アングラーなら誰しも “コレがなきゃ釣りにならない” というお守り的なルアーってありますよね。
のんだくれの場合はコレ、フレッドアーボガストのマドバグ。
コレとチャグバグとコーヒーさえあれば、たとえボウズであったとしてものんだくれの釣りは成立します。
一軍ボックスには欠かせない”バディ”
マドバグとの付き合いはかれこれ35年以上になりますが、ガチの釣りでも、気分転換のチョイ投げでも必ずと言っていいほどこのマドバグを連れて行きます。
シーズンもレンジも問わずに使えるので、もしかしたら出勤回数はチャグバグよりも多いかもしれません。
感覚的には気心の知れた旧友。
ザリガニちっくなかわいい顔もあって、惚れ込んでるルアーなんです。
マドバグの鉄板サイズはG24
その中でも絶対外せないのがこのG24と呼ばれる3/4ozのモデル。
リップも一体塗装されてるので一見大きく見えますが、ボディは釣れごろサイズ。
RC方式でいうところの2.5サイズと言えば分かりやすいでしょうか。
目がテール側に付いた、いわゆるバックランナーとかバックワードランナーと呼ばれるタイプにカテゴライズされますが、このタイプの特性としてキャスタビリティが高いことが挙げられます。
リップがボディに対して平行で空力特性に優れているので飛行姿勢が安定しており、素直な軌道を描くスカッドミサイルとなるのです。
これはこのマドバグに限らず、ボーマーの名品ボーマーベイトやストームのホッテントットにも共通する特徴ですね。
オールドスクールな皮をかぶってるけど、実は超実践的なかっ飛びベイトなんです。

マドバグのサイズ・重さ
あ、マドバグと言ってもサイズやタイプにバリエーションがあるので、説明する前にちょっとだけノー書きをタレておきましょうか。
このマドバグにはサイズと潜行深度の違う複数のモデルがラインナップしています。
参考までに各モデルのカタログスペックを。
モデル | 全長/リップ含 | 自重 | 潜行深度 | ボディ | リップ |
G28 | 62mm | 1/8oz | 3ft | A | 1 |
G20 | 70mm | 1/4oz | 6ft | B | 2 |
G22 | 90mm | 5/8oz | 9ft | C | 3 |
G27 | 100mm | 7/8oz | 11ft | C | 4 |
G24 | 113mm | 3/4oz | 8ft | D | 4 |
G25 | 120mm | 1oz | 19ft | D | 5 |
G23 | 125mm | 1 3/16oz | 11ft | D | 6 |
パンフィッシュ用の1/8ozからウォールアイ用のマグナムダイバーまで、4種類のボディタイプと6種類のリップサイズの組み合わせによって7モデルがラインナップしています。(2002年当時)
コンポーネントの組み合わせによって構成されたバリエーション
全8タイプのリップとボディの組み合わせを解説するとエンドレスになってしまうので、中古屋などで最も出会う機会が多いと思われる代表的なモデルで解説しましょう。(左がG24、右がG25)
両者のボディタイプはDタイプで共通のものですが、装着されているリップはサイズの違う4と5、といった具合に組み合わせを変える事で全てのレンジをカバーできるようにシステム化されています。
なぜG24が鉄板なのか
でも、数ある種類の中で、何故このG24がのんだくれの必携ルアーなのか、というギモンが湧いてきますよね?
その秘密はこのリップのサイズにあります。
シリーズ中最大のボディでありながら、リップはワンサイズ下の物を採用することにより、” 有効レンジが広いだけでなく、アクションと使い易さのバランスが最も良いモデル” に仕上がっているからなのです。
トップからディープまで攻められる汎用性の高さ
大きなメタルリップを備えていながらその重量にも負けない強い浮力により、水面ではこの状態でご主人様の命令を待ちます。
このままリトリーブすれば一直線でボトムに… ではありますが、このG24のナイスなところはトップ使いで最強のパフォーマンスを発揮してくれるところ。
この状態でロッドを軽くチョンチョンすると、なんとこのマドバグはボディの中央付近を支点に水面キープしたまま左右に大きくスウィングしてくれます
そのスウィングアクションはリップの重量があるからこそ可能な、文字通りの振り子アクション。
それもリップがストッパーの役割を果たすので、その場からほとんど移動しません。
さらに振り子運動に合わせて胎内のゴロゴロラトルがいい感じで鳴いてくれるのです。
これは葦際やオーバーハング下など、プロダクティブゾーンが狭いスポットでじっくり誘えるという、およそクランクベイトらしからぬメリットをもたらしてくれます。
10/17 動画追加しました。
以前撮った水中アクション動画が残っていたので補足します。
音声を絞ってあるので聞き取りづらいのですが、水中でのラトル音は閉鎖環境であることを考慮してもかなりのラウドサウンドに仕上がっています。
また動画中ではワンストロークのみですが、リップが底べったりで這う様子(00:42〜)も確認できます。
実際のボトムでも同様の挙動でボトムクロールが出来るので、通常のファットボディクランクとは一線を画したアプローチが可能です。
それだけではありません。
他に同様の演出ができるルアーが存在しないので、先行者が撃った後でもバスが出るというマドバグならではのオマケもついてくるのです。
さらにその動きはトップだけでなく水面下でも自由自在。
狙ったレンジでラインテンションを保ち続ければ、ミッドレンジでゴロゴロ振り子ダンスもできちゃうのです。
でんぐり返しで障害物を回避する三叉リップ
そして振り子ダンスに飽きたら一気に潜らせ、強力なウォブリングとこの三又リップがもたらす障害物回避能力でカバーに潜むバスを直撃できます。
一般的なクランクベイトがリップをバンパー代りにして横にスルリと躱すのに対し、この三又リップは真正面から障害物を抱え込む様にぶつかり、まるでルアーが前転するかの様にでんぐり返しでカバーを乗り越えてきます。
この特性はレイダウン系のカバーに対してすこぶる有効で、カバー用クランクベイトでもスタックするようなタフスポットでも拍子抜けするぐらスルスルと抜けてくるので、巻いてるだけで笑いが止まらなくなります。
一見ダサく見えるぼってりボディは障害物回避性能最強
その性能は、リトリーブ時の姿勢を見れば一目瞭然。
リップがフロントフックをガードし、ボディ後方のボリュームがリアフックを完全にガードしているのが分かります。
そうなんです。 これがマドバグがワンアンドオンリーたる所以なんです。
通常のファットクランクはテール部分が絞られたデザインなので、なかなか同じようにはなりません。
マドバグは愛嬌のあるザリガニシェイプに目を奪われがちですが、実は障害物回避性能ありきのデザインからスタートしたルアーで、ザリガニっぽい外見はマーケティング上の後付け要素だったのです。
それだけではありません。
このテールのボリュームに溜め込んだ大きな浮力により、Uボートの様な急速浮上もお手のもの。
当たったら止めてという動作を繰り返せば、かなりタフなレイダウンでもスルスルと抜けてくれます。
このようにこのG24モデルは、水面ダンスさせたり枝を乗り越えたりと、多彩な演出と有効範囲の広さで他のモデルを圧倒しているのです。
もちろん他のモデルにはこのG24よりも優れたポイントがそれぞれありますが、そこに触れるとそれこそエンドレスになるのでそれもまた別の機会に。
金属リップがノイズメーカー?
ラインアイは極太ワイヤーのコネクターを採用。
この手のメタルリップルアーのラインアイは、ルーズな接続で常にセルフセンタリングされているので、いちいちトゥルーチューンする必要が無いのがいいですね。
さらに金属素材ならではの、通常のラトル音とは違ったスクラッチサウンドを発してくれるところも高ポイント。
これはこのマドバグに限らずメタルリップを採用しているルアー全般に言えることですが、水中で金属同士が接触する音は我々アングラーが想像する以上に水中に響き渡るので、泳ぎの違いではなく、サウンドの違いを軸にしたルアーローテーションを組み立てる面白さもあります。
メタルビルルアーの歴史は古く、クリークチャブに始まりボーマーベイトやヘルベンダー、ホッテントットなど名品と呼ばれるルアーが沢山ありますが、これらはノンラトルでありながらラトルボール&ラトルチャンバーという組み合わせが生み出すものとは全く異質のサウンド特性を持ったノイズメーカーだった、と考えれば、なぜあんなにも釣れるのかが理解できますよね。
余談ですがのんだくれの友人に、最近復刻を遂げたTDハイパークランクのラインアイスナップをこのマドバグのような極太ワイヤーに替えて、さらにWクレンを装着してイイ思いをしてる人がいます。
あまりネタバラシすると殺されるので詳しくは言えませんが、どこにWクレンを付けるのかは各自で妄想して答えを見つけてください。
そしてのんだくれが他殺体で発見される事があったら、その友人が犯人だと思ってください🤣
フックはロングシャンク推奨
フックはロングシャンクのマスタッドが標準装備。
ショートシャンクなど幾つかのタイプを試しましたが、フッキングしにくかったりするので、やっぱりこの組み合わせが黄金律ではないかと。
ただしフック交換でヒートンを緩めるとプラ素材の特性なのか、かなりの確率でユルユルになってしまうので、交換後は瞬間接着剤でのタッチアップをお忘れなく。
ネームヲタ感涙のエンボス仕様
このマドバグがのんだくれのオキニなのは性能面だけじゃありません。
このエンボスモールドのネームが素晴らしいんです。
もうね、シリコンで型取りして名札にしたいぐらいカッコイイ🤣
近年、この手の凸ネームを採用するルアーは絶滅してしまっただけに、マドバグにはコレを守り続けて欲しいなぁと。
しかしマドバグって最強にカッチョいい名前ですよね。
泥に棲む生き物ですよ。そのまんまの名前w
一般名詞であるMudbugでは商標が取れないので、 ”Mud-Bug” と間にダッシュを入れることで取得したというエピソードからも分かる通り、アーボガストはこの名前にこだわっていた模様。
実はこのルアーは他社が開発したものをアーボガストが買い取ったものですが、その後長きに渡って販売され続けた事を思うと、その判断に間違いはなかったんだろうなと。
まとめ
良くも悪くもクラシックな造形ゆえ、店頭で見かけることはほぼ無くなってしまいましたが、数年前、某大阪の某本町にある某魚矢の某旧社屋の某倉庫に大量に眠っていました。(しかもハンパない量!)
元々大量に注文が入るルアーではないので、もしかしたらまだ在庫があるかもしれません。
この手のルアーは典型的なスポット生産で常に流通しているわけでは無いので、中古屋での運命の出合いを待つよりも最寄りのショップから注文するなりプロパーで探した方が圧倒的に早いし確実だと思います。
使えば納得どころか、トリコになっちゃうことマチガイなしのカバークランクなので、是非ともボックスに常備しておいてください。
ラバージグしか入れた事がないいつものあのスポットにコレを通したらムフフな事が起きるかもしれませんよー😁
10年ぐらい前に撮った動画が出てきた。
今は釣り禁になっちゃったこの池はマドバグでどシャロー(水深20-40cm)の砂利ボトムをラバージグのようにゆっくり小突いて来るだけで沖から良いサイズが寄ってきてイイ思いができた。
おそらくメタルリップのボトムタップ音に反応してたんじゃないかと思ふ。 pic.twitter.com/gPuYs8OBfG— ルアー千一夜 公式 (@lure1001) September 16, 2021