歴戦の名機に憧れるも名前負けのまま敗戦を迎えたケンクラの駄作 ゼロファイター シングル Zero Fighter Single Blade / ケンクラフト Kencraft

ケンクラフト KEN craftスピンテールジグワイヤーベイト他上州屋 Joshuya

ルアーに限った話じゃありませんが商品のネーミングって大事ですよね。

ネーミング次第でその商品の運命が決まってしまうと言っても言い過ぎではありません。

日清のカレーメシのように名前を変えただけで爆発的ヒットになったものもあるので、いやがおうにも企画担当者はネーミングに力が入ります。

しかし中には力の配分を間違ってしまったのか、名前負けしてるものもチラホラ。

そんなワケで今日の千一夜は、少々名前負けしてる感が否めないケンクラのスピンテールジグ、その名もゼロファイターです。

 

ゼロファイターとは言うまでもなく日本海軍が誇る零式艦上戦闘機五二型、つまりゼロ戦のこと。

米軍のP-51マスタングとともにレシプロの名機として語り継がれるだけでなく、数多くの若い命とともに海に散った悲劇の戦闘機としても知られています。

ハナタレ時代、ハセガワのプラモデルを両手に持ち日々激しいドッグファイトを繰り広げていたのんだくれが、そんな誉れ高い名前を授かったルアーを放っておくワケがありません。

なに?!ゼロ戦の名を持つスピンテールジグだと!?

もうのんだくれの頭の中はレシプロエンジン特有の強いバイブレーションと、機体下部から排出される排気ガスを彷彿とさせる強い水の攪拌しか浮かびません。

元々マンズのリトルジョージでイイ思いをしていたこともあり、ソッコーでお買い上げしたのでした。

 

ゼロファイターはボディ45ミリ、自重1/2ozのスピンテールジグです。

当時はスピンテールジグといえばショートボディの、どちらかというと丸っこいものが多かったのですが、ベイトフィッシュライクなシェイプを採用したのは当時巻き起こっていたリアル系ブームに便乗するのと、絶対王者だったウォーターランドのスピンソニックに対抗するという意図もあったんでしょうね。

 

シェイプもこの通りの縦扁平ボディを採用し、スピンテールにはあまり見られない細かなウロコの彫塑など、ヤル気も満々。

こうして見るとケンクラフトはリニージバイブといい、タナゴに寄せた造形が多いですね。

 

リニージバイブSP Lineage Vib SP / ケンクラフト Ken Craft
ケンクラフトといえば、あの名品リニージクワイアットが良くも悪くも有名ですが、コイツも忘れちゃいけませんぜ、の代表が今日紹介するリニージバイブ。 当時誰も相手にしなかったルアーですが、のんだくれ的には後からチンコ...

 

上州屋だけに北関東に多く見られるベイトフィッシュをイメージしていたのかもしれませんね。

そういう意味ではケンクラフトは広義のローカルベイトと言えるでしょう。

 

そしてスピンテールジグの最大の特徴でもあるブレードです。

スピンテールジグには大きく分けてブレードをスイベルで接続するタイプとクレビスで接続するタイプの2つのブレード接続方法がありますが、ゼロファイターはご覧の通りのクレビスタイプを採用。

クレビスを採用するこの方法は、シャフトを中心にブレードが回転するので強いバイブレーションを生み出しやすいのが特徴ですが、その反面スイベル接続タイプに比べてブレードの立ち上がりが遅くなりがちという欠点があります。

よって橋脚などでリフト&フォールするようなバーチカル戦略にはあまり向かないとされています。

しかしそこはゼロファイター、零戦ばりの強力なエンジン振動があればブレードの立ち上がりなんて気にするもんか!と思い、投げてみるもやっぱりフォーリングではブレードが….

ちょっと名前負けしてる感は否めません😭

いや、ちゃんと回ることは回るんですよ。

でもクレビスタイプの宿命で、ブレードの立ち上がりにおいてはスイベルタイプに一歩譲っていると言わざるを得ません。

特にのんだくれは水深1mぐらいしかない護岸とかでもちょうちん釣りでロッドを上げ下げしたい派なので、ブレードが瞬時に回転を始めてくれないとストレスを感じてしまうんです。

なのでこのルアーはリトリーブ専門のスピンテールジグと割り切った方が楽しく使えるでしょうね。

 

ブレードの軸はケツをリングにするのではなく、ワイヤーを潰してビーズを留める手法を採用。

リングにした方がいろいろアレンジできるからイイのに…. と誰もが思うところですが、このシリーズにはタンデムブレードのモデルもラインナップしていて、そっちも売らなきゃならない関係上w、あえてアレンジできない仕様になっています。

ただ、タンデムモデルはシングルよりもさらにブレードの立ち上がりが悪い上に双方のブレードがお互いのバイブレーションを消し合うので、ぶっちゃけ使い勝手はイマイチ。

小さくてキラキラしたものが激しくバイブレーションするのがスピンテールジグの最大のキモなのに、それを出しきれていないので、もしかしたらタンデムは単なるバリエーション要員だったのかもしれませんね。

あの頃はルアーだったら何でも売れた時代ですから。

 

そんなゼロファイターですが、スピンテールジグには珍しく細かいスケールパターンを採用するなどタナゴのディテールにこだわっているところにケンクラフトらしさが感じられます。

そしてスイム時はルアーが過度な前傾姿勢になる事なく、よりナチュラルな姿勢をキープして泳ぐように設計されているところにもこだわりが見られますね。

 

特にこだわりが感じられるのはこのフックの取り付け位置です。

一般的なワンフッカーのテールスピンジグはラインアイの真下あたりにフックハンガーが見られますが、このゼロファイターは少し後ろにずらして設置しています。

これによりフックがラインを拾ってしまう、いわゆるエビ状態になることがほぼ皆無に。

ラインが絡まないという優れた機能があるのにブレード立ち上がりが遅いので余計にもったいなく感じてしまいます。

もし回転レスポンスがよかったらリフト&フォールでは最強になれたかもしれないのに… と。

 

スピナーベイトやバズベイトをはじめとしたこういうメタル系ルアーは、外見上の個性があまり見られないのでどれも同じと思ってしまいがちですが実は性能が一番顕著に現れるルアーでもあります。

しかもその実力は使ってみないと分からないというなかなかのツンデレぶり。

ケンクラフトがこのルアーに歴戦の名機の名を冠したのは、とにかく使ってくれというキモチの表れだったのかもしれません。

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