ルアーフィッシングの歴史を語る上で絶対に外せないルアーがあります。
単に釣れるとか名品だとかのレベルを超越した、その後のルアーに多大な影響を与える存在となったルアーの事です。
それらは発売から何十年と経ってもルアーの実力を測る試金石ルアーとして君臨しているルアーで、クランクベイトにおけるビッグオー、ポッパーにおけるポップRなどが挙げられますが、我ら日本にもそんなルアーがあるんです。
それが今日のゲスト、ラッキークラフトのサミー。
このルアーの登場は、ペンシルベイトカテゴリーにおいてザラスプーク以来の衝撃だったと言っても過言ではないでしょう。
このサミーの登場が日本だけでなく世界に衝撃を与えたのはみなさんご存知の通りですね。
元々の開発者はサム山岡氏で… というところから話し始めるとエンドレスになるのでその辺の詳細は各自検索して頂くとして、今回注目してもらいたいのは、このルアーには釣れる要素がテンコ盛りであるということ。
山岡氏のオリジナルモデルももちろん釣れ釣れなんですが、それを量産化する際に、さらに釣れる要素を盛り込んだところにこのルアーの凄さがあるんです。
その中でも飛び抜けてよく釣れるのはこの85サイズ。
サミーはこのサイズの他に65、100、115がラインナップし、後に追加されたモデルも含めると今では一大ファミリーになっていますが、のんだくれはこの85サイズを多用していました。
それぞれのサイズにそれぞれの良さというか強みがありますが。この85は浮かせておくだけで釣れるという人もいたりして、あながち間違ってはいないのではないかと。
そのぐらいよく釣れるのです。
釣れるキモの筆頭となるのはこの小さなカップ。
見慣れた今となってはどうという事のないカップですが、これだけで世界を取ったと言っても過言ではないぐらいパワフルな要素です。
それはこの浮き姿勢を見れば一目瞭然。
水面から約1センチの高さにカップを掲げて浮く事により、ほんの少しロッドを動かすだけでカップがキレイに水面に覆い被さって、従来のポッパーでは出せなかった生々しいサウンドが出せるのです。
それは小魚が水面に落ちた虫を捕食して水底へ反転する時に出す小さなサウンド。
あのプチュッでもポムッでもない音を見事に再現しているんです。
ラトルサウンドにかき消されてアングラーにはあまり聞こえませんが、この音がプレデターのスイッチを強制的に入れてしまうのです。
このサウンドの威力を思い知らされたのはバスブーム真っ只中の河口湖ロイヤルワンド。
当時の河口湖を知る人なら分かると思いますが、バスフィッシングブームの頃の河口湖、しかも駐車場からアクセスしやすいロイヤルワンドは5mおきにアングラーが並ぶ超過密スポットでした。
当然プレッシャーもハンパなかったワケですが、あらゆるルアーを投げまくった後にこのサミー85を入れたところ、いきなり連発したのです。
しかもバイトは全て着水ポーズ後のワンアクション。
バスのサイズはそれなりでしたが、それまでペンシルといえばザラスプーク一辺倒だったのんだくれにとってこの出来事はとてつもない衝撃でした。
その後、のんだくれが投げたところに周りから一斉にルアーが飛んできて、まるでマンガのような状態になったのは違う意味で衝撃でしたが😁
でもポップ音だけじゃないんです。
浮き姿勢が魚っぽいのは当然として、ダイブした時の身のこなしがスバラシイんです。
トップウォーター系アングラー、特にペンシルベイト使いの人達が好む動きのひとつに ” 水に絡む” という動きがあります。
これは比重が高めのプラスチックが使われているオールド、ヴィンテージ系ルアーによく見られる、ヌメヌメとした動きを表す動きのことですが、このサミーはその水に絡む動きとは全く正反対のクイックなダイブアクションでバスのスイッチを入れてしまうんです。
しかも単にダイブするだけではありません。
エッジが設けられたベリーデザインにより、必ず右か左のどちらかにスライドするように身を翻しながら潜り、そしてすぐに水面に戻って静止します。
その際にフラット化されたボディが強過ぎず弱過ぎない淡い光を放ち、その後ピタッと止まるのでバスも思わずバイトしちゃうという流れです。
よくジャークベイトなどで、ジャークしたらピタッと静止するのがイイとか言われますが、このサミー85は水面でそれを実践してる感じ。
生っぽいカップサウンドと、ダイブ時の妖しい身のこなし、淡い光のフラッシュに急制動アクションが揃ったら、そりゃガマン出来ませんってば😁
もちろんドッグウォークもお手の物ですが、のんだくれはこの85サイズに限っては首振りで使うことはほとんどしません。
主に葦際やオーバーハング奥など、虫が落ちてきそうなエリアに入れたら数回チョンチョンして反応なければ次のスポットへというスタイルで投入してイイ思いをさせてもらってます。
ヘッド部にはグラスラトルを擁することで独特のシャラシャラサウンドを発します。
ラトルボールのサイズが微妙に変えてあるのも加藤さんのこだわりでしょうね。
のんだくれの記憶が正しければ、グラスラトルを採用したのはこのサミーあたりが最初だったような気がしますが。
一時期グラスラトルを抜いたチューンなんかも流行りましたね。
効率的にラトルを鳴らす悶絶アクションの要となっているのが、このウェイト兼ラトルボールの配置。
2個のメインウェイトの他に2つのバランサーウェイトを配したバトルステーションがいい仕事をしてくれています。
メインウェイトのルームを底上げして重心位置を高くすることでボディを倒れやすくし、誰でもドッグウォークできるように設計されているところも加藤マジックですよね。
カラーは当時の定番だったレインボートラウト。
当時のラッキークラフトはトランスパレント系のカラーが多かったですね。
当時のんだくれはオーロラパープルというホログラム系の反射カラーを多用していましたが、カラーに関係なくよく釣れました。
フックは前後とも#4の化学研磨のラウンドベンドが装備されています。
研げない化研フックがあまり好きではないので大抵の化研フックは交換してしまいますが、サミーに関してはこのまま使用しています。
何故ならこのフックでないとミスバイトやスッポ抜けが多発するから。
これに限らずボディとフックが最適化されているルアーは変にイジるとダメになったりするので、交換してイマイチだなと思ったらすぐに元の仕様に戻す勇気も必要です。
ネームはご覧の通り腹側に入っていますが、サイズ表記まで入ってないのがちょっと残念。
サミーぐらいのメジャールアーになればサイズが入ってなくても問題ないでしょうけど、知名度がそれほど高くないルアーの場合はネームにサイズ表記を入れることで、他にもバリエーションが存在してる?と思わせたり出来るのでマーケティングの意味においてもサイズ表記は外せません。
米国では “サミースタイル” と呼ばれるなどペンシルベイトの形状に革命を起こしただけあって、この形状を模倣したルアーが大量に出回りましたが、それでも未だトーナメントの第一線でサミーが必要とされているということは、他にはマネ出来ない何かが宿っているんでしょうね。
発売から既に25年以上が経ち、このルアーの破壊力に触れた事のない世代もいる事を思うと自分のGGY化に涙が出そうになりますが、最近使ってない人は昔を思い出して投げてみれば、昔とは違った何かを感じることができるかもしれませんぞ。