一般的にベストセラーと言われているルアーの後ろには必ず売るための仕掛け、つまりマーケティングがあります。
それは広告戦略だったり流通計画だったりメーカーやルアーによってまちまちだが、マーティングなしに売れるルアーは無いと断言してもいいでしょう。
つまり余程の幸運が重ならない限り、ルアーの実力だけでは売れないのです。
それ故、マーケティングの支援が伴わなかったために消えてしまったルアーも数多く存在します。
それが今日紹介する旧バグリーのポップンB3です。
ポップンB3とは
ポップンB3は1985年にリリースされたチャグオールアーChug-O-Lureがオリジナル。
当初はスピナー付きw/ Spinner とスピナー無し w/o Spinnerの2タイプでリリースされました。
その時の広告コピーが ” Throw it, Wait for ripples to disappear, Then twitch it….. KA-POW! (投げたら波紋が消えるまで待ってトゥイッチすると…. ゴボーン!) “という名文句だったのはあちこちで書いてて聞き飽きてるだろうからもう要りませんねw
その広告効果もあってかそれなりに売れてたモデルだったのですが、90年代に入ると雲行きが怪しくなります。
バグリーは何を血迷ったか、全く同じボディでリアフックにラバースカートを装着したポップンB3をリリースしたのです。
これもチャグオールアーと同じスピナー付きと無しの2タイプ。
同じボディなのに『チャグ』と『ポップ』の違う名前が存在するってどゆこと?とアングラーは困惑しますがバグリーは更にポップンB2というダウンサイジング版もリリースし、両モデルの違いも使い分けの説明もないまま併売を始めます。
しかし困惑の展開はまだまだ続きます。
ポップンBの特徴はラバースカートであるにも関わらず、スカート無しのポップンB3まで出てきたのです。
もうここまでいくと何がなんだか…www
その後は言うまでもありません。
バグリーは一体何がしたかったのか分からないままポップンB3が消え、それに続くようにB2も消滅してしまいました。
後にバグリー社長だったマイク・ローガンとFacebookで繋がったのでこの混沌について聞いたところ、”先代社長がとにかくヤル気が無かった、早く会社を売り抜けたいあまりいろいろ手を出すが全て裏目に出ていた” と語っており、ポップンB3は会社のグダグダによって抹殺されたルアーだったんだなとw
ポップンB3のサイズ・重さ
そんな悲しい展開はさておき、ポップンB3は全長90ミリと水面ルアーとしては非常に扱いやすいサイズにまとめられています。
自重はカタログ値では3/8ozとなっていましたが、実測では1/2oz弱といい感じの重量感。
素材はバルサではなくハードウッドなので、ウッドの長所が出ているなと。
ちなみに一番最初にチャグオーが登場した80年代中頃はバグリー全盛期ともいえる黄金期。
この時期に同じくウッド製のラトル入りリップレスクランク(!!)、チャターシャッドをリリースするなど革新的な事にもトライしていたのでバルサルアーからの脱却を図っていたのかもしれませんね。
ポップンB3の仕様
まず目につくのがポッパーとしてはかなり控えめなカップ。
当時はポップRに代表されるように、エッジがシャープで大きめのカップを持ったポッパーが主流だったのでこの外見だけで敬遠するアングラーも多かったようです。
しかも元々チャガーとして生まれたので下アゴの方が前に出ており、派手なスプラッシュを飛ばすことも苦手だったりします。
なぜこれに『ポップ』と名付けた???と小一時間説教もしたくなりますが、意外にもポッパーでもチャガーでもどちらでもない中途半端なサウンドが効くのかナニゲによく釣れたルアーでもありました。
そして腹が大きく凹んだ造形もポップンB3の特徴。
バグリー曰く、このConcaved Belly(凹んだ腹)はダイブ時により頭を突っ込みやすくするためのデザインだそうで、潜りたくても潜れない傷ついたシャッドの動きを演出できるそう。
アングラーの好みでスピナー付きと無しを選べます。
スピナーはバングオーやマイティミノーにも採用されているオーバル形状のものなのでサウンド的には申し分ないんだけれど、ポッパー/チャガーとして使おうとするとどうしても動きが成約されてしまうので個人的にはスピナー無しの方が好み。
スピナー無しだとダイブ後のトゥイッチでラッキー13的なダートアクションも楽しめます。


中途半端だが妙に釣れる動きと音
気になるサウンドはポッパー的なボワンでも、チャガー的なゴブッ!でもない中途半端な音が特徴。
一般的なポッパーやチャガーが出す音を期待すると間違いなくズッコケますが、魚を寄せるパワーはあるのか意外にもよく釣れる音。
よくよく聴いてみるとカップサイズの割に低く大きな音が出るのと、同じような中途半端な音を出すものがあまり無いのでもしかしたらそれが効いているのかも。
ロッドアクションへのレスポンスも高く、軽くチョンとやるだけで逆立ちするぐらい頭を下げるため移動距離も少なくネチネチ攻めるのにはピッタリの特性に仕上がっています。
このあたりは先述の凹んだ腹のデザインが生きてるなと。
バグリーにしてはカラーは少なめ
そんなポップンB3ですが残念ながらカラー数は少なめ。
オーソドックスなクローム、フロッグ、テネシーシャッド、ホットタイガーなどバグリーにしては少ない10色ほどしかリリースされていません。
オフトカラーなども入れると数十色リリースされていたB2サイズとは正反対の展開です。
なんだかこの辺からもヤル気の無さが滲み出ちゃってますよね。
余談ですが当時オフトが入れていたポップンB2には3Dのドームアイが装着されており、画像のような塗り目ではありませんでした。
3Dアイを採用した経緯は知る由もありませんが、当時の日本はメガバスを筆頭としたリアル系ブームだったのでそのトレンドに乗っかろうと思ったオフトのカスタムオーダーだったのかもしれません。
しかし3Dドームアイはバグリーのクラシックなペイントパターンには全く似合わず、旧来のバグリーファンはもちろん一般ユーザーからも敬遠されることに。
そういう意味では外したマーケティングだったんでしょうね。
フックは製造時期によって全く違う
フックは前後とも#4サイズがデフォルトですが、フック形状は製造時期によって全く違います。
チャグオールアーとしてデビューした直後はクローポイント、その後はショートシャンクのワイドゲイプ、ブラックニッケルが付いていた時期もあればブロンズフックが付いていた事も。
フックの変遷については米コレクターの間でもいろいろな説が飛び交っていますが、最も有力と思われるのが『その時に最も安く仕入れられるフックを採用していた』ではないかと。
この辺の詳細も先のマイクローガンに聞いてみましたが、現場レベルにはあまり関与していなかったようで(そもそも覚えてない?)明確な回答は得られませんでした。
仮に知ってたとしてもネガティブな話はしたくないでしょうしね😁
ネームはバグリーの王道だが…
ネームプリントはバグリーの王道に則ってフルネーム入ってますが、B2の最後の方はネーム無しもチラホラ。
社内のグダグダぶりが製品に表れるのはよくあることですが、ルアーにとって金看板でもあるネームにそれが出ちゃうのはちょっと悲しいですね。
タマ数はそれほど多くない
生産が終わって久しいルアーでもあるので入手は中古市場で探すことになりますが、元々バグリーのファンしか買わないようなルアーだったのでタマ数はそれほど多くありません。
しかし探してるアングラーが居ないのか、意外と簡単に見つかったりします。
しかも年代の割にコンディションの良いものが多いので、気になる人にとってはお買い得なルアーかもw
おわりに
これを良いルアーと思えるかどうかは使い手の感覚次第というなんともビミョーな存在ですが、バグリーのグダグダが無ければそれなりのポジションになってたと思うとちょっと勿体ない気も。
逆に内容が伴っていないにも関わらず、マーケティングの巧みさでセールスを伸ばしたルアーも有ることを思うとちょっとフクザツなキモチにもなりますよね。
そういう意味ではこのポップンB3は悲運のルアーなのかもしれません。