SNSなどで釣果を見るたびに気になるも、なかなか手が出ないマスキー系ルアー。
ボリュームがある上に大雑把な造形なので、実際にパッケージを手にすると高確率で ”やっぱりやめとこ” となるカテゴリーのひとつです。
しかし実際に使ってみると思いのほか使い易く、Hi-FinのクリーパーやMSスラマーなどカンタンに釣れちゃうものも多数存在しています。
そんな中でのんだくれのイチオシは今日紹介するザ・ビリーバーのジョインテッド版。
バスにシーバスにナマズにと多くのプレデターを引っ張り出す能力に長けた逸品です。
ザ・ビリーバー7″とは
ビリーバーはオハイオ州を拠点として展開するドリフタータックルカンパニーが製造するマスキー用ルアー。
このタイプのルアーはマスキーのフィッシングガイドだったホーマー・ルブラン Homer LeBlanc が1950年代に製作したルアーが元になっており、ワンピースボディのものがオリジナル。
彼がガイドで使ったことでその実力が広く知られるようになり、以降各社から同じタイプのものが数多くリリースされるようになりました。
米国では主にトローリングで使われており、マスキー初心者はまずこれを使えと言われているほどの定番ルアー。
ドリフタータックル以外に、スウィムウィズ Swim Whizz ブランドのものも日本に入ってきているのでご存知の方も多いことでしょう。
日本では釣り大会の賞品に使われるなどネタ的なルアーとして知られていましたが、元ティムコ現ラインスラック代表の小倉英次氏がその実力をメディア紹介したことでブレイクを果たし、メジャーチームの仲間入りを果たしたという経緯があります。
ザ・ビリーバー7″のサイズ・重さ
ビリーバー7”は、175ミリ、自重46gの迫力ボディ。
ビッグスイムベイトが一般化した今となっては普通のサイズですが、昔はデカく見えたもんです。
現在ビリーバーにはこの7インチの他に6、8、10、13インチが有り、それぞれにジョイント版とワンピースボディ(ビリーバーではストレートと呼んでいる)、さらにラトル入りとノンラトル版がラインナップしています。
かつては3/8ozのキャスティングサイズも販売されていたことも。(詳しくはDabさんのB級ルアー列伝参照)
小倉氏のイチオシは8インチのフック位置を変えたチューンドモデルのようですが、のんだくれのオススメはこの7インチ。
チューンなしのデフォルトの状態で使うなら、この7インチが最も扱い易く、そして最もBelieveに値するのではないかと。
ザ・ビリーバー7″のアクション
ビリーバー7″のアクションは典型的なジョインテッドウェイクベイトのそれ。
アングラーの期待通りにジョイントテールを振って、カコカコと小気味良いクラッキングサウンドを発してくれます。
サウンド自体はそれほど大きくはありませんが、自然界には一定のリズムで中低音を打ち続ける存在が無いせいかアングラーが思っている以上にアピールが大きいらしく、威嚇系の激しいバイトが多いのが特徴です。
サウンド的にはかつて一世を風靡したモンスタージャックのコツコツ系クラッキングサウンドに近いと言えるでしょう。
深度調節だけではない2つのタイイングアイ
そんな強いサウンドアピールをより生かしてくれるのがこの2つのタイイングアイです。
メーカーの説明では ”ラインアイによって潜行深度が選べる” としかありませんが、実際には潜行深度だけでなくアクション特性も大きく変わるので、アングラーの好みや状況によって多彩な使い分けができるスグレモノに仕上がっています。
その違いを端的に言うならば、フロントはリアに比べてウォブリングが強くなるのでルアーの動きやクラッキングサウンドで誘うのに向いていて、リアはウォブリングは弱まりますがリトリーブ抵抗が格段に上がるので、水面直下のタダ巻きなど強い水押しを活かしたアプローチに最適。
アクションの立ち上がりはフロントの方がクイックなので、ウェイクベイト的に引き波で誘ったりこまめにポーズを入れるような “日本的水面使い” に向いていて、ゆったりと泳がせて誘うスイムベイト的な使い方ならリアの方が合っています。
そして動きによってクラッキングサウンドも変わってくる上にラトルの有無も関係してくるので、見た目の大雑把さからは想像できない多彩な演出が可能になっているのです。
メーカーは日本で使われる事など全く想定していなかったでしょうが、それでも日本市場に受け入れられたのは、ルアー自身が持つポテンシャルの高さと動きにこだわるジャポネ特有の感性との相性が良かったのもあるのではないかと。
ジョイントは動きやサウンドの為だけではない
そんな多彩な演出をさらに広げてくれるのがこのジョイントです。
DRTのクラッシュやジョインテッドクローなどと違うシングルコネクターは一見オールドスタイルに映りますが、上下左右フリーに動き回りまわれるテールは水流変化によって複雑な動きを生み出し、プレデターを惹きつける非規則性をもたらします。
もちろんジョイントの動きだけでなく、ジョイントが生み出す複雑な水流もアピールポイントのひとつ。
水面スロー引きで見られる水のヨレはずっと見ていられるほど見事です。
かのラパラがジョインテッドルアーにはシングルコネクターしか使わないのもなんとなく分かる気がしますね。

ザ・ビリーバー7″の使い方
巻け。ひたすら巻け。
マスキールアー未経験のアングラーが一番困るのがその使い方でしょう。
そもそもマスキーやパイクなどは日本に生息していないのでどう使ったらイイのか分かりませんよね。
でもご安心を。
基本タダ巻きだけで十分に釣れます。
いや、むしろタダ巻きでこそ、真の実力が発揮できると言ってもいいでしょう。
なぜならこれらは基本的にトローリング用なので、巻きでどれだけアピールできるかだけを考えて作られたルアーだから。
よって、難しいことは考えずにクランクベイトのように投げて巻いてを繰り返すだけでオッケー。
トップ使いでどーのこーのと考えるのは、実際に魚を釣ってビリーバーの威力を知ってからでも遅くはないのです。
どうしても水面バイトが楽しみたいなら、ロッドを立ててウェイクベイトとして使えばよろし。
逆にビリーバーの実力を知らないまま、水面でピョコピョコし続けるのはかなりの精神力を要するかも。
事実のんだくれのビリーバー初フィッシュはアシ撃ち後の回収中で、それ以降ビリーバーの見方が大きく変わり、名実ともに ”Believer” になれました。
一度でもサカナを釣った事があるという自信は、ルアーの演出に余裕が出るだけでなくアングラーが発する殺気も抑えてくれますからね。
釣った事がないルアーはまず ”巻きで釣る”
経験者ほど過去の栄光や情報に左右されがちですが、初心者がトンでもないビッグフィッシュを釣る、いわゆるビギナーズラックが生まれる要因のひとつに、”巻くことに専念している” という事実がある事をお忘れなく。
とはいえ、この機能は使って欲しい
しかしある程度使い込んで自信が持てるようになると、いろいろな動きで誘ってみたくなるのもルアーの楽しみの一つ。
”誘って食わせた” という自負は釣果にも大きく作用しますからね。
そんな時に覚えておいて欲しいのは、このビーバーのしっぽのような薄いテールの効果的な使い方。
モノテールはケツを振るような横方向の動きは水を切ってスムースだけれど、縦方向には大きな水抵抗が生まれるのです。
そしてその効果が一番表れるのはルアーが浮上する時です。
ある程度潜らせてからリトリーブを止めると、背中とテールで目一杯水の抵抗を受け止めてジワーッと浮上するので、浮上した時の水面に表れるボルテックス(水のモワモワ)がその辺のビッグファットクランクの比ではないのです。
ボルテックスは目に見えない要素ゆえに見過ごされがちですが、全てのルアーのアトラクター要素のベースになっているもので、ビリーバーはそれを最強レベルで備えているルアーであることを考えると、これを誘いの要素に入れないのはもったいないですよね。
ザ・ビリーバー7″のフック
しかし最強のパフォーマンスを誇るビリーバーですが、フックだけはあまり感心できません。
マスキーフィッシングにおけるフッキングの概念は、基本的に丸呑みされることを想定しているのでバスフィッシングのそれとは全く違うのです。
よって交換は必須となります。
のんだくれはあれこれ試した挙句、がまかつのトレブルRB-H #1/0に落ち着きました。
ブチ込み用にダブルフックやフロントのみのワンフッカーなど試しましたが、タダ巻きメインで使う7”には、大きめのトレブル2連装が威嚇系の体当たりバイトも取れて一番合っているかと。
とはいえ色々なセッティングを受け入れてくれる懐の広さもビリーバーのイイところなので、ここは是非ともこだわりを持ってトライしてみて欲しいところです。
ビリーバーのカラー
ビリーバーはカラーバリエーションが多いルアーとしても有名です。
パーチやザンダーなど冷水域に生息するベイトフィッシュカラーをはじめとして、ありとあらゆるカラーがラインナップしていますが、のんだくれのイチオシは蛍光マットにドットが吹かれたウォールアイカラーと呼ばれるパターン。
その中でもこのイエローとオレンジのものが最強です。
その理由は視認性。
ローライトはもちろんのこと、ステイン系ウォーターで潜らせてもしっかりルアーの動きが見えるので扱いやすさがダントツなのです。
使っているうちにフックサークルでボロボロになって、焼酎のお供になるところもお気に入り。
塗装が剥がれるにつれてクラッキングサウンドのトーンが上がってくるので、育ててる感があるのもイイですね。
ボロボロになるのがイヤな人は強い塗装のグロスフィニッシュのものがありますし、プリズム反射板を内蔵したギラギラと妖しいモデルもあるので好みで選べます。
ちょっとやそっとでは壊れない強靭なルアーゆえ付き合いも長くなるので、オキニの色で思い出を増やしてゆくことができるのはマスキールアーのメリットの一つですね。
ビリーバー7″のネーム
そしてこのルアーの最大の萌えポイントがこのネームです。
ボディの両サイドにルアー名と会社名がしっかりとエンボスモールドされていて、フレッドアーボガストのマドバグ同様、これだけで十分肴になります😁

しかしThe Believer というネーミングは最強ですよね。
”信じるものは救われる” ではありませんが、こんなので釣れるの?と疑ったら永遠に釣れないけど、信じたらちゃんとビッグフィッシュをもたらしてくれるというところにもシビれます。
正確な名前の由来は不明ですが、わざわざ頭に The を付けて固有名詞化するところにもメーカーの自信が見え隠れしているようです。
おわりに
ブームが去った今は一時期のようにどこでも買えるルアーではなくなりましたが、その実力ゆえ根強いファンがいるので、ネットで探せばまだ普通に買えてスペア補充がしやすいルアー。
なによりもメーカーがちゃんと作り続けてくれているのが嬉しいですね。
令和になった今、こんなドぎつい蛍光色のビッグベイトを投げていたら失笑を買うのは目に見えていますが、誰も使わなくなった今こそカンタンに美味しい思いができるので、気になった方は是非探してみてください。
近いうちに他のサイズのインプレも書こうと思っています。