数あるトップウォータープラグの中でも一番取っ付きにくいイメージなのがダータープラグ。
ポッパーのように派手にツバを吐くわけでもなく、ペンシルのように首を振るわけでもないので、どうやって動かしたら良いのか正解が分かりにくいというのがその理由です。
しかしダーターをしっかり勉強すると、ハネモノなどのタダ巻き系では見えなかった ”バスが反応する動き” が分かるようになって水面の釣りが最高に面白くなります。
そんなダーターの強みをやさしく丁寧に教えてくれるのが今日のゲスト、クリークチャブのダーター。
そのまんまズバリのネーミングですが、一度使えばその名前に強く同意できるオールタイムクラシックです。
今日紹介するのはプラドコに移籍後、最後のモデルとなった#I2000P(アイ2000ピー)。
全長115ミリ、15.5gのこのモデルは1920年代にウッドで発売されてから約90年にわたってパイキーシリーズと共にクリークチャブの金看板を背負って来た孝行息子ででもあります。

日本では一部の水面アングラーにしか受け入れられていませんが、ルアーの名前がそのままカテゴリー名になっている事からも当時の影響力の大きさが窺えますね。
このダーターは、ペンシルベイトがスプーク、リップレスクランクがトラップと総称されているアレと同じ立ち位置だったのです。
後にへドンも似た形状のダーティングザラというルアーをリリースしていることがその証です。
そしてそんな輝かしい経歴を証明しているかのように、扱いやすさはもちろんのこと、実力もお墨付き。
ダーターで釣った事がない人に是非使ってもらいたい逸品なのです。

へドン・ラッキー13とクリークチャブ・ダーター
一般的にダータープラグというと、へドンのラッキー13をイメージするアングラーが多いと思います。
ラッキー13は歴史があって実績も十分、知名度は言うまでもなくどこでも手に入るのでSNSなどに登場することも多い名品なのですが、実はラッキー13には大きな落とし穴があるのです。
それはポッパーのように大きな口を持っているという事。
実はダーター初心者のほとんどがこの口の大きさに惑わされてしまい、ガボガボと捕食音を出して誘うルアーだと勘違いしてしまうのです。
でもラッキー13が本来の実力を発揮するのは水面ではなく水面下。
1981年のへドンカタログにも明記されていましたが、ラッキー13はあくまでも ”ダイビングウォブラー” であって、水中がメインステージの、潜らせてナンボなルアーなのです。
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そしてさらにダータープラグ初心者を惑わせてしまうのが、ラッキー13の浮力の強さから来るクイックなレスポンス性能。
レスポンス性が高いのはルアーとしてはイイ事なのですが、ルアーの浮上速度が早くなるとアクションやポーズの長さもそれに引っ張られて早くなる傾向があるのです。
つまり自分でも気付かないうちに操作テンポが早くなってしまい、ダータープラグに必要な ”間” がおざなりになった結果、釣れないリズムに陥ってしまうのです。
ラッキー13で釣っている人は、この特性をちゃんと理解した上でスローとクイックを組み合わせてメリハリをつけているのですが、ダータープラグ初心者が緩急をつけて動かし続けるのはなかなかハードルが高いですよね。
そこで、このクリチャブダーターの出番というわけです。
クリークチャブダーターの特徴はなんといってもこの情けない顔でしょうw
やる気に満ちたラッキー13の顔とは真逆ともいえる遠慮がちなカップは、ショップで見かけても手に取る気力すら失せてしまいそうですが、実はこれがキモなのです。
その理由は水に浮かべるとすぐに分かります。
ラインアイを水面上に出して浮くのに対してカップは水面下になっていることからわかる通り、この状態からテンションをかけるとルアーのボディはすぐに前傾姿勢となり、小さなバブルをまといながら静かにダイブしてくれます。
しかし一旦水中に入ると、今度はカップが受けた水の抵抗を逃がそうとするため左右どちらかに身をよじり、アングラーの意思などどこ吹く風とばかりに横方向へ進もうという力が生まれます。
これがいわゆるダートアクションといわれるヤツですね。
そしてここからがナイスなところなのですが、クリチャブダーターはラッキー13に比べてボディ体積が小さいので、その分ダート幅が大きくなりやすく、浮力もそれほど強くないので浮上速度もクイック過ぎず、かつ遅すぎないという絶妙な挙動を見せてくれるのです。
早い話がこのクリークチャブダーターは、動かし方とか面倒なことを考えなくても、ゆっくりストップ&ゴーを繰り返すだけでルアーが勝手に、しかも最良の仕事をしてくれるということ。
一見ショボく見える小さなカップやスラントしたヘッド形状、そしてやや細身のボディは、ダータープラグが理想とする機能を完璧な状態で引き出してくれる黄金率だったのです。
しかしその動かし方には注意すべき点もあります。
それは ”動きを人為的なものにし過ぎない” ということ。
ルアーを動かすこと自体が既に人為によるものなので思いっきり矛盾しているのですが、要はロッドでアクションさせずに出来るだけリーリングのみで動かすことを肝に銘じるのです。
リールの巻き取りだけでストップ&ゴーを繰り返すと、ロッドティップで動かした時よりも動きのテンポが遅くなるだけでなく、ダート幅が大きくなり、そしてより不規則な動きになるという傾向があります。
そして、これこそがダータープラグでよく釣る人のリズムなのです。
のんだくれの知人にダータープラグでめちゃくちゃ釣る人がいるのですが、師曰く、どれだけ水中にルアーを置いておけるかがダーターのキモだ、と。
状況が良ければ水面でガボガボやっても釣れるだろうけど、そんな状況は滅多にないので、ルアーを少しでも長く水中に留めておくことがダーターで釣る近道だ、とも。
それらのキモを簡単に押さえてくれるのがこのクリークチャブのダーターなのです。
釣れるルアーであることが分かったら恒例のヲタタイムの始まりですw
老舗ブランドならでは… というよりも、新しいブランドはやらないクラシックなカラーリングを楽しみましょう。
へドンのBF(ブルフロッグ)カラーとはまた違ったパターンがヲタ心に深く刺さりますね。
クリークチャブにはイエロースポッテド Yellow Spotted と呼ばれる有名なカラーがありますが、このカラーは水面下でのルアーの挙動が良く見えるのでダーターには超オススメのナイスカラー。

クリークチャブのイエロースポッテドカラー(1930年代)
ただ、あまりにもクラシック過ぎて今の流行りとはかけ離れていたせいか、プラドコ期のダーターではあまりお目にかかれないのが玉に瑕。
もしイエロースポットのダーターを見つけたら買いですぞ。
フックはショートシャンク&ラウンドベンド#2サイズの三連構成になっています。
画像のものはカドミウム処理フックですが、モデルによっては通常のニッケルプレートフックが装備されている場合もあり。
ちなみにダーターには他に二人の弟がいますが、バスの水面使いではちょっと使いにくいサイズなので、トラウトやメバルプラッギング用と割り切った方良いかもしれません。
とはいえ次男坊のI9000Pモデルは57ミリという一口サイズでミノープラグとして使うと目ウロコなルアーなので、詳細はいずれまた。
そしてプラスチックのクリークチャブといえばなんといってもこのエンボスモールドのネームでしょう。
ボディの側面全面を使って堂々と浮き彫りにしているあたりに老舗としてのプライドを感じますね。
クリチャブに代表されるこうした凸型ネームは、粘土や練り消しゴムに映し取ってニヤニヤしながら焼酎の氷を鳴らすのがネームヲタとしての正しいあり方。
ハラ側には何もペイントが施されずプレーンな状態になっているところもネームを引き立たせてますね。
ちなみにこのクリチャブダーターにはラトルは入っていません。
そしてフック&リグ以外のウェイトが存在しないのもクリチャブダーターの特徴のひとつ。
もしかしたらあの不規則な挙動はウェイトが無いからこその動きなのかも?と妄想したくなりますね。
そんな使えるクリチャブダーター君ですが、残念ながら現在は生産されていません。
一時期セールワゴンとかにテンコ盛りで流出してましたが、10年以上も前の話ですから今となっては地道に探すしかないでしょう。
でも探す苦労さえも良かったと思えるほどナイスなルアーなので、ダーター初心者はもちろんガチで釣りたい人にも是非チャレンジしてもらいたいのです。
そして無事にダーター童貞を捨てることが出来たら、あたかも手練れのダーター使いのようなドヤ顔でインスタとかに投稿してほしいなと😁