ヒット商品が出ると必ずと言っていいほどサイズバリエーション展開が始まるのがフィッシングルアーの世界。
しかしサイズバリエーションは大きさが違うだけだと思っていると大きな落とし穴にはまってしまう事も。
今日のゲスト、KVDスクエアビル8.0マグナムクランクベイト(長っ!)はそんなトラップを持つちょっと曲者なルアーです。
KVD8.0とは
KVDスクエアビル8.0マグナムクランクベイト(以下KVD8.0)はストライクキングが2014年にリリースしたマグナムサイズのクランクベイトです。
その前年に世に放たれたマグナムダイビングクランク XD10の大ヒットを受け、シャローで使えるマグナムクランクというコンセプトの下開発されました。
ストライクキングのシャロークランクといえば、こちらも空前の大ヒットとなったKVDスクエアビルシリーズがあります。

そこでストライクキングはKVDシリーズの一員としてリリースする事で、XDシリーズの大ヒット商品 x KVDシリーズの大ヒット商品のコラボレーション的な立ち位置に8.0を仕立てて更なる大ヒットを狙ったのです。
しかしこの公約数的な立ち位置がアングラーを惑わせる事になるのです。
KVD8.0のサイズ・重さ
XD10のような巨大なリップが付いていない分インパクトは小さくなりますが、それでも十分な威圧感を誇ります。


KVD2.5との比較
スクエアビル戦争の真っ只中においても着実に釣果を叩き出したKVDスクエアビルシリーズの長兄とくれば、嫌でも期待が高まります。
少なくともKVDシリーズでいい思いをしたアングラーなら反応しちゃいますよね。
KVD8.0の特徴
弟たちと同様、誇らしげにベロを出したその姿はどんな障害物も難なくクリアしてくれそうな自信に満ちていて、長兄らしくラオウの風格すら漂っています。
しかし長兄であるがゆえに誤解されまくってしまったのです。
KVD8.0は誤解されやすいクランクベイト
なぜ誤解されまくったのかは実際にKVD8.0を泳がせてみればすぐに分かります。
KVD8.0はアングラーの予想をことごとく裏切ってくれるのです。
一番最初の肩すかしは、ボディサイズの割に浮力がかなり抑えてあること。
これだけの体積ならばピンポン球のようにポッコン!と浮くんだろうというアングラーの予想を軽く裏切ってくれます。
そしてリトリーブを開始すると、今度はその大人し目の泳ぎにあれ?っとなります。
KVD8.0を購入したアングラーのほとんどはKVD1.5や2.5でイイ思いをしたアングラーなのですが、この8.0はそれらのキレのあるキビキビアクションとは明らかに違うヌルヌルとした泳ぎなのです。
あのキビキビブリブリ泳ぎがマグナムサイズになったら…. ムフフ😍 と妄想しまくってゲットしたにもかかわらず、目の前を泳ぐKVD8.0は妖艶な熟女系のねっとりとしたアクション。
1.5や2.5を10代アイドルの泳ぎとするならば、8.0は友田真希の泳ぎなのです。
この”思ってたのと違う” は、のんだくれをはじめとした多くのアングラーを一体どういうこと?と困惑させるケースが多発してしまったのです。
KVD8.0に隠された3つのヒミツ
しかしストライクキングのレップ(=レプリゼンタティブ。メーカー営業とは別の立場で成功報酬だけでマーケティング活動をするスタッフ)をやっている友人に聞いたところ、その泳ぎにはちゃんと理由があったのです。
まずひとつ目の理由はバスをスプークさせないため。
大きなボディがブリブリしまくったらインパクトがある分、場荒れも早いというわけです。
二つ目はマグナムサイズで1.5や2.5と同様にキビキビブリブリなセッティングにしたら、アングラーの負担が大き過ぎて長時間巻き続けられないから。
シャロークランクである8.0はXD10などのマグナムダイバーと違い、ショートレンジを撃って撃って撃ちまくるところがキモなのに、強大な抵抗を生み出すブリブリ泳ぎにしたらアングラーの負担はハンパないものになります。
もちろんその大きさゆえの水抵抗もあって2.5などと同じようには動かせないのですが、KVD監修であれば当然試合での使用も考慮しているので、長時間使用を前提にしている、と。
そして3つ目ーーーこれが最大の理由なんですがーーーは、KVD8.0はクランクベイトであってクランクベイトではないから、と。
最初は彼が何を言っているのか良く分からなかったのですが、要するに8.0にはビッグベイト的な要素も盛り込んであり、イメージとしてはシャローボトムをつつきながら泳ぐ水棲動物のような”Something”だ、と。
ストライクキングほどのメーカーがテスト段階であらゆるセッティングを試さないワケがなく、浮力だっていくらだって強くできたはず。


2.5の浮き姿勢。喫水線と角度が8.0とは全く違うのがわかる。
ポコン!と力強く浮く2.5とは明らかに違ったセッティングには、ショートリップでも狙った深度まで確実に届かせるという意図もあるはず。
それでもあえてこのセッティングにしたのにはちゃんとした理由があったのです。
しかし米国ブランドらしくそんな理由はパッケージはもちろんウェブサイトにも謳ってないので、日本では1.5や2.5の巨大バージョンと勝手に解釈して肩すかしを喰らってしまうアングラーが続出。
YouTube動画などで手取り足取り解説するマーケティング手法の日本ではちょっと難しいスタートだったかもしれません。
KVD8.0の使い方
しかしこのヒミツを早い段階から見抜いていた日本のアングラーも少なからずおりました。
のんだくれの友人がそのひとり。
彼は本国でKVD8.0が出るや否やソッコーでポチって霞水系で投入していたのですが、開始早々ビッグフィッシュをキャッチして以来、ガチで使い込んでいたのです。
先述のようにのんだくれは友田真希スイムの使い所が分からず持て余していたので、どうやって使ってるのか聞いたところ、”葦沖のブレイクに沿ってスローに引いてくるだけ” と。
彼曰く、普通のクランクのようにグリグリ巻かずに、時折ボトムにコンタクトさせながらユラユラ引いてくるだけ。スクエアビルクランクのようにガシガシ巻き倒しても反応はイマイチ、と。
実際それで良いサイズをいくつも挙げていました。
その時は、ふーん… そうなんだ、で終わったのですが、後にレップに聞いた話と彼のメソッドにはリンクしている部分もあって、なるほど!と感心してしまいました。
もちろんガンガン巻き倒すようなスクエアビル本来の使い方でも釣れると思うんですが、アクションのキレやブリブリ感を求めるならわざわざKVD8.0を投入する必要はないワケでして、友田真希スイムが活きる使い方をした方がルアー的にもアングラー的にもよっぽどプロダクティブ。
のんだくれはスクエアビルクランクの概念に縛られていた己の未熟さを思い知ったのでした😭
ちなみにその8.0使いの友人は、キムケンがメディアでコレを紹介した事に対して、ヤメテくれー!と心底嘆いてましたwww
KVD8.0のフック
KVD8.0のフックは標準で#1サイズが装着されています。
が、のんだくれは前後とも#2サイズに落として使っています。
その理由は2つ。
まず先述のシャローボトムをスローに巻くメソッドの場合、ルアーが早巻きの時ほど前傾姿勢にならない上に巻きスピードゆえフックが下に下がりやすくなります。
すると根掛かり率も上がるのでそれの対応策として。
もうひとつは、デフォルトのままだとかなりの確率でフロントフックがリップに引っかかってしまうのでそれに対応するため。
このフックが引っかかる事象はKVD8.0を使った事のあるほとんどのアングラーから聞こえてくる事なので多くのアングラーがフック交換をしているようです。
しかしのんだくれが気になるのは、なぜストライクキングがこのフックセッティングにしているかという事。
当のストライクキングがこの状況を把握していない訳はないのですが、それでもこのサイズを貫いている事に、フッキング率の向上以外の何か重大な要素が隠されているのでは?と余計なヲタ的思考を巡らせてしまうのです😅
KVD8.0の入手
そんなKVD8.0ですが、入手は比較的簡単です。
個人経営のショップはもちろん、関西の量販店ならば大抵どこにでも置いてありますし、楽天やメルカリにもテンコ盛り。
さらに中古屋にも頻繁に見かけるので、いつでも格安で入手できる優等生でもあります。
中古市場に大量に流れているのは、先述のように使い所が分からなかった、もしくは思ってるのと違ったというのが最大の理由だと思われ。
しかし多くの人がイマイチと思ったルアーほどハマった時の破壊力が大きくなる傾向があるので、実はコストパフォーマンス的にもおいしいルアーなのではないかと。
特にKVD8.0は数回投げてアレ?っと思った人がそのまま売り飛ばす事が多いのか、良いコンディションの出物が多い傾向があります。
中古でコレを探してる人は実戦投入派なので多少の傷は気にしていないと思いますが、身請けする際にキレイなのを選ぶのは吉原からの伝統ですからw
KVD8.0のカラー
アメリカンルアーのカラーリングやクオリティに関して日本的な感覚であーだこーだと言うのは野暮以外のナニモノでもありません。
好きな人は好きだし、ダメな人はダメ。
趣味の世界なのでそれぞれの好みで良いんですが、アメリカンブランドの中でもストライクキングは割と頑張ってくれている方ではないかと。
特にカラーパターンが多いのが良いですね。
アメリカのガチクランカーは日本人が想像する以上にカラーリングにこだわるので、ぶっちゃけストライクキングのカラーバリエーションでも全然足りてませんが、量産品であることを考えたら十分GJ。
まとめ
爆発的に盛り上がったマグナムクランクのムーブメントもひと段落して成熟期となった現在は、見た目やマーケティング力を差し引いたルアーの本来の性能がより注目されるタームに入っています。
ロングセラーになれるかどうかはこの成熟期にどれだけ実績を出し続けられるか、そして安定供給できるかに掛かっていると言っても過言ではないでしょう。
つまり10年後の一軍ボックスでも指定席をキープし続けられているのかがメーカーにとっての最重要課題。
そういう意味ではこのKVD8.0はかなりいいポジションに付けてるのではないかと思いますが皆さんはどう思います?