どう見てもパッとしないのに、イザとなるとトンデモナイ結果を叩き出す奴っていますよね。
スポーツの分野でも勉学の分野でも、自分の周りで思い当たる人は一人ぐらい居るはず。
そしてそれはルアーの世界でも。
今日はそんなイマイチなのにスゲー破壊力を持ったA.C.プラグを紹介しましょう。
A.C.プラグとは

A.C.プラグはスイムベイトの威力が徐々に浸透し始めた1999年にデビュー。
ハッチェリートラウトで有名なアラン・コール氏がハンドメイド制作していたものがオリジナルです。
元々はモンスターブラウンやレインボーを釣るための「トラウトベイト」でしたが、ラージマウスに対するとてつもない破壊力を嗅ぎ付けた西海岸アングラーが使い始めたことで一気にブレイクしました。
しかしA.C.ルアーズは完全ハンドメイドのため生産量に限りがありました。
そこでルーハージェンセンが名乗りを上げて、量産版A.C.プラグとなるアラン・コールズオリジナル A.C.プラグが誕生したのです。
同時期にかのフレッドアーボガストもA.C.プラグの量産に乗り出しており、こちらは元バグリーのデザイナーが興した、リー・シッソンルアーズがOEM生産を受け持っていました。
A.C.プラグのサイズ・重さ

A.C.プラグのスペックはテールを含まないボディ長で130㍉、約43gとなっています。
これはいわゆる7㌅モデルですが、この他に5㌅と9㌅もラインナップしていました。
それぞれのモデルにイイところがありますが、今回は西海岸スイムベイターに最も人気のある7㌅モデルに絞ってノー書きを垂れてみようかと。
各種機能を不格好で隠したボディ構成
大きくスラントしたノーズ

ACプラグの特徴は、なんと言ってもこの思い切りの良い造形でしょう。
実質的なリップであり、モンスターを惹き付けるACプラグの動きを左右する心臓部と言っても過言ではありません。

バスオレノとACプラグ
バスアングラーにとってこのノーズ形状はバスオレノを連想させますが、元々このスラントノーズはかつてサーモンフィッシングのテッパンルアーだったラッキールイーLucky Louieからの流れを汲むもの。

その形状は現在ではJ-プラグへと受け継がれており、ACプラグがトラウト狙いのルアーとして誕生した事を裏付けています。

ルーハージェンセンのJ-プラグ
そしてこれが唯一無二であるACプラグの泳ぎを生み出すキモになっていますが、泳ぎの詳細は後ほど。
ちなみにこのノーズ形状はアーボガスト版では小さな上顎があり、オリジナルに忠実な作りになっています。
しかし元々のACルアーズのオリジナルにも製造時期やモデルによって上顎がないスムースヘッドの個体もあるので、この辺の詳細は天国のアランに聞かないと分かりませんw
独自の泳ぎを生み出すV字カットとシングルジョイント

そして泳ぎの要となるのがこのV字のシングルジョイント。
横方向だけでなく上下にも大きく振れることで、ボディ同士がぶつかることでコツコツとよく響くクラッキングサウンドを発する仕組みになっています。
このクラッキングサウンドはラットベイトなどにもよく見られますが、ウッド特有の響きを放ち、プレデターに強くアピールすると言われています。
かつてフィッシュアローが出したモンスタージャックも同様のコツコツサウンドを発するルアーとして知られ、その実力は言わずもがな。

アランが特許出願した際の仕様書。ジョイント部分だけでなくノーズやソフトテールにまでしっかりプロテクションがかかっているのが分かる。
実はこのV字構造はアランがパテントを取得しており、この特許があるためにルーハーもアーボガストもジョイント部分だけでなくルアーの形状全体を踏襲しなければなりませんでした。
両社のACプラグがほぼ同じ形状なのは、そういう理由があったのです。
強力な浮力を生み出すぶっといボディ
そして地味ながらも無視できないのはごん太のボディ径。
バスオレノの1.5倍はあろうかというボディは、トンでもない浮力を生み出し、先述のスラントノーズやジョイントも相まって独特のアクションを生み出します。
交換可能なテール

そして生っぽい動きを演出してくれるソフトテールの存在も忘れちゃイケマセン。
ブラスネイルを抜くことで好みのテールに変えられるようになっています。
元々はパテント仕様書にあるようにシャッド/ワギングテールが標準でしたが、ピンテールワーム(ギャンブラーのスタッド5″)に変えています。

こうすることでテールの抵抗が減る分テールセクションの動きが大きくなり、先述のクラッキングサウンドが出しやすくなります。
尚、交換の際にネイルを紛失しやすいので要注意。
もし紛失してしまった場合は、ブラス(真鍮)製かステンレスの防錆ネイルを使わないとサビが塗膜の下まで入り込んで汚くなりますのでご留意なさいますやう。
ルアー史上最強クラスの泳ぎ下手

さてさて。 そんなACプラグの泳ぎですが、ひとことで言うと下手クソそのものw
一般的なルアーのように浮力とリップのバランスが取れていないので、リトリーブスピード、特に初動スピードに気をつけていないと横を向いて水面を滑るだけというなかなかの代物です。
ウッドなので個体による若干の差はあれど、基本的に泳がないルアーだと思ってた方がいいでしょう。
その下手っぷりは、イマドキのスイムベイトに慣れているアングラーなら不良品じゃねーか!😤と怒り出すレベルw
しかしこれがACプラグの最大の売りなのです。
つまりしっかりバランスが取れていない上にジョイントルアー特有の不安定さも加わるので、アングラーの思い通りの動き、つまり ― 人為的なアクション ー にならない…いや、そうなりようがないのです。
ゆえに使い方はタダ巻きあるのみ。 それもちゃんと水を掴んでいるか確認しながらのスローリトリーブに限られます。
色気を出してトゥイッチでもしようものなら、たちまち横を向いて水面を滑り出すのでルアーの動きに注力しながら一定の速度で巻くのみというルアーなのです。
しかしスローに巻いたからと言ってちゃんと泳ぐわけでもありません。
右へヨタヨタ、左へヨタヨタと、キレとは程遠いもっさり泳ぎでアングラーをイラつかせるのです。
しかしそんなストレスの溜まる泳ぎとは裏腹に、いいサイズを連れて来るのです。
実はこのスローリトリーブ使いはスイムベイトマスターとしても知られるアイロッドiRodオーナー、マット・ニューマンも説いており、実際に彼は我々日本人が想像する以上のデッドスローで巻き続けるという方法で数多のモンスターをキャッチしています。
そして「ACプラグは ”トップウォータースイムベイト” だ」と。
つまりテールセクションが水面に引き波を作る程度のスピードでゆっくり巻くことで、波間にフラフラと漂う瀕死のトラウトを演じることが出来ると。
特に彼のホームグラウンドであるキャスティークやピラミッドレイク、カシータスは午後になると風による波が出やすいので、よりトラウトっぽく見せることが出来るんだと。
そして、このフラフラ泳ぎこそがビッグフィッシュを強力に引き寄せるという事。
実際使ってみると分かりますが、巻いてるといつの間にかルアーの後ろに黒い影がついていたり、ディープからふわ~っとデカいのが浮き上がってくるのを見ることが出来ます。
ルアーにサカナが付いてからバイトに持ち込むまでの手順は状況やアングラーのスキルにも依るけれど、刺客がお膳立てしてくれたチャンスを逃さないためにも、どんな時でも平常心を保てる精神力を鍛えておきたいものです …とエラそうなことを言ってますが、のんだくれ自身ビッグバスに見切られてあ”ーっ!となったこと数知れず😩
モンスターへの道は遠く険しいのです。
ルーハーらしいカラーリング

ACのオリジナルは基本的に小学生の工作レベルのベタ塗りwばかりですが、ルーハー製造になったことでホイル張りや手の込んだレインボートラウトカラーがラインナップされるようになりました。
ルーハージェンセンのカラーリングは少々クセがあるので好き嫌いはあるでしょうが、ベイトフィッシュちっくなカラーがあるアドバンテージはかなり大きいんじゃないかと。

手塗り感満載のアイなんて、GGYプラッガーにとっては癒やしすら与えてくれますねw
モンスターに対応したリグ/フック

フックは前後とも#1サイズのラウンドベンドを採用。
極太ワイヤーのヒートンなど、ビッグフィッシュが来ても安心設計。
このフックの重量バランスも含めての不安定スイムなので、交換する際には良さを殺さないようフック重量にも配慮したいところ。
過去に色んなサイズや形状のフックを試してみましたが、個人的に一番しっくり来るのはデフォルトのフックでした。
巨匠へのリスペクトに溢れたネームスタンプ

インベンターであるアラン・コールへのリスペクト溢れるネームスタンプは高ポイント。
そして年号も入ってるので、自身のヒストリーに重ね合わせて物思いに耽る事が出来るオマケ付きw
しかしもう23年も経つのかぁ
この年は9.11の煽りをまともに受けて地獄のような年だったなぁ…
入手は意外と困難

そんなACプラグですが、オリジナルはもちろん、ルーハーもアーボガストも生産を終えているので入手にはちょっと手こずります。
中古屋を回って探すか、ネット検索するしかありません。
しかも東京湾シーバスアングラーを筆頭に、実力を知ってるアツいアングラーが多いのか、競争率はもちろん価格もそれなり。
破格値でゴロゴロしてた20年前とは違い、入手までに地味に忍耐を強いられるルアーでもあるのです。
とはいえ、キイロのスイムベイトラックの奥でひっそりと余生を過ごしているモノもあるので探してみる価値アリですぞ。
おわりに

仕上げや泳ぎがキレイなルアーを見慣れてると、そっちの方が釣れる気がするのはアングラーの本能なので惑わされるのは仕方ないかも知れません。
しかしメーター級のアカメやイトウを数多くキャッチしている友人曰く、モンスター級は規則正しいキレイな泳ぎには全く反応しない、と。
それを考えると、釣りのスキルとルアーの内面に秘めたポテンシャルを見抜く審美眼の両方を鍛える事が「まぐれではない」モンスターハンティングへの近道なのかもしれません。


