コレクターからガチアングラーまで、ルアー好きのバイブルとなっているB級ルアー列伝。
Dabさんが長期にわたりBasser誌に連載中の記事をまとめたこの本は、酒の肴にページをめくるもよし、寝落ちのお供に妄想を膨らませるもよし、とルアーアングラーなら誰しも一度は目にしたことがある名著です。
しかしそんなDabさんがルアーをリリースしている事は、水面アングラーを除いて意外と知られていません。
という事で今日のゲストは、Dabブランドの第一弾ルアー、センチネルでございます。
センチネルとは歩哨、つまり監視役、もしくは偵察役の兵士の事。
アメコミ “X-Men” にも同名のキャラクターが登場するので、ご存知の方も多いですよね。
最初のんだくれは、釣り場の状況をササッとチェックするサーチベイトだからその名を付けたと思っていたんですが、実際に使ってみてビックリ。
この歩哨は、サーチベイトだけに留めておくのはもったいないほどの千両役者だったのです。
ボディはご覧の通りザラよりもちょっとだけ短い使いごろサイズ。
このモデルの他に110という兄貴分が控えています。
ルアーの命とも言える目を後ろに配置した、いわゆるバックランナーのスタイルですが、違和感なくまとめているのがさすがDabデザインですね。
このルアーの最大の特徴は、ボディの半分を締めるこのフィン状のスリット。
ラジエータースリッツシステム Radiator Slits System と呼ばれるこの形状は、テーブルターン時に効果的に水を掴んでスプラッシュを生み出すものとしてパテント登録されています。
このスリットの効果をひとことで言い表すと、”意味もなく首を振らせたくなる” パフォーマンス。
通常、ザラスプークなどのペンシルベイトをクイックターンで使うと、ピシャピシャとランダムに飛沫を飛ばしますが、このセンチネルのスプラッシュは、”小さな水の塊を周囲に撒き散らす” というイメージの、他には見られない個性的なもの。
この3本のスリットによって誘導された水が、まるで周囲にレーダー網を敷くかのように周囲にばら撒かれます。
ボディがほぼ移動距離のないテーブルターンをこなすなど非常に高い応答性能を持っているので、このスリットとの相性は抜群。
意味もなくシュパシュパ動かしたくなります😁
これ、文字にすると簡単なように思えますが、このパフォーマンスが出せるようなセッティングにするには相当苦労したんじゃないかと。
のんだくれはかつてオリジナルザラスプークの両側頭部にフラップ状の物を付けてスプラッシュ増強を目論んだことがありますが、最後まで首振りとスプラッシュの両立ができず、多数のオリザラを殉職させただけに終わったという苦い経験があります。
スリットとフラップでは基本的な構造が違いますが、このセンチネルの商品化には相当苦しめられたはず。
ラインアイにティアドロップのヒートンを採用してるのも、単なる懐古主義ではないヒミツが何か隠されていそうです。
水面ではご覧の通りの水平浮きとなり、司令官からのミッションを待ちます。
喫水線が2本目のスリットのちょうど真ん中にきて、波立った水面でも確実にスプラッシュを出せるというセッティングもニクイですね。
でもこのセンチネル、首振りしてスプラッシュを出すだけのルアーではないのです。
実はこれ、ウェイクベイトとしてもスゴいんです。
テーブルターンの際にノーズが水を被った瞬間を狙ってリトリーブを始めると、コイツったら水面直下で大きくケツを振りながら引き波を出して泳ぐんです。
ウェイクベイトが大好物なのんだくれはこの泳ぎにもヤラれてしまいました😁
そのウェイカーとしての動きはこの弾丸シェイプゆえの挙動だと思いますが、偵察兵どころか、ウェイクベイトとしてシャローの絨毯爆撃もこなせるトップウォータープラグなんて、ちょっとシビれますよね。
フックはサーフェスリグで留められています。
プラスネジを採用しているあたりもDabさん流の配慮が見え隠れしてますね。
カラーリングはDabスタイルの真骨頂ですね。
バーガンディ ⇨ ブルー ⇨ パープル のグラデーションにシルバースケールを被せたこのカラーの名前は PWS (Purple Wounded Shad)。
ストッキングの網目の生々しさが松坂慶子を思い起こさせます… って古いなー😅
ただネームヲタ的には残念なところも。
この通り、背中にはDabロゴが吹かれてますが、肝心のルアーの名前がドコにもなーい!
センチネルなんてカッチョいい名前なのに、これを入れないなんてどーなの?!
SENTINEL というスペリングがサーフェスリグの間に入ってたら1000点満点だったんだけどなぁ
水面系のショップなら比較的簡単に入手できたこのセンチネルも、発売されてからもう9年が経って、だんだん入手も困難になってきました。
B級ルアー列伝のエッセンスが凝縮されたルアーだけに、B列ファンならば是非とも確保しておきたい逸品です。