まるでメンヘラ彼女と付き合っているかのようなジェットコースター感! バイトラッシュサーフェイス Wスイッシャー Bite Rush Surface W.Swisher / ティムコ Tiemco

スイッシャーダブルプロップティムコ Tiemcoトップウォーター

世の中に出回る ”◯◯プロデュース” とか ”◯◯監修” のルアー。

影響力のある人物を商品開発に絡ませることでモノに箔を付けてセールスを押し上げようというマーケティングのド定番です。

時には開発どころかモノも見せたことがないのに名前だけ借りるという見事な ”プロデュース” もあったりしますけどねw

この手法は一定の販売数が見込める反面、その商品がユーザーが抱いている ”監修した人物のイメージ” に合わないと大ブーイングになってしまうという側面もある諸刃の剣。

今日紹介するバイトラッシュサーフェイスのスイッシャーは、そんな大ブーイングパターンに陥ってしまったルアーです。

バイトラッシュサーフェイスWスイッシャーとは

バイトラッシュサーフェイスWスイッシャー(以下バイトラッシュW)はティムコがリリースしたダブルスイッシャー。

ビッグベイトもまだ浸透しきっていなかった2000年初頭、デカビリーバーのトップ使いでビッグバスを連発し、ビリーバーの伝道師としてメディアに登場していたティムコスタッフ(当時)の小倉英次氏が開発したルアーです。

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今で言うところのインフルエンサーが社内に居るんですから、メーカーにとってこれほどラッキーなことはありませんよね。

元々ティムコにはバイトラッシュと銘打ったシリーズが存在していましたが、よりコアな水面アングラー向けに小倉氏がバイトラッシュサーフェイスシリーズを誕生させました。

同じテイストを持ったペンシルベイトも販売されていたので覚えのある方も多いことでしょう。

バイトラッシュWのサイズ・重さ

バイトラッシュWのサイズは90ミリ、18.5g。

いわゆる ”5/8ozサイズ” に設計されているところからも水面アングラー狙い撃ちなのが分かりますね。

色々なタイプのルアーを万遍なく使うアングラーだと理解しにくいかも知れませんが、実は水面アングラーにとってこの5/8ozというウェイトは非常に重要な意味を持っています。

というのも、日本式トップウォーターはヘドンなどの5/8ozサイズのルアーの影響を強く受けており、この重さはひとつの基準でもあります。(ちなみに画像のオリジナルザラスプークは18.9g)

そしてコアな水面アングラーの多くはボートやフローターなどで岸ギリギリ、もしくはオーバーハングの奥などのピンスポットを撃つスタイルで、単に魚を釣るだけでなく狙ったところにキャストを決めるのも楽しみのひとつなのです。

なのでルアーを変えても同じフィールで投げ続けられる ”5/8oz” という基準は、クランクベイトなど巻物系ルアーの重量よりも遥かに重要な要素になっています。

なのでその重量にドンピシャで合わせてきたティムコは結構な気合が入ってたんじゃないかと。

バイトラッシュWの特徴

強烈なアイデンティティを放つ造形

このルアーの特徴はなんといっても大きなボス付きペラと大きなグラス風アイ、そして大きく切り欠いたアゴでしょう。

この部分だけで強烈なアイデンティティを感じますね。

アンティークプラグの雰囲気を漂わせつつも実戦での即戦力イメージを持たせるなど、それまでのティムコには無かったテイストがおっさんアングラーの心を射抜きます。

かくいうのんだくれも射抜かれたひとりですw

特にアゴの造形にはシビれました。

のんだくれはオリムピックの往年のスイッシャー、セクシャルクレイジーが大好物なので、このアゴは勃起モンだったりします。

しかし今改めて考えると、セクシャルクレイジーって凄いネーミングですよね。

だって直訳すると ”性的に狂ってる” ですよw

小学生同士が、”セクシャルクレイジーやべーよ” などと会話する事を想定しなかったんでしょうか。

もしくは親に ”セクシャルクレイジー買ってよ” とねだる事を予想しなかったんでしょうかw

安定感抜群の横扁平ボディ

そしてしっかりと横幅を確保した安定感抜群の扁平ボディもこのルアーの特徴の一つ。

ヘッド部の断面はほぼ円ですが、フロントのフックハンガーあたりからテールにかけて平べったくなっており、水面にへばりつくようなねっとりとした演出が可能に。

しかしそのメリットは同時にデメリットでもあるのです(詳細は後述)

バイトラッシュWのアクション

首振り性能は満点

気になる運動性能は高得点をマーク。

中でも水面演出には欠かせない首振りは、角度、レスポンス、スプラッシュ、水への絡み具合のいずれも満足できるレベルで、さすが小倉氏監修。

プロップが受ける抵抗などものともせず、キレイな180度ターンをビシバシ決めてくれます。

ボスペラの特徴でもある重量がイイ感じでカウンターウェイトの役目を果たしている好例と言えるでしょう。

プロップの回転はイマイチ

しかしプロップの回転性能はイマイチです。

喫水ラインが浅いこともあって、ダブルスイッシャーにありがちなリアペラがうまく水を咬めない事象が見られます。

最近はプロップペッパーのようなスローなチリチリリトリーブ系プロップベイトが増えているので、そういったルアーに慣れたアングラーがこのバイトラッシュWを使ったら、なんだコレ使えねー!になるのは必至でしょう。

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とはいえ、回らないペラは考え方ひとつで長所にもなるのでそれほど重要なことではありません。

なぜなら回らないペラは、回転によって水の抵抗から逃げない分、しっかりとエアを水中に引き込むなどポッパー的な効果も見込めるから。

水の抵抗が大きければその分水の撹拌力もアップするし、移動距離も抑えられる。

ペラの役割は回転だけではないので、どのアピール要素を強調したいかによって見方も大きく変わるのです。

”ボスペラは良く回る”という誤解

一般的な打ち抜きペラ(ヘドン・ウンデッドスプーク)とバイトラッシュWのボス付きペラ

ついでに言うと、水面アングラーの間でよく言われている ”ボス付きペラの方がよく回る” も大きな間違いです。

実際に回してみれば分かりますが、ボス付きペラは打ち抜きの一枚ペラに比べて回転軸がブレない分両翼に均等に水が当たり、スローリトリーブでも ”安定して” 回るというだけなのです。

そしてその回転もボディ形状と、ビーズやカップなどのコンポーネントとの総合バランスで大きく変わるので、セッティング次第では打ち抜きペラの方がよく回るなんてこともザラ。

なので個人的にはスローリトリーブで使わない(使えない)ルアーにボス付きペラは豚に真珠だと思っています。

もしメリットがあるとしたら、先述の通りボスの重量がカウンターウェイトの役目を果たすぐらいでしょうか。

その観点でこのバイトラッシュWを見てみると、スローリトリーブではペラが回らないルアーなので、カウンターウェイトとしてボス付きが搭載されているということになりますね。

切り欠きアゴの効果は?

そしてこのアゴの造形処理がどういった効果を発揮するのかも気になりますね。

これに関してはぶっちゃけ良く分かりません。

動画をスロー再生するなどしてみましたが、アゴがバブルを抱え込むということは確認できませんでした

かといってアゴ無しバージョンと比較したわけでもないので明確な答えは見つからず。

個人的には無くても良いんじゃない?ぐらいのアングラー向け”視覚効果”と見ています。

フック&リグがこのルアーを台無しに

意味をなさないダブルフック

フックは前後ともダブルフックをヒートンで接続したシンプル構成になっています。

しかしヒートンゆえにフックの自由度が高すぎるので、ラインを拾ってエビになる確率が高いのです。

更にフックサイズが合っていないのか、トレブル並にゴミを拾います。

致命的なリグ選択ミス

そして致命的なのがこのリグの高さです。

アイの位置が高いので根本部分が引っ掛かる為、カバー抜けが最悪なのです。

しかもオールドっぽい雰囲気を高めるために装着したカップがアイの高さを底上げする形となり、横扁平ボディの安定性も相まってとにかく引っ掛かりまくります。

中でも倒れ葦や係留ロープとの相性は最悪で、フックよりも先にヒートンの方が引っ掛かるのでキャストの度にあーもう!💢 な状態に。

あまりにも見事にスタックするので、もしかしたらこれは葦に掛けてシェイクするための仕様?と思ってしまったほど。

確か小倉さんって、霞ヶ浦などの葦の多いフィールドを得意としてた人じゃなかったっけ?

それなのにこのリグを採用するってどゆこと?

オープンウォーターで使う分には問題ありませんが、それならばなぜダブルフックを採用した? そしてなぜこんなところにカップを入れた?と疑問だらけなのです。

リアのリギングにも問題が

リグの問題はフロントだけではありません。

リアはリアでこの画像のようにヒートンのアイがフックを背負ってしまい、ペラをロックしてしまう事象が多発します。

本来ヒートンに咬ませるカップはこういったタングルを防ぐものなのに、全く用をなしていません。

カップを入れるなら、なんでコネリーのようなもっと深いモノを使わないのか。

コネリーに採用されているディープカップ。ロングシャンクのフックを近い位置でリグって居るにも関わらず全く干渉しないし背負うこともない。

このように、フックとリグのセッティングの甘さがこのルアーを台無しにしています。

首振りや水の噛み具合はサイコーなだけに、これはかなりもったいないオハナシ。

ぶっちゃけここまで間抜けなセッティングだと、これホントにあの小倉さんが監修したの?と疑ってしまいます。

でも仮に小倉さんじゃなかったとしても、それはそれでティムコ的に大問題ですけどね。

まあそんなこんなで、このバイトラッシュWはすぐに三軍ボックス落ちしたのでした。

ティムコには珍しいデザインロゴ

しかしそんなパフォーマンスとは裏腹にネームスタンプは生かしたデザインロゴ仕様。

汎用フォントの味気ないネームがティムコのスタンダードだった(現在はデザイン系になっている)だけにこれは嬉しいですね。

しかしルアーの名前が固有名詞ではなくW.スイッシャーというのはちょっと気になります。

おそらく分かりやすい名前とか象徴的なイメージを込めたんだとは思いますが、名前が一般的すぎてむしろ分かりにくくなっちゃってます。

だってアングラー同士で会話する時、こんな会話になっちゃうんですよ?

「ルアーは何で釣ったの」

「ティムコのダブルスイッシャー」

「どんなやつ?」

「だからダブルスイッシャーだってば」

「だからどんなダブルスイッシャーなのよ!」

「だからー!」

とまあこんな具合に、バイトラッシュというワードを入れないと会話が噛み合わなくなる可能性がアリアリなのです。

ティムコのルアーに精通したアングラーならば、ああアレね、となりますが、大多数のアングラーはティムコという名前は知っててもバイトラッシュというワードはすぐに出てこないでしょう。

これは同じバイトラッシュサーフェイスシリーズのペンシルベイトにも言えること。

ネーミング会議でこのあたりの疑問が出てこなかったんでしょうか。

それとも早く会議を終わらせてさっさと家に帰りたかった?

分かり易さを追求してシンプルなネーミングにしたものの、かえって分かりにくくなってしまったという例ですね。

おわりに

というわけでこのバイトラッシュWは、有名人プロデュースの商品でも残念なものがあるよという好例になってしまいました。

でもルアーはこういうのがあるから面白いんですよね。

秀作ばっかりでは面白くないのです。

クセはあるけど、それを知った上で使えばちゃんと釣れるだろうし、むしろこういったクセのあるルアーを使いこなす喜びってあるじゃないですか。

皆さんのまわりにもいるでしょ?バイトはあるのに全然フッキングしないルアーで釣ることに燃えてる人とかw

そういう意味では、この手のルアーと付き合うのはメンヘラの彼女から離れられない感覚に似てますよね。

付き合うには忍耐が強いられるけど、時々天国にも登るような幸せな気分にさせてくれるからハマってしまうみたいなw

こういうのを心理学用語で何ていうんでしたっけ? ジェットコースター理論?

あ、よく考えたら、のんだくれが溺愛するチャグバグにもそんな忍耐要素がありましたwww

 

追記

….と、本来はここで投稿するのですが、記事を書いた後、なんとも言えない不完全燃焼感でモヤモヤしてたので公開せずに数ヶ月放置してました。

モヤモヤの理由は、このルアーの良いところがあまり見つけられなかったから。

動きがサイコーなだけにもっと活かす使い方があるんじゃないかと思ったのです。

で、あれこれ考えてみた結果がコレ。

リグの変更も含めたカスタマイズです。

変更点は下記の3つ。

①リグをサーフェスに変更

②リアフックをボディ側に移動

③テールにブレードを装着

サーフェスリグはオリザラのものを流用しました。

元々のヒートン穴がそのまま使えるので加工はラクですが、それ以外はボディ側にネジを受ける構造体がないので新たに開けた穴には瞬間接着剤などでしっかり目止めしておかないと浸水の原因になります。

それと、ネームヲタにとって最大のタブーである、ネームの上にリグるという愚行についてはちょっと目をつぶってもらいましょうw

テールのブレードはワースのヘックスコロラド#3を直付け。

このブレードじゃなくても構いませんが、重いブレードだと浮き姿勢が大きくなって首振り能力がスポイルされるので重量には注意。

ヘックスコロラドは素材が薄くて一般的なブレードよりもちょっと軽いのでたまたまマッチしただけです。

この仕様にすると、カバーの抜けが良くなったのはもちろん、苦手だった倒れ葦もスムーズに乗り越えるなど、操作性が格段に向上しました。

さらにブレードの重みで若干斜め浮きになり、リアペラの立ち上がりもアップ。

ブレードをスイベルなど使わずに直付けにしたのは、不用意に回転させないためと首振りの際にペラと接触してガシャガシャノイズを出したかったから。

スプリットリングも試してみましたが、ブレードが変に水をつかんでしまい、首振りの妨げになる事が多いのでこのスタイルになりました。

もしスイベルやリングを入れたいならブレードサイズを小さくする必要があるのと、浮き姿勢も変わるので別途ウェイトを貼るなど調整が必要になります。

ガシャガシャノイズ狙いでブレードを入れるなら、コロラドブレードよりも振り幅とモーメントが大きくなるチョッパーブレードの方が合うかも。

ペラはデフォルトのボス付き以外もいくつか試しましたが、やはりボスのカウンターウェイト効果は大きく、打ち抜きペラだと首振りのパフォーマンスが落ちてしまいます。

よってそのまま使うのが一番でしょう。

リアフックはあえて回転するペラと接触させたかったのでこの位置にしましたが、あと2ミリぐらい前でも良かったかも。

とまあこんな具合にイジってみたら、意外と使えるルアーに変身したので、もし使わずに眠ってるバイトラッシュWがあったらいろいろやってみるのも良いかも。

黄色に下取りに出しても50円か100円ぐらいにしかならないので、カスタマイズネタにしちゃった方が酒の肴にもなるしね😁

 

ということでこのルアーの記事はおしまい。

長々とお付き合い下さいましてありがとうございました!

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