もっとビッグベイト系の記事をお願いしますよー! という声を頂いたので久しぶりにラットベイトいきましょうか。
ということで今日のゲストは南カリフォルニアに拠点を置くウッドローラットルアーズのその名もウッドローラットでござーい。
ラットベイトはご存知の通り、ネズミ型のウェイクベイトの事。
いつだったかスプロUSAがBBZブランドからBBZラットをリリースして話題になったので、使ったことがある人もいるかと思います。
一般的にラットベイトはシングルジョイントの2ピースボディのものが多いのですが、1ピースや3ピースボディのものも存在し、それらは必ずしも ”ネズミを模したルアー” ではありません。
日本ではイマイチ盛り上がりに欠けるので出会う機会がほとんどなく、それゆえに入手する機会も少なくなりますが、アメリカでは(というよりも南カリフォルニアでは)モンスターバスターとして非常に人気があるルアーのひとつです。
しかし人気があるとはいえ、所詮南カリフォルニアという局所的な盛り上がり。
なのでローカルベイトの域から出ることはなく、ルアーを大量生産することで利益を出す構造のメジャーメーカーが進出しづらい分野でもあります。
ラットベイトのメーカーのほぼ全てが個人のガレージ生産レベルなのはそういう理由があるからなんです。
しかし、そこは良くも悪くも想像力の国・アメリカ。
個人ビルダーが中心となって市場を動かしているので、量産品とは違った個性豊かなラットベイトがたくさん存在します。
メジャーブランドがルアーの生産拠点をどんどん米国外へ移転させることでルアーが加速度的に無個性化していく中にあって、どれもが強烈な個性を放っているラットベイトはのんだくれにとってタマらない存在。
表面上は仕事だからねと言いつつも、鼻息フンガーで食いついてしまったのでございますw
ウッドローラットはボディ長160ミリ、自重約90gと、ラットベイトとしてはやや大きめにまとめられています。(ラットベイトの平均サイズは120〜140ミリ、ウェイトも70g前後)
これだけのボリュームがあるのに大きいも小さいもねぇだろ!と突っ込まれそうですが、意外にもカリフォルニアにおけるラットベイトの位置付けはビッグベイトではなく、あくまでもトップウォーターのバリエーションのうちのひとつ。
よってビッグベイト用のヘビータックルを持っていないアングラーも普通に投げるため、おのずとサイズやウェイトの制約が出てくるのです。
これはラットベイトの発祥がナイトトーナメントであることにも関係しています。
ご存知の通り南カリフォルニアの夏は最高気温が40度を超えることも珍しくなく、日中に釣りをするのはまさに苦行。
そんな環境であるがゆえ、夜の涼しい時間帯に釣りをする、つまりナイトフィッシングは昔から特別なものではなく(注:禁止されている水域もある)、その流れからナイトトーナメントも盛んに開催されてきました。
ラットベイトはそんなトーナメント環境で鍛えられたルアーだったのです。
つまりラットベイトは、
①ウェイトがあってキャストが容易
②潜らないので根がかりしにくい
③暗闇でもクラック音でルアーの位置がわかりやすい
④何よりもビッグバスが釣れる
というナイトフィシングに求められる条件を満たしたルアーとして、バズベイトと共にポジションを固めてきたので、専用のヘビータックルを必要としないというのは重要な要素なのです。
そんなラットベイトのルーツを押さえた上で各部を見ていくと、非常に理に適った作りであることがわかります。
まず何といってもリップの存在感ですよね。
プレデターの側線を刺激する強いディスプレイスメントを生み出すだけでなく、浮きゴミをよけるバンパーの役目も果たすリップには2.5ミリ厚のポリカーボネイトを採用。
視界が利かない夜だけに、多少ぶつけたぐらいではビクともしない耐久性を持っています。
そしてぶっといヒートンが果てしないコンストラクション感wを醸し出しているのもアメリカンラットベイトの特徴のひとつ。
ルーズにリグられたジョイント部からはウッド同士がぶつかるクラッキング音と、ヒートンとヒンジピンのカチカチ接触音と、それらが擦れることで発する金属的なスクラッチ音のトリプルサウンドを発してバスをイラつかせます。
スイムベイトのジョイント、特に横方向にしか動かないマルチヒンジ方式のジョイントを見慣れているアングラーにとって、このガバガバでルーズなリグはだらしなく見えてしまうのかあまり印象は良くありませんが、ラットベイトはこのルーズなリグが命と言われています。
このようなルーズなリグの効果についてはジョニーラット、モーニングウッドラット、ウドゥンスイムベイト各社のデザイナーも口を揃えており、これでなければラットベイトは成立しない、とも。

いずれのラットベイトもモンスターハンターとして名を馳せている事を考えると、やはりルーズなリグには効果があると言わざるを得ませんね。
そしてラットといえば忘れてはならないのがシッポです。
アメリカのラットベイトの多くがクリームのスカンドレルワームを採用していますが、このウッドローラットにもしっかりスカンドレルが。
スカンドレルを採用する理由についてはいくつかありますが、各社の意図をまとめるとこんな感じ。
まずカラーがネズミのシッポっぽい。
そしてスペアが入手し易く、他社のストレートワームよりも比重が重いので水面をピシャピシャと強く叩いてスプラッシュが出せる、と。
テールについてもリグ同様に各社の意見は一致していたので、スカンドレルもラット黄金律の一部なんでしょうね。
しかしそんなエクストリームマインドを秘めているにも関わらず、造形がまったく追いついていない所がガレージビルドのイイところ。
我々日本人から見たらもうほとんど民芸品のレベルですよねコレw
とりあえず耳と目を掘っとけ!ぐらいのテキトーな作りかと思いきや、意外にもこの目は穴に樹脂を埋め込んで研ぎ出しをするなどちょっと手間が掛かってます。
ボディ部分のペイントにはネズミの毛を模して毛羽立ったブラシワークの後が見えるなど、手作り感というか工夫の跡が見えるのでニンマリしちゃいますね。
ちなみにこのルアーは、全工程ウッドローラットルアーズの代表でもあるティモシー・グリーンによる手作業によるもの。
彼は良くも悪くもノー天気なアメリカ人なので、納期が遅れてもお構いなしの超マイペースビルダー。
納期の遅れから催促の電話をすると、”今ちょっとすごくシリアスな状況で空港に向かってるんだ。今説明している時間はないから後で連絡する” と言ったきり何も連絡してこない系の人。
そして空港に向かってたはずのその時間に、娘とサンディエゴのシーワールドで楽しい時間を過ごしてますとFBポストしちゃうような、あまりにもアホ過ぎて怒る気すら失せる様な人www
天は二物を与えずと言いますが、彼は神様からルアー作りの才能以外は授からなかったんだろうなと😂
フックは前後ともオーナー製の#1/0を採用。
ラットベイトは威嚇系の体当たりバイトが多いので刺さりを重視して日本製フックを装備することが多いですね。
しかし日本製はポイントがシャープであるがゆえにローリングマークが付きやすいというデメリットも。
プラスチック製であればローリングマークが付いても気になりませんが、ウッドルアーのローリングマークは浸水してクラックが出る原因にもなるのでこまめなタッチアップが必要です。
ワンロットで20本ほどしか制作しない上に、納期が死ぬほど遅れるので本国でもなかなか手に入らないルアーとして知られるウッドローラットですが、その実力はお墨付きなので気になる方は探してみては?
ちなみにウチではもうこのルアーを仕入れることはないので、自助努力にてお願いしますw