ショップ発信型ルアーの花形的存在
日本にはいくつものルアーメーカーが存在していて、それらが日々しのぎを削っているのはみなさんご存知の通り。
しかし一般的なメーカーとは違って、ショップ主導でルアーを制作して販売するというスタイルもあります。
それらのほとんどはショップオーナーのバスフィッシング哲学に基づいた商品開発がされており、ローカル色を生かしながらも、こういうのが欲しかった!というアングラーのニーズを見事に射抜いているのが特徴です。
今日のゲスト、キールヘッドはそんなショップ発信型ルアーの花形的存在です。
霞ヶ浦で練りに練られた珠玉の逸品
ご存知の通り、キールヘッドは目黒のトップウォーター系ショップ、バスポンドがリリースしたルアーです。
1990年代の終わり頃、アシ際を攻略… いやキワではなく、アシ林の中を攻略するために生み出されました。
バスポンド店主の松井さんのホームレイク、霞ヶ浦のカバーをいかに攻略するかというアイデアが凝縮されたルアーに仕上がっています。
大き過ぎず小さ過ぎることもない 85mm、22.5gという絶妙なサイズ感は、バスへのアピールはもちろんのこと、タックルを選ばないという点でもアングラーの気を引きますね。
キールヘッドの要、スピンドルシェイプ
キールヘッドの特徴はなんといってもこのスピンドルシェイプボディが生み出す、すり抜け性能でしょう。
ルアーの形状、ことペンシルベイトの形状としてはどちらかといえばオーソドックスな形ですが、カバーのすり抜け性能を最重要項目として設計されているという点では、このキールヘッドは頭ひとつ抜けています。
そのすり抜け性能を一言で表すならば、”あまりにも気持ちよく抜けてくるので、必要以上にカバーにブチ込みたくなる” ほど😁
とにかく引っかからないのです。
ヘッド部分の最大幅は27.5mmとかなりのボリュームなんですが、両サイドを平面化しているので狭いところでもスタックすることなく頭を突っ込んで抜けてくれるんです。
おそらく構想の初期段階ではへドンのザラIIをベースにしたプロトタイプでテストを重ねてたんだろうなと勝手な妄想を掻き立てられるところもあってニヤリとさせられます。
ウィードレスに特化したリグシステム
そしてそのすり抜け性能をさらにパワーアップさせているのがこのウィードレスリギングです。
フックはもちろんのことヒートンまで完全に収まるグルーブをボディに設置することで、見事なスムースインならぬスムースアウトを実現しています。
さらにグルーブの角を面取りすることで、フックが振れても鉤先がよりボディに近くなるようにデザインするという念の入れよう。
ウィードレスだけで終わらない松井氏の野望
このスピンドルボディとフックシステムの共演がおりなすパフォーマンスは、お見事!のひと言。
のんだくれが初めてこのキールヘッドを投げた時の衝撃たるやそれはそれはタイヘンなものでした。
これを考えた松井さんは天才!とマジで思いました😁
でもね、キールヘッドは “根がかりしないルアー” ってだけじゃないんです。
BMWも真っ青のハンドリング性能
まず言いたいのは、首振り性能がめちゃくちゃ高いということ。
首振りはペンシルベイトの性能としては当たり前の事ではあるんですが、キールヘッドのスゴいところは、カバーの中の僅かに開けた小さな小さなスポットでも確実にターンできる回頭性能を持っているんです。
テーブルターンが得意なペンシルベイトは他にいくつもありますが、カバーの奥の小さなポケットで確実に首を振るペンシルとなるとほとんどのペンシルは該当しなくなります。
しかしこのキールヘッドはヤバいくらいにククッと首を振るのです。
ちょっと大袈裟な言い方かもしれませんが、浮きウィードの上でも首を振らせようと思えば出来ちゃうぐらいです。
その脅威の回頭性能を例えるなら、ホンダのS660のハンドリングフィールがまさにそれ。
S660を運転したことがある人ならわかると思うんですが、あのスッと切れ込むハンドリングを一度でも体験すると自分の車のハンドリングがダルに感じられて嫌になってしまいます。
キールヘッドのターンパフォーマンスはまさにそんな感じ。
回頭性能だったらBMWのZ4なんかメじゃないです笑
そんな華麗なターンを実現しているのが、テールに仕込まれた大きなウェイトボールとヘッド部に仕込まれたカウンターウェイトです。
ペンシルベイトにおけるカウンターウェイト効果については今更説明の必要はないと思いますが、このキールヘッドはその効果を最も引き出せているルアーのひとつでしょう。
フラットサイドの秘密とラウドラトル
しかも首振り性能だけでなく、フラット化されたヘッドがしっかりとスプラッシュを飛ばすので、カバーの奥でもワンアクションごとのアピール度が低下することはありません。
そのフラット面もボディの中心線に対してポジティブキャンバーとなっていて、それにより首振り時の抵抗が軽くなるのも回頭性能のアップに好影響をもたらしているんでしょうね。
そしてキールヘッドはラトル音がとにかくスバラシイ!
小さな挙動でも前後のウェイトボールが競い合うようにジキジキ鳴るので、アピール最強な上に、動かしててとにかく楽しいんです。
のちに固定ウェイトのサイレントバージョンが発売されましたが、のんだくれは圧倒的にラトル版のファン。
だって、アシ林の奥の奥でここまでジキジキゴトゴトと大音量で鳴るルアーなんて、他に見当たらないですもん。
そもそもカバー奥にルアーを入れるということは、そこにいるバスにとってそのルアーはベイトではなく、イントゥルーダー Intruder (=侵入者) になるはずなので、どれだけバスの闘争心を煽れるかがカバー奥攻略のキーになるとのんだくれは考えてるワケですよ。
よって、カバー攻略におけるのんだくれのルアー選択は、バスにとってどれだけ違和感のある侵入者を演じられるかが重要。
そう意味においても、キールヘッドのエサらしくないところは強みになると思うんです。
フラットヘッドにしろラトルにしろ、狙ってこの設定に行き着いたとしたら恐ろしいルアーですよ、このキールヘッドは。
岩盤ギリギリアングラーには嬉しい堅牢設計
テールには B.P. Bait のロゴ入りブレードが装着されています。(ロゴ面を撮影したつもりだったんですが、裏になってたのでロゴ刻印は各自で妄想してください笑)
ブレードのエッジが曲げてありますが、回転するほどのものではないのでヒラヒラキラキラさせる程度のものだと理解しておきましょう。
太いヒートン&メタルカップでテールが保護されているのも岩盤ギリギリ狙いのアングラーには嬉しい設計ですね。
キールヘッドがデビューした当時、テールにフックを装着しない、しかもダブルフックがひとつだけという潔さは、ちゃんとフッキングするの?という不安の声を生み出しましたが、その心配は全くナシ。
カバーの中のバスは非常にアクティブにバイトしてくるのでそんな心配は要らんのです。
もしフッキングしなくても、うっわー!マジかー!と笑って済ますのがトップウォーターの楽しいところなんですから。
モディファイの楽しみが残されているのも高ポイント
そうそう、このルアーで釣りをしているといつの間にかテールのブレードが失くなってた😭ということが起こりますが、そんな時はブレードをトマホークブレードにすると回収中はバズベイト的にもシャパシャパできるので一石二鳥。
その際のキモはベアリングスイベルを使わないことと、リングではなくPEなどで硬く直結すること。
それついて詳しく説明するとエンドレスになるので、なぜなのかは各自で検証してくださいな笑
短めのラバースカートを装着したり、アゴにジタバグカップを装着したりと、ルアーの完成度が高い割にモディファイの余地が残されているのもキールヘッドのイイところですよね。
フックは必ずバーブレスに!
フックはダブルフックですが、バーブレスにしておくことをお忘れなく。
フッキング率が上がるだけでなく、アシの茎などに刺さった時でも抜けやすくなるので根がかり回収でポイントを潰すことも減らせます。
おっさんの心に刺さるネームプリント
ネームプリントは背中に大きく横書きされた、サウスベンドスタイルを踏襲。
おっさんのハートを射抜くネームとでも言いましょうか😁
ルアーに対する自信が漲っているかのようなフォントは、実際に魚を釣った後で眺めると、思い出し笑いでさらにニヤニヤしてしまうというキモい副作用をもたらすので、キールヘッドは用量用法を守って正しく使いましょう。
カリフォルニアデルタでも活躍できる汎用性

カリフォルニアデルタなどで良く見られるチュール Tule (アブラガヤ)
ずいぶん前ですが、カリフォルニアデルタで釣りをした時、このキールヘッドが大活躍しました。
カリフォルニアデルタはリリーパッドとウィードとチュール(アブラガヤ)がエンドレスで続く広大なフィールドですが、チュールは日本のアシのように真っ直ぐ上に伸びず、斜めに広がって伸びる上に倒れやすいのが特徴です。
この広がった茎と茎の間に、アーボガストのカラーで有名なあのレッドウィングブラックバードが営巣するので、そのヒナを捕食しているビッグバスを獲るにはチュール対策が大きな鍵となるんです。
こういう状況ではフロッグを投げるのがアメリカンスタンダードなんですが、デルタは別名フロッグ天国とも呼ばれるメジャーフィールドだけあって、同じようにカエルを投げたところでなかなか反応が得られません。
しかしその時はチュール林の奥でラトルをジキジキ鳴らすことが出来て抜けが良いキールヘッドが何本ものバスをもたらしてくれました。
倒れたチュールを攻略するのに、キールヘッドのすり抜け&乗り越え性能に助けられたんです。
それを見て衝撃を受けた同船の友人が欲しいオーラ全開の眼差し👁で見つめてくるので、手持ちのキールヘッドとタイフーン(キールヘッドのダウンサイジング硬質発泡バージョン。これがまたヤバい奴なんですが詳細はまたいつか。)を全部プレゼントしたのですが、帰国後にもっと送ってくれと連絡がくる始末😁
ローカルとはいえ、ガチのプロも絶賛するほどの実力の持ち主なんですよ、キールヘッドは。
しかし手放しで褒められないところも
そんなナイスだらけのキールヘッドですが、実は欠点もあります。
欠点というよりは製造上の問題だと思うんですが、初期のものはリーク、つまり浸水するものが散見されます。
使ってるうちに段々首振りのレスポンスが落ちてきたので良く見ると内部に水が… というのが過去に2個ありました。
のんだくれの友達のキールヘッドにも同様の症状があったので、ロットによるものかもしれません。
さすがに最近モノは改善されていると思いますが、中古で買ったものは念の為ヒートン部分に瞬間接着剤で目止めをするなどの対策をしておいた方がベター。
まあ漏水なんてのはキールヘッドのパフォーマンスに比べたら屁でもないですけどね😁
まとめ
発売から既に20年以上が経ち、国産バスルアーとしてはオールドと呼べるほどの古参ルアーのひとつですが、その威力は全く衰えていません。
いや、衰えていないどころか、当時キールヘッドに心臓を捧げていたアングラー達も最近は使わなくなったり、釣り自体を辞めちゃったりしてるので、使われる機会が減った分、むしろ今の方が破壊力はパワーアップしてるかも。
しかし何よりも、この圧倒的なパフォーマンスが3,000円そこそこで手に入るなんてスゴいことだと思いません?
このパフォーマンスがたった3,000円で使える事に感謝すべきだと思うんですよ、いや大袈裟じゃなくてホントに。
カバーメインで釣りをするにはまだちょっと早い時期ではありますが、田中将大も楽天に帰ってきたことだし、今年のカバーフィッシングのスタメンに再登録してあげるのもチーム監督としての義務じゃありませんこと?😁