SNSの普及であらゆる情報が入手しやすくなったけど、同時に情報過多で本当に良いものが見つけにくくなりました。
でもルアーにおいてこの状況は必ずしもネガティブな事ばかりじゃありません。
つまり心眼さえあればトレンドを追っかけるアングラー達を横目に、釣れるルアーでイイ思いが出来てしまうということ。
今日紹介するクラッチSSRもそんなおいしい思いが出来るルアーのひとつ。
いわゆるスター選手ではないけれど、誰もが唸るパフォーマンスを持ったスーパークランクベイトです。
クラッチSSRとは
クラッチSSRはラッキークラフトが2008年?にリリースしたタイニーサイズのクランクベイト。
”シンプルクランキング” をコンセプトに、SR/DR/MRの各タイプをリリースし、その大トリとして最後にデビューしたのがこのSSRタイプです。
どこかの記事でも書きましたが、のんだくれはタイニーサイズのクランクベイトが大好物で、SRのパフォーマンスに衝撃を受け、DRにノックアウトされていたので、SSRの話が出た途端パンツの中に生温かい広がりを感じそうになりましたw
アレですよ、海外の野外フェスであんまり期待していなかった昼間出演のバンドが予想以上のパフォーマンスで会場に火を点けたのをクラッチSR/DRとするならば、SSRは夜中12時を回った頃に登場して興奮で会場をひとつにしちゃう大御所ヘッドライナー的な感じ。
え?例えが分かりにくいって?
まあそこはヲタの独り言だと思って流してくださいなw
ちなみにこのSSRの後にスーパーディープとなるXDRが登場したので、現在は5兄弟になってます。
クラッチSSRのサイズ・重さ
クラッチSSRは全長45ミリ、自重7g。
これよりも先に発売されたジャッカルのチェリーシリーズが大ヒットを飛ばしていたので、その層に向けた意図もあると思われ。

クラッチSSRとクラッチDR
クラッチ”シリーズ”となっているため、共通ボディで潜行深度のみ変えたと思われがちですが、それぞれのモデルは専用開発されたエクスクルーシブなもの。
各モデルについて解説してるとキリがないのでここでは割愛しますが、どれも持ってて損はない仕上がりになっています。
特に画像のDRの出来は素晴らしいのでまた別の機会にじっくりと。
クラッチSSRの特徴
ワイドなリップ
SSRの特徴はなんといってもこのボディ幅を超えるワイドなリップ。
見た目通り、水面下約20cmまでを主戦場とするクランクで、ほぼウェイクベイトと言っても差し支えない”潜らなさ”。
それでもウェイクベイトとしなかったのは、”ウェイク”のイメージに引っ張られて使いどころが限られてしまうのを嫌った結果ではないかと勝手に想像してますが。
ボディ断面はスクエアに近い
横から見ると典型的なファットなラウンドボディクランクに見えますが、実はクラッチSSRのボディはトップとボトムがフラットになっていてどちらかといえばスクエアに近い形状。
この手法は見た目を小さくしながらも体積が稼げる手法として他のクランクにも多用されていますが、それらのクランクには ”釣れる” という共通項があるので、これを見ただけで否が応でも期待が高まります😁
低重心固定ウェイト
ウェイトは専用チャンバーに収められた半固定方式。
専用鋳造ウェイトを採用せずに汎用のボールウェイトを使うことでコストを抑えています。
そしてそのウェイトは両壁から伸びた棒状のステーによって動きが制限されているため、ワイドなボディであってもウェイトの可動域はほんのわずか。
これにより、派手過ぎないタイトなカチカチサウンドとなっています。
シックスセンスルアーズが言うところの、”Not Too Loud, Not Too Quiet (うるさすぎず、静か過ぎない)” な音質により場荒れしにくい設定に。

ウェイトチャンバー以外のボディ内部は完全な空洞になっていますが、色気を出して変にグラスラトルとか入れないあたりに ”シンプルクランキング”のコンセプトが息づいてますね。
テールエンドの処理
そしてテールエンドの処理もニヤリなポイント。
ボディをナナメにカットすることにより下側がカップワッシャーの役目を果たし、フックがこれ以上前に振れない仕様。
これによりタイニークランクにありがちな前後フックの干渉を抑止しています。
この斜めカットのデザインに整流効果や飛行姿勢を安定させる効果が含まれているのは言うまでもなく。
クラッチSSRのアクション
そのサイズに収まらないパワフルなウォブリング
気になるアクションはかなり強めのウォブリング。
大きくテールを振り、ルアーの後方に沢山の渦巻を遺しながらブリブリと泳ぎます。
同じタイプのルアーにバンディット社のフットルースがありますが、クラッチSSRの泳ぎはそのサイズもあって、フットルースよりも小さめ。
しかし”強さ”という点では全く引けを取りません。


フットルースとクラッチSSR
ルアーの場合、”小さいけど強いアクション” というアピール要素は時としてトンでもない差を生み出すことがあるので無視できません。

全然関係ありませんが、80年代に大ヒットしたホンダのライトウェイトスポーツカー、初代CR-Xの開発コンセプトが ”Minimum, but Maximum” でした。
クルマとルアーとでは全く畑が違いますが、小さなキャパシティにそれ以上のパフォーマンスを詰め込むのは設計者のロマンであり、それを楽しむのもユーザーとしてのロマンですからね。
高度な設計とややこしい女性に惹かれてしまうDNAがオトコには標準で装備されてるから仕方ないですねw
巻き抵抗は軽め
巻き心地はそのサイズゆえ、ウェイクベイトにしては軽め。
フットルースでも高速巻きを続けると結構な負担になりますが、これなら終日巻いても全く問題ナシ。
しかし巻き抵抗は軽いながらもしっかりと強いバイブレーションが伝わってくるので、フォロー食いのようなバイトもしっかり取れます。
高速巻きへの追従性も◎
そしてSSRクランクの要とも言える高速巻きへの追従性も文句なしのレベル。
ハイスピードで巻いてもトビウオになることがなく、しっかりとビートを刻み続けます。
そして水面が波立つようなチョッピーコンディションでも飛び出しにくく、引き波を出し続けられるのです。
特筆すべきはテールにエアを咬ませてバズベイトのようにジャブジャブさせながら引けるところ。
これはおそらく先述のナナメにカット処理されたテールデザインの整流効果だと思うのですが、多くのSSRクランクはテールがエアを咬んだ途端にトビウオになりがちなのに対し、このクラッチSSRはエアを咬んでもまるで水面に貼り付いているかのようにジャブジャブし続けることが出来ます。
これが意味するのは、クラッチSSRはタイニークランクでありながら強波動のバズベイトとしても使えるという事。
コレってとてつもなくスゲー事だと思いません?
安定の中の”不安定”
しかしクラッチSSRのパフォーマンスはそれだけにとどまりません。
のんだくれが一番シビれたのは、リトリーブ軌道が不安定に揺らぐこと。
実はこのルアー、まっすぐリトリーブしてくる中で一瞬軌道がブレるのです。
巻きスピードによって出なかったりもしますが、その挙動はいわゆる千鳥アクションとは全く違った動きで、バスプロショップスのXPSジ・エッグにも見られるもの。

その挙動はアングラーが意図的に出せるものではありませんが、リトリーブ軌道がフラッと揺れた瞬間にバイトが出ることが多く、個人的にはSSR/ウェイクベイトのキモだと思っています。
ラッキークラフトが意図してこの動きをクラッチに盛り込んだかどうかは分かりませんが、釣れる要素である事は間違いないのでこれを武器にしないテはありませんよね。
クラッチSSRの使い方
そんなクラッチSSRの使い方は、やはり巻いてナンボ。
早めのリトリーブによって強い集魚力を発揮するクランクなので、ガンガン巻き倒すのが釣果への最短距離です。
何も変化の無いワッフル状の斜め護岸の激浅ラインをガーッと巻き倒すのがのんだくれの使い方。
例えトレースラインにバスの付き場となるような変化がなくても大丈夫。
このルアーは離れたところにいるバスを寄せる力があるので、沖の闇からバスを召喚する事ができます。
変化がないから誰も狙わないスポットだというのもありますが、これで何度もおいしい思いをしています。
そしてもう一つは、杭に当てる使い方。
クラッチSSRは大きく張り出したリップがフックをしっかりガードするので、積極的に立ち杭に当てていくのに向いています。
で、当たったら一瞬止めるとゴッ!といった具合。
そしてこのスナッグレス性能は、相模湖などでよく見られる係留用の浮き竹や倒木などを越える時にも発揮されるので、このケースでもルアーが乗り越えてポチャンと落ちたら一瞬止めてみて。
カラーは豊富だが…
クラッチSSRはベーシッククランクだということもあり、豊富なカラーバリエーションが用意されているのも高ポイント。
ウロコパターンが彫られていないプレーンなボディなのであらゆるカラーと相性抜群。
しかし”SSR” という括りで見ると、ちょっと物足りなさを感じるのは否めません。
やはりここはトップウォーター、もしくはサブサーフェスを意識したクリアやマットブラック、レッドヘッドなどもラインナップに入れて欲しかったなと。
まあこの辺のマニア向けカラー展開は、LUCKの椋田さんに頑張ってもらいましょうw
ちなみにカラーバリエーションではありませんが、ボーン素材のモデルもラインナップしています。
のんだくれはボーン素材に起因する高音ラトルにあんまり興味がありませんが、ラッキークラフト曰く ”アクションも違う” らしいのでちょっと気になってます。
でもどこにも売ってないんだよなー😫
フックは#8だが…
フックはデフォルトで#8サイズが装備されていますが、のんだくれは前後ともショートシャンクの#6(VMC#9651)にサイズアップしています。
その理由は早巻きとデフォルトフックの相性がイマイチだから。


左が#6フックで右がデフォルトの#8フック
このクランクに限った話ではないのですが、大きくウォブリングするクランクは早巻きだとバイトを拾い切れないことが多く、ミスバイトやバレが多発するのです。
スロー〜ミディアムスピードで巻くならば問題はないと思いますが、ひたすら早巻きしつづける場合、#8サイズでは完全に役不足。
よって、ウェイト増(前後で約0.5g増)の意味もあって#6サイズに交換しています。
これによりフッキング率が上がったのはもちろん、高速巻きでの安定性も増してより水面に吸い付くように。
一般的にこのサイズのクランクベイトのフックサイズを上げると大抵前後で干渉しますが、先述のテールエンドの斜め処理によってそれをもクリア。
ほんと神クランクですよコレ。
大きなスタンプネームも高ポイント
そしてネームが大きくてハッキリクッキリなところもナイス。
最近は小さな文字で何て書いてあるのか分からんネームもありますが、奇をてらわずシンプルなフォントで大きく書かれているのはローガンのおっさんに優しい配慮ですね。
ちなみに名前のクラッチはバスを ”掴む” と ”Good Job” のダブルミーニングだと思ってましたが、調べてみたところ、”全てが上手くいっている状態” 等、正意/スラングを問わず他にも多くの意味を持つことが判明。
ダブルミーニングならぬマルチミーニングな名前だったのです。
ラッキークラフトがこの”クラッチ”にどんな思いを込めたのかは分かりませんが、それらのほとんどがポジティブな意味であることを踏まえると、よく熟考されてるなと。
おわりに
ほとんどのアングラーにとって、このクラッチSSRは ”今さら”なルアーでしょう。
10年以上も前に発売され、大きく話題になったわけでもなく、最近ではショップで見ることもありません。
しかしこのルアーにはラッキークラフトの本気が詰まっていて、使ってみればすぐに分かります。
そしてそれは一部のコアなアングラーにしか分からない良さではなく、誰が使っても納得の良さなのです。
驚くべきは、その良さが1,000円未満で手に入る事。
ラーメン屋でトッピング全部乗せを頼んだら1,500円を越えてしまう昨今、1,000円以下で納得のパフォーマンスが手に入り、しかも後からニヤニヤを反芻できるなんて、そんな超絶コストパフォーマンスのルアーって他にあります?
ラーメンはいっときだけの快楽だけど、クラッチは一生のニヤニヤ。
もうアブラ多めだのバリカタだの言ってる場合ではないのです。
なのでこの記事を読んで気になった人は、クラッチSSRを早巻きで使い倒して、”自身にとってのMinimum, but Maximumとは何ぞや” と自問自答してみて下さい。
その答え如何では異世界のドアが開いちゃうかもしれませんが😁