バスフィッシングだけでなくあらゆるゲームフィッシュに恐れられているペンシルベイトの至宝ザラスプーク。
その威力に助けられたアングラーは星の数ほど。

そしてへドンの看板商品であるザラスプークは数多くの派生商品を生み出し、今やスプーク帝国と言っても過言ではないほどの一大派閥になっています。
しかし数多くの派生商品の中にありながらも、決して埋もれる事なく独自の存在感を放つモデルも。
今日紹介するザラスプークパピーはそんなオンリーワンなルアーです。
ザラパピーとは
ザラスプークパピー(以下ザラパピー)はエビスコ時代の1987年にリリースされたオリジナルザラスプークのダウンサイジングモデルです。
それまでにもヘドンにはザラと名のつくモデルが多数存在していましたが、オリジナルザラスプークの使い勝手そのままに小型化したモデルが無かっただけに、ザラパピーの登場は熱い視線で迎えられました。
かくいうのんだくれも熱い視線を送ったうちの一人。
オリザラで1日3桁キャッチしていた経験もあって、ダウンサイジング版が出る! と聞いただけで股間に生温かい広がりを感じそうになったもんですw
ザラパピーのサイズ・重さ
ザラパピーは全長75ミリ、自重1/4oz (実測7.5g)のペンシルベイトです。
当時のカタログには【オリジナルザラスプークを30%小さくした】という文句が踊っていましたが、一番最初に見た時は、『え、30%?! もっと小さいでしょ!』というのが正直な感想でした。
オリザラのボリュームに慣れていた事もあり、そのサイズに少々頼りなさを感じたのです。
しかし実戦投入してみるとこのサイズは実に理に適ったものであり、そして最強だったのです。
ザラパピーのアクション
ザラパピーの泳ぎは横へのスライドを得意とする典型的なスティックベイトアクション。
僅かな入力にも機敏に反応し、気持ちいいぐらいに首を振ってくれます。
この首振りの素直さとスライド幅の大きさはまさにオリザラのDNA。しかも純血のものです。
しかしザラパピーにはオリザラと決定的に違う点があります。
それはダイブアクションが得意な事。
オリザラがあくまでも水面勝負なルアーなのに対し、ザラパピーには水面だけでなくダイビングアクションも難なくこなす器用さが備わっているのです
実はザラパピーのこの器用さが誕生から30年以上も色褪せずに第一線で活躍し続けられる最大の強みでもあるのです。
ザラパピーの強み『弱いポップ音』
なぜザラパピーのダイビングアクションが強みなのかというと、それは ”ペンシルベイトでありながらポップ音を出せるから” これに尽きます。
しかしそのポップ音はポッパーなどが出すものとは根本的に違い、非常に小さく弱いサウンド。
ベイトフィッシュが水面に落ちた蚊などの昆虫を捕食する際に発するプチッともポチュッともつかない弱いサウンドが出せるのです。
”そんなの普通のポッパーでも出せるじゃん” と思うかも知れません。
そうです。同じようなサウンドは入力を加減すれば大抵のポッパーで出す事ができます。
しかしザラパピーは水面から出ている部分が小さい事と、そのヘッド形状により、強いロッドアクションなのに弱いサウンドを出す事ができるのです。
これが何を意味するのかというと、水面の虫を捕らえて急反転するベイトフィッシュの動きがリアルに再現できる事を表しています。
ポッパーで小さな音を出すにはそのカップ形状ゆえ必然的にチョンチョンといった感じの弱いロッドアクションになり、ベイトフィッシュのようなダイブ&ダートという早い動きを演出するのは難しくなります。
ポッパーで早い動きを出そうとすると、カップがエアを咬むので、どうしてもガボン!という派手な捕食音になってしまうのです。
しかしこのザラパピーは先述の通りヘッドが丸く、水抵抗になる要素が小さいため強いロッドアクションでもポップ音が小さいだけでなく、ダイブ後の素早いダートでベイトフィッシュをそのままイミテートすることができるのです。
これと似た要素を持つルアーにラッキークラフトのサミーがありますが、サミーにはスプラッシュを飛ばすためのカップがあるうえ、グラスラトル内蔵でアピール要素を強調していることもあり、よりナチュラルな要素を求める場合にはザラパピーの方が向いているでしょう。

この小さなポップ音とダイブ後のダートが効くという事と、これをストレスなく演じ切れるルアーが少ないと気づくまでには長い時間がかかりましたが、ポッパーには出なかった魚がザラパピーには反応したというケースを何度も見ているので、その挙動には間違いなく効果があると確信しています。
ザラパピーの使い方
ザラパピーはオリザラの血統なのでぶっちゃけペンシルベイトとして使う分にはどんなメソッドでも釣れちゃうでしょう。
しかしその中でも特に反応が高かったのは早いピッチで連続首振り&ポーズのパターン。
このパターンはアフターから回復した頃、ウィードが水面直下まで伸びているような状況で炸裂しました。
もしかしたらザラパピーの高速ドッグウォークはプレデターの殺気を感じて身を翻して逃げるベイトフィッシュ的なものが備わっているのかもしれません。
又、ダイブアクションを中心に演出が組めるので荒れた水面でもちゃんと動かせるというメリットも。
ルアー自体が軽いのでさすがにアゲインストの状況では厳しいですが、風下の水面ジャブジャブエリアで良い思いをした事も。
ザラパピーの仕様
そんな釣れ釣れのザラパピーですからもちろんヲタマインドも炸裂しちゃいますw
ボディは前後のパーツをヒートンあたりで張り合わせた、いわゆる首割れという構造になっています。
オールドのへドンには左右のパーツを張り合わせた縦割れと言われるものが多いのですが、エビスコはへドン他の生産合理化を推し進めた会社でもあるので、ザラパピーはすべて首割れ仕様。
生産時期によってカップリグとヒートン&リングの2種類のリグがありますが、機能的にはどちらも大して変わりません。
おそらくこのカップにはウェイト的な役目もあったんじゃないかと。
テールに仕込まれたボールウェイト
テール内部には5ミリ?のウェイトボールが仕込まれています。
左右への大きなスライドと生っぽいダイビングアクションを司っているザラパピーの最重要ポイントと言ってもいいでしょう。
オリザラのウェイトと同じように固定を外してワンノッカー化することも出来なくはないですが、頑固な固定でかなりの苦労を強いられるのと、外した途端にルアーの動きがショボくなるので、後悔しないためにもウェイトはノータッチでw
フックはオープンシャンク
ザラパピーの初期のモデルには画像のようにオープンシャンクトレブルが採用されています。
オープンシャンクとは、シャンクの1本だけが溶接されていないのでダブルフックのようにシャンクを開いて装着ができるフックのこと。
オープンアイのヒートンに装着するよりもこのフックを使った方が作業効率が上がるいうエビスコの考えで採用されたようですが、オープンシャンクは強度的に弱い(掛かりどころによってはすぐにシャンクが開いてしまう)ことから現在のモデルは通常のフックとリングによるリギングになっています。
今レギュラーでオープンシャンクを製造しているのは確かVMCだけになってしまった(#9608)ので、このフックもワームフックのシャンクについたケン(ワームキーパー)同様にいずれ消えてゆくんでしょうね。
ザラパピーのカラー
ザラパピーはザラファミリーの中でも売れ筋のラインなので、カラーの多さはオリザラ並。
オリザラのカラーはほぼレギュラーラインナップとして用意されています。
日本で一番人気があるのはおそらくクリアカラーだと思いますが、のんだくれのフェイバリットは断然このSSカラー。
通称ふりかけと呼ばれる名カラーです。
30年以上に渡る激務でSSカラーの特徴でもあるラメがすべて落ちてしまっていますが、釣果には全く影響なし。
むしろ数々の戦いと実績を経て愛着が湧いた分、ラメフリッターが無い方が釣れるんじゃないかと思ってるほどw
へドン通の間でその名を轟かせている関西のコレクターの名言に ”SSはふりかけが全部落ちてからが勝負や” というのがあるんですが、これはかなり核心を突いた言葉はないかと。
フリッターが無くなるほど使い込んで、はじめて見えてくる事もあるのです😁
新旧ザラパピーの見分け方

ザラパピーの現行モデル(出典:www.lurenet.com)
ザラパピーは大きく分けて初期モデルと現行モデルの2種類が存在します。
初期モデルの主な特徴はカップリグとオープンシャンクフックを採用しており、それにヒートンの径が小さく細い事が挙げられます。
それに対して現行モデルはカップが無いことと前後ともスプリットリングによるフック接続。
あとはオールドへドンのお約束でもある吹き目(エアブラシで目をペイントしたもの)と描き目(スタンプによるペイント)などなど。
気になる初期と現行の境目となる時期はズバリ1995年。
トップウォーターキングの肩書きを持つゼル・ローランドの監修でプロオートグラフザラスプークパピー Pro Autograph Zara Spook Puppy がリリースされたのが転機となりカップやオープンシャンクは廃止となりました。
新旧どっちのモデルがオススメ?
新旧モデルの話が出ると必ずと言って良いほど ”どっちのモデルがイイの?” という話になりますが、結論から言うと、実戦投入するならば間違いなく現行モデルの方がイイです。
なぜなら初期モデルはヒートンが弱すぎる上に使っているうちに緩んでくるという先天的疾患を抱えているから。
気を付けて瞬間接着剤で目止めしていることもありまだスッポ抜け事故には遭っていませんが、緩んでいることに気付かないまま使って悲鳴を上げたアングラーは少なからずいるはず。
ゼルローランドのシグニチャーからヒートンが改良されたので、おそらくこの疾患を憂慮していたアングラーは多かったんじゃないかと。
しかしそれ以外の点はほぼ変わらないと思ってイイと思います。
超シビアなヲタ視線で見れば違いはありますが、実用面ではほとんど同じだし、入手のし易さから言っても現行モデルの方が圧倒的に上。
とはいえ、ルアーは性能だけでは語れないもの。
のんだくれのSSのようにボロボロだからこそ使いたいというエモーションがあることも否定しませんので結局は ”どちらでもお好きな方で” ということになります😁
ザラパピーのタックル

この記事を書くにあたり改めて16lbラインでも投げてみました
ザラパピーを使用する際のタックルは投げられるものならばなんでもオッケー。
よほど硬いロッドでなければキャストもルアーの演出も思いどおりになると思います。
が!注意したいのはラインの太さとその接続方法。
ラインは12lbのナイロンで、ループノットによる直結がマストです。
近年のリールは太いラインでも1/4ozを遠投できるなど性能は申し分ないのですが、ザラパピーの小さく弱いポップ音とダイブ後の大きなダートを演出するのには12lbラインでの直結が必須条件。
ちなみにこの記事を書くにあたり改めて16lbナイロンでも投げてみました。
キャスタビリティには何の問題もありませんが、動きはどうしても硬くなりがちで人為感が出てしまいます。
おそらくザラパピーをラインに結ぶ状況はかなりタフなコンディションで追い込まれた状況だと思うので、このラインの細さは明確に活きてくるんじゃないかと。
動きの点で言えば8lbがベストですが、ザラパピーは思わぬビッグフィッシュが飛び出す上に丸呑みされることが多いルアーゆえ、ラインブレイクで雄叫びを上げる事を思うと12lbがベストチョイスかと。
ザラパピーの改造・チューン
釣れ釣れでシンプルなボディ構造だとイジりたくなるのがアングラーの性ですよね。
もちろんのんだくれも考えつく限りのチューンや改造を試みました。
だってノーズには製造時にできる穴まで空いてるんですから、これはイジらないと!😁
元々のんだくれはオリザラをチューン改造しまくっていたのでザラパピーも格好のネタとばかりにイジりまくりました。
が! 結論から言うと、ザラパピーは余計な事をしない方が釣れます。
つまりノーマルのままがイチバンということ。
ノーズアイはもちろんのこと、レジン注入による浮き角変更、グラスラトル封入、リップ装着、ジタバグカップ装着、プロップベイト化、ジョインテッドボディ化、ダーター化、シンキングジャークベイト化などなど思いつく限りのチューンを試しましたが、全てノーマルが本来持っている性能を損なうだけに終わりました。
その原因は先述したウェイトにあります。
このウェイトが生み出すバランスが絶妙すぎてアングラーのモディファイが入る余地がないのです。
有効だと思えるチューンはフックを交換することか、リペイントぐらいしかありません。
特にラインアイヒートンをノーズに刺し変えるチューンは愚の骨頂。
ノーズアイにするとローリングしなくなるのでターン時のキレが失せてただの棒になり下がります😭
ザラパピーはアングラーが想像している以上にデリケートなバランスで成り立つルアーなのです。
しかしこれは逆の言い方をすればザラパピーが完成されたルアーであることを意味しています。
オリジナルザラスプークがペンシルベイトの完成形であり最終形と言われていますが、ザラパピーは”このサイズのペンシルの”最終形なのかもしれません。
ザラパピーのネーム
そんなザラパピーにもへドンのお約束、ステンシルネームがしっかりと吹かれています。
シングルクオーテーションマークで ’PUPPY’ とするあたりに当時の意気込みが感じられますね。
ドッグウォークするオリザラのダウンサイジングバージョンだから ”子犬” とするセンスに当時は悶絶したもんですw
余談ですが、ザラパピーは登場から今までずっと ”ザラパピー” と ”ザラスプークパピー” の表記が併用されてきているのに気づいてました?
おそらく®️マークが付与されている”ザラパピー” の方が正式名称だと思うんですが、プラドコオフィシャルの印刷物にも表記のゆれが見られるので、この表記の使い分けには何か明確なルールがあるんじゃないかと睨んでます。
何もなかったら笑い者になっちゃいますけどね😅
ちなみにパピーにはさらに小さいプーチ Pooch もいるのですが、こちらの表記も同様に”ザラプーチ” と ”ザラスプークプーチ” の併用です。
プーチもパピーと同じ様に犬を表す単語ですが、 ”ポーチ” とローマ字読みで呼ぶ人も多かったりします。
ルアーなんて好きなように呼べばいいんですが、ザラ”スクープ” といい、ポーチといい、ザラファミリーは日本では呪われてるのかもしれませんw
ザラパピーの入手方法
オリジナルザラスプーク同様、現行モデルとして製造されているルアーなので入手は比較的容易です。
“比較的容易” と表現したのは、置いている店がまだまだ少ないから。
釣れる優等生で、しかも現行モデルであればどこでも買えるはずなんですが、いわゆるオールドタイマーに分類されるザラパピーはその威力を知っている店でしか見られないんです。
トップウォーターだけど5/8ozのフルサイズでないというビミョーなサイズ感も影響してるかもしれません。
近年はメバルアングラーからの圧倒的な支持や、やインクスレーベルによるカスタムモデルが出回るようになったのでソルト系ショップでも見るようになりましたが、それでもどこでも買えるという状況にはほど遠い。
スミスが扱っていて供給面では問題ないはずなのに、現状がこれではちょっと寂しいですよね。
おわりに
ザラパピーは80年代にバスフィッシングをやってたアングラーには慣れ親しんだルアーですが、先述の通り店で見かける事も、メディアでの露出も無くなった今ではもしかしたら珍しいルアーなのかもしれません。
それだけフィールドに投入されていないという事でもあるので、もしボックスに幽閉したままならば今度の休みにでも泳がせてみては?
久々にザラパピーを動かした人がみんな口を揃えて言う言葉、”こんなに良く動くルアーだったっけ?” を実感できますよ😁
オマケ:木製のイトコもいるんです
又、ザラパピーにはウッド製のモデルもありますが、それはそれで底が見えない深淵を擁しているので詳しくはまた別の機会に😁