アングラーのスキルが試されるソルトウォーター出身のシンキングポッパー ニアーナシン Near Nuthin’ C56 / コットンコーデル Cotton Cordell

コットンコーデル Cotton Cordellポッパー•チャガー

日本のバスフィッシング黎明期にはどうやって使うのか理解されないルアーが多数ありました。

今や定番となったバズベイトも、当時は水中を引いてくるものだと紹介されたりしてましたね。

今日紹介するニアーナシンもまさにそんなルアーのひとつ。

コットンコーデルから鳴り物入りで登場したポッパーです。

ニアーナシンとは

ニアーナシンはソリッド樹脂のシンキングトップウォーター。

オリジナルモデルである4.5インチ/2ozのソルトウォーター版(C58)や、同じくシンキングトップウォータであるブルーストライパーのヒットにより、バス向けのダウンサイジングモデルを出すか!となって販売された経歴を持つ、”海から来た奴”です。

同時期にクリークチャブも同じくシンキングポッパーであるストライパーストライクをリリースしていたことから、この時期のトレンドだったことが伺えます。

ニアーナシンのサイズ・重さ

ニアーナシンのサイズは55ミリ 1/2oz。

しかしカタログでは14gと謳っていながら実重は21g超と、かなりのサバ読み野郎だったりします。

このサイズでこの重さですからそのキャスタビリティはハンパなく、当時のタックルでも余裕で3〜40mは飛ばせました。

ソリッドプラ&貫通ワイヤーフレーム

ニアーナシンの特徴はなんと言ってもソリッドプラであること。

実際に手に持ってみると、予想を上回るズッシリ感にニヤリとさせられます。

通常ポッパーといえば浮くものですが、キャスタビリティと水面での安定性を考えてシンキングにしてしまった割り切りはさすがルアーフィッシング先進国だなと感心することしきり。

当時のカタログに掲載されたニアーナシン

ウェイトを噛ませたワイヤーフレームをまるごと樹脂で固めた構造はシンプル以外の言葉が浮かびませんが、これがプレデターを狂わせるのです。

ワイヤーを手で曲げた感じがいい味を出してますね。

そんなボディの先端に誂えられたカップも、常に水面位置を維持して飛沫をあげ続ける事だけに特化したシンプル設計。

高速リトリーブでも安定した姿勢をキープし続けるために、カップはエッジも立っていないフラット形状になっています。

しかしシンプルボディながら目玉の造形は忘れていないあたりに、メジャーブランドとしてのプライドが感じられます。

アクションはアングラー次第

そんなルアーなのでアクションはすべてアングラーの技量に委ねられます。

とはいえ使い方は超シンプル。

遠投したらトゥイッチを入れながら水面をキープできるスピードで巻くだけ。

バスフィッシングの場合はシャッドボールに向かってキャストし、シャッドを散らしながらシュパシュパ巻いてくるだけです。

しかしやってみるとこれが意外とムズカシイ。

ソルト用モデルと違ってバス用モデルは小粒なので揚力が小さく、常に水面をキープしてスプラッシュを出し続けるにはちょっとしたコツが要るのです。

ジャカジャカと早巻きすれば浮き上がるけど、オサカナのバイトを取れなければ意味がない。

しっかりとアピールさせつつバイトも取るというスキルが必要なのです。

更にスプラッシュだけでなく、時には水面直下でバブルトレイルを作るなどの小技も求められます。

こういったアクションは青物狙いでは定番ですが、バスフィッシングではほとんどやらないメソッド。

ゆえにニアーナシンはあまり浸透せず、結果的に生産中止に追い込まれたという悲しい歴史となってしまいました。

でもこのメソッドは今でも十分通用しますよね。

ビッグベイトを足元でかき回すエイトトラップ釣法をタイニープラグで、かつ広範囲でやってるようなもんですから、三軍ボックスで眠らせてる人は是非泳がせてみて。

カラーは3色のみ

ニアーナシンはカラーのバリエーションがたった3つしかなかったという変わったルアーでもありました。

その3つとは “かつてクロームだった” 画像のクロームカラー、先出のカタログのソリッドクリア、そしてコーデルの定番色、スモーキージョー(パールホワイト/ブラックバック)のみ。

なぜこの3つしかラインナップされなかったのか理由は不明。

水面の乱反射でルアー自体が見えないので色は沢山必要ないと思ったんでしょうかw

フックは#6

フックは前後とも#6サイズを採用。

元々はクローポイントフックが装着されていました

デフォルトではテールのみフェザード仕様。

フェザーは水面での安定性を担保するスタビライザーの役目を果たすので、この手のルアーには必須項目ですね。

Nuthin’の謎

しかし残念なことにこのルアーにはネームらしきものがありません。

ソルトモデルにはエンボスモールドが有ることを考えると、スペース的な問題があったのかも。

それよりも気になるのはニアーナシンNear Nuthin’という名前。

Near Nothing(似ているものがない=唯一無二)という意味は分かるんだが、なぜNuthin’のスペルなのか。

何人かのネイティブにこの件を質問してみましたが、彼らの意見をまとめると、おそらくナッシングの南部訛りをそのままスペルにした米人お得意のワードプレイではないかと。

一般的な米語発音ではナッシングの”ナ”は発音記号でいうところの〈nʌ’〉になるところを南部風の間延び音にしたアレじゃないか、とのことなのです。

真相は当時のコーデル担当者に聞かないと分かりませんが、こういう謎はあえて解決しなままの方がミステリアスでイイのかもしれませんねw

入手は結構大変かも

そんなニアーナシンですが、不人気ルアーだっただけに今入手するのはちょっと大変かもしれません。

キイロ系では一度も見たことありませんし、ネットでもebay以外ではほとんどお目にかかれません。

ネームがないので身元不明ルアーになってしまい、検索に引っかからないのもあるでしょう。

そういう意味では激レアかもしれませんw

おわりに

インターネットの発達により、現在では使い方が分からないルアー自体がなくなり、それに伴ってアングラーがルアーの可能性を模索する事が減ってしまいました。

つまり教科書通りの使い方をすればとりあえず釣れるので、アングラーがそれ以上の創造をしなくなってしまったのです。

使い方がすぐに検索できるのは便利な事かも知れませんが、個人的にはルアーフィッシングの面白さが半減したように思えて仕方ありません。

だってアングラーの妄想を奪われちゃったんですから、これほど寂しいことはありません。

ルアーに限らず、答えを求めて妄想したりもがいてる時が一番楽しいのです。

そういう意味において、このニアーナシンは非常に貴重なルアーだったのかもしれませんね。

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