突然ですがルアーフィッシング歴を通して使い続けてるルアーって何ですか?
のんだくれは伊達に歴だけ長いので枚挙にいとまがありませんが、頑張ってベストスリーを挙げるとするならば、オリジナルザラスプークとベビートーピード、そして今日のゲストであるバッシンシャッド。
どのルアーも数え切れないほどイイ思いをさせてくれたバディ達です。
バッシンシャッドとは
バッシンシャッドはかつてバグリーズベイトカンパニーが製造していたシャッドプラグです。
ラパラのシャッドラップが北米マーケットを席巻していたことに大きな危機感を抱いたジムバグリーが、当時活躍していたバスプロ、ジミー・ロジャースの協力を得て完成させたシャッドラップ迎撃兵器として知られています。
1983年?のデビュー直後から日本でもその実力は知られていましたが、その人気を決定づけたのはジム村田監修による名著 ”間違いだらけのバッシング” でした。
著書の中で紹介された ”ナチュラル&アピール理論” で、ナチュラル系のシャッドラップに対し、バッシンシャッドはアピール系のルアーとして取り上げられた事で一躍大ブレイク。
一時期はその2つはセットで持つべきだと言い切るアングラーまで現れるほどの人気者となりました。
今思えばネット情報が氾濫していない時代だったからこそ人気者になれたのかもしれませんが。
サイズ・重さ
バッシンシャッドのサイズはボディ全長75ミリ、自重3/8oz。
当時市場を掌握するも ”軽くて飛ばない” と評されたシャッドラップの欠点を突いたかのような体躯が特徴です。

シャッドラップのオリジナルモデルである7cmとバッシンシャッド
シャッドプラグらしからぬマッスルボディに仕上げられた事でシャッドラップ(7.5g)よりも大幅な重量増に成功しており、ベイトキャスティングでもストレス無く投げられるキャスタビリティを実現しています。
最終的に40ミリから90ミリまで1cm刻みで6モデルものバリエーション展開したシャッドラップに対し、バッシンシャッドのボディサイズは実質1種類のみ。
そんなラパラのサイズ展開攻勢に押される形となったシャッドラップは、バグリー悪夢の時代と呼ばれる迷走の影響もあってラウリ覇権の前に敗れ去ってしまったのです。
バッシンシャッドの特徴
シャッドを忠実に再現したボディ
バッシンシャッド最大の特徴はなんと言ってもこのシャッドプロファイルでしょう。
70年代からスモールフライシリーズで鍛えてきたバグリーにとってはリアルなシャッド形状を削り出すことなど朝飯前だったワケですが、40年も前に自然素材でこのシェイプを量産していたのはさすがのバグリーと言わざるを得ません。

画像では分かりにくいがわずかにエラのラインを凹ませるなどバグリーの技術が光っている
製造時期によるボディシェイプの変化

80年代最初期モデルのバッシンシャッド。 画像出典:Bass Pro Shops Master Catalog 1986
しかしこのボディシェイプにも製造時期によって形状の変遷があります。
デビュー直後のボディはより体高があってテールを細く絞ったデザインですが、90年代になるとメイン画像のように少しぽってりとしたラインに。
そして90年年代後半の迷走期に入ると、まるでバングOBのような締まりのないボディへと変わってゆきます。
どの世代にも長短があるので一概に良い悪いは言えませんが、アクションのキレという点ではやはり初代がベストかと。
ぶっちゃけどのモデルでも普通に釣れますけどね。
専用開発したリップ
もう一つの特徴はこのリップ。
キレのある動きを出すために専用開発されたこのリップは、スリムラインドビルSlim-Lined-Bill という名称で呼ばれ、当時のプロモーションでも紹介されていました。
リップはエッジ処理されていない、バグリー伝統のレキサン樹脂リップ。
ロゴ入りのバグリー特注品です。
当時はこのレキサン樹脂リップに関して特に注目もされていませんでしたが、後に数多のクランクベイトビルダーから絶賛される事になります。
彼ら曰く、このリップは強度、しなやかさ、比重が申し分なく、自然素材との相性がバツグンだ、と。
このリップを製造していたのはバグリーと同じくウィンターヘイブンWinter Haven に工場を持っていた樹脂製造会社ですが、10年ほど前に操業を止めてしまい今では手に入らなくなってしまいました。
それにより一時期ハンドメイドクランクビルダーたちの間でこのレキサン樹脂争奪バトルが勃発したほどw
それらのリップ争奪バトルに参戦していたのがスタンフォードルアーズ創業者のディーター・スタンフォードであり、キャッチングコンセプトのハーマン・オズワルドでした。
と、この辺の話を始めるとエンドレスになるのでまた別の機会に😁
アクションは強いウォブリング
気になるアクションは強い水撹拌を伴うウォブルロール。
シャッドプラグらしからぬ巻き抵抗を伴って、力強いブルブル感を手元に投げかけてくれます。
シャッドラップはピリピリとしたタイトなエスケープアクションがウリですが、バッシンシャッドは全く正反対となる大きなアクションで勝負を掛けたということがよく分かります。
広大な水域からバスを探さなければならないアメリカ特有の事情に対応したのもあるでしょう。
そしてロッドアクションへのレスポンスが非常に高いのもバッシンシャッドのウリのひとつ。
バルサ素材特有のレスポンスの高さを最大限に引き出したことで、シャッドというよりも ”トゥイッチングに長けたミノー” という性格も備わっています。
しかし高レスポンスと言っても浮力が高過ぎて落ち着きがないという事はなく、いい感じに躾けてあるので誰でも扱いやすくなっています。
この辺りのセッティングは、バグリーらしいというか、バルサプラグの手練だけのことはあるなと。
しかしそれらのポテンシャルを引き出すには使用前の徹底したアイチューンは必須項目。
これをやるかやらないかでその日の釣果が決まると言っても過言ではありません。
バッシンシャッドの使い方
使い方は超簡単。
投げて巻くだけでオッケー。
今のタックルであればラクに25mは投げられるのでひたすら撃って巻きまくるのがキャッチへの近道で、巻くだけでオートマチックにバスを釣れてきてくれます。
しかしせっかくの高レスポンス性能を巻きだけで終わらせるのは超もったいない!
実はトップウォーター使いが超オススメなのです。
水面使いと言ってもややこしい操作は一切なし。
投げたらしばらくのポースののち、ロッドを軽くチョンとやるだけ。
そしてそれを繰り返すだけ。
バッシンシャッドは一般的なミノーよりも大きなリップなので軽い入力でもダイブして水面直下でギラッと身を翻します。
それはまるで水面でもじっているベイトフィッシュのよう。
もちろん強いアクションでは、ショートリップミノーではマネできない急角度潜行を見せてくれます。
実はコレ、かつて琵琶湖の漁港で無限釣りをした動かし方。
今のように漁港が立入禁止でなかった頃、釣りに疲れたら岸壁に腰掛けてバッシンシャッドの水面使いで遊んでいたのです。
漁師さんたちとタバコを吸って雑談しながらチビバスをエンドレスで釣るなんて、もう今では夢物語でしかありませんが、バッシンシャッドのレスポンスは今でも十分効果を発揮してくれると思います。
カラーバリエーションの多さもバグリーのウリ
ホイルの上にナチュラルプリントを施すのはスモールフライシリーズからのお得意パターンですね。
これ以外に通常のペイントパターン、クロームパターンもありました。
そうそう、ノーマンのゲルコートに対抗してラメフレークてんこ盛りのダズラーカラーなんてのも出してた時期がありました。
カラーバリエーションの多さはバグリーのセールスポイントで、それ故、コレクター達はいつ終わるとも知れない戦いに日々消耗することになりますw
しかしカラーの多さに苦しめられていたのはコレクターだけではなく、バグリー自身も工程や品質管理に苦しめられていたと、バグリーの社長を務めたマイクが語っていました。
ちなみにバグリーのこのホイルパターンをプラスチックで再現したのがコットンコーデルのフォイライズドフィニッシュで、当時レッドフィンやビッグオーなど数多くのルアーに採用されました。
時期を同じくしてコーデルがプラドコ入りを果たしたことで、レーベルのラケットシャッドにもフォイライズドフィニッシュが採用されたので、その辺の変遷が気になる方はこちらもどうぞ。

フックは#4が標準
フックは前後とも#4サイズが標準となっており、フック形状も製造時期によって変わっています。
デビューしたての頃はクローポイントフックが採用されていましたが、のちにシルバークロームのストレートポイントに変更され、その後ドミニカ生産になってからはブロンズフックになりました。
そういえば一時期赤針を装着してたこともありましたね。
画像のものはVMCのショートシャンク#9651ですが、ややワイヤーが太い分ウェイト増となり、早巻きでも泳ぎが破綻しにくいので暴れ系クランクに多用しています。
バグリークランクに共通した欠陥も
フロントのリグはウェイテッドハンガー、テールはヒートンというバグリークランクのお約束リグですが、フロントハンガーはウェイトが温度差による収縮を繰り返す事で塗装が割れる血統的遺伝疾患を持っています。
この塗装が割れる症状は経年劣化によるものではなく、比較的新しい個体でも発生していたのでバグリー自身も承知していたはずですが、当時の塗料ではウェイトの収縮に耐えられるものが無かったのか、この事象は90年代中頃の製品にまで見られます。
しかしそんな欠陥があるのを知っていながらもウェイテッドハンガーを使い続けていたのは、やはりバルサとの相性が良かったんでしょうね。
つまり、塗装割れリスクよりもバルサ材との相性というメリットを採ったということです。
アレですよ、血統を守るために近親者のみで戦略的婚姻を繰り返した結果、みんなしゃくれアゴになってしまったハプスブルク家みたいなもんです…. って違うかw


ルアーパーツショップで売られている汎用ウェイテッドハンガー。一個あたり30円前後で売られている。
画像出典:Barlows Tackle
余談ですがアメリカのルアーパーツ屋ではクランクベイト用のウェイテッドハンガーが売られていますが、それらの多くは中国製で重量が均一でない事が多いので、ストイックなビルダーは自身で鉛を溶かしてハンドポーリング(手流し)しています。
この工程は均一な重量のためというのもありますが、ウェイトの形状やボディ素材に合わせて比重を変えてみたりと実に奥が深い世界でもありますので、オキニのハンドメイドクランクがあったらそっち方面でも掘り下げてみるとオフでもニヤニヤできるので、よりキモいおっさんに進化したい方は是非。
ネームは豪華なダブルスタンプ
ネームはリップのエンボスモールドと腹へのスタンプという豪華ダブルスタンプ仕様。
ネームはもちろんですが、ホイルのラインが出てたりとハンドメイド感がたまりませんw
どうでもいい事ですが、リップのエンボスモールドの “L” の文字が “Y” 同様、上ではなく下に出て配列されているトコロがネームオタ的萌えポイント。
ホントにどーでもいい事でスミマセンw
しかしバッシンシャッドって分かりやすくてサイコーのネーミングですよね。
どストライク!って感じで、”BASSING” にしなかったトコもナイスです。
ちなみに90年代の初め、バグリーはバッシンシャッドという名前を捨てて、バススナック Bass Snack という超絶ダサい名前に変更したことがあります。
改名の理由は定かではありませんが、同じ時期にサーモン/スティールヘッド用カラーのバッシンシャッドを ”サーモンスナック” と命名し販売していることから、PNW(Pacific North West=太平洋岸北西地区)のプロモーションに絡んだなんらかの施策があったんじゃないかと睨んでます。
もうひとつ、輸入元のオフトはバッシンシャッドではなく”バッスィンシャッド”で流通させていたというどーでもいい事もお伝えしておきますw
バッシンシャッドはどこで買える?
そんなバッシンシャッドですが、バグリーの倒産により現在では製造されていません。
新生バグリーのラインナップに登らなかったのは、おそらく今の時代にそぐわないと判断されたからだと思われ。
よって入手は中古市場で探すこととなります。
しかしご安心を。
当時ジム村田効果で日本には膨大な数のバッシンシャッドが出回っており、メルオクはもちろんキイロでも簡単に出逢えます。
しかも古いこともあって値段もかなりリーズナブル。
ルアーの実力に対するコストパフォーマンスという点ではかなりオススメのルアーなので、もしどこかで出会ったら、製造時期を推測しながら迎え入れて欲しいなと。
おわりに
おっさんたちの間でバッシンシャッドの話になると、必ずと言っていいほどシャッドラップとどっちが釣れるかという出口の見えない不毛な論戦となりますw
でもそれは両者が長きに渡って愛されてることの裏返しでもあるんですよね。
アングラーなら誰しも長く使い続けてるルアーがあるはずです。
SNSで話題のルアーを追いかけるのもいいけど、自分の思い出を彩ってくれた戦友をもう一度見直してあげるのもアングラーの仕事であることをお忘れなく。