メガバスPOP-Xを買えない少年達の心を癒やしてくれた平成のコーモラン T.D.ポッパーZERO T.D.Popper ZERO 1070F / ダイワ Daiwa

ダイワ Daiwaトップウォーターポッパー•チャガー

アングラーならば誰しも記憶に残るルアーがあります。

それらの多くはその時代を彩ったものですが、世代やバスフィッシングを始めた時期によってそのルアーはまちまち。

例えば70年代ならばジェリーワーム、80年代ならシャッドラップなどがその代表に挙げられますが、興味深いのはそれらの記憶は必ずしも釣果とイコールにはなっていないところ。

今日紹介するTDポッパーZEROもそんな記憶に残るルアーのひとつです。

T.D.ポッパーZEROとは

T.D.ポッパーZERO(以下ポッパーZERO)は1998年?に発売されたトップウォーターです。

既にダイワにはポッパーの名品として名高いT.D.ポッパーがラインナップしていましたが、折りからのリアルブームに便乗できる商品が必要として、T.D.スラッシュウォーカー、T.D.スイッシャーと共にZEROボディシリーズの一員としてリリースされました。(ZEROボディの詳細は後述)

ポッパーが持つ破壊力を日本中に知らしめた歴史的快作 T.D.ポッパー T.D.Popper / ダイワ Daiwa
バスフィッシングブームの中でもひときわ輝いていたルアー 90年代バスフィッシングブームでは数え切れないほどのルアーが生まれては消えてゆきました。 あのブームは良くも悪くも日本のバスルアーの未来を決定づけてしまったところがあり...

このポッパーZEROはシリーズの中で良くも悪くも目立った存在でした。

何故なら見た目がメガバスのPOP-Xのまんまだから。

ここまで寄せたものを出してくるあたり、ダイワも相当な心臓の持ち主だなと関心したものです。

もちろんこれには賛否両論が飛び交い、ダイワは終わったとまで言い切るアングラーもいる中、ある層には確実に響いていました。

それはPOP-Xが欲しいけど買えない層。

そしてその中でも小中学生アングラーには割と好意的に受け取られたのでした。

ちょうど今の30代アングラーがその世代にハマりますね。

80年代に高価な舶来ルアーが買えなくてコーモランのパチで我慢したのんだくれ世代と似たような状況が90年代にもあったのです。

T.D.ポッパーZEROのサイズ・重さ

ポッパーZEROのサイズは60ミリ、6g(実測5.8g)。

ヘッド部にボリュームがあるPOP-Xよりもややスリムなフォルムで、野池攻略用とも言えるひと口サイズに仕上げられています。

ワンサイズのみでサイズバリエーションが無いところにもダイワのメガバスに対する挑戦的な姿勢が見えなくもありません。

このルアーよりも先にリリースされたケンクラフトのバスパーもデビュー当時、POP-Xのパクリだと騒がれましたが、ポッパーZEROの激似ぶりに比べたらバスパーなんてかわいいもんですw

コレで水面童貞を捨てたアングラー数知れず!今こそ使いたい平成の申し子 バスパーJr. Bass Per Jr. / ケンクラフト KEN craft
”時代を象徴するルアー” というものがあります。 その時代のフィッシングシーンを代表するルアーの事で、古いところではジェリーワームやゲーリーグラブ4インチ、S字系スイムベイトなどなど、誰もが一度は試した事のあるものです。 ...

というよりもユーザーが心配になるほど露骨なコピー物を出したということは、もしかしてダイワとメガバスの間で何らかの同意があったんでしょうか。

T.D.ポッパーZEROの特徴

”ウォータースルーギル” ではなく”アンダースルーギル”

このルアーの特徴はなんといってもカップからエラへと通ずる構造。

POP-Xでいうところの ”ウォータースルーギル” ですがこの名称はメガバスが商標を取得している関係上、 ダイワは ”アンダースルーギル” というよく分からん名称で対抗しています。

しかしオリジナルではないという引け目があるのかプロモーションでもパッケージでもこの構造がもたらす効果に関する説明はかなりあっさりしたものに。

ここまでやっておきながらそれはないやろ!というおとぼけぶりなのですw

しかし強気に出られない分、他の部分には気合が入っています。

比重1以下の軽量新素材を採用

それがこの3D彫塑。

抽象的な造形のT.D.ポッパーの対極ともいえる複雑な造形は、それまでのダイワルアーのイメージとは一線を画すものでした。

さらに”世界初”が大好きなダイワらしく、新素材ZEROを採用。

これは比重が1以下の素材を採用することでハイフロート、ハイレスポンスを実現するというもの。

しかし比較対象となる普通の樹脂モデルがないので、ぶっちゃけハイフロート/ハイレスポンスになっているかどうかは分かりませんw

信じる者はナントカの世界ということなんでしょう.

ベイトフィッシュのシルエットに寄せた”クローズドマウス”

さらにPOP-Xとの差別化を図るためにペイントワークにも工夫が見られます。

カップをあえて無塗装にして、あたかもベイトフィッシュが口を閉じているかのように見せる ”クローズドマウス” デザインによって、見た目のボリュームをコンパクトに。

バスから見てこのデザインがベイトフィッシュに見えるかどうかはわかりませんが、少なくともアングラーをそう信じ込ませるには十分な効果がありましたね。

T.D.ポッパーZEROのアクション

アクションは良くも悪くも無難な仕上がりになっています。

それなりに首は振るし、ポップ音もスプラッシュもそれなりに出せる。

ほぼ立ち浮きの状態からのアクションレスポンスも悪くはない。

ラトルは小さな挙動でもしっかり動くし、このサイズのポッパーにしてはよく響く方でしょう。

なので使えば普通に釣れます。

いや、むしろよく釣れると言った方がいいかも。

しかしこのポッパーZEROには何かが足りないのです。

それは、コレじゃなきゃダメだ!という決定的な理由。

決め手がイマイチ見当たらないのです。

万人受けする商品を作るのが総合釣り具メーカー・ダイワとしての使命なので、突出した要素が必要なのかと言われればのんだくれも答えに窮しますが、名作T.D.ポッパーに続く商品としてはちょっと寂しくない?と思ってしまうのです。

その点では同シリーズのT.D.スラッシュウォーカーZEROの方が遥かに尖っていたなと。

T.D.ポッパーZEROの使い方

アングラーのあらゆる要望をソツ無くこなすポッパーZEROなので、ぶっちゃけトップウォーターが有効なシチュエーションならどこでも使えます。

が、のんだくれは先述の通りどこか物足りなさを感じてしまうので、ポッパーZEROでないと出来ないアクションをあれこれ試してみたところ、この使い方に行き着きました。

それは ”超ソフトポップ&超ロングポーズ” です。

読んで字の如く、ポップ音がするかしないかぐらいの弱い入力でピコッと動かして、その後長ーいポーズでバイトを待つという、ほとんどデッドスティッキングのような使い方です。

もうスプラッシュや首振りなどは得意なルアーに任せてしまって、リアルな立ち浮き姿勢を見せることでバイトに持ち込もうという魂胆です。

実はこのポッパーZERO、弱いアクションでポップさせると小さな飛沫をルアーの ”後ろに” 飛ばします。

これはダイブした瞬間にカップの後ろでぶつかり合った水が後方へ弾き出されることによるものですが、この飛沫が実にリアルというかイキモノっぽいのです。

虫が落水したかのような小さな飛沫音に気づいて見上げたところ、それを食いに来た小魚が水面でパクついている… というイメージ。

そしてポップさせたらそのまま長いポーズ(1分以上)でバイトを待ち、反応がなければ次のスポットへ、の繰り返し。

大きなバスこそ相手にしてくれませんでしたが、この方法で結構楽しませてもらいました。

細いラインで直結に限るなどタックルセッティングには若干の制限があり、さらに長時間待つなど忍耐を要する釣りですが、トライしてみる価値はあるので持ってる人がいたら是非お試しを。

そんなT.D.ポッパーZEROにも欠点が

しかしこのルアーには大きな欠点があります。

それはZERO素材の耐久性。

実はこの素材、衝撃に弱いのです。

護岸や橋脚にぶつけようものなら割と簡単に欠けてしまいます。

特にポッパーZEROはカップのエッジが欠けやすく、岸際ギリギリを攻めるとたった1日でボロボロに😭

さらに素材だけでなく塗装の耐久性もイマイチというなかなか香ばしい仕様なのです。

新興メーカーならまだしも、”Commited to Total Quality(総合品質へのこだわり)” のスローガンをブランドロゴに掲げていたダイワがこれではちょっと寂しいですね。

T.D.ポッパーZEROのカラー

それなりに人気があったルアーだけにカラーバリエーションも豊富です。

画像のようなリアル系ベイトフィッシュカラーを中心に、マット調のホットタイガーや季節限定カラーなんてのもありました。

個人的にはソリッドブラック(カラー名忘れた)が好きで多用していましたが、先述の通り塗装ボロボロでお払い箱に。

耐久性さえあればまだ現役だったかもしれないと思うとちょっと寂しいですね。

T.D.ポッパーZEROのフック

フックはフロントが#8サイズ、リアがフェザードの#10サイズになっています。

アクションレスポンスに配慮したのか、フェザーのボリュームを抑えているのがPOP-Xとの大きな違いですね。

ルアーのサイズが小さいのと浮き角が売りだけにフック交換時には重量にも配慮する必要アリ。

一度ダブルフック仕様にトライしましたが、本来の挙動が出せなくて元に戻したという経験もあります。

T.D.ポッパーZEROのネーム

 

そんなポッパーZEROですがネームは頭と腹のダブルネームという最強の仕様。

これぞルアーのネーム入れのお手本ですね。

特に腹側には太陽ロゴと呼ばれる旧ブランドロゴも一緒にあしらわれているトコがたまりません。

ZEROのフォントも変えるなどなかなか気合も入っているのでネームヲタとしては非常に満足😁

しかしいくらCI変更とはいえ、なんでダイワは太陽ロゴを廃止にしちゃったんでしょうか。

現行のDマークも悪くはないんですけど、力強さは感じるもののあんまりパッションというか熱量を感じないんですよね。

グローブライドは釣り具業界で世界第三位(だったっけ?)の組織としてイメージも改革しなきゃならんのも分かるんですがせめて一部のラインにだけでも太陽ロゴは残してほしかったなぁ

ノスタル爺の戯言だとは分かってますが、同じことを思ってるアングラーは少なからずいるはず。

ちょっと話はそれますが、以前のんだくれはフェニックスロッドの許可を取って旧フェニックスロゴのパッチやステッカーなどを製作したことがあります。

仕事とはいえほぼ個人的な趣味だったのでスタッフからは職権濫用だと非難Go!Go!でしたがw、驚いたことにアメリカ本国から多数の引き合いがありました。

そのオファーの全てが旧フェニックスロゴへの愛を訴えており、デザインへの思い入れに国境はないんだなーと再認識させられたことがあります。

なので、旧ダイワロゴもいつかオフィシャルで復活してくれないかなーなどと淡い期待を抱いてみたりw

T.D.ポッパーZEROはどこで手に入る?

既に生産が終了しているルアーなので、入手は中古市場で探すことになります。

ダイワの強大な販売チャネルによって日本全国に大量に撒かれたこともあり、タマ数は豊富で入手に苦労することはないでしょう。

しかし近年の中古相場の値上がりと連動して、販売価格は総じて高め推移。

さらに最近は一部で90年代ルアーを見直す動きがあるせいか、コンディションの良いタマの遭遇率が減っているように思います。

ちょっと前までは100円でも身請け人が現れなかったというのに。

もしかしたら30代アングラーが昔を思い出して買い求めてるのかもしれませんね。

おわりに

ポッパーZEROは名品と呼ぶには弱いけれど、その欠点も含めて記憶に残るルアーのひとつであることは間違いありません。

いや、むしろ欠点があるからこそ記憶に残っているのかもしれませんね。

アレですよ、昔付き合った彼女の中でも何か問題があった子の方が記憶に残るのとおんなじです。

お前なんか顔も見たくない!と別れたけど、時間と共に思い出補正されて、あれはあれでイイ女だったなぁとなる都合のいい思考w

このT.D.ポッパーZEROを昔の問題彼女に結びつけたらダイワ担当者に怒られそうですがw、逆の見方をすればそれだけルアーに個性があったということ。

そう思うと最近のルアーは隙がないというか欠点が見当たらないですね。

ルアーは少しぐらい隙というかクセがあった方が使いこなす過程が楽しめて入魂しやすいと思うんですけど、みなさんはどう思います?

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