最近80年代の後半〜90年代にかけて製造された国産ルアーの人気が急上昇しています。
その背景には懐かしさで買い求めるケースはもちろん、その頃のバスフィッシングを知らない世代の参入が影響していると思われ。
そんな新規参入アングラーの皆さんに是非とも知っておいて欲しいルアーがあります。
それが今日紹介するハスティー3。
当時のバスフィッシング界に新しいコンセプトと衝撃をもたらした革命的クランクベイトです。
ハスティ3とは
ハスティ3は1987年にスミスが発売したクランクベイト。
国産クランクベイトとしては初のシステムディープコンセプトを採用したハスティ四兄弟の三男坊でした。
システムディープとは、ひとつのルアーを潜行深度の違うサイズでシリーズ化することによって、あらゆるレンジをくまなく探れるという考えのこと。
このコンセプトは元々1980年代の初め頃、コットンコーデルがディープビッグオー#4400〜#4700の4サイズをベースに提唱したものですが、ディープビッグオーはサイズバリエーションを増やしていった結果、広いレンジがカバーできるようになったといういわば後付け的なもの。
ゆえにボディサイズこそ違えど最大潜行深度が被ってるものがあったりと、実際はツッコミどころの多いものでした。
そこで最初から全てのレンジをカバーすることをメインコンセプトとしてスミスが生み出したのがハスティーシリーズだったのです。
コンセプトの詳細は下記広告を参照プリーズ。

Angling誌 1987年9月号(7月発売号)に掲載されたハスティのデビュー広告。
画像クリックで拡大します
サイズ・重さ
ハスティー3のサイズは全長100ミリ、自重14g。
大きく突き出たダイビングリップもあって見た目はなかなかのボリュームですが、ボディ自体はノーズ to テールで60ミリ、さらにスリムシェイプなのでシリーズ中最も使いやすいサイズとなっています。
特徴
このルアーの特徴は、やはりディープクランクらしからぬハトリーズテイスト満載の流麗なライン。
ハスティが登場するまでのディープクランクといえば、バグリーのDB3やノーマンのDD22に代表されるようなファットでいかついダイビングリップを備えたものが主流でしたが、そのイメージをハトリーズは【洗練】という二文字によっていとも簡単に打ち砕いたのです。


しかしカタチだけではありません。
ヘッド部の膨らみを極力減らした流線デザインにより、スマートに深く潜行していくイメージを視覚化することにも成功しています。
今でこそバンプレスヘッドのクランクベイトは珍しくありませんが、リップが受けた水流をそのままヘッドから後方へ流すことにより潜行力に変えてしまう手法に当時はクラクラしたもんですw
これぞ Form follows function(形は機能を表す)の最たるものではないかと。
アクションは強めのウォブリング
そんなハスティが紡ぎ出すアクションは外見のスマートさとは裏腹のやや強めのウォブリング。
リップの付け根あたりを支点にブルブルとパワー溢れる泳ぎを見せてくれます。
と同時に結構なリトリーブ抵抗も。
今のダイビングクランクの感覚に慣れたアングラーが巻くと抵抗の大きさが気になるかもしれませんが、当時は先出のDD22をはじめ、もっとパワフルなクランクが多数存在していたのでこれでも軽く感じるほどでした。
これは米国製ディープクランクの泳ぎにパワー負けしないウォブリングを狙った結果だと推察。
当時の市場トレンドからすると、巻き抵抗が軽いクランクは頼りないイメージを持たれる危険性もあったでしょうから、あえて重めの味付けにしたんじゃないかと勝手にニラんでますw
そしてロングリップのリーチを生かした障害物回避性能も忘れちゃいけません。
ラウンド形状のリップは障害物に当たるとボディを倒してヌメっと避けるヒラ打ち特性がありますが、ハスティがデビューした当時はまだヒラ打ちという概念が一般には浸透していませんでした。
ゆえに先出のスミス広告でも【障害物に当たれば、即『ヒラッ』とヒラを打って…】と注釈が必要だったほど。
しかしこのデカバスを前面に打ち出した広告によって、ルアーがヒラを打つことによってデカバスが仕留められるというイメージが一気に拡散しました。
そしてその直後にティムコがリリースしたクランキーダーターの“ヒラウチ君”によってヒラ打ちの概念が完全に定着。
それ以降しばらくの間、日本のクランクベイトは猫も杓子もヒラ打ちというような時代が続いたのです。
つまりこのハスティーがヒラ打ち概念の言い出しっぺ、ヒラ打ちコンセプトの祖なのです。
ちなみに内部にはダブルのラトルボールを内蔵。
中音域の良く響くカタカタサウンドを奏でてくれます。
羽鳥テイスト満載のカラーリング
そしてハスティーはハトリーズテイストのカラーリングを纏うことでオンリーワンの存在となりました。。
従来のクランクベイトカラー概念からは一線を画すカラーリングはバスルアーらしさに溢れていて、選ぶ楽しさがありましたね。
そんなハトリーズの独創性は留まることを知らず、本家ハトリーズに代表されるトップウォータープラグ系カラーを採用するだけでなく、のちに名カラーと呼ばれることになるメタリックカラーシリーズ【火の玉ハスティー】も生み出すことに。
火の玉ハスティーはホント良く釣れました。
フックはショートシャンクのディープスロート
フックは前後ともショートシャンク/ディープスロートの#4を採用。
ディープビッグオーが同じタイプのフックを採用していたのですが、それに倣ったのかどうかは不明。

リアフックハンガーがテールエンドではなくボディの下側に設置されているのは、ボディがヒラを打った時にフックも翻ることで根がかりしないようにとの意図が盛り込まれているのは皆さん御存知の通り。
加藤”ゴッドハンド”誠司が生み出したムーンサルトクランク、CBシリーズにも同様のハンガーが採用されていますね。
ネーム
ネームはハラにデザインロゴのプリント。
今のスミスのルアーには見られないプラスチックのバリが残ってるあたりが80年代っぽくてイイですね😁
例によってネームオタの本領発揮で名前の語源を調べてみましたが、残念ながら明確な答えは得られず。
しかし同じスペリングでヘイスティと発音する単語があり、それには早急にとか迅速にという意味があるので、早くディープに到達する、狙ったレンジをスピーディに探れるという意味合いだけを使ってローマ字読みしたんじゃないかと勝手に想像してます。
てかもうそれが正解だと思ってますw
今でも入手は簡単
一斉を風靡したクランクベイトなので市場には豊富なタマ数もあり、既に生産が終わったルアーながらも入手は超カンタン。
キイロ系はもちろんネットでも格安で手に入ります。
30年以上前の物とはいえ、これだけのパフォーマンスのルアーが格安で入手できるのはシアワセなことですが、逆に言えば誰もハスティーを戦力と見ていないということ。
これを時代遅れと見るかラッキー!と見るかはアングラー次第ですが、この記事を書くにあたり投げ込んでみても古さは感じないので、使うなら今がチャンスかなと。
おわりに
ハスティーに限った話ではありませんが、流行に反応しているのはニンゲンだけであって、水中は全て本能で動いてるだけなんですよね。
つまりバスの側線を刺激する能力に時間という概念はないということ。
ハスティーを古き善きクラシックルアーにするか、一撃必殺のリーサルウェポンにするかは考え方次第ですぞ😁