インナーハンドW.B. Innerhand W.B. / ハトリーズ Hutley’s

基本的にこのブログに登場するルアーは自分が使って納得がいくものだけを紹介しています。

その ”納得” の基準は、過去にイイ思いをしたという単純なものから、百戦錬磨の必携ルアー、まだ一匹も釣ってないけど思い出の詰まったルアーなど様々ですが、そんな安っぽい判断基準を超越した殿堂レベルのものも数多く存在します。

そのひとつが今日紹介するインナーハンドW.B.。

日本のトップウォーター史にその名を残す名品であると共に、数多くのアングラーをトップウォーターの底なし沼に引きずり込んだA級戦犯でもあります。


このルアーに関してはもう説明の必要はないでしょう。

歴史云々に関しては検索すれば出てくると思うので割愛しますが、水面初心者からエキスパートの技巧派まで満足させるそのパフォーマンスはハトリーズ量産プラグのトップに君臨していると言っても過言ではありません。

のんだくれもインナーハンドだけを持って出撃していた時期もあったほど。

インナーハンドW.B.は全長90ミリ、自重14gという扱いやすいサイズにまとめられたペンシルベイトです。

オリジナルザラスプークのような寸胴ボディではなく、ウェストをキュッと絞って見た目にもよく動きそうなイメージを実現しているあたりはさすがのハトリーズ。

しかしこのインナーハンドW.B.はそんなイメージの遥か上をいく運動性能でアングラーの度肝を抜いてくれるのです。

水面での姿勢はわずかにテールを下げた水平浮き。

この状態からロッドをチョンと…. いや、糸フケを取るためにリールのハンドルを回すだけで、驚くほどのシルキースムースさで水面を滑り始めます。

普通ペンシルベイトの初動といえば、ルアーの向きとタイミングを見ながらラインテンションを掛けなければなりませんが、このインナーハンドW.B.はそんな配慮は一切無用。

ルアーの向きなど全く気にする事なくラインにちょっとテンションをかけるだけで、その名の如く、水面を駆けるミズスマシのような軽快なロングスライドを見せてくれるのです。

インナーハンドW.B.の運動性能の高さが特に実感できるのは、ルアーがまっすぐアングラーの方向を向いている時。

この状態でスイープ気味にリールのハンドルを回すと、最初の10センチほどはラインに引かれるまままっすぐ手前に泳いできますが、助走が終わると突然急角度のターンを見せるのです。

一般的なペンシルベイトはまっすぐ引かれたまま、ターンする事なくそのまま停止してしまうものがほとんどですが、インナーハンドW.B.はそのまま何もしなくても最後の最後でククッと小気味良いターンを見せてくれます。

しかもそれは90度という甘いものではなく、時としてリアフックがラインを拾ってしまうほどのターンをすることも。

そんな回頭性能の高さなので、左右へのリズミカルなドッグウォークなんてお手のもの。

ペンシルベイトの初心者でも第一投目からキモチ良く首振りが楽しめます。

このずば抜けた運動能力の高さが初心者でも扱えると言われる所以なのです。

しかしこのインナーハンドW.B.が本領を発揮するのはここからです。

実はこのルアー、ラインテンションの掛け方によって同じ首振りでも全く違った表情を見せるのです。

ヘッドシェイクで派手に飛沫を飛ばしたり、同じくハトリーズのリトルダイナマイトが得意とする小さな小さなポッピングが出来るかと思えば、見惚れてしまうようなV字波を出しながらの超ロングスライドや水面直下稲妻ダートなど、アングラーの技巧スキル次第で同じペンシルベイトとは思えないほどの多彩なアクションが楽しめます。

水面の薄皮一枚をすくうかのようにわずかに潜りながらスライドするので、それが水面上でも水面下でもない絶妙なポジションをキープしてくれる事となりラインテンションの掛け方次第であらゆる挙動を生み出すことができるのです。

おそらくそのアクションはヘッドとテールの絶妙なバランスの賜物だと思われますが、過去にこのインナーハンドの動きの再現を目指して幾多のメーカーやビルダーがトライしましたがアクションの再現が未だ実現していないことから本当の理由は謎のまま。

誰もが目指すけれども未だ誰も再現できていないオンリーワンの動きなのです。

そんなインナーハンドW.B.の動きの秀逸さを活かして、昔のんだくれは仲間内でこんな遊びもしていました。

それは ”スプラッシュを出さずにどれだけ長いスライドができるか” を競うというもの。

ペンシルベイトに足の長いスライドをさせようと思うと初速をつける意味でもラインテンションを強めに加えるのが一般的ですが、するとどうしても飛沫が出てしまいます。

その飛沫を一切出すことなくロングスライドできた方が勝ちという、他愛もない遊びなのです。

しかしこれがなかなか盛り上がるのです。

実際にやってみると、アングラーによってスライド幅が全然違うことがわかります。

同じ号数のラインを使っていてもテンションの掛け方と抜くタイミングの差で結果に大きな差が出るのです。

この差がインナーハンドW.B.が技巧派をもトリコにするペンシルベイトと言われている理由ではないかと。

ちなみにハトリーズでは8ポンドのナイロンを推奨しているようですが、確かに細い方が動きを制約しない分多彩なアクションが出せます。

でもハトリーズオンリーならともかく他のルアーも投げることを考えると、8ポンドってちょっとキビシイですよね。

そんな動きの多彩さだけでなくカラーリングが楽しいところもハトリーズの特徴。

このヤッコ柄はハトリーズのアイデンティティにもなっているほど強烈な、しかし洗練されたセンスを放っています。

そしてヤッコパターンからのこのドットですからね、ここまでくるともう他の追随を許さないぶっちぎりのセンスとしか言いようがありません。

それを思うと羽鳥氏の逝去は日本のルアーフィッシング界にとってとてつもなく大きな損失でしたね。

日本のルアーフィッシングに創造性と意外性を持ち込んだのは間違いなく氏の功績です。

一時期ハンドメイドトップウォーターがブームになったことがありますが、ルーツを辿っていけば多くのルアーにハトリーズのDNAがあるでしょうし、造形だけでなく動きでノックアウトされたビルダーも少なくなかったはず。

同じく数多くの名作トップウォータープラグを残したレジェンド、サム・グリフィンも逝去されたようですが、こうして巨星が落ちていくのを見るのは辛いものがありますね。

スミスは今後もハトリーズブランドを継続していくにあたり、従来のハトリーズでは存在しなかったカラーリングにもトライしてくれているようですが、新しいチャレンジで頑張りすぎるあまり”ハトリーズらしさ” を見失わないで欲しいなぁと思う次第でゴザイマス。

インナーハンドW.B.のフックは前後とも#6サイズを採用。

ルアーの大きさに対してフックが小さいような気もしますが、これがハトリーズのスタンダードです。

いつだったかフックサイズを上げたら泳ぎが変わっただけでなく、すぐエビになって釣りにならなくなってしまいました。

スプリットリングを入れるだけで全然違うモノになってしまうので、フック交換の際には注意が必要です。

ネームは他の量産ハトリーズと同様、ハラにデザインネームがプリントされています。

しかし手の中のミズスマシとは言い得て妙ですよね。

このルアーの扱い易さと泳ぎのイメージをこれほどまでに如実に言い表すネームが他にあるでしょうか。

ネーミングにおいてもハトリーズはぶっちぎりセンスの持ち主なのです。

最近になってスミス創業50周年記念のインナーハンドが発売されるなど未だに現役で入手できる数少ない名作ですが、このルアーの良さを知っているのがおっさんばかりなのがちょっと気になりますね。

クラシックな外見でありながら流行りのルアーを打ち負かすほどの実力者であることを、自分も含めたおっさん世代は語り継いでいかなければなりませんね。

娘ほど歳の離れた釣りガールのSNSに今日もカワイイね😊なんてキモいコメント書き込むぐらいなら、こういう名品を後世に伝えるポストをした方がよっぽどQOLが上がると思いません???😂


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