またスプーンビルかよ! などと言うなかれ。
コイツはコイツでこれまた深ーい世界があるんですから。
スプーンビルでありながら実はスプーンビルではないルアー、それがこのディープランナー・プラスチックビルです。
以前どっかでも書きましたが、3月に渋谷で開催されたオフ会で、参加者全員に【今集めてる、もしくは一番興味があるルアーはナニ?】という質問をしたんです。
するとまあ出るわ出るわ、いわゆる人気ルアーを集め切っちゃったルアヲタの祭典だけあって、おいおい、それ逝くかぁ?なルアーや、人間を辞めてるとしか思えないようなエピソードのオンパレード。
やっぱり皆さん、一人残らず狂ってます。
で、その中の一人、たっくんがボソッと『俺、スプーンビルじゃないディープランナー逝ってます』とひとこと。
それ以上の多くを語らないその姿に一種の恐怖すら感じて(笑)しまったんですが、よくよく考えてみると、のんだくれも真剣にディープランナーだけをチェックしたことなんて無かったなー… なんて思い、今回ボックスの奥深くからご登場いただきました。
このディープランナーは、レーベルのルアーの中でも最古参メンバーのうちの一人。
途中からスプーンビルと源氏名を変えましたが、基本構造を変えずに40年以上も製造され続けている超ロングセラーです。
デビュー当時は金属のクチビルを持った兄弟がいたんですが、生産コストの問題なのか、金属兄貴は数年でサバイバルゲームから脱落。
この樹脂クチビルだけが残ったという次第です。
そんな事情から、当初はメタルビルと区別するためにプラスチックビルというサブネーム付きで呼ばれてました。
コイツの特徴はなんといってもこのデカいダイビングリップ。
見た目の通り、しっかり水をつかんでグイグイと湖底を目指します。
現行のスプーンビルミノーとの違いは、付け根の部分が幾分かスリムになってること。
そのせいかどうかは分かりませんが、リトリーブ時にトウィッチを入れると、結構ダートします。
水切れが良くなってるんでしょうかね。
しかしのんだくれ的に不満なのは、せっかくの広いキャンバスがあるにも関わらず、ネームはおろか、ブランドロゴすら入っていないこと。
ツルンとしたプレーンなリップなので、これじゃパチモンかと思っちゃいますよね。
もひとつの違いはリップの固定方法。
こちらも現行とは逆の、みけんからネジが貫通してます。
それゆえこの時期のモデルは米コレクターの間ではスクリューヘッド、つまりネジ頭と呼ばれています。
どの国のどのジャンルにも言えることですが、コレクターが製造期やモデル違いを区別する呼び方はホント的確ですよね。
そしてスクリュー以外にも、リップの後端部、ボディとの接合部の形状が、凸凹形状に加工されていて上手くかしめてあるのが分かります。
これは最初期のモデルにだけ見られる形状で、後に現行モデルと同じ形状に変わり、リップの接合手法もレーベルの伝統・アゴ下からのネジ留めに変わります。

しかーし! そこはコレクター泣かせのレーベル、全てをそんなカンタンにアイデンティファイさせてくれるワケがありません。
なんとコイツにはネジ無し接着オンリーのタマも存在するんです!
単にネジ閉め忘れたのかそれとも強力な接着剤が見つかったのか、真相は分かりませんが、それ以上は自殺行為になるのでチェックしてませんw
実はレーベルは80年代にもネジ無しで接着オンリーのダブルディープシャッドを出してた時期があったりすりので、一度足を踏み入れたら生きては帰れないラビリンスに興味のある方は調べてみて下さい。
初期のレーベルといえば、このクロスハッチパターンを忘れちゃイケマセン。
というかこれを抜きにしてレーベルは語れません。
画像では分かりにくいんですが、現行のパターンよりも横方向のストライプが強調されてます。
単にモールドの問題だと思うんですが、同じ時期の同じモデルでも微妙に間隔が違ったりするので、もし複数持ってる人がいたらチェックしてみるのも面白いですよ。
ちなみにディープランナーはノンラトルです。
それゆえ細身のボディの割に浮力が強く、アクションはキビキビ。
さらにボトムに当たった瞬間にラインのテンションを抜くとイイ感じで後ろに跳ねてくれます。
よって、テンポよく巻いて当たったら浮かせてというクランクベイトちっくな使い方にはラトル入りモデルよりもこっちの方が向いています。
現在、市場に出回っているダイビングミノーのほとんどはサスペンド、もしくはスローライザーである事を考えると、この強い浮力がもたらす独特の挙動は注目に値するんじゃないかと。
フックは前後ともショートシャンクの例のヤツです。
以前も書きましたが、ホントにこのフック、どっかで復刻生産してくんないですかね。
ロングシャンクのヤツは今でも出てるんですけど、オールドレーベルにはロングシャンクは似合わないんですよね。
実釣での性能差は良く分かりませんがたかがフック、されどフック。
ハリひとつでルアーの表情がガラリと変わってしまうので、ルアーを肴に夜な夜な焼酎をカラコロするオールドタイマー達にとってはヒッジョーに重要なポイントなのです。
しかし改めて見ると腹のホワイトは明らかにハケで塗ったと思われる、見事なまでのハンドメイド感がありますね。
プラスチックの量産ルアーでも当時はかなりの工程が手作りだったんだなと再認識させられます。
手作り話が出たついでに、ここにもスポットライトを当てちゃいましょう。
画像を拡大するとわかりますが、このリップにもトップコートをハケで塗った痕跡が残ってます。
多分オバちゃん達がシンナー臭で半分ラリラリしながらもペタペタと塗ってくれてたんでしょうね。
青箱プラ蓋時代のモノ、しかも潜り屋なので、実釣に投入するにはかなりの勇気が必要ですが、スプーンビルの… いや、世界中で出回ってる全てのロングビルミノーのルーツを、21世紀の今、あえて使う事によって、見えてくる事もあるんじゃないのかなー… などとエラそうな事を思っちゃったりしてます。
ロングビルミノーなんて、今や中古屋のスルー対象の最たるものですが、誰も使わなくなった今こそあなたをひとり高笑いさせてくれる伏兵なのかもしれません。
コメント
1. HED-ON82 May 13, 2010 08:56
こんにちは。
GW中のおいしそうな商品は購入することができませんでした・・・残念。
今回のディープランナー、欲しくなりました。
中古店で探すしかないですが、パチ物を購入しそうです。
いろいろな、オタがいますよね。
自分の友人に、B級・C級オタがいます、名前も分からないものが沢山あるそうです。
その友人ですが、黄色いお店でC級ルアーのみの購入でレシートの長さがが80センチ超えとワールドレコードを更新したそうです!><?
3. むぅ May 13, 2010 14:45
青箱のメタルリップと白箱のディープランナーは持ってたけど
その過渡期にこんなんあったんですね
頭からネジってなんか恐いかも・・・
4. ロングA May 13, 2010 20:52
こんばんわ
しっかり拡大したヲタです
個人的にメタルビルが気になりますね
あのリップの大きさでメタルだったらさぞ・・・
ハッ、危ない危ない
迷宮に迷い込むところでした
にしてもレーベルは怖いですね~
5. とびっく May 13, 2010 22:00
こんばんは(・∀・)ノ
こういうモデルもあったんですね、しかし眉間にネジって痛そうですね(笑)
レーベル迷宮覗いてみたいような、イヤやっぱりやめとこ(笑)
6. のんだくれ May 14, 2010 00:10
HED-ON82さん
レシート80cmって、一体どんだけ?(汗)
昔バスプロショップスで2日間で40万円分ぐらい購入したことありますが、
さすがに80cmまではいきませんでしたよ。
8. のんだくれ May 14, 2010 00:14
むぅさん
のんだくれも今回調べてみるまでこんなに違いがあるとは思いませんでしたね。
しかし意識して集めたわけでもないのに、ボックスに溢れ返るディープランナー… なんで?(爆)
9. のんだくれ May 14, 2010 00:15
ロングさん
いつかメタルビルをアップしますが、アレはアレでまた深いんですよ。
ホントにジョージ恐るべしですわ。
10. のんだくれ May 14, 2010 00:17
とびっくさん
レーベル以外にもまだまだ知られていないマイナーモデルがありますからね。
ルアーってホント深いっす。
11. 5個セット May 14, 2010 00:31
こんばんはです。
このリップ接合部の画像を見て声出てしまいましたよ。(笑)
ルックス的にもこの差し込み用の凸凹加工は残しておいて
ほしかったですね。カッチョイイですわ。
12. tei-g May 14, 2010 01:29
あれから結構、ディープランナー気になってます。一応、二匹飼ってるんですが、小サイズの方が好きですね。
青パケでノンラトルなんですけど、ディープランナースプーンビルってシールが貼ってあるやつがうちにいます。
これは名前が変わる過渡期のやつなんでしょうか。
13. い~もん May 14, 2010 01:30
まいどです
知らないルアーは数知れずありますが f^_^;
いゃ~こりゃ~マニアックと思いました(笑)
SBミノーの全身 ビスは脳天杭打ちっ!! (¨;)
このルアーの背ピンク
通称ス〇ベ色 あれば欲しいですね~
14. 赤ベロ May 14, 2010 01:55
スプーンビルといえばラリー・ニクソンを思いだしますが、
やはり当時影響され野池で使用したら、
すぐにロストしてしまった辛い思い出しかありません(笑)
15. のんだくれ May 15, 2010 02:11
5個セットさん
このリップの接合方法はなかなかイケてますよね。
でもこれをやらなくてもいい現行モデルはちゃんと精度が出せてるって事なんでしょうか。
16. のんだくれ May 15, 2010 02:19
tei-gさん
あれからあちこち調べてみたんですが、スプーンビルという名前は
ルアーの名前にこそなってませんでしたが、どうもこのルアーの登場した
当初から愛称的な呼び名としてあったようですね。
ちょうどファストバックをハンピーと呼んでたみたいに。
だからtei-gさんのヤツは過渡期というわけではないようです。
80年代後半、ラトルを入れてリニューアルした時にスプーンビルミノーと
命名したのが正式改姓ですが。
17. のんだくれ May 15, 2010 02:21
いーもん
例のピンクバックも多分あるんじゃないかなー。
18. のんだくれ May 15, 2010 02:23
赤ベロさん
ラリーニクソンが日本に紹介するまでは正直、どうやって使うのかが分からんルアーでしたよね。(笑)
のんだくれも9cmサイズをいくつかロストしました。
でもそんなテキトーな使い方でもそこそこ釣れちゃったんですから
やっぱり良い時代だったんですね。
19. tsuru mann May 15, 2010 14:24
子供の頃のルアー入門本のミノープラグの欄には
必ずレーベルのクロスハッチとラパラがのっていて憧れでした。いまの入門本にものっているのでしようか?
20. のんだくれ May 16, 2010 21:57
tsuru mannさん
いや、最近はルアーの入門書というモノ自体が存在しないんじゃないですかね。
タックルも中古屋で安く手に入るんで、余程のモノじゃない限り、
【 憧れのタックル 】 もないんじゃないかと。
うーん… サミシイような恵まれてるような…
21. 80’s Bassing June 04, 2010 18:59
ん~~
ホンマヲタですがな汗
あっしには無用なブツですな(笑)
22. のんだくれ June 05, 2010 16:08
80’sさん
この辺になると、詳しいサイトがあるとかちゃんとした
情報がないんで、ひたすら現物を見て、数をこなすしかないんですよね。
もうコレクションとは違う方向に逝っちゃってます。