『 ああ、ルーハーね… 』
この言葉が最も使われたであろうルアーがこのバスオレノでしょう。(詳しくはTOP TOU vol.25、林 秀樹氏寄稿のルアー千一夜別館を参照)
サウスベンドやグラッディング、エバンス期のものは至宝の扱いなのに、出身がルーハージェンセンだというだけでその場が一気にトーンダウンしてしまいます。
ある意味それもルーハーの才能なのかもしれませんが😁
しかーし!
実はのんだくれはルーハー期のバスオレノが大好物なのです。
ということで今回のゲストは、黄色いお店で黄色い札の扱いになってもなかなか身請けされない代表格、ルーハーオレノでございます。

このルアーの歴史に関してはあちこちのサイトで紹介されているので、今更説明の必要はないでしょう。
良くも悪くもインパクトのあるぼってりボディは、一部のファンを除いて完全なスルー対象です。
不人気の理由は、単純に先代のモデルがカッコ良すぎるから。
その一言に尽きますよね😂
歴史がある分、仕様の違いやカラーバリエーションも多い先代たちに比べて、ルーハー物はカラーも少なく、ペイントカラーに至ってはリンゴ飴かよ!と言いたくなるほどの分厚いペイント。
そりゃ先代に人気が集中するのも分かります。
でもね、ルーハーオレノにはルーハーオレノなりの良さもあるんですよ。
ご覧の通り、ルーハーオレノはオリジナルザラスプークにも負けないボリュームを持つフルサイズプラグです。
製造時期によってサイズに若干の誤差は有りますが、大体94〜98mmの間に収まっています。
この “大体” という表現を使わなきゃいけない時点でどーなのよ?な感じですが、ルーハーにおいての4mmなんて完全に許容誤差の範囲ですから、これをバラツキというお約束のワードで片付けようとする時点で、もいっかい出直してこいレベルです😁
なぜなら個体によってサイズがまちまちということは、逆の見方をすれば、それそれが全く別の 個性を持っているということであり、つまり動きにもバリエーションがあるという事。
つまり自分好みの動きを探す楽しみがあるじゃないですか。
こんな楽しいルアー、しかも市場では誰にも相手にされずに売れ残ってるなんて、ヲタ的にこんなにおいしいルアーはありません!
その典型的な例をあげてみましょう。
並べてみるまでもなく、両者のボリュームが全然違うのが分かりますね。
右側は最大ボディ径24.2mmに対し、左のモデルは22.9mmと、1.3mmもの違いがあります。
フックサイズも違えば塗装の厚みも違うので、当然ウェイトにも違いがあり、その差なんと6.2g。
分かりやすいように同じレッドヘッドのモデルで比較しましたが、フォイル張りモデルではもっと重いものもありました。
これだけ違うと、もうほとんどACプラグの世界ですよね😁
この重量差は浮力にも大きく関わるので、同じモデルでも喫水ラインが全然変わってきます。
片方はラインアイが水没しているのに対し、一方は水面よりも高い位置にあるのが分かりますね。
当然これらはサウンドやアクションの特性にも影響を及ぼし、見た目は同じように見えても動きは全く別モノという事態が普通に起こり得ます。
元々自然素材なので個体ごとに差が出るのは当たり前ですが、そのレベルを超えて個体差があるなら、いっそのことそれ自体を楽しんじゃえ!というワケです。
実はのんだくれ、昔はこの “バラツキ” を好意的に受け入れることができませんでした。
それはダーターでよくやる、ジョフッ!というダイブ時のサウンドがイイ感じで出るものとそうでない物の差が有り過ぎて、実戦で使わないと分からないものに資金を投入するのはバカらしいと思ってたんです。
でもある日、サウスベンド期の雑誌広告(1940年代)に踊るコピーを見てハッと気付かされます。
細かい表記は忘れちゃいましたが、そこには “The only lure that can simulate a fish escaping just under the water.” 的な表現があり、その”just under the water” という部分にビビッときちゃったのです。
つまり日本ではダーターというかトップウォーター的な位置付けで紹介されることが多いバスオレノだけれども、元々は水中を泳がせるミノーとかクランクベイトとして不動の位置を築いたルアー。
それなのに、トップ使いばっかりで水面下を “クランキング” することはルアーの回収時以外ほとんどやってなかったな、と。
その事に気づいてバスオレノを水面ではなく巻き倒すようになったら、あら不思議、水面だけで使ってるよりも全然釣れるじゃないのよさ!(ピノコ風)
という事で、ソッコーでフォーリンラブとなったワケです。
バスオレノの基本的なスイミングアクションは、キレのないボワンとしたフラフラダートアクション。
リップ付きのクランクベイトやジャークベイトのキビキビした動きを見慣れている人にとっては、釣れないオーラテンコ盛りなルアーに見えるでしょう。
しかしこの掴みどころのないアクションがバスには非常にキクんです。
しかもルーハーオレノは個体によってその動きもさまざま。
ダートの振り幅が大きなものから小さなもの、潜行深度や浮上時のゆらゆらアクションまで一つとして同じものが無い。
ヘッドのスラント角やエッジの厚み、ラインアイヒートンの打ち角の違いによっても違いが出るので、大袈裟な言い方をすればルーハーオレノの数だけアクションの種類があるんです。
こんな楽しいルアーをほっとくテは無いですよねー😁
ちなみに比較画像の太い方は、ダイブ時にほとんど音を出さない代わりにグワングワンと大きくボディを揺さぶるダートスイムが得意で、浮上する時の水押しの強さはゴジラ浮上レベル。
対する細い方は、美味しそうな捕食音が出せてジャークベイトのようなキレのある足の長いダートが得意。さらに1m以上潜るなどバスオレノとしては意外な能力の持ち主。
ここに画像はありませんが、びっくりするほど強力な浮力の持ち主で、水面をウェイクベイトのようにモワモワと泳ぎながら突然不規則にダートするものもあったりします。
フックはラウンドベンドのスリーフッカーが標準仕様となっています。
ヒートンには重厚さとは程遠い、チープなカップが噛ませて有ります。
昔は2番目のフックにブレードを装着したりあれこれモディファイをしてましたが、投入レンジを水面下に限ってからは手を加えるのをやめました。
なぜならこのバスオレノへのバイトは、甘噛みのような軽いバイトが多いような気がするから。
これは仲間内でも意見が合ってる事なんですが、ゆらゆら泳いでるバスオレノに興味を示したバスが近づいてきて、なんとなくパクっとやっちゃうようなバイトが多いような気がするんです。
だったらスリーフッカーの方がイイんじゃない?という割と安直な考えなんですけどね。
あ、余談ですがトリプルフッカーのルアーはバーブレスの方が圧倒的にフッキング率がイイですよ。
このバスオレノに限らず、ルーハージェンセンのネームプリントはいろんなバージョンが存在しています。
製造年月日が記されたものやウェイト表示されているかと思えば、全くののっぺら坊だったりと、製造時期なのかロットにによる違いなのかネームも個性のオンパレード。
当時はこのドット式のネームプリントが安っぽく見えるのが理由でルーハージェンセンを嫌ってた人もいましたが、画一的なスタンプばかりになった今見てみると、これはこれで貴重な存在でしたね。
バスオレノの基本形状が生まれてから既に100年以上が経っているだけでなく、頼みの綱であったルーハージェンセンもその生産を止めて久しいなど、最新のルアーを使い慣れた世代から見たら 最も縁がないルアーの筆頭でしょう。
しかしどれだけ時間が流れてもバスはバス、このフラフラ泳ぎに惑わされるDNAは変わってないはずなので、もしまだバスオレノを使ったことがないなら是非ともトライしてバスの側線を刺激してみてください。
その際に注意すべきことは、泳ぎがイマイチなものに当たっても決して “バラツキ” などとは言わないこと。
ルアーの良いところを見つけてそれを伸ばしてあげるのもルアヲタとしての使命なんですから😁 ⇦どんな使命だよ