
いい感じに水温が上昇してくるとついつい投げたくなるのが水面近くで泳いでくれるルアーたち。
ゴールデンウィークが開けるまでは、急に寒くなったり雨が降ったりと、条件もコロコロ変わるのでトップが炸裂する機会なんてのはそうそうありませんが、分かっててもついラインに結びたくなっちゃうのがサブサーフェスの魔力ってヤツですね。
そんな時期のボックスにひとつ忍ばせておきたいのが今日のゲスト、ボーマーのシャローA。
シャロークランクとしては地味な部類に入っちゃいますが、使えば納得することマチガイナシの超演技派です。

コイツの生い立ちがいつ頃だったのか忘れちゃいましたが、確か90年代中頃でしたっけ? スクエアAあたりと同期生だったような記憶があります。
2020年9月追記:
その後の調査でシャローAがリリースされたのは1998年の11月でした。
1999年のカタログから新製品として紹介されています。
しかし登場するも派手に脚光を浴びる事もなく、気がついたらワゴンにあふれ返ってた事もあったりして、割と可哀相なキャリアの持ち主だったりもします。


シャローAの特徴はこの水押しリップです。
ボーマー一族の中では一番の急角度リップなだけに潜行深度も1フィート前後と最も浅く、このサイズのクランクにしては水押しパワーもなかなかなもの。
数々の名クランクベイトを輩出してきた名門ボーマーとしても中途半端なクランクは出せないでしょうから、気合い入ってますね。

リップの角度同様、ボディのファットさも一族の中ではコイツが一番でしょう。
豆タンクという表現がピッタリの寸詰まりボディです。
50mmそこそこのボディでテールの方までしっかりメタボってるのでその浮力も相当なもので、ピンポン玉のようにポッコン!と浮きます。
気になる泳ぎは、ピンコ勃ちリップと浮力との相乗効果でなかなかのブリブリアクション。
フットルースやバジンクランクと比べるとウォブリングもややタイトで潜行深度もちょい深めなので、物足りなく感じる人もいるかもしれませんが、そもそもシャローAはウェイクベイトとして開発されたものではないので、いわゆるスーパーシャローランナー達と比べるのはちょっと可哀相ですよね。

浮いた状態では一般的なシャロークランクよりもやや深い位置にラインアイとリップがくるので、動き出しで確実に水を掴む事ができ、初動レスポンスの高さはファイブスター級。
数字的にはたった数ミリの違いですが、長時間投げ続けなければならない状況下では、この数ミリの差がとてつもなく大きな差となってアングラーに返ってきます。
国産とは違い、米国のルアーはメーカー側からこういった機能上の詳細発信がされる事はほとんどないため、実際にルアーを使い込んでみないと見つける事ができません。
逆の見方をすれば、アメリカンルアーには、使い込めば使い込むほどこんな機能が隠されてたのか!と目ウロコを体験できる楽しみが備わっているとも言えます。
よくアメリカンルアーは奥が深いと言われますが、それは単にバスフィッシングの歴史や文化によるものだけではなく、自身の経験値を武器に、隠しコマンドを見つけていくという楽しみも含めてのオハナシなのです。

ボディにはボーマーのお家芸でもあるナチュラルザリのドレスが描かれています。
ガキの頃はとてもザリガニには見えないクランクベイトにもザリガニ柄をプリントするなんてさすがアメリカ人だなーと思ってましたが、実際ザリガニをメインベイトとして捕食している水域では赤いルアーへの反応が非常に良いというデータを元に塗られているので、実はとても理に適ったものなのです。
ボディの中にはボーマーには珍しいシャラシャラ系のラトルがお住まい。
他社のシャロー系クランクのほとんどが中低音コトコトサウンドで頑張る中、コイツはさわやか系のサウンドでバスを魅了してくれます。
ノンラトル⇔ラトル入りのローテーションだけでもバスの反応が変わるぐらいですから、ラトルの音質でも反応は変わるというのがのんだくれの持論。
よって、必然的にコイツの登板回数も多くなるというワケでございます。


フックはショートシャンクのラウンドベンドを採用。
前後のフック位置が近いので、交換の際にはサイズと形状に注意しないと、フック絡みで千載一遇のチャンスを逃しかねません。
リアフックのエイトリングがボディの後端ではなく、やや下に向けて設置されているあたりに何か意図があるような気がするんですが、それは単にのんだくれのヲタセンサーが暴走してるだけなのでせうか。


ボーマーブランドだけに、ちゃんとネームを入れるのも忘れてませんね。
ショボいながらもボディの両側にしっかりプリントされてます。
ロゴが一新された今となってはこのモコモコのボーマーロゴも懐かしいですね。
しかしオサーンのスネ毛がモジャモジャしてるのを見せられても不快でしかありませんが、このようにザリガニだと許せてしまうのはなぜなんでしょうか。

そうそう、コイツがなんでこの時期に役に立つヤツなのかをまだお話してませんでしたね。
実はコイツ、リトリーブで泳ぐだけじゃなくて、ピンポイントでテーブルターンがビシバシ決まるチビペンシルでもあるんです。
ボディシェイプからもある程度は予想できると思いますが、チョン!とやるだけで180度はおろか、270度ターンまでキメられる演技派クランクなんです。
なので、ピンスポットに入れたらポーズの後、とりあえず2〜3回首振りをキメて反応が無ければリトリーブ。
で、途中のおいしいスポットに到着したらまたまたポーズで首振り・・・ さらに水面ステイの状態からショートジャークをカマせば、美味しそうな捕食音も出せちゃうんです。
どうです?こんなおいしいシャロクラ、ほっとく手はないでしょ?
他のシャロークランクと比較するとちょっと深く潜り過ぎるんじゃないの? と思われがちな潜行深度も、水面でも使え、かつある程度の深度もカバーできるベイトと考えれば、トップだの巻き物だとあれこれ使いたいアングラーの欲張りなキモチを一番理解してくれるヤツなんじゃないかと。
皆さんはどう思います????
2020年8月追記:
この記事をポストしてしばらくしたら、このシャローAは生産中止となってしまい、市場から姿を消してしまいました。
うーん…生産中止になるんだったらもっと確保しておけば良かったなーと後悔してたら、数年前、突如再生産されて今再び市場に出回るようになり、ホッと一安心。
という事で確保したんですが、パッケージを開けてビックリ。
再生産されたものは、モールド自体も全部新しくなったブランニューだったのです。

左が初期型で右が再生産されたもの。
初期モノは目玉がプリントされているのに対し、再生産モノはモールドによるポップアイ造形にペイントする手法に変更されています。
画像では非常に分かりにくいのですが、リップの幅も再生産モノの方がほんの少しだけ(0.1mm)広くなって、厚さもやや薄くなっています。
これらの変更はスイミングアクションにも変化をもたらしていて、新しい方がキレがある泳ぎになっています。
前と同じモールドで出さなかったのには色々な理由が考えられますが(性能をブラッシュアップするために再設計した、工場のシステムが変わって旧モールドが使えなかった、そもそも工場自体が変わったetc, etc…)、新しい方が良くなってるというのは使う側からすると安心できますよね。


その他にもネームとロゴのプリント位置が左右逆転していたり、同じホットタイガーでもステンシルが変わってたりとナニゲにヲタを楽しませてくれてるところもナイスです。
ところで。
最後にひとつお詫びをしなければならない事があります。
最初の記事を書いた時点で、リアのエイトリングがやや下に向けて設置されている事になにか意味があるんじゃないかと隠しコマンドの存在を訝しんでましたが、再生産版のエイトリングを見ると、違和感のない普通の?ポジションになっているので、これによりのんだくれのヲタセンサーが単に過剰反応しただけだった、という事が判明いたしました。
しょーもない事で皆さんのオタ心をざわつかせてしまった事をここにお詫び申し上げます。m(_ _;)m