

テールにも”キール的”なモノ
そしてテールにもキールらしき構造物が。
これもスライドやロール抑制に大きな効果をもたらしているのかと思いきや、意外とそうでもなさそう。
設計を監修した山木プロはYouTubeの動画で、この構造物について ”フッキングの時の抵抗になってくれるといいなぁ” とかなり弱気な発言をしているのです。(メーカーの動画リンクを貼るのは好きじゃないので各自で検索よろ)
この発言を聞いてちょっと残念なキモチになりました。
たとえこの構造物にそんな効果が無かったとしても、ラパラのX−Rapサブウォークの事例も有ることだし、ここはそうだと言い切って欲しかった。

個人的にルアーフィッシングはアングラーの妄想がほとんどの成分を占めてると思ってます。
準備の段階からあれこれ妄想し、現場の状況に合わせて自身の妄想を立証していくことがルアーフィッシングの醍醐味なのです。
そして釣れれば自身が正しかったと満足できるし、釣れなければなんとかしようと模索する。
そういう時に、そんな小さな ”言い切り” が最高のオカズになるのです。
どんな怪しげな論理でもそれに全力で乗っかって全てをネタにしちゃうのがルアーフィッシングを楽しむコツ。
かつてジム村田氏が提唱した ”ナチュラル&アピール理論” というのがありましたが、当時からアレは実釣においてほとんど意味のないものだと思ってましたが、その反面、ルアーフィッシングを楽しむ”演出”としては最高に面白いと思ってました。
その理論を念頭に置いてサカナが釣れたら、実際はそうでなくとも『いやーナチュラル理論が効いてさぁ』って、理論に乗っかったドヤ顔が出来ますからね😁
つまりアングラーが妄想段階でどれだけワクワクしたりニヤニヤ出来るかがルアーのキモなので、発言する以上はこのキールにも ”壮大な役割” が欲しかった。
おっさんもニヤリの視覚効果
しかしキール的構造物はともかく、ボディラインでおっさんアングラーを唸らせてるところには思わずニヤリとしてしまいました。
あのソリザラを彷彿とさせる、なんとも言えない艶めかしいラインがおっさんの心を狙い撃ちw
もしかしたらボディの後ろに回った水流をあえて滞留させて複雑な水流を生み出すなどの意図が盛り込まれてるのかもしれませんが、おっさん的には今風のソリザラと解釈したほうが分かりやすいですから😁
センス最悪の貞子アイ
しかし全く納得できない部分も。
それがこの貞子アイ。
この独特なグラフィックのアイはバンタムシリーズ共通なのでラウドノッカーだけの問題ではないんですが、このアイの似合わなさは異次元レベルでしょう。
なんというかリアルでもないし、かといって愛らしさもないのです。
ぶっちゃけ水面アングラーとしては一番嫌いなパターンかと。
これがトップバナーで言い放った ”最悪” のその1なのです。
初期のSSカラーやフロッグカラーには全く別のアイが装備されていたのでシマノがアイのデザインを模索していたのは分かるのですが、メインがこの貞子アイではスルーされて当然だったのかも。
この辺はブランドとしてのアイデンティティとマーケティングとのバランスになるので難しいところではありますが、バンタムマクベスが普通の塗り目で製品化されてるならラウドノッカーでも出来たんじゃね?と思ってしまいます。

そんな具合でこの貞子アイには納得してないので、フォトショップでちょっとズイール風にお絵描きしてみましたw
これはこれでブーイングする人もいるでしょうが、少なくとも愛らしさという点ではパワーアップしてますよね😁
あらゆるニーズをこなす高パフォーマー
角度大きめの浮き姿勢
さてさて。
外見の話はそのぐらいにしておいて、肝心のアクション特性に触れなければなりません。
このルアーをひと言で表すならば『ペンシルベイトに求められる要素を全て高レベルで満たしたアクションを持つペンシル』に尽きるでしょう。
派手なスプラッシュを飛ばすテーブルターンに始まり、足の長いスライドアクション、先述のカップが生み出すポップ音に、水中に強く響き渡るラトルサウンドと、およそペンシルベイトとしての機能はほぼ完璧に網羅しています。
オリジナルザラスプークにはじまり、ありとあらゆるペンシルベイトを投げてきた中でもトップ5にランクインするのは間違いない仕上がり具合です。
群を抜くダイブ性能
そしてこのラウドノッカーでしか出来ない演出もあるのです。
それが急角度のダイビングアクション。
実はこのラウドノッカーはペンシルベイトとしては異様なほど、急角度でダイブするのです。
ダイビングアクションが得意なペンシルベイトは他にも多数ありますが、ラウドノッカーの違うところは、ほぼ真下に向かって潜るところ。
ほとんどのダイビング系ペンシルは水面直下10cm程度しか潜りませんがラウドノッカーは20cmほど潜らせることが可能です。
これは静止時のラインアイの高さゆえのダイブ性能なのですが、この10cmの差がどんな違いを生み出すかというと、それはミスバイトがあった時。
オリザラなど潜らないペンシルベイトでミスバイトがあった場合、フォローベイトとしてセンコーなどソフトベイトを投げるのが米流バスフィッシングの定石ですが、実際にはロッドを持ち替えている間にバスがヤル気をなくしてしまっていることが多く、なかなかセオリー通りにはなりません。
そんな時、たかが20cmですが真下に向かって潜るラウドノッカーならば、まだヤル気のある内にフォロー出来るのです。
ぶっちゃけそれで釣れるかどうかは分かりません。
でもそれが出来るのとそうでないのとでは大きな違いがあると信じていますし、そういう妄想が出来るのがルアーの醍醐味ですからね😁
豊富なカラーバリエーション
バンタムのフラグシップシリーズだけあって、クリア系からナチュラル、アピール系まで豊富なカラーバリエーションを誇ります。
個人的にはこのオイカワでもなくハスでもない渋いカラーがお気に入り。
ルアーの性能が高いだけに、ポップでヘドンちっくなクラシックカラーにももっとトライして欲しかったなぁ
フックの秘密
アクション重視の#4サイズ
フックは前後ともブラックニッケルの#4サイズを採用。
オリザラは#2サイズなので、ここも大きく違うところですね。
おそらくフッキングよりも運動性能を重視した結果だと思われますが、これはこれでバランス取れてるのでオッケーでしょう。
ぶっちゃけフックサイズ云々を偉そうに語れるほど釣ってませんし😭
しかしこのフックセッティングにもバンタムならではの設計が盛り込まれているのです。
フッキング率アップのためのデザイン
それはフックハンガー(エイトリング)の位置。
ハンガー前後のボディラインよりも大きく下側にリングを下げた設計になっていることが分かります。
これにより#4サイズながらも#2サイズを装着したときと同じ位置までフックポイントを下げることに成功。
単にエイトリングだけを伸ばせばゴミを拾いやすくなるだけでなく、見た目も変になるところをボディラインに手を加えることにより自然に見せているところにシマノデザインのスキルが見え隠れしていますね。
クイックな姿勢回復を生む低重心仕様
そしてテールエンドはハンガーを下側に設置することで、素早い姿勢回復を促し、鋭角ターンしやすくしています。
岩盤や橋脚を直撃してもリングが潰れにくくなってるのもギリギリ派にとっては嬉しいポイント。
市場&史上最悪のネームプリント
パフォーマンスと逆行するショボいネーム
そんな性能とは裏腹にネームプリントはサイアクのひとこと。
小さくて読めないだけでなく、デザイン的にもどーなの?な仕上がりになってます。
きょうびペンシルなんて老眼が始まったおっさんしか使わないのに、ローガンGGYが読めないような大きさにするなんて何も考えてないの?
バンタムシリーズのネームは全てにおいてこんな感じなのでこれだけでも相当なマイナス要素。
伝説の名前を冠するシリーズなのにロゴはBTだけだし、フォントも遠慮しまくりで全然ラウドじゃない。
画龍点睛を欠くという諺があるけれど、ラウドノッカーはルアーとしては非常に高性能なのに、アイもネームもこれ以上無いほどショボい。
そりゃスルーされるのも仕方ないよねって思ってしまいます。
つまりこれが最悪要素のその2😫
マーケティング的に最悪なアプローチ
そしてさらに最悪の上塗りもしているのです。
ネームプリントとは違いますが、先述のプロモーション動画内で山木プロが連呼していた【ギミック】というワードにも強い違和感が。
山木プロはラウドノッカーに盛り込んだ色々な機能を指してギミックと呼んでいるようですが、実はギミックGimmickは ”仕掛け” という意味よりも『売るために仕込まれた中身のないもの』という意味合いの方が強いのです。
近年マーケティング界隈ではギミックというワードをポジティブな意味で使うことが増えてきましたが、アレは頭の悪いマーケティング会社が横文字を使ってクライアントを煙に巻こうとしてるだけ。
世間一般ではまだまだネガティブなイメージの方が強いのです。
かつてうじきつよしが率いていた ”子供ばんど” がギミックバンドだと酷評された事でブチ切れたうじきがNo Gimmick という曲で反論したのは有名な話。(ヘルメットに小さなギターアンプ乗せて歌ってる時点でギミックバンド呼ばわりされても仕方ないと思いますが😂)
そんなネガティブなワードをプロモーション動画に使ってる時点であーあ😫と思ってしまうのです。
ルアーの性能が非常に高いだけにこれも大きなマイナス要素。
てかシマノ広報部も動画制作会社もそんな初歩的な事に気付かないってどーなのさ。
インパクトのあるワードは毒も合わせ持ってるというのはマーケティングの常識中の常識なのに。
すでにカタログ落ちしている
そんなラウドノッカーですが、市場に供給された数の割に良さが広まっていないので入力は比較的イージーです。
新品箱入りを見つけるのも難しくありません。
しかし既に生産を終了しているので見つけたらとりあえず確保しておくのが得策でしょう。
ペンシルベイトは不人気なので今後再生産されることはないでしょうし。
そして可能であれば色調の違うものを2つは押さえておきたいところです。
おわりに
とまあ最後は悪態つきまくりでしたが、ルアーとしての性能は本物なので是非とも投げて欲しいペンシルベイト。
でもシマノはこれに限らずパフォーマンスと見た目のバランスが取れてないルアーが多いんですよね。
JM100やアンジュレイターなんてその最たるもの。

しかしそれは逆の見方をすれば自分だけのシークレットになりやすい事にも繋がるわけで、そういう意味ではシマノのルアーは大穴なのかもしれません。
何年か経って、アレ買っときゃ良かった!と雄叫びを上げることにならないためにも今から地道に使っておくべきかもしれません。